答弁本文情報
平成二十三年八月十五日受領答弁第三七六号
内閣衆質一七七第三七六号
平成二十三年八月十五日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員渡辺喜美君提出「賠償機構法案に関する文書について」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員渡辺喜美君提出「賠償機構法案に関する文書について」に関する質問に対する答弁書
一の(一)について
御指摘の文書については、平成二十三年七月二十六日の衆議院東日本大震災復興特別委員会において、柿澤未途衆議院議員(以下「柿澤議員」という。)から、「経済産業省さんがつくったとされる、自民党に根回しをしたときに使ったというペーパーがあります。」との発言がなされ、さらに、同年八月一日の参議院東日本大震災復興特別委員会において、松田公太参議院議員から、当該文書を配布した上で、修正案発議者として答弁に立った西村康稔衆議院議員(以下「西村議員」という。)に対する質疑の中で、柿澤議員の発言も引用しつつ、「西村議員は多分見覚えがあるんじゃないかなというふうに思いますけれども」との発言がなされたところである。
これを受けて、同日、衆議院経済産業委員会の理事懇談会の場において、同委員会の理事である西村議員から、中山経済産業大臣政務官に対して、事実関係の調査を行い、その結果を同理事懇談会に報告するよう求めがあり、これに対して同月二日に同大臣政務官が回答したものである。
御指摘の文書は、原子力損害賠償支援機構法案(以下「法案」という。)に関する与野党の修正協議が本格化する前に、これに先立って、与党において法案の修正協議を担当していた国会議員(以下「担当与党議員」という。)からの求めに応じて、政府の考え方を担当与党議員に対して説明するため、内閣官房の担当室(以下「担当室」という。)において作成し、担当与党議員に手交しているが、野党において法案の修正協議を担当していた国会議員に対しては手交していない。
担当室から、経済産業省も含め、関係する省庁の担当者に対して当該文書を手交している。
御指摘の「政府の閣議決定した法案について、修正を与党議員に提案すること」については、担当与党議員から、国の責任の明記や勘定区分の導入等、自由民主党から提示された法案の条文修正に係る具体的な論点について、政府としての考え方を説明してほしいとの依頼を受け、担当室が対応したものであって、担当室から、法案の修正を行うように、担当与党議員に対して提案したものではない。
一般に、政府提出の法律案の修正協議が与野党間で行われるに当たって、与党から政府内の担当部局に対して意見照会が行われた場合には、当該法律案を担当する大臣等の指示の下で、担当部局の職員が照会に対応してきている。今般の事例においても、修正協議の状況について、法案を担当し、担当室の事務を所掌する海江田原子力経済被害担当大臣等に随時相談しつつ、担当室において対応を行っていたものであり、これは担当室の職員の職務の範囲内である。なお、当該文書に示された基本的な考え方は、海江田原子力経済被害担当大臣等が国会において答弁してきた内容に基づくものである。
政府は、平成二十三年六月十四日に法案を閣議決定し、同日に国会に提出しており、以降、法案について国会において御審議いただくため、衆議院及び参議院の東日本大震災復興特別委員会等に所属する国会議員を中心に、法案の内容及び必要性等について説明を行ってきているが、具体的に誰が誰といつどこで会ったのか等については、先方との関係もあり、お答えを差し控えたい。
原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)の枠組みは、大規模な原子力災害が生じた際には、単独の原子力事業者のみでは巨額の損害賠償等に対応しきれないとの現実を踏まえ、全ての原子力事業者による相互扶助を基本的な考え方とするものである。
仮に、相互扶助の考え方に基づかず、原子力損害賠償支援機構において、一原子力事業者の賠償支援に係る勘定のみを区分して管理する場合には、会計上の扱いとして、当該機構に対して将来にわたり納付することになる負担金の全てを当該事業者が一度に債務として認識することを求められるおそれがあり、その場合、当該事業者は債務超過に陥るなど経営が立ちゆかなくなり、結果として、損害賠償や事故処理に支障を来すおそれが生じることとなると認識している。
政府としては、同法の枠組みが続く限りにおいては、東京電力株式会社が債務超過に陥ることによって損害賠償支払が滞るということは想定していない。