衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十五年三月四日受領
答弁第二六号

  内閣衆質一五六第二六号
  平成十五年三月四日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員江田憲司君提出米国によるイラクへの武力行使に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員江田憲司君提出米国によるイラクへの武力行使に関する質問に対する答弁書



一の1及び2について

 「同盟」という言葉は、一般には、共通の目的のために互いに行動を共にするというような関係を意味するものとして用いられているが、国際法上の用語としては必ずしもその定義が確立しているわけではない。
 その上で、我が国とアメリカ合衆国(以下「米国」という。)との関係について「日米同盟関係」という場合、一般には、日米安保体制を基盤として、日米両国がその基本的価値及び利益を共にする国として、安全保障面を始め、政治及び経済の各分野で緊密に協調・協力していく関係を総称するものである。我が国としては、従来から、このような意味において、「日米同盟」又は「日米同盟関係」との表現を用いてきているところである。

一の3について

 御指摘の発言がいずれの発言を指しているのかが必ずしも明らかではないが、我が国は同盟国として米国との間で国際問題につきあらゆるレベルにおいて緊密に連携している。

二について

 我が国外交の基本は、何よりも我が国及び国民の安全と繁栄を確保することであり、そのためには、国際社会全体の平和及び安定と繁栄の実現に取り組むことが重要である。
 政府としては、我が国がこうした取組を行う上で、我が国外交の基軸である米国との関係を一層強化することが必要であり、また、国際社会が直面する様々な課題に取り組んでいる国際連合が果たす役割が重要であると考えている。
 このような基本的考え方の下、今後とも個別の案件ごとの具体的状況を踏まえつつ、我が国及び国民の安全と繁栄を確保する観点から、国際社会が直面する様々な課題の解決に向け、積極的に取り組む考えである。

三の1について

 我が国は、米国の国益を具体的に判断する立場にはない。
 なお、日米両国は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)に基づく日米安保体制がアジア太平洋地域の平和と安定を維持するための礎石として重要な役割を果たしており、この地域における米軍の軍事的プレゼンスが同地域の安定に不可欠であるとの認識で一致している。また、米国は日米安保体制へのコミットメントを累次の機会に表明している。

三の2について

 我が国は、従来から、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策の基本としている。
 我が国は、安全保障に関する政策について、かかる考え方に基づいてこれを主体的に取り進めてきており、御指摘のような問題についても、関係地方公共団体との協議や米国政府との協議等を通じて全力で取り組んできており、「米国の考えに同調(追随)すべき」との考え方が基本となっているわけではない。

四の1について

 お尋ねの国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)決議第千三百六十八号は、平成十三年九月十一日の米国において発生したテロリストによる攻撃(以下「今回のテロ攻撃」という。)を受けて採択されたものであり、国際連合憲章(以下「国連憲章」という。)第五十一条の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」に改めて言及している。その意味で、同決議は、今回のテロ攻撃に対応して米国等が個別的又は集団的自衛権を行使し得ることを確認したものと考えられる。

四の2について

 お尋ねの米国のアフガニスタンにおける行動の国際法上の位置付けは、自衛権の行使として行われているものと考えるが、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号)に基づき我が国が実施する対応措置は、あくまでも憲法の範囲内で実施しているものであり、集団的自衛権の行使には当たらない。

四の3について

 御指摘の小泉内閣総理大臣の答弁は、憲法の解釈については従来から、国会等において様々な立場からの議論がなされてきたことをも踏まえつつ、今回のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して我が国が実施する措置は、憲法第九条の許容する範囲において、憲法前文でうたう国際協調の精神に沿って行うものであるが、そのためには根拠となる法律の制定が必要である旨を端的に述べたものであって、従来の政府の憲法解釈に問題点があるという趣旨で述べたものではない。

五の1について

 国連憲章の下では、武力の行使は、自衛権の行使に当たる場合や安保理による所要の決定がある場合等国連憲章により認められる場合を除き禁止されているものであり、これを遵守することは当然である。

五の2について

 我が国としては、イラク共和国(以下「イラク」という。)が大量破壊兵器を廃棄して平和的解決がなされることが最も望ましく、そのためにあらゆる方面での外交努力を行っていく考えであり、武力行使は最後の手段であると考えている。

