答弁本文情報
平成十六年十二月七日受領答弁第五五号
内閣衆質一六一第五五号
平成十六年十二月七日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員樋高剛君提出介護保険制度見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員樋高剛君提出介護保険制度見直しに関する質問に対する答弁書
一について
介護保険法(平成九年法律第百二十三号。以下「法」という。)第四十一条第一項の指定を受けた指定居宅サービス事業者のうち指定訪問介護の事業を行う者(以下「指定訪問介護事業者」という。)の介護福祉士又は訪問介護員(以下「訪問介護員等」という。)は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号。以下「指定基準」という。)において、指定訪問介護の提供に当たっては、常に利用者の心身の状況、その置かれている環境等の的確な把握に努めるとともに、指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行い、必要な措置を講じなければならないとされている。このため、訪問介護員等は、利用者が痴呆性高齢者である場合には、サービスを提供している間に利用者が徘徊することも想定されることから、常に利用者の心身の状況、その置かれている環境等に注意を払い、業務に従事することが求められるものであり、痴呆性高齢者である利用者が徘徊に出てしまい行方が分からなくなった場合に、当該利用者を発見するために訪問介護員等に必要な措置を講じさせることは、指定訪問介護事業者の義務であって、こうした行為について別に保険給付の対象とすることは困難である。
介護支援専門員の資格を有する者の数については、平成十年度から平成十五年度までの間に約三十万人が介護支援専門員の登録を受けている。一方、介護支援専門員の業務に従事している者の数は、平成十四年十月現在、約八万五千人となっている。政府としては、介護支援専門員の資格を有する者が不足している状況ではないと認識しており、御指摘のように「年一回の資格試験の実施を年間複数回にする」ことは考えていない。
御指摘の「在宅」の介護支援専門員と「施設」の介護支援専門員の報酬については、指定居宅介護支援事業者又は介護保険施設とそれぞれの介護支援専門員との個々の契約で決められるものであり、その水準については政府としてお答えする立場にない。
なお、居宅介護支援の在り方については、社会保障審議会介護保険部会が本年七月三十日に取りまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見」において、「公平・公正の確保及び包括的・継続的マネジメントの強化の観点から」見直しを行うことが必要であるとされており、今後こうした指摘を踏まえ、介護報酬の在り方も含め検討を行っていくこととしている。
指定訪問介護事業者は、指定基準において、指定訪問介護事業所ごとに、常勤の訪問介護員等であって専ら指定訪問介護の職務に従事するもののうち事業の規模に応じて一人以上の者をサービス提供責任者としなければならないとされているところであり、サービス提供責任者の人件費については、その業務内容を勘案し、既に指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年厚生省告示第十九号。以下「居宅サービス算定基準」という。)において、包括的に評価しているところである。
指定訪問介護の費用の額の算定については、居宅サービス算定基準において、「身体介護が中心である場合」、「生活援助が中心である場合」及び「通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合」にサービス内容を分類し費用の額を算定することとしており、指定訪問介護事業者が実際に介護報酬を請求するに当たっては、当該分類に加えて、指定訪問介護を行った時間、訪問介護員等の資格及び人数ごとに分類するとともに、指定訪問介護を開始した時間帯によって「通常の場合」、「夜間又は早朝の場合」及び「深夜の場合」に区分した全体で約六百五十種類に分類されたコードを用いて行っているところである。御指摘のように、指定訪問介護が提供された時間帯に応じて介護報酬を算定することについては、指定訪問介護事業者の請求事務及び給付管理事務がこれまで以上に複雑になることが予想されることから、現時点においては請求方法の見直しを行うことは考えていない。
お尋ねにあるような病院又は診療所に入院している者が一時的に外泊した場合には、「介護報酬に係るQ&Aについて」(平成十五年五月三十日付け厚生労働省老健局老人保健課事務連絡)において、「介護保険施設および医療機関の入所(入院)者が外泊時に利用した居宅サービスについては、外泊時費用の算定の有無にかかわらず、介護保険において算定できない」旨各都道府県介護保険主管部(局)の介護保険主管課(部)あてに通知しているところである。これは、入院期間中に一時的な外泊を行った場合においても、当該入院は継続していると考えることが適当であり、仮に、この間に介護を受けた場合においても、当該介護は、法第七条第六項に規定する居宅における介護とは認められないと考えられるためである。このため、御指摘のように「一時外泊期間でも在宅サービスを受けられるように」することは考えていない。