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平成十六年九月三日受領
答弁第四六号

  内閣衆質一六〇第四六号
  平成十六年九月三日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチンと国の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチンと国の対応に関する質問に対する答弁書



一について

 平成元年九月末当時の麻しんワクチンの在庫量を推計することは資料がないため困難であるので、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の使用を中止し、麻しんワクチンの単独接種への切替えが可能であったか否かについては、お答えすることは困難である。

二について

 御指摘の資料にある「医薬品の有用性の限界近くに位置」の意味するところについては、現時点において確認することは困難であるが、文面から推測するに、当時の認識として無菌性髄膜炎のリスクは存在し、使用上の注意の改訂による注意喚起での対応を検討したものの、ワクチンとしての有効性との比較衡量による「医薬品の有用性」はあるとの見解を示したものであって、当時の厚生省薬務局はMMRワクチンの使用を見合わせる選択を行う方向に傾いてはいなかったと考えている。

三について

 MMRワクチンの導入に際しては、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(昭和六十三年十二月十九日付け健医感発第九十三号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知。以下「昭和六十三年室長通知」という。)において、MMRワクチンについて「麻しんの接種のときにこれを希望者には使ってもよいこととするものであること。」との留意事項を示すとともに、「積極的な活用が図られるよう貴管下市町村長の指導に遺憾なきを期されたい。」と示し、周知していたものであり、MMRワクチンのみの接種を実施する旨広報する等の判断を行った市区町村においては、MMRワクチンは、一回の接種で麻しん、おたふくかぜ及び風しんの三疾病について免疫を付与することが可能であり、それぞれのワクチンによる副反応を強くしたりするおそれはなく感染症対策上有意義であるとの認識の下で、MMRワクチンの積極的な活用を図るとの昭和六十三年室長通知の趣旨を踏まえ、対応を行ったものと考えている。

四のアについて

 お尋ねの「予防接種実施規則の一部を改正する省令の施行等について」(平成元年七月七日付け厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室予防接種係事務連絡。以下「事務連絡」という。)は、「予防接種実施規則の一部を改正する省令の施行等について」(昭和六十三年十二月十九日付け健医発第千四百三十三号厚生省保健医療局長通知。以下「局長通知」という。)及び昭和六十三年室長通知の内容を踏まえつつ、感染症サーベイランスにおいて、平成元年は無菌性髄膜炎が流行している趣があり、七月、八月を避けて麻しんの予防接種を実施することが望ましいことから、七月七日付けで各都道府県予防接種担当者に対して周知したものと考えている。
 なお、お尋ねのMMRワクチン接種後の副反応に関し最初に報告を受けた日及びその内容については、記録が保存されていないため、お答えすることは困難である。

四のイについて

 局長通知においては「麻しんの定期の予防接種に当たって、同時に風しん及びおたふくかぜの予防接種を受ける旨の申出があった者については、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンを使用することができることとすること。」と示しているが、局長通知を補足するものとして同日付けで発出された昭和六十三年室長通知においては、MMRワクチンについて「麻しんの接種のときにこれを希望者には使ってもよいこととするものであること。」との留意事項を示すとともに、「積極的な活用が図られるよう貴管下市町村長の指導に遺憾なきを期されたい。」と示しており、事務連絡についても積極的な活用を示した昭和六十三年室長通知を変更するものではないと考えられるのに対し、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(平成元年十二月二十八日付け健医感発第百十二号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知。以下「平成元年室長通知」という。)においては、MMRワクチン接種後に無菌性髄膜炎を発症する者の発生状況を踏まえ、従来の積極的な推奨を改め、MMRワクチンの効果、副反応等について周知したものである。

五の(一)について

 昭和六十三年末までの予防接種法上の定期予防接種による麻しんワクチン被接種者数は千六十万二千百六十九人、同年末までの同ワクチン認定被害者数は四十六人、平成十五年末までの同ワクチン認定被害者数は百十九人であり、平成元年九月末までのMMRワクチン認定被害者はおらず、平成十五年末までの同ワクチン認定被害者数は千四十人である。なお、定期予防接種によるワクチン被接種者数は、平成八年までは年単位で、平成九年度以降は年度単位で都道府県を通じて市区町村から報告を求めているため、平成十五年末までの麻しんワクチン被接種者数、平成元年九月末までのMMRワクチン被接種者数については把握していないが、平成五年四月二十七日にMMRワクチンの接種を見合わせる旨の通知を各都道府県衛生主管部(局)長あてに発出したことから、平成十五年末までのMMRワクチン被接種者数は平成五年末までの被接種者数と同一であると考えられ、その数は百八十三万千七十二人である。
 また、MMRワクチンと麻しんワクチンの副反応の種類や程度は多様であるため、単に認定被害者数をもって両ワクチンの安全性を比較することは不適当であると考えている。