五の3について

 平成十年十二月十七日の米国及びグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国(以下「英国」という。)の合同軍によるイラク国内の軍事目標に対する爆撃について、英国は、同月十六日の安保理公式会合において、イラクによる義務不履行が最も深刻な結果を招くとした安保理決議第千百五十四号に言及した上で、同決議第千二百五号がイラクによる義務不履行は同決議第六百八十七号に違反することを明確に述べている旨指摘し、これが同決議第六百七十八号に基づく武力行使の基礎を提供していると述べた。また、米国も同会合の場で、同様に、一連の関連安保理決議に言及しつつ説明を行った。
 他方、平成十年十二月十五日付け国際連合イラク特別委員会(以下「UNSCOM」という。)の報告書にもあるとおり、当時、イラクのUNSCOM及び国際原子力機関(以下「IAEA」という。)の行う査察等への協力再開は不十分であったと言わざるを得ず、イラクの対応は、平成三年の湾岸危機の際の停戦条件を定めた同決議第六百八十七号を含む一連の関連安保理決議及び平成十年二月にアナン国際連合事務総長とイラクとの間で合意された了解覚書に対する重大な違反であった。また、安保理及び関係各国は、イラクが、UNSCOM及びIAEAの行う査察等へ完全かつ無条件に協力するよう働き掛けるとともに、関連安保理決議を完全に履行するよう最大限の外交努力を行ってきた。我が国もイラクに対し、同様の申入れを繰り返し行うとともに、安保理での対応を含め、関係各国と協力しつつイラク側の対応是正を求めるべく努力してきたにもかかわらず、UNSCOM及びIAEAの行う査察等へのイラクの協力が得られなかった。我が国としては、このような経緯にかんがみ、米国及び英国の合同軍による行動を支持した。

五の4について

 国連安保理が今後のイラクの問題に関しいかなる対応をとるかについては、その時のイラクをめぐる情勢及び召集された会合における審議を踏まえることになり、お尋ねのイラク攻撃について確たることをお答えすることは困難である。
 御指摘の川口外務大臣の衆議院予算委員会における答弁は、純粋に論理的な観点から述べたものである。

五の5及び7について

 現在は国際社会が毅然たる態度でイラクによる大量破壊兵器の廃棄を含む関連の安保理決議の履行を求めるべき時であり、我が国として現時点で決まっていない武力行使についての支持、不支持を判断すべき時ではないと考える。また、御指摘の報道に係る議論については、具体的に承知していない。

五の6について

 お尋ねの「事情が異なる別のケースに適用する」ということが具体的に何を意味するのかが明らかではないが、安保理決議第六百七十八号は、主文2において、加盟国に対し、同決議第六百六十号及びすべての累次の関連諸決議を堅持しかつ実施するとともに、地域における国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段をとる権限を与える旨を述べている。したがって、同決議は、クウェートを侵攻する形で地域の平和と安全を破壊したイラクの行為を停止させるとともに、イラクが地域の平和と安全を再び脅かすことを阻止することを目的としているものと考える。

五の8及び9について

 国際連合監視検証査察委員会(以下「UNMOVIC」という。)のブリックス委員長は、本年二月十四日に行われた安保理に対する報告において、存在の可能性がある多くの保有が禁止された兵器等の所在が説明されていないこと、安保理決議に違反したミサイル分野での開発が認められたこと等の事実を指摘しつつ、仮に、UNMOVICに対する即時、積極的、無条件の協力が得られるのであれば、査察を通じた武装解除の期間は、短い時間で済む旨述べている。
 このことから、これまでのイラクによる査察への消極的な協力姿勢が抜本的に改められない限り、政府としては、査察継続の有効性に疑問が生じることは否めないと判断している。

五の10について

 イラクをめぐる問題は、大量破壊兵器の廃棄を含む関連の安保理決議をイラクが履行するかどうかの問題であり、国際社会全体の問題である。この問題を御指摘のイスラム対キリスト「宗教戦争」、「宗教対立」の問題としてとらえて危険性を論じるのは不適当である。

五の11について

 イスラエルに対しては、イラクに対してなされた安保理決議第六百八十七号と同様の安保理決議は存在していないこと等から、両国に対する対応については必ずしも同様のものとはならないと考える。なお、我が国は、核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)の非締約国であるイスラエルに対して、同条約を礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制の維持及び強化の重要性を訴えてきており、更にこの体制を支える具体的な措置である包括的核実験禁止条約の早期発効に向け、同条約の早期批准を求めてきている。

五の12について

 現時点において、米国等がイラクを攻撃するとの決定は行われておらず、また、我が国としては、イラクをめぐる情勢や安保理における議論など今後の事態の推移を注視して対応を判断することとしており、お尋ねについて現時点で予断することは差し控えたい。
 いずれにせよ、政府としては、テロ等不測の事態から国民の生命及び財産を守るため、いかなる事態にも対処できるよう最善を尽くしてまいりたい。



経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.