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答弁本文情報

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平成十八年十二月十五日受領
答弁第二二一号

  内閣衆質一六五第二二一号
  平成十八年十二月十五日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員高井美穂君提出国公立の精神科施設における治療実態に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員高井美穂君提出国公立の精神科施設における治療実態に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘のような内容の判決及び報道があったことは事実であるが、厚生労働省としては、御指摘の裁判における被告医師(以下単に「被告医師」という。)の行為は当該裁判の原告女性(以下単に「原告女性」という。)に対する正当な治療目的のためのものであり、原告女性の意思を尊重しつつ行われた適切な医療行為の一環としてのタッピングであって、飽くまでも医療行為そのものであると考えており、当該判決の内容をすべて認めているわけではない。しかしながら、診察室という当事者しかいない場所での出来事であり、控訴審において第一審の判断を覆すだけの事実の証明が困難であると判断したため控訴の提起を断念したものであり、原告からも控訴が提起されなかったため、平成十八年十一月二十五日に第一審判決が確定している。

二のAについて

 「医学大辞典(第十八版)」(南山堂)では、気道から痰を除去し清浄化を図る方法の一つとして「タッピング」、すなわち、「胸郭の軽打」が掲げられている。「広辞苑(第五版)」(岩波書店)では、「殴る」とは、「(握り拳で)横ざまに力をこめて打つ」又は「強く打つ」ことをいうものとされ、外形的にも「軽打する」行為である「タッピング」とは異なる。また、「叩く」とは、「つづけて打つ」又は「くり返して打つ」ことをいうものとされており、「タッピング」も、「叩く」行為の一つと考えられる。

二のB及びCについて

 二のAについてで述べたとおり、「殴る行為」は医療行為の一環としての「タッピング」と異なるものであり、これを国として「精神科治療の一環」と認定することはなく、また、「適切な医療行為」の一部と考えることはない。

二のDについて

 厚生労働省としては、一についてで述べたとおり、被告医師の行為は医療行為そのものであると考えており、今回の判決を受けて全国の国公立の精神科病院等に対する注意及び指導は行ってはいない。

三について

 御指摘の東京地裁の認定した事実については、厚生労働省としては、被告医師が原告女性の診断名及び治療法等について、自分自身の行った治療の記録の整理を行うとともに、今後、他の医師が治療を行うに当たって、今回のような治療上の混乱が生じることを未然に防ぐため、原告女性のカルテに追記した適切な行為であったと認識している。

四について

 厚生労働省としては、御指摘の「殴る治療」という医療行為が存在することは考えられず、そのような行為の有効性に係る研究は行われていないものと承知している。また、被告医師は主任研究者として厚生労働科学研究を行い、御指摘の「PTSDの指針」である「災害時地域精神保健医療活動ガイドライン」を策定したが、厚生労働科学研究においては、各研究分野における専門家等から構成される評価委員会による評価等により研究者を選定することとしており、被告医師についても研究内容やこれまでの研究者としての実績等が評価されて、厚生労働科学研究を行うなどしているものと承知している。

五について

 厚生労働省においては、御指摘の本年九月及び十月の事件を受けて、「職員の綱紀粛正について」(平成十八年九月二十七日付け医政病発第〇九二七〇〇二号厚生労働省医政局国立病院課長通知)及び「職員の綱紀の粛正及び会計処理における事故防止について」(平成十八年十一月十五日付け医政発第一一一五〇〇三号厚生労働省医政局長通知)を発出し、国立精神・神経センター等の職員の綱紀粛正を図っているところである。
 また、精神医療の現場においては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)に基づき、医師による高度かつ専門的な判断により、患者の人権に配慮した適切な治療や処遇が行われているものと承知しているが、厚生労働省としては、今後とも、適切な精神保健医療の確保に努めてまいりたい。



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