衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十年二月八日受領
答弁第一六号

  内閣衆質一六九第一六号
  平成二十年二月八日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員中川正春君提出租税特別措置の政策効果等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員中川正春君提出租税特別措置の政策効果等に関する質問に対する答弁書



一について

 平成二十年一月二十三日に第百六十九回国会に提出した所得税法等の一部を改正する法律案(以下「所得税法等一部改正法案」という。)において対象とされている租税特別措置の項目ごとの政策評価について、現時点で把握しているものは、次のとおりである。
 所得税法等一部改正法案による改正後の租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号。以下「新租税特別措置法」という。)第四条の四に規定する勤労者財産形成貯蓄契約に基づく生命保険等の差益等の課税の特例については、勤労者の計画的な財産形成を促進するために必要である。また、本特別措置は、勤労者の生活の安定に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第六条、第四十一条の十三及び第六十七条の十六に規定する民間国外債等の利子・発行差金の課税の特例については、我が国企業の資金調達の多様化及び効率化並びに円の国際化を図るために必要であり、また、その効果があると考える。平成十八年度における我が国企業の民間国外債による資金調達額は、約四兆五千億円(うち円建て約三兆四千億円)となっている。
 新租税特別措置法第七条及び第六十七条の十一に規定する特別国際金融取引勘定において経理された預金等の利子の非課税については、我が国金融・資本市場の活性化及び国際化の推進のために必要であり、また、その効果があると考える。当該特別国際金融取引勘定において経理された預金等の負債残高は、平成十九年九月末において約二十三兆円となっている。
 新租税特別措置法第八条の四に規定する上場株式等に係る配当所得の課税の特例、新租税特別措置法第八条の五に規定する確定申告を要しない配当所得、新租税特別措置法第九条の三に規定する上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例、新租税特別措置法第九条の三の二に規定する上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例、新租税特別措置法第三十七条の十に規定する株式等に係る譲渡所得等の課税の特例、租税特別措置法第三十七条の十一に規定する上場株式等を譲渡した場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例、新租税特別措置法第三十七条の十一の三に規定する特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例、新租税特別措置法第三十七条の十一の四に規定する特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等に対する源泉徴収等の特例、新租税特別措置法第三十七条の十一の六に規定する源泉徴収選択口座内配当等に係る所得計算及び源泉徴収等の特例及び新租税特別措置法第三十七条の十二の二に規定する上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除については、「貯蓄から投資へ」の流れを推進する等の観点から、金融所得課税の一体化に向けた取組を進めるとともに、個人投資家がリスク資産である株式等に投資しやすい環境の整備を図るために必要である。また、これらの特別措置は、我が国金融・資本市場の活性化に資する効果があると考えており、個人金融資産に占める株式・投資信託の構成比は、平成十四年度末の五・八パーセントから平成十八年度末には十一・二パーセントへと増加している。このうち、租税特別措置法第三十七条の十一に規定する上場株式等を譲渡した場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例については、新制度への移行に伴い廃止することとしている。
 新租税特別措置法第九条に規定する配当控除の特例については、様々な金融商品から生ずる配当所得について、所得税と法人税の調整措置を適用するに当たり、課税の中立性を確保するために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第十条、第四十二条の四及び第六十八条の九に規定する試験研究を行った場合の特別税額控除については、民間の研究開発投資を促進するために必要である。また、本特別措置は、研究開発投資を通じて技術革新を加速させることにより、持続的な経済成長の実現に資する効果があると考える。総務省科学技術研究調査によれば、我が国の企業等の研究費は、本特別措置を大幅に拡充する前の平成十四年度の十一兆五千七百六十八億円から平成十八年度には十三兆三千二百七十四億円へと一兆七千五百六億円増加している。また、平成十九年十一月に開催された税制調査会に提出した資料において、本特別措置が我が国の国内総生産を十年間累計で約七・三兆円押し上げると試算している。なお、民間の研究開発投資の更なる促進を図る観点から、所得税法等一部改正法案において、試験研究費の総額に係る特別税額控除又は中小企業技術基盤強化税制とは別に、試験研究費の増加額に係る特別税額控除又は売上高に占める試験研究費の割合が一定の水準を超える試験研究費に係る特別税額控除を選択適用できる制度を創設することとしている。
