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平成十九年十二月十四日受領
答弁第三〇一号

  内閣衆質一六八第三〇一号
  平成十九年十二月十四日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員前原誠司君提出改正建築基準法施行に伴う建築関連産業の混乱等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員前原誠司君提出改正建築基準法施行に伴う建築関連産業の混乱等に関する質問に対する答弁書



一について

 建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第九十二号。以下「改正法」という。)の施行前においては、改正法の施行に伴い、改正法による改正後の建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号。以下「新建築基準法」という。)第六条第四項及び第十八条第三項に規定する審査並びに新建築基準法第六条の二第一項の規定による確認のための審査(以下「確認審査」と総称する。)において一定の建築物については新建築基準法第六条第五項に規定する構造計算適合性判定(以下「構造計算適合性判定」という。)を行うことが新たに必要となることなどにより確認審査に要する時間が増加することが想定されたため、我が国の経済及び国民生活に支障を生じることがないよう改正法及び関係政省令等の円滑な施行のための準備を進めてきたところである。

二について

 一についてで述べたように、確認審査において一定の建築物については構造計算適合性判定を行うことが新たに必要となったことに加え、建築士、建築主事、新建築基準法第二条第三十三号に規定する特定行政庁(以下単に「特定行政庁」という。)、新建築基準法第七十七条の二十一第一項に規定する指定確認検査機関(以下単に「指定確認検査機関」という。)その他の関係者が、新建築基準法及びこれに基づく関係政省令等による確認審査の実施に習熟していないこと、一部の特定行政庁等において新建築基準法第六条第一項の確認又は同法第六条の二第一項の確認(以下「建築確認」と総称する。)の申請者に過重な負担となる制度の運用が行われたことなどから、結果として、建築確認の件数の減少が生じたものと考えている。

三について

 国土交通省においては、確認審査の円滑な実施のため、改正法の施行前に、特定行政庁、指定確認検査機関等により構成される日本建築行政会議その他の関係団体の協力を得て、建築主事等に対する研修会並びに建築物の設計者及び工事施工者に対する講習会を開催するとともに、本年六月には国土交通省住宅局建築指導課長から都道府県建築主務部長あてに「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律等に関係する構造関係告示の施行について(技術的助言)」(平成十九年六月二十日付け国住指第千三百三十五号。以下「施行通知」という。)を通知するなど改正法及び関係政省令等の内容について周知を図ってきたところである。
 御指摘の本年八月十日付けの通知は、改正法及び関係政省令等の運用の実態を踏まえた建築士、特定行政庁その他の関係者からの意見を勘案し、施行通知について、表現の統一及び新建築基準法に基づく建築物の構造に関する告示の解釈の明確化を図る観点から所要の改正を行ったものである。

四について

 国土交通省においては、改正法の施行に伴い必要となる関係政省令等の制定に当たって、あらかじめ行政手続法(平成五年法律第八十八号)に基づく意見公募手続を実施するとともに、担当者を派遣し、本年五月から六月までの間に全国で延べ約七千二百人の参加を得て建築主事等に対する研修会を二十四回開催し、同年四月から六月までの間に全国で延べ約九千六百人の参加を得て建築物の設計者及び工事施工者に対する講習会を二十三回開催し、これらの機会において関係者からは新建築基準法第十八条の三第一項に規定する確認審査等(以下単に「確認審査等」という。)の手続の細則についての意見があり、その意見については、改正法の施行までに、確認審査等について定める関係政省令等に適切に反映したところである。

五及び六について

 改正法は、いわゆる構造計算書偽装問題の再発を防止し、建築物の安全性の確保を図るため、御指摘の罰則の強化のほか、建築主事及び指定確認検査機関による確認審査においては発見することが困難な構造計算書の問題点を構造計算について専門的な審査を行う第三者機関によって発見するための構造計算適合性判定の制度の導入、確認審査の事項等を明らかにする国土交通大臣による確認審査等に関する指針の策定並びに指定確認検査機関の指定要件の強化、特定行政庁による立入検査制度の導入等による指定確認検査機関に対する監督の強化により確認審査等の適正な実施の確保を図るとともに、階数が三以上である共同住宅の建築工事に係る中間検査の実施により適切な構造を備えた共同住宅の建築の確保を図るものであり、いずれも構造計算書の偽装の防止に寄与するものと考えている。

七について

 御指摘の技術的助言に関する通知については、いずれも、新建築基準法及びこれに基づく関係政省令等による規制を緩和するものではなく、改正法の趣旨を踏まえ、建築主等に過重な負担を強いることのないよう新建築基準法及び関係政省令等の運用に関し、必要な補足を行うために通知したものである。今後とも、新建築基準法及び関係政省令等の円滑な運用を図るため、関係者の意見を踏まえつつ、必要な措置を講じてまいりたい。

八の@及びAについて

 建築確認の申請が行われた新建築基準法第六条第一項第一号から第三号までに掲げる建築物のうち構造計算適合性判定が必要なものの割合及びこれらの建築物について建築確認の申請のあった日から構造計算適合性判定を求めた日までの期間については、把握していない。

