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平成十五年九月十九日受領
答弁第一四七号

  内閣衆質一五六第一四七号
  平成十五年九月十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員井上和雄君提出深刻化する国民及び中小零細企業の借金問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員井上和雄君提出深刻化する国民及び中小零細企業の借金問題に関する質問に対する答弁書



 第一の一について
 「多重債務」は、法令上の用語ではないが、一般には、消費者金融業者、信販会社、銀行等の複数の事業者との取引に係る債務であって、その返済が困難となっているものをいうと認識している。
 第一の二及び三について
 お尋ねの「借金問題にかかる多重債務者及び多重債務者予備軍」及びこれらの者のうち「今後、破産手続等によらなければ借金問題を解決できないと予測される」ものの数に関する統計は、承知していない。
 第一の一についてで述べたとおり、「多重債務」の状態とは、複数の事業者との取引に係る借入金等の債務の返済が困難となっている状態であると考えられるところ、特定の者がこのような状態にあるかどうかを判断するには、その者の総債務額、各債務の弁済期等、その者の収入額及びその将来の見込み、総資産の額等の事情を把握する必要がある。しかし、これらの事情を個々の者について把握し、その返済能力の有無等を判断することは、非常に困難である上、これらの事情は個人のプライバシーにかかわるものであることから、お尋ねのような調査の実施については、十分に慎重な対応が必要であると認識している。
 第二の一について
 最高裁判所事務総局の公表した統計によると、お尋ねの各年における破産事件及び民事第一審通常訴訟事件の各新受件数は、別表第一のとおりである。
 第二の二について
 お尋ねの「裁判所の事件処理能力」及び「債務整理事件」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないが、最高裁判所事務総局の公表した統計等によると、平成十年から平成十四年までの間におけるいわゆる倒産事件(破産事件、民事再生事件、会社更生事件、会社整理事件及び特別清算事件)の新受件数及び既済件数の推移は、別表第二のとおりである。裁判所においては、これらの倒産事件について、適正かつ迅速な事件処理に努めておられるものと認識している。
 第二の三の1について
 お尋ねの「事件処理能力」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないが、最高裁判所事務総局の公表した統計等によると、平成十年から平成十四年までの間において、自己破産事件(法人を含む。)の新受件数の推移は、それぞれ、十万八千八百九十九件、十二万六千九百四十九件、十四万五千二百七件、十六万八千八十二件、二十二万三千五百七十件である一方、既済件数の推移は、それぞれ、十万二百三十六件、十三万六千百二十九件、十四万七千二百七十七件、十六万七千六百九十九件、二十二万二千八百五十二件である。裁判所においては、自己破産事件についても、適正かつ迅速な事件処理に努めておられるものと認識している。
 第二の三の2について
 破産法(大正十一年法律第七十一号)第百十条第二項は、裁判所は、職権で、破産事件に関し必要な調査を行うことができる旨を規定しており、破産事件の審理の在り方等については、この規定に基づき、裁判所が、個別の事件の内容に応じて運用されているものと承知している。
 第二の三の3について
 最高裁判所事務総局の公表した統計等によると、平成十年から平成十四年までの各年の破産事件の既済事件について、破産申立てから終局(破産申立ての棄却、取下げ等による破産宣告前の終局と、破産終結決定、破産廃止決定等による破産宣告後の終局とを合わせたものをいう。)に至るまでの審理期間の概況は、別表第三のとおりである。
 第二の三の4の@について
 個々の事件における手続の進め方、裁判所内部における事件処理の態勢の在り方等については、裁判所において判断されるべきものであり、政府としてお答えする立場にないが、政府としては、今後とも、裁判所において適正かつ迅速な事件処理がされることに資するように、破産手続等の制度の整備等を図る必要があるものと認識している。
 なお、法制審議会倒産法部会は、平成十五年七月二十五日、破産手続の合理化等を図るため、個人債務者に関する破産手続と免責手続との一体化、免責手続の際の期日における必要的審尋等の各種制度の廃止、事案に応じた配当手続の簡素化等を内容とする「破産法等の見直しに関する要綱案」を決定したところである。
 第二の三の4のAについて
 政府としては、かねてから、最高裁判所の意見を聴きながら、裁判官その他の裁判所職員の増員に関するものを含め、適正かつ迅速な事件処理に資するように所要の措置を講じてきたところであるが、今後も、財政状況等も念頭に置きながら、適正な措置を講じてまいる所存である。
 第二の三の4のBについて
 裁判所の予算の在り方については、事件数の動向等を踏まえ、適正かつ迅速な事件処理がされることに資するように必要な予算が確保されることが重要であると考えている。
 第二の三の5について
 破産事件における申立て等の費用については、民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)等で定められているところであり、債権者がする破産の申立ての手数料は一万円、それ以外の者がする破産の申立ての手数料は六百円である。
 第二の三の6の@について
 政府としては、お尋ねの運用状況に関する統計は承知していない。
 第二の三の6のAについて
 破産法第百五十七条は「破産管財人ハ裁判所之ヲ選任ス」と規定しているところ、政府としては、裁判所が行う破産管財人の選任の実情について知り得る立場にはないが、裁判所においては、それぞれの事件にふさわしい者を破産管財人として選任されているものと理解している。
 第二の三の6のBについて
 「本来、裁判所が取扱うべき事務を管財人に一任する」との御指摘がどのような事実を指すのか明らかではないが、裁判所においては、破産法の定めるところに従い、破産事件の審理等を行われているものと理解している。
 第二の三の6のCについて
 御指摘のいわゆる「少額管財」手続を含め、破産手続における予納金の金額は裁判所により決定されるものであり、政府としてその金額の多寡等につきお答えする立場にない。
 第二の三の6のDについて
 いわゆる「少額管財」事件において破産管財人が行う配当率の決定等についてのお尋ねは、破産手続の運用にかかわるものであり、政府としてその実情を知り得る立場にはないことから、お答えすることはできない。
 また、破産管財人はその職務の遂行の対価として報酬を受ける権利を有し、その額は裁判所が決定するものとされているところ(破産法第百六十六条)、政府としてその額の多寡等につきお答えする立場にない。
 第二の三の7の@について
 政府としては、お尋ねの件数に関する統計は承知していない。
 第二の三の7のAについて