 新租税特別措置法第十条の二、第四十二条の五及び第六十八条の十に規定するエネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除については、エネルギー有効利用製造設備等の導入を促進するために必要である。また、本特別措置は、エネルギー安定供給の確保及び地球温暖化問題への対応に資する効果があると考える。なお、所得税法等一部改正法案において、二酸化炭素排出量の増加が著しい民生業務部門の省エネルギー対策を強化する観点から省エネビルシステムを対象に追加することとしている。あわせて、支援の重点化を図る観点から、普及促進が図られた設備等に対する支援は廃止することとしている。
 新租税特別措置法第十条の三、第四十二条の六及び第六十八条の十一に規定する中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除については、中小企業者等の幅広い機械装置等を対象とした設備投資を促進するために必要である。また、本特別措置は、中小企業者等の生産性を向上させ、成長力の底上げを図る効果があると考える。平成十八年八月から九月にかけて中小企業庁の委託により株式会社帝国データバンクが実施したアンケート調査によれば、本特別措置の存在を知る中小企業者の約二割が利用したことがあると回答しており、その約六割が設備投資資金を確保できたことを効果として挙げている。
 新租税特別措置法第十条の四、第四十二条の七及び第六十八条の十二に規定する事業基盤強化設備を取得した場合等の特別償却又は特別税額控除については、中小企業者等の事業基盤の強化等のために必要であり、また、その効果があると考える。なお、所得税法等一部改正法案において、第百六十九回国会への提出を予定している中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律案に規定する認定農商工等連携事業計画に従って農商工等連携事業を行う中小企業者が取得等をした事業基盤強化設備を対象に追加することとしている。また、支援の重点化を図る観点から、中小企業者の新たな事業活動の促進に関する法律(平成十一年法律第十八号)に規定する認定異分野連携新事業分野開拓計画に係る措置は廃止することとしている。
 新租税特別措置法第十条の六、第四十二条の十一及び第六十八条の十五に規定する情報基盤強化設備等を取得した場合の特別償却又は特別税額控除については、我が国企業のIT資本投入の拡大、IT投資効率の向上及び情報セキュリティの強化を図るために必要である。また、本特別措置は、これらを通じて企業の生産性の向上を加速化する効果があると考える。本特別措置の創設後、企業のIT投資は、平成十七年度の約二十三・三兆円から平成十八年度の約二十四・三兆円に着実に増加しており、本特別措置の対象設備についても減収額の約一・四倍の投資増加効果があると試算されている。また、組織全体で統一的な情報処理システムの連携を実現している企業の割合は、平成十七年度の約十六パーセントから平成十八年度の約二十二パーセントに、企業及び産業横断的に統一的な情報処理システムの連携を実現している企業の割合は、平成十七年度の約一パーセントから平成十八年度の約四パーセントに、それぞれ増加したと試算されている。なお、支援の重点化を図る観点から、所得税法等一部改正法案において、大規模法人については本特別措置の適用対象となる取得価額の合計額に上限額を設定することとしている。あわせて、部門間及び企業間で分断されている情報システムを連携させるためのソフトウェアを対象に追加するとともに、中小企業者に係る投資下限額を大幅に引き下げることとしている。
 租税特別措置法第十条の七、第四十二条の十二及び第六十八条の十五の二に規定する教育訓練費の額が増加した場合の特別税額控除については、企業等の人材投資を加速するために必要である。また、本特別措置は、人材投資によって一人一人の生産性を向上させ、人口減少下においても我が国経済・産業の競争力・成長力を強化する効果があると考える。平成十七年から平成十九年までにおいて経済産業省の委託により三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が実施したアンケート調査によれば、本特別措置が減税額の約一・三一倍から約一・四七倍の教育訓練費の増額を行う誘因となるとしている。なお、特に中小企業の生産性向上を促進する観点から、所得税法等一部改正法案において、厳しい経営状況により教育訓練費の計画的な増加が困難な中小企業が利用しやすい仕組みに改めることとしている。また、教育訓練費が増加傾向に転換した大企業については、適用期限の到来をもって支援を廃止することとしている。
