答弁本文情報
平成二十年六月六日受領答弁第四三九号
内閣衆質一六九第四三九号
平成二十年六月六日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員赤嶺政賢君提出有明海の浄化と漁業環境の改善に関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員赤嶺政賢君提出有明海の浄化と漁業環境の改善に関する第三回質問に対する答弁書
一の1について
諫早湾におけるタイラギ漁業の不漁については、タイラギ資源の減少によるものと考えているが、有明海・八代海総合調査評価委員会が取りまとめた委員会報告においても、長崎県海域におけるタイラギ資源の減少要因、大量へい死の発生メカニズムについては明らかにされておらず、今後解明していくべき課題とされたものである。現在、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所が、関係県と連携して、有明海におけるタイラギ資源の減少要因の解明に向け、タイラギの大量へい死についての環境要因及び生理要因の関連に関する調査を行っているところである。
農林水産省九州農政局が諫早湾内において行っている底質の泥分の長期モニタリングは、平成元年から継続して同一の調査地点において海底面から一定の深さまでの底泥を採取し粒度組成を求めているものであり、底質の経年的な変化の傾向を把握できる調査であると考えている。
前回答弁書(平成二十年四月二十五日内閣衆質一六九第三〇三号。以下「前回答弁書」という。)二の1についてでお答えしたとおり、長崎県からは、平成十九年八月二十二日に漁業者から諫早湾内の小長井町地先におけるアサリのへい死情報が寄せられ、同月二十六日に一斉調査を実施し、その時点でのアサリのへい死状況を確認したと聞いている。
前々回答弁書(平成二十年三月二十五日内閣衆質一六九第一八四号。以下「前々回答弁書」という。)二の1から3までについてでお答えしたとおり、平成十九年八月の諫早湾におけるアサリのへい死については、赤潮、貧酸素水塊を始めとする様々な要因が複合的に影響したものと考えている。
一般的に、公共用水域の水質の変化には複合的な要因があり、下水道の整備に関する事業及び農業集落排水処理施設の整備に関する事業のみに起因する有明海及び八代海における水質の変化は測定できないため、お答えすることが困難である。
なお、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成十四年法律第百二十号)第三条第一項に規定する指定地域(以下「指定地域」という。)を含む市町村における下水道に係る処理人口は、平成十四年度末時点の約百六十一万人から平成十八年度末現在で約百九十五万人に増加し、農業集落排水処理施設に係る処理人口は、平成十四年度末時点の約十三万人から平成十八年度末現在で約十七万人に増加しているところであり、これらの処理施設において削減される化学的酸素要求量(以下「COD」という。)の総量も増加しているものと考えられる。
漁場環境保全創造事業については、前々回答弁書三の1についての(4)でお答えしたとおり、平成十五年度から平成十八年度までの有明海における実施状況は、覆砂四百四十二ヘクタール、作れい十四・五キロメートル、耕うん五千四百七十七ヘクタールとなっているところであり、同答弁書三の2及び3についてでお答えしたとおり、同事業の実施により、例えば、福岡県や熊本県によれば、アサリの漁獲量が増加する等の漁場改善の成果がみられているところである。同事業の事前評価において、漁獲可能資源の維持・培養により、アサリの漁獲量の増加が期待できること等を確認したところである。同事業の実施により見込まれる漁獲可能資源の維持・培養等の効果を事業の実施に要する費用で除した費用便益比率は、一・二八から三・九一となっており、事業の実施により見込まれる効果が事業の実施に要する費用を上回っているところである。
環境省が実施している「発生負荷量等算定調査」によれば、指定地域を対象に調査を開始した平成十三年度及び最新の調査年の平成十六年度の生活系排水の一日当たりのCODの発生負荷量は、それぞれ五十三・八トン及び四十六・七トンとなっており一日当たり七・一トン減少している。
前回答弁書四の1及び2についてでお答えしたとおりである。
短期開門調査における水質への影響については、衆議院議員小沢和秋君外一名提出諫早湾干拓事業の進行に伴う漁業被害と環境破壊拡大への対応に関する質問に対する答弁書(平成十五年八月二十九日内閣衆質一五六第一二五号)(十六)についてでお答えしたとおり、短期開門調査においては、海水導入によって調整池のCOD等の濃度は低下したが、一方で、海域への排水量は増加し、海域への負荷量は海水導入前に比べむしろ増加する結果となっている。
また、前回答弁書四の3及び4についてでお答えしたとおり、排水門付近で洗掘を生じさせない開門方法については、潮位や潮流などに与える変化が小さいため、短期開門調査で得られた成果以上の知見は得られないと考えている。
前回答弁書五の1についてでお示ししたデータは、調整池の水質の適正な評価を目的として、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)に基づき都道府県が水質調査等を行う際の準拠すべき原則的な方法を示したものである水質調査方法により、降雨等の影響を受けない晴天時に行う月一回の調査によるものである。これに対して、御指摘の週一回の調査は、水質シミュレーションモデルの構築等を目的として気象条件に関係なく行うものであり、調査の条件が異なることから、これら二つの調査結果を単純に比較することは適当ではないと考えられる。
農林水産省九州農政局により設けられた諫早湾干拓調整池等水質委員会において、平成十九年度に行った調整池の水質シミュレーションモデルを用いた検討の際には、平成四年度から平成十八年度までにおいて実施した生活系排水、農地等のCOD、窒素及びリンの発生負荷量の調査の結果等を活用し、平成十五年度から平成十七年度までにおいて調整池に流入した有機物によるCOD、窒素及びリンの総量を水質シミュレーションモデルにより試算しているところであり、水質シミュレーションモデルの妥当性は確保されていると考えている。
調整池のCODの量は、底泥の巻上げだけでなく、他の様々な要因に左右されるものである。潜堤自体の効果については、諫早湾干拓調整池等水質委員会において、平成十九年度に行った調整池の水質シミュレーションモデルを用いた検討の結果により確認されているところである。
前々回答弁書五の1についてでお答えしたとおり、調整池の水質については、調整池に流入する河川等からの有機物、窒素及びリンの削減が進んでいないこと等により、水質保全目標値に達しない状態が続いているものと考えている。
なお、潮受堤防の締切り以降に諫早湾干拓調整池水質委員会において行われた水質予測の検討結果について記した「諫早湾干拓調整池等水質委員会検討結果の取りまとめ」においても、水田及び畑からの負荷並びに生活系排出負荷の削減が進んでいないこと等が述べられているところである。
岡山県が、湖沼水質保全特別措置法(昭和五十九年法律第六十一号)第四条第一項の規定に基づき策定した児島湖に係る第四期湖沼水質保全計画について平成十九年三月に公表した評価結果によれば、児島湖流域における下水道の整備等の水質汚濁発生源対策、流入河川等の浄化対策及び底泥のしゅんせつ等の湖内対策の効果が相まって児島湖のCODが低下したとされていると承知している。