 お尋ねは、破産法第百八条の規定により破産手続に関して民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第五十四条の規定が準用される結果、破産手続における代理人は、原則として弁護士に限るとされていることに対する評価を問うものと解される。
 民事訴訟法第五十四条第一項本文は、「法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。」と規定しているところ、この規定は、厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のための必要な規律に服すべきものとされるなど、法律専門家としての能力及び倫理について諸般の担保のための措置が講じられた弁護士のみが、原則として訴訟代理人となり得るとすることで、いわゆる事件屋などの不明朗な職業の発生を一般的に防止し、個別的には法律に必ずしも十分通じていない当事者の利益保護を確実にすることを目的とするほか、手続進行の円滑化を目的とするものであると解される。破産法第百八条の規定が民事訴訟法第五十四条の規定を準用しているのは、破産手続においても、破産の申立てや即時抗告の提起のように、積極的に裁判所の裁判を求める行為が行われ、これを行った者が判決手続の当事者に準ずる地位に就く場合には、このような者の正当な利益の保護を図るとともに、その手続を円滑に進める必要が高いからであると解され、これらの規定により破産手続の代理人を原則として弁護士に限ることは、現在においても合理性、妥当性を有すると考えている。
 なお、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条本文は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件、非訴事件その他一般の法律事件に関して代理その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることを禁止しているところ、法律専門家としての能力及び倫理について諸般の担保のための措置が講じられた弁護士以外の者が法律事務の取扱い等を行うことを放置すると、「当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられた」ものであり(最高裁判所大法廷昭和四十六年七月十四日判決・刑集二十五巻五号六百九十頁)、この規定は現在においても合理性、妥当性を有すると考えている。
 弁護士以外の者が破産手続において代理人となるのを認めることについては、このような各規定の趣旨にかんがみ、十分慎重に検討する必要があると考える。
 第二の三の7のBについて
 政府としては、現在の法曹人口が、我が国社会の法的需要に十分に対応することができていない状況にあり、今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の大幅な増加が急務となっていると考えており、既に司法試験の合格者数を増加させるのに必要な措置に着手し、平成十四年度の司法試験の合格者は年間約千二百人に達している。今後、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指すこととしている。
 一方、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、@司法書士に対して、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、簡易裁判所における訴訟代理権等を付与すること、A弁理士に対して、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、特許権等の侵害訴訟(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る。)における訴訟代理権を付与すること、B税理士に対して、税務訴訟において、裁判所の許可を得ることなく、補佐人として、弁護士である訴訟代理人と共に裁判所に出頭し、陳述する権限を付与することについて、いずれも所要の法律案を提出し、成立した法律は既に施行されている。
 これらの措置によって、我が国社会の法的需要に相当程度対応することができる状況になりつつあると考えているところ、今後各種の隣接法律専門職種などにどのような裁判手続についてどのような権限を認めていくかについては、その専門性を裁判手続の場で活用する必要性や相応の実績等が明らかになった将来において、一定の範囲・態様の裁判手続への関与の在り方を、個別的に検討すべきものと考えている。
 第三の一について
 いわゆる貸し渋りや貸し剥がしについては、金融機関の個々の取引には様々な事情が影響していることから、個々の取引がこれに該当するか否かを判断することは困難であるため、貸し渋りや貸し剥がしによる倒産がどの程度あるか、また、今後どれだけ発生するかに関する調査を行うことは困難である。
 第三の二について
 いわゆる貸し渋りや貸し剥がしに関する情報の電子メールやファックスによる受付制度である金融庁の「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」に寄せられた情報については、これらの情報を基に金融機関に対してヒアリングを実施しているほか、検査においてこれらの情報を参考とするなど、金融機関の監督に当たり重要な情報として活用している。
 こうした情報の受付件数、その業態別及び類型別内訳並びにその活用状況については、四半期ごとに取りまとめて公表することとしており、本年四月に第一回目の公表を行った後、七月に第二回目の公表を行ったところである。
 第三の三の@について
 最高裁判所事務総局の公表した統計によると、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)が施行された平成十二年から平成十四年までの各年において、全国の地方裁判所における民事再生事件の新受件数は別表第二のとおりであり、小規模個人再生事件及び給与所得者等再生事件を除く通常民事再生事件の新受件数は、それぞれ、六百六十二件、千百十件、千九十三件である。
 第三の三のAについて
 お尋ねの「中小企業」及び「運用実態及び認可等の状況」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではなく、また、政府として民事再生法の規定に従い裁判所が行う民事再生手続の運用の実情を知り得る立場にはないが、文献によれば、民事再生法が施行された平成十二年四月一日から平成十四年三月末日までの間に全国の十三の地方裁判所(東京、横浜、さいたま、千葉、大阪、京都、神戸、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌及び高松。ただし、各地方裁判所の支部を除く。)に民事再生事件を申し立てた株式会社及び有限会社のうち資本等の額が一億円未満のものは、全体の約八割を占めているとされているものと承知している。
 第三の三のBについて
 お尋ねは、民事再生法の規定に従い裁判所が行う民事再生手続の運用にかかわるものであり、政府としてその実情を知り得る立場にはないことから、お答えすることはできない。

別表第一


別表第二


別表第三


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