 新租税特別措置法第十一条、第四十三条及び第六十八条の十六に規定する公害防止用設備の特別償却については、産業廃棄物処理用設備等の一般公害防止用設備の導入促進を図るために必要である。また、本特別措置は、大気等の環境の改善に資する効果があると考える。なお、支援の重点化を図る観点から、普及促進が図られた設備に対する支援は廃止することとしている。
 新租税特別措置法第十一条の二、第四十四条及び第六十八条の十九に規定する地震防災対策用資産の特別償却における耐震改修工事に係る措置については、大規模地震による被害の防止が喫緊の課題となっている中、初期投資の軽減により事業用建築物の耐震改修を促進するために必要である。また、本特別措置は、国民生活の安全、安心の確保に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第十一条の四、第四十四条の四及び第六十八条の二十三に規定する特定電気通信設備等の特別償却については、全国でブロードバンド・サービスを利用可能とし、また、地上デジタル放送への対応を着実に進めるためには、今後、民間事業者による投資効率の相対的に低い地域(離島、過疎地域等)への投資が不可欠であり、民間事業者に対する投資インセンティブの付与のために必要である。また、本特別措置は、地域間の情報通信格差の是正に寄与する効果があると考えている。総務省の推計によれば、情報通信の基盤整備のうち、ADSLについては、平成十六年度末時点でサービスエリアの世帯カバー率が約九十三パーセントであったが、平成十九年九月末時点で約九十五パーセントに増加し、光ファイバ(FTTH)については、平成十六年度末時点でサービスエリアの世帯カバー率が約七十二パーセントであったが、平成十九年九月末時点で、約八十五パーセントに増加している。ケーブルテレビ施設においては、幹線路に光ファイバを導入している施設の割合は、平成十六年度末時点で六十八・九パーセントであったが、平成十八年度末時点で七十七・一パーセントに増加し、幹線路全体に占める光ファイバの割合は、平成十六年度末時点で三十・一パーセントであったが、平成十八年度末時点で三十九・七パーセントに増加している。
 新租税特別措置法第十一条の五、第四十四条の二及び第六十八条の二十に規定する集積区域における集積産業用資産の特別償却については、地域経済の自立的発展の基盤及び我が国産業の競争力の強化を図るために必要であり、また、その効果があると考える。なお、地域を支える農林水産業と商工業の連携を促進し、地域の活力を引き出す事業活動を行う事業者の取組を支援する観点から、農林水産業の活性化に資する業種を対象に追加等することとしている。
 新租税特別措置法第十一条の六、第四十四条の六及び第六十八条の二十六に規定する資源再生化設備等の特別償却については、食品循環資源再生利用設備、木質固形燃料製造設備、建設混合廃棄物選別装置等の資源再生化設備等の導入促進を図るために必要である。また、本特別措置は、資源の有効な利用の確保や廃棄物の排出抑制に資する効果があると考える。なお、支援の重点化を図る観点から、普及促進が図られた設備に対する支援は廃止することとしている。
 新租税特別措置法第十三条、第四十六条の二及び第六十八条の三十一に規定する公共交通機関に係る障害者対応設備等の特別償却については、平成二十二年までに達成すべき目標(一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上の鉄道駅の段差解消率については原則百パーセント、ノンステップバスの導入率については約三十パーセント、バリアフリー対応型航空機の導入率については約六十五パーセント等)に向け、公共交通事業者にとって費用がかさむ一方で直接収益に結び付かない交通バリアフリー設備に対する投資の優先順位を高め、早期の施設整備を促すために必要である。また、本特別措置は、交通バリアフリー設備の整備が着実に進むことで、高齢者、障害者等を含めた公共交通機関を利用する者の移動の円滑化に資する効果があると考えており、平成十八年度末において、鉄道駅の段差解消率が六十三パーセント、ノンステップバスの導入率が十八パーセント、バリアフリー対応型航空機の導入率が五十四パーセントとなっている。
 新租税特別措置法第十三条の二、第四十六条の三及び第六十八条の三十二に規定する支援事業所取引金額が増加した場合の三年以内取得資産の割増償却については、障害者就労支援事業所への発注を行う企業等に対する税制上の優遇措置を創設することにより、障害者就労支援事業所への発注を増加させ、障害者の就労支援を強化するために必要である。また、本特別措置は、障害者の働く場の確保や工賃・賃金水準の向上につながり、障害者の自立の支援に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第十四条、第四十七条及び第六十八条の三十四に規定する優良賃貸住宅の割増償却における中心市街地優良賃貸住宅に係る措置については、初期投資の軽減により中心市街地における優良な賃貸住宅の供給を促進するために必要である。