五の(二)及び(三)について

 麻しんワクチンを単独で接種した場合、おたふくかぜに自然感染することも考えられ、MMRワクチンの評価に際して、自然感染したおたふくかぜの無菌性髄膜炎の発生状況とMMRワクチン接種後に起こるおたふくかぜウイルスによると思われる無菌性髄膜炎の状況を比較したことは誤りではないと考えている。
 平成元年十二月二十日に公衆衛生審議会伝染病予防部会が取りまとめた「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種等について(意見)」において、MMRワクチン接種後に起こるおたふくかぜウイルスによると思われる無菌性髄膜炎については、「その症状はいずれも軽度であり、後遺症を残す恐れもないと思われる。一方、おたふくかぜに自然感染した場合には数十倍から数百倍の高い確率で無菌性髄膜炎が発生するほか、脳炎等の合併症や聴力障害等の後遺症を伴うことがあり、おたふくかぜによる死亡者が毎年数名報告されている。以上のことから、一般的にはMMRワクチンはおたふくかぜに自然感染した場合と比較すると効果のあるワクチンといえる」とされ、MMRワクチンの接種後の無菌性髄膜炎の発生頻度は、おたふくかぜに自然感染した場合の無菌性髄膜炎の発生頻度よりも低いこと、また、MMRワクチンは、一回の接種で麻しん、おたふくかぜ及び風しんの三疾病について免疫を付与することが可能であり、被接種者の肉体的、経済的及び時間的負担を軽減することができる点で、感染症対策上有意義であると考えられたことから、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第三条第一項に基づく麻しんの定期予防接種において、希望者にはMMRワクチンの使用を認めてきたものである。
 平成元年室長通知の別紙「MMRワクチンの接種について」の記述は、公衆衛生審議会伝染病予防部会におけるその時点の最新の科学的知見に基づいた客観的かつ専門的な審議の結果を踏まえ、適切な情報提供を行ったものであり、偏った情報提供ではないと考えている。

六について

 社団法人北里研究所のMMRワクチンの承認書については平成十五年十一月十三日に、また武田薬品工業株式会社のMMRワクチンの承認書については平成六年十月十七日に、それぞれ返納されている。なお、社団法人北里研究所のMMRワクチンについては平成四年十一月に、武田薬品工業株式会社のMMRワクチンについては平成五年四月に、それぞれ製造が中止されたと承知している。

七について

 御指摘のMMRワクチンについては、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二十三条の規定に基づく輸入承認に係る審査を行っているところであり、有効性、安全性等に係る情報に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、適切に承認審査を行ってまいりたい。

八について

 お尋ねのMMRワクチンと自閉症の因果関係については、平成十年から平成十五年にかけての英国のワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)、医学安全委員会(CSM)、米国の医学研究所(IOM)の独立委員会、米国小児科学会(AAP)の会議等で検討されたが、いずれもMMRワクチンが自閉症やその関連疾患の原因となるという仮説を裏付ける証拠は存在しないとの医学的知見で一致していることを踏まえ、厚生労働省としてはその因果関係はないと考えている。
 また、MMRワクチンの接種により健康被害を受け、予防接種法に基づく障害児養育年金又は医療費等の支給を受けた者の長期予後については、平成十六年四月現在において障害児養育年金等を受給中である者は、その障害の状態等に変化があった場合の届出を通じて、これ以外の者は、MMRワクチンの接種による疾病にかかった場合等における医療費等の支給申請を通じて把握することができるため、新たに被害者の長期予後や自閉症に関する調査を行う必要はないと考えている。

九について

 統一株MMRワクチンと財団法人阪大微生物病研究会の自社株MMRワクチン(以下「自社株MMRワクチン」という。)の無菌性髄膜炎の発生頻度が違うという報告を受け、平成五年四月二十八日に当時の厚生省薬務局が行った調査の指示に対し、平成五年五月十日に財団法人阪大微生物病研究会より同研究会製造のMMRワクチンの安全性データ、性状及び製造経過等に関し報告があったところである。同報告において、統一株MMRワクチンに用いられたおたふくかぜワクチン原液と、自社株MMRワクチンに用いられた原液とでは、製造工程に一部異なる部分があることが見いだされたため、当時の厚生省薬務局職員が事実関係等について明らかにする必要があると考え、薬事法第六十九条第一項に基づく調査を行うこととしたものである。

一〇について

 平成十五年末までに、MMRワクチンの接種により健康被害を受け、予防接種法に基づく医療費等の支給を受けた者は千四十人であり、同法に基づき予防接種による健康被害の救済措置が導入された昭和五十二年二月二十五日から平成十五年末までに医療費等の支給を受けた者の総数二千四百六十八人に占める割合は四十二・一パーセントである。
 また、MMRワクチンを含めワクチンの副反応の種類や程度は多様であるが、MMRワクチンの接種後に健康被害を受けた者の大半は後遺症を伴わない無菌性髄膜炎を発症したものであり、また、MMRワクチンの接種後の無菌性髄膜炎の発生頻度は、おたふくかぜに自然感染した場合の無菌性髄膜炎の発生頻度よりも低いと考えられていることから、右に述べた四十二・一パーセントという割合をもって問題があるものとは考えていない。



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