八のBについて

 建築確認の申請が行われた建築物及び建築確認を受けた建築物の延べ床面積の合計に関する調査については、現時点では実施する予定はない。

八のCについて

 建築確認の申請が行われた建築物及び建築確認を受けた建築物に関する抽出調査については、今後、必要に応じて実施していくこととしている。

九及び十について

 新建築基準法第二十条第二号イ又は同条第三号イの規定による国土交通大臣の認定を受けたプログラム(以下「大臣認定構造計算プログラム」という。)は、建築物の構造計算の迅速かつ適確な実施に資する重要なものであり、建築基準法施行規則等の一部を改正する省令(平成十九年国土交通省令第六十六号。以下「改正省令」という。)による改正後の建築基準法施行規則(昭和二十五年建設省令第四十号)第一条の三第一項第一号ロ(2)ただし書の規定により、大臣認定構造計算プログラムによる構造計算によって建築物の安全性を確かめた場合には、当該構造計算に係る磁気ディスク等の提出をもって建築確認の申請に当たり提出しなければならない構造計算書等の一部の提出に代えることができることとされているところであるが、現時点では、大臣認定構造計算プログラムは存在しないことから、これらの取扱いが行われない状況となっている。
 大臣認定構造計算プログラムについては、改正法の施行後における各種の会議等において、建築物の設計及び確認審査等の円滑な実施のため、建築士、特定行政庁等からその早期の供給を求める意見があるが、構造計算の過程における不正な入力を防止するための機能を有するものにする必要があること、当該機能について新建築基準法第六十八条の二十六第二項に規定するプログラムの性能に関する評価を受ける必要があることなどにより開発事業者におけるプログラムの開発が遅れているところである。
 現在、開発事業者において開発中のプログラムについては、新建築基準法第七十七条の五十六第二項に規定する指定性能評価機関において評価試験が実施されているところと聞いており、今後当該評価試験が完了し、開発事業者から新建築基準法第二十条第二号イ又は同条第三号イの認定の申請があったときは、当該認定に係る審査を迅速かつ適確に行ってまいりたい。

十一について

 改正省令等の施行により、建築確認の申請書の記載事項及び添付図書が拡充されたことに伴い、一級建築士の業務量及び費用面での負担はその限りにおいて増加しているものと考えられるが、当該拡充された建築確認の申請書の記載事項及び添付図書の大部分は従来から建築主事等が必要に応じてその記載又は提出を求めてきたものであり、これは年間の建築確認の件数に必ずしも影響を及ぼすものではないと考えている。
 また、御指摘の建築士法第二十五条の規定に基づき建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(昭和五十四年建設省告示第千二百六号)については、近年の建築士の業務実態の変化に伴い、今後、国土交通省が実施することとしている建築士の業務量の状況に関する実態調査の結果等を踏まえ、国民の建築に関する費用面の負担を勘案しつつ、必要な見直しを行う予定である。

十二について

 建築士法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第百十四号。以下「改正建築士法」という。)の施行に伴い、構造設計一級建築士(改正建築士法による改正後の建築士法(昭和二十五年法律第二百二号。以下「新建築士法」という。)第十条の二第四項に規定する構造設計一級建築士をいう。以下同じ。)以外の一級建築士は、一定の建築物の構造設計(新建築士法第二条第六項に規定する構造設計をいう。以下同じ。)を行った場合においては、構造設計一級建築士に当該構造設計に係る建築物が新建築士法第二十条の二第二項に規定する構造関係規定に適合するかどうかの確認を求めなければならないことになるため、構造設計を担当する建築士の業務量はその限りにおいて増加するものと考えられるが、これにより建築士の構造設計に関する業務環境が悪化しないよう、所要の人数の構造設計一級建築士を確保するため、関係団体に対して構造設計に関する研修会の開催を要請するなど改正建築士法の円滑な施行のための準備を進めてまいりたい。

十三について

 月例経済報告の作成に当たり、改正法の施行の影響については、国土交通省が毎月公表している建築着工統計その他各種の統計、企業、関係省庁その他関係者からのヒアリング結果等を分析し、検討した上で総合的に判断を行っているところであり、改正法の施行後の本年七月時点の状況が明らかになった同年九月の月例経済報告においても既に言及しているところである。
 その後、同年十月の月例経済報告においては、改正法の施行の影響もあり、またその影響が当面続くと見込まれるようになったことなどから、「住宅建設は、このところ減少している」との判断を明らかにし、さらに、同年十一月の月例経済報告においては、同年の第三四半期の住宅投資の減少がこの期間の我が国の経済成長率を大きく押し下げたことなどから、「住宅建設は、このところ減少している」との認識を我が国経済全体の基調判断として示したところである。

十四について

 改正法の施行に伴う本年第三四半期における住宅投資の減少は、我が国の国内総生産の押し下げ要因になっており、また、現在生じている住宅着工戸数等の減少は、当面の住宅投資等の減少につながることから、引き続き我が国の国内総生産の押し下げ要因になると考えられる。しかしながら、確認審査等が円滑に行われることとなることに伴い、住宅着工戸数、住宅投資等も徐々に回復していくと考えられるが、住宅投資等を含めた平成十九年度及び二十年度の我が国経済の見通しについては、今月中に公表する予定の「平成二十年度政府経済見通しと経済財政運営の基本的態度」の中でお示しすることとしたい。
 御質問の関係省庁が連携した取組については、本年十月九日から、中小企業庁において、政府系中小企業金融機関、商工会議所等全国九百四十三か所に特別相談窓口を設置し、関連中小企業者の経営上の相談に応じるとともに、政府系中小企業金融機関による経営環境変化対応資金の貸付け(セーフティネット貸付け)及び既往債務の返済条件の緩和の措置を講じているところであり、さらに、同年十一月二十七日には、信用保証協会によるセーフティネット保証制度の対象業種の追加指定を行ったところである。また、同年十月十六日に、金融庁において、全国銀行協会等の金融関係団体を通じ、建築確認及び建築着工の減少の影響を受ける中小企業に対する金融の円滑化について周知徹底を図ったところである。
 国土交通省においては、確認審査等の円滑な実施に係る措置及び関連中小企業の資金繰りに係る対策に関する情報の提供を図るため、経済産業省及び農林水産省の協力を得て、関連事業者に対する説明会を全都道府県において速やかに実施することとしている。
 今後とも、関係省庁の連携による取組を進めてまいりたい。



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