また、本特別措置は、高齢者等にとって利便性の高い街なか居住を推進し、中心市街地の活性化に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第二十条、第五十五条の五及び第六十八条の四十四に規定する金属鉱業等鉱害防止準備金については、汚染者負担の原則に基づき、事業者が鉱害防止積立金を積み立て、鉱山の閉山後においても収益の生じない鉱害防止事業を着実に実施するために必要である。また、本特別措置は、平成十八年度において十一社の企業が鉱害防止準備金を積み立てているなど、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第二十条の三、第五十五条の七及び第六十八条の四十六に規定する特定廃棄物最終処分場に係る特定災害防止準備金制度の特例については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)に基づき、中小企業者が多く資本力が脆弱な廃棄物最終処分場設置者に義務付けている維持管理積立金の着実かつ円滑な積立てを確保し、廃棄物最終処分場の長期的な維持管理を適正に行うために必要である。また、本特別措置は、埋立処分事業等による収益がなくなる埋立て終了後の廃棄物最終処分場における環境汚染を防止し、生活環境を保全する効果があると考える。
 新租税特別措置法第二十五条、第六十七条の三及び第六十八条の百一に規定する肉用牛の売却による農業所得の課税の特例については、肉用牛生産者の経営安定を図るために必要である。また、本特別措置は、我が国における肉用牛飼養頭数の維持や肉用牛生産者の経営規模の拡大に寄与し、消費者への国産牛肉の安定供給に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第二十六条、第六十七条及び第六十八条の九十九に規定する中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)の規定等に基づく医療支援給付等(以下「医療支援給付等」という。)に係る社会保険診療報酬の所得計算の特例については、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に基づく医療扶助等(以下「医療扶助等」という。)に代えて行われる医療支援給付等についても医療扶助等と同様に本特別措置の対象とすることによって、医療支援給付等の円滑な実施を図るために必要である。また、本特別措置は、中国残留邦人等の円滑な自立の支援に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第二十八条の二、第六十七条の五及び第六十八条の百二の二に規定する中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、三十万円未満の減価償却資産の取得価額の全額損金算入を認めるものであり、納税の事務負担が相対的に重い中小企業者等の負担の軽減を図るために必要である。また、本特別措置は、中小企業者等の事務処理の効率化に資する効果があると考えており、平成十八年八月から九月にかけて中小企業庁の委託により株式会社帝国データバンクが実施したアンケート調査によれば、本特別措置の存在を知る中小企業者の約五割が利用したことがあると回答しており、その七割超が電子計算機等のIT関連機器を取得できたことを効果として挙げている。
 新租税特別措置法第二十九条に規定する給与所得者等が住宅資金の貸付け等を受けた場合の課税の特例については、勤務先からの借入金等を活用して住宅を取得する勤労者の資金融通を円滑にし、持家取得の促進による居住水準の向上を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 租税特別措置法第三十七条の十四に規定する特定上場株式等に係る譲渡所得等の非課税については、創設当時の経済情勢や株式市場の動向等を踏まえ、個人投資家の証券市場への参加と株式の保有を促進する観点から、緊急かつ異例の措置として講じられていたところであるが、適用期限の到来をもって廃止することとしている。
 新租税特別措置法第四十条に規定する国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税については、公益を目的とする事業を行う法人が行う事業の重要性にかんがみ、個人による財産の寄附を促進するために必要である。また、本特別措置は、我が国の寄附文化を醸成し、民が担う公益活動を促進する効果があると考える。
