答弁本文情報
平成十八年一月三十一日受領答弁第二号
内閣衆質一六四第二号
平成十八年一月三十一日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員赤嶺政賢君提出被爆体験者精神影響等調査研究事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員赤嶺政賢君提出被爆体験者精神影響等調査研究事業に関する質問に対する答弁書
一の1、4及び9について
「被爆体験者精神影響等調査研究事業」(以下「本事業」という。)の対象となる者であるかどうかについては、個別具体の事例に即して判断されるものであり、お尋ねについては、長崎県及び長崎市より詳細な報告を受けていないため、お答えすることは困難である。
本事業については、厚生労働省健康局長の私的検討会である「被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会」が平成十六年十二月に取りまとめた「被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会報告書」(以下「報告書」という。)において、本事業については本来の目的に立ち帰って効果的な内容や仕組みとすることが重要である旨の指摘が行われたことを踏まえて、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する特定の精神疾患を有する者に対し、当該精神疾患(これに合併する身体化症状又は心身症がある場合は、当該身体化症状又は心身症を含む。以下「特定の精神疾患」という。)の治療等に係る医療費の支給を行うこと等により、その症状の改善、寛解及び治癒を図るという本来の目的に沿って、より効果的な内容や仕組みとするため、新たな「被爆体験者精神影響等調査研究事業実施要綱」(以下「新実施要綱」という。)を定め、「被爆体験者精神影響等調査研究事業の適正な実施について」(平成十七年四月十三日付け健発第〇四一三〇〇六号厚生労働省健康局長通知)により通知したところである。
御指摘の「追体験」は、被爆体験の記憶が無い者が他者から原爆投下当時の状況等を聞いた体験を意味するものと考えるが、本事業は、直接の被爆体験に起因する不安に着目したものであることから、被爆体験の記憶が無い者は本事業の対象とならないものであり、こうした者をスクリーニング検査により的確に把握することができるよう、新実施要綱の制定に伴いスクリーニング検査の判断基準を変更している。
なお、質問事項及び判断基準の詳細については、事前に明らかにされた場合、適切な検査が実施できなくなるおそれがあることから、公表していない。このため、質問事項及び判断基準の変更内容を具体的に明らかにすることはできない。
スクリーニング検査の結果に関するお尋ねについては、長崎県及び長崎市より詳細な報告を受けていないため、お答えすることは困難である。
また、一の2、3及び8についてで述べたとおり、被爆体験の記憶が無い者は本事業の対象とならない。
本事業は、被爆体験の記憶が無い者は対象とならない。このため、スクリーニング検査において、被爆体験の記憶が無いことを前提とした質問を行うことは考えていない。
御指摘の点については、長崎県及び長崎市において、問い合わせがあった者に対し適切に対応しているものと承知している。
スクリーニング検査の実施に当たっては、意思疎通ができない場合などのやむを得ない場合は、介助者の同席を認め、保健師等が、当該介助者に対して質問を行っても差し支えないこととしている。
御指摘に該当するような具体的な事例は把握しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。
厚生労働省において、長崎県及び長崎市から、本事業の実施状況の報告を受けることとなっており、その際、スクリーニング検査の実施状況を把握する考えであり、スクリーニング検査により被爆体験若しくは精神症状のいずれかを有しない又は両方とも有しないと判断された者から意見を聴取することは考えていない。
スクリーニング検査の判断基準の変更は、報告書を踏まえ、本事業の目的に沿って、より効果的な内容や仕組みとするための見直しの一環として行ったものであり、従前の基準に戻すことは考えていない。
報告書において「対象者を精神科の視点でフォローする仕組みになっていない」との指摘が行われたことを踏まえ、新実施要綱においては、精神科医師が継続的に関与することを通じて本事業の本来の目的の達成を図るため、被爆体験者精神医療受給者証の更新の申請の際に、必ず精神科医師による特定の精神疾患に関する更新診断を実施することとしており、お尋ねのように三年に一回に戻すことは考えていない。
本事業は、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する特定の精神疾患を有する者に対し、当該特定の精神疾患の治療等に係る医療費の支給を行うこと等により、その症状の改善、寛解及び治癒を図ることを本来の目的とするものであり、本事業の本来の目的を明確化し、本事業の対象者の症状の改善等に資する運営を図るために、新実施要綱を制定したものである。
また、本事業は、原子爆弾が投下された際の爆心地から十二キロメートル以内の特定の地域に居た者であって一定の要件を満たした者を対象としているところであるが、同地域については、「「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書」検討報告書」(平成六年十二月)において、「長崎原爆の放射性降下物の残留放射能による健康影響はないと結論付けることができる」とされていることから、本事業の対象者である「被爆体験者」を、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)第一条に規定する被爆者とすることは考えていない。