 新租税特別措置法第四十一条の三の二に規定する特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例における省エネ改修に係る措置については、省エネ性能の向上が進んでいない既存住宅の省エネ改修を促進するために必要である。また、本特別措置は、家庭部門における二酸化炭素排出量の削減を通じ、地球温暖化対策の推進に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第四十一条の十四に規定する先物取引に係る雑所得等の課税の特例については、公正な価格形成及び価格変動のリスクヘッジの場としての機能を十分に発揮できる流動性に富んだ先物市場の形成並びに金融所得課税の一体化に向けた取組を進めるために必要である。また、本特別措置は、個人投資家がよりリスク資産に投資しやすい環境が整備されることを通じて、我が国金融・資本市場の活性化に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第四十一条の十五の二に規定する先物取引の差金等決済に係る支払調書の特例については、適正な課税を確保しつつ、支払調書の提出義務者に対し、当該支払調書の提出時期に柔軟性を持たせるために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第四十一条の十九に規定する特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例については、将来の我が国経済を支えるベンチャー企業の育成を支援する観点から、起業期のベンチャー企業に対する資金を広く呼び込むために必要である。また、本特別措置は、ベンチャー企業が創業・発展し、地域の活性化や雇用創出、日本経済のイノベーションに資する効果があると考える。ベンチャー企業への投資額については、いわゆるエンジェル税制が創設された平成九年度の約七千九百万円から平成十七年度の約二十四億七千六百万円に着実な増加が図られたところであるが、所得税法等一部改正法案において、投資リスクが特に大きい起業期のベンチャー企業への出資についてインセンティブを強化するため、寄附金控除を適用できる制度を創設することとしている。また、租税特別措置法第三十七条の十三の三に規定する特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例は、支援の重点化を図る観点から廃止することとしている。
 新租税特別措置法第四十二条の二及び第六十七条の十六に規定する外国金融機関等の債券現先取引に係る利子の課税の特例については、我が国国債市場等の流動性及び効率性の向上並びに円の国際化を図るために必要であり、また、その効果があると考える。なお、平成十九年九月末における非居住者等による債券現先取引の買残高は、約十一兆円である。
 新租税特別措置法第五十五条及び第六十八条の四十三に規定する海外投資等損失準備金については、諸外国に比べ経営基盤の脆弱な我が国の資源開発企業が行う探鉱開発投資に対するリスク軽減を図るために必要である。また、本特別措置は、自主開発比率の向上等による我が国の資源エネルギーの安定供給の確保や植林事業の促進等による地球温暖化問題への対応に資する効果があると考えており、探鉱開発プロジェクトへの投資について、平成十七年度は六十四件、平成十八年度は九十四件を認定しているところである。
 新租税特別措置法第六十一条の四及び第六十八条の六十六に規定する交際費等の損金不算入については、企業の濫費の支出を抑制する等のために必要である。また、中小企業が一定金額まで交際費等の損金算入ができる措置については、その厳しい経営環境に配慮するために必要であり、また、その効果があると考える。国税庁が行った平成十七年度の会社標本調査によると、全法人の交際費等の支出額の合計額に占める大法人等の交際費等の支出額の割合は約三十五パーセントであるのに対し、全法人の損金不算入となった交際費等の額の合計額に占める大法人等の交際費等の支出額の割合は約六十八パーセントとなっている。
 新租税特別措置法第六十二条及び第六十八条の六十七に規定する使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例については、企業が税務当局に対し相手先の氏名等を秘匿するような支出は、違法又は不当な支出につながりやすく、それがひいては公正な取引を阻害することにもなりかねないため、そのような支出を極力抑制するために必要であり、また、その効果があると考える。過去十年間の本特別措置の適用状況については、平成八年度は適用法人数が三千五百七十法人、適用税額が約百五十九億円であったが、平成十七年度は適用法人数が千六百六十九法人、適用税額が約九十億円とそれぞれ減少している。
 租税特別措置法第六十六条の十及び第六十八条の九十四に規定する鉱工業技術研究組合等の所得計算の特例のうち、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成十年法律第五十九号)に係る措置については、製造過程の管理の高度化に関する基準作りを支援する目的から設けられていたところであるが、今後の適用が見込まれないことから、同法の見直しと併せて廃止することとしている。
 新租税特別措置法第六十六条の十一の二及び第六十八条の九十六に規定する認定特定非営利活動法人に対する寄附金の損金算入等の特例については、特定非営利活動法人の財政基盤を強化する観点から、同法人に対する市民や企業からの寄附を促す環境整備を図るために必要である。また、本特別措置は、多くの特定非営利活動法人によって活用されることにより、市民が行う自由な社会貢献活動を促進し、公益の増進に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第六十六条の十三及び第六十八条の九十八に規定する欠損金の繰戻しによる還付の不適用については、我が国の厳しい財政事情等にかんがみ、欠損金の繰戻しによる還付措置の適用を停止しているものであるが、事業基盤が脆弱である創業間もない中小企業者については、当該繰戻しによる還付の不適用に対する適用除外措置を設けている。当該適用除外措置については、これらの中小企業者の資金繰りの円滑化に資するものであり、新産業・新事業の創出を通じた経済の活性化を図るために必要である。また、本特別措置の効果について平成十八年八月から九月にかけて中小企業庁の委託により株式会社帝国データバンクが実施したアンケート調査によれば、当該措置の存在を知る中小企業者の約二割が利用したことがあると回答しており、その約八割が運転資金や設備資金の確保等により資金繰りの円滑化に効果があったとしている。
 新租税特別措置法第六十七条の十四及び第六十八条の百六に規定する特定目的会社に係る課税の特例、新租税特別措置法第六十七条の十五及び第六十八条の百七に規定する投資法人に係る課税の特例、新租税特別措置法第六十八条の三の二及び第六十八条の百十に規定する特定目的信託に係る受託法人の課税の特例並びに新租税特別措置法第六十八条の三の三及び第六十八条の百十一に規定する特定投資信託に係る受託法人の課税の特例については、不動産証券化市場を育成し、優良な都市ストックの形成等を促進するとともに、我が国金融・資本市場の活性化を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 租税特別措置法第六十八条の二及び第六十八条の百九に規定する経営革新計画を実施する中小企業者に対する特定同族会社の特別税率の不適用については、当該中小企業者の自己資本の充実を促進する観点から設けられていたところであるが、所得税法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第六号)により、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第六十七条に規定する特定同族会社の特別税率措置の対象から資本金等の額が一億円以下の特定同族会社が除外されたことにより、本特別措置の効果が限定的となったことから、廃止することとしている。
 新租税特別措置法第六十八条の二第一項に規定する農林中央金庫の合併等に係る課税の特例につき所得税法等一部改正法案においてその対象を追加することについては、漁業協同組合同士の合併について組合の事業規模のいかんにかかわらず円滑に行うことができるようにするために必要である。また、本特別措置は、漁協系統の組織再編を促進し、漁業協同組合の経営基盤を安定させる効果があると考える。
 新租税特別措置法第六十八条の二第二項に規定する共済事業を行う消費生活協同組合又は消費生活協同組合連合会が共済事業を分離した場合における特例については、消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律(平成十九年法律第四十七号)の施行によって一定の共済事業と他の事業との兼業が禁止されることを受け、当該兼業の解消を円滑に進めるために必要である。また、本特別措置は、共済事業の健全性の確保を通じ、契約者保護に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第六十八条の四に規定する退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止については、企業年金等の厳しい財政状況や十分に改善しない市場の運用環境等にかんがみ、企業年金等の財政基盤の安定を図るために必要である。また、本特別措置は、企業等の従業員等の老後の所得保障に支障が及ぶ事態を避ける効果があると考える。
 新租税特別措置法第七十条に規定する国等に対して相続財産を贈与した場合等の非課税等については、公益を目的とする事業を行う法人が行う事業の重要性にかんがみ、個人による相続財産の寄附を促進するために必要である。また、本特別措置は、我が国の寄附文化を醸成し、民が担う公益活動を促進する効果があると考える。
 新租税特別措置法第七十条の三及び第七十条の三の二に規定する住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例については、若年世帯の自己資金の充実による住宅取得等の促進を図るために必要である。また、本特別措置は、世代間の資産の有効活用による住宅投資の活性化を通じて居住水準の向上に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第七十二条に規定する土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減については、個人が住宅を購入する際の負担の軽減を始めとした土地の取得コスト等の軽減により、土地取引の活性化を促進し、土地の有効利用を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第七十五条に規定するマンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等の免税については、老朽化したマンションの増加に対応するため、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(平成十四年法律第七十八号)に基づく権利変換を行うことにより必要となる登記に伴う負担を軽減し、居住環境の良好なマンションへの建替えの促進を図るために必要である。また、本特別措置は、耐震性の確保も含め、良質な住宅ストックの形成に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第七十六条第一項に規定する農地保有合理化法人が農用地を取得した場合等の所有権の移転登記の税率の軽減については、農地保有合理化法人による農用地の取得及び当該農用地の担い手への円滑な集積のために必要である。また、本特別措置は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、そのような農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造の確立に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第七十八条の二に規定する漁業協同組合が漁業協同組合連合会から権利義務の承継により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減については、一県一漁協を実現した漁業協同組合が漁業協同組合連合会の不動産又は船舶の権利を円滑かつ効率的に承継するために必要である。また、本特別措置は、漁協系統の組織再編を促進し、漁業協同組合の経営基盤を安定させる効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十条第一項に規定する認定事業再構築計画等に基づき行う登記の税率の軽減については、産業活力再生特別措置法(平成十一年法律第百三十一号)により計画の認定を受けた事業者が経営資源の有効活用を目的として事業再構築等を行う場合において、事業再構築等に係る費用を軽減するために必要である。また、本特別措置は、平成十七年度に五十七件、平成十八年度に二十六件の認定計画において活用されている等、事業再構築等を通じた事業再生・事業再編の促進により、我が国産業の生産性の向上に効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十条第二項に規定する預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第百二条第一項第一号に掲げる第一号措置を行うべき旨の同法第百五条第四項の内閣総理大臣の決定に基づく預金保険機構による株式の引受け等に係る登記の税率の軽減については、資本増強行の経営の早期健全化及び投入した公的資金の有効活用に資するために必要であり、また、その効果があると考える。
 租税特別措置法第八十条の二に規定する認定経営基盤強化計画に基づき行う登記の税率の軽減については、金融機関が合併等の組織再編成に伴うコストを軽減するための方策を公的資金増強と併せて講ずることにより、投入した公的資金の有効活用に資するため必要であることから設けられていたところであるが、本特別措置に係る認定経営基盤強化計画等の提出が平成二十年三月三十一日までとされていることから廃止することとしている。
 新租税特別措置法第八十条の二に規定する農林中央金庫等が行う組織再編成によってする登記の税率の軽減については、貯金者保護の観点から、農協系統金融機関の安定的な経営基盤を確立するために必要な組織再編を早期かつ円滑に実現するために必要であり、また、その効果があると考える。
 租税特別措置法第八十条の四に規定する農業信用基金協会が保証事業を譲渡した場合の抵当権の移転登記の税率の軽減については、農業者のための保証制度を安定的に継続させるため、必要な農業信用基金協会の事業譲渡の円滑な実施を図る目的から設けられていたところであるが、当面、農業信用基金協会の事業譲渡が発生する状況にはないことから、廃止することとしている。
 新租税特別措置法第八十二条に規定する関西国際空港株式会社等の登記の免税については、国が出資等を行うことにより整備が進められている関西国際空港が海上空港であることに起因して一兆円を超える有利子債務を抱えていること等を踏まえ、同空港二期事業の円滑な推進を確保するために必要である。また、本特別措置は、同空港の整備促進と関西国際空港株式会社の経営の安定化を通じて、国際拠点空港としての競争力の強化に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十二条の二に規定する国際船舶の所有権の保存登記等の税率の軽減については、日本船舶が極端に減少していることから、安定的な国際海上輸送を確保する上で重要な国際船舶を整備するために必要である。また、本特別措置は、国際海上輸送の確保、特に、我が国の経済及び国民生活を支えるために必要不可欠なエネルギー資源の安定輸送の確保に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十三条の三に規定する特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記等の税率の軽減については、不動産証券化市場を育成し、優良な都市ストックの形成等を促進するとともに、我が国金融・資本市場の活性化を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十七条に規定する清酒等に係る酒税の税率の特例については、中小の清酒等の製造業者を取り巻く環境が厳しい状況にあることから、その支援を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十七条の五に規定する入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例及び新租税特別措置法第八十八条の二に規定する入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例については、通関時における納税手続の簡素化を図る観点から必要である。また、本特別措置は、入国者及び執行当局双方にとって簡便な納税手続を実現し、円滑な通関に資する効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十七条の六に規定するビールに係る酒税の税率の特例については、中小のビール製造業者は多大な初期投資を要すること等から、その支援を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十七条の八に規定するみなし製造の規定の適用除外の特例については、地域からの要望を踏まえ、一定の営業場における小規模な酒類の製造販売を容易にするために必要である。また、本特別措置は、地域の特産物の活用等により、地域を活性化する効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十八条の七に規定するバイオエタノール等揮発油に係る課税標準の特例については、京都議定書目標達成計画において、原油換算五十万キロリットルのバイオ燃料を平成二十二年度までに導入することを目標に掲げていることを踏まえ、バイオ燃料を混合したガソリンの普及促進を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十九条に規定する揮発油税及び地方道路税の税率の特例並びに新租税特別措置法第九十条の十一に規定する自動車重量税率の特例については、平成十九年十二月七日に政府・与党で合意した「道路特定財源の見直しについて」に沿って、真に必要な道路整備の計画的な推進や既存高速道路ネットワークの有効活用・機能強化等の措置を着実に進めるとともに、厳しい財政事情や環境面への影響にも配慮する観点から必要である。また、本特別措置は、道路の維持・補修による安全・安心の確保、救急病院への交通の利便性の確保、都市部の渋滞対策、開かずの踏切の解消等に寄与する効果があると考える。
 新租税特別措置法第八十九条の三に規定する移出に係る揮発油の特定用途免税及び新租税特別措置法第八十九条の四に規定する引取りに係る揮発油の特定用途免税については、ゴム製品、電気絶縁塗料及び接着剤に係る製造事業者に中小企業が多く、当該製造事業者の経営の安定及び製品の安定的な供給の確保を図るために必要であり、また、その効果があると考える。
 新租税特別措置法第九十条の四に規定する引取りに係る石油製品等の免税、新租税特別措置法第九十条の五に規定する石油化学製品の原料用特定揮発油等に係る石油石炭税の還付及び新租税特別措置法第九十条の六に規定する特定の重油を農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付については、自動車、電機・電子等の広汎な産業に原材料として供給され、経済・産業及び国民生活を支える重要な基礎素材である石油化学製品の低廉かつ安定的な供給、石油化学産業の国際競争力の確保及び農林漁業の経営の安定の重要性にかんがみ必要であり、また、その効果があると考える。
 所得税法等一部改正法案による改正後の所得税法等の一部を改正する法律(平成十七年法律第二十一号)附則第五十五条第三項に規定する農地等に係る贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている者が特例適用農地等のすべてについて一定の農業生産法人に使用貸借による権利の設定をした場合において贈与税の納税猶予の特例を継続する特例については、当該特例の適用を受けている者が行う農業経営の法人化を推進するために必要である。また、本特別措置は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、そのような農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造の確立に資する効果があると考える。

二について

 所得税法等一部改正法案において対象とされている租税特別措置の項目と同一の目的及び対象要件で交付される補助金等(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二条第一項に規定する補助金等をいう。)はない。



経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.