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平成二十四年二月三日受領
答弁第一〇号

  内閣衆質一八〇第一〇号
  平成二十四年二月三日
内閣総理大臣 野田佳彦

       衆議院議長 横路孝弘 殿

衆議院議員高市早苗君提出「除染事業」の対象及び方法等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員高市早苗君提出「除染事業」の対象及び方法等に関する質問に対する答弁書



一について

 国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)は、放射線に関する専門家から構成される国際組織であり、我が国においても、従来から、その勧告を放射線防護対策を講ずる上での基礎として取り入れているものであるが、ICRPの平成十九年の勧告等においては、放射線による人体への影響について、疫学的な研究では、百ミリシーベルトより高い線量ではがんのリスクの可能性が高くなるとされるが、およそ百ミリシーベルトまでの線量ではがんのリスクが高まることは明らかにされていないとしている。
 また、原発事故の収束及び再発防止担当大臣の下に開催されている放射性物質汚染対策顧問会議の下で開催された、有識者から構成される「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の報告書においても、「広島・長崎の原爆被爆者の疫学調査の結果からは、被ばく線量が百ミリシーベルトを超えるあたりから、被ばく線量に依存して発がんのリスクが増加することが示されている。」とし、「国際的な合意では、放射線による発がんのリスクは、百ミリシーベルト以下の被ばく線量では、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため、放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされる。」としている。

二の@について

 御指摘の「除染対象とするべき汚染の定義」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「法」という。)においては、法第一条に規定する事故由来放射性物質による環境の汚染に対処することとされているところである。

二のA及びBについて

 お尋ねについては、法第七条に基づき策定した基本方針(平成二十三年十一月十一日閣議決定。以下単に「法第七条に基づく基本方針」という。)において、「追加被ばく線量が年間二十ミリシーベルト未満である地域」については「長期的な目標として追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となること。」を目指すとしており、また、「除染実施計画を定める区域については、その区域の追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以上となる区域について、指定するものとする。」としたところである。政府としては、法第七条に基づく基本方針を踏まえて対応していくこととしている。

二のCについて

 お尋ねについては、一についてで述べたICRPの勧告等の考え方に従って策定した「今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について」(平成二十三年七月十九日原子力安全委員会決定)において、「長期的には、年間一ミリシーベルトを目標とする。」としていること等を踏まえたものである。

二のDについて

 一についてで述べたICRPの勧告においては、事故収束後の状況において、年間一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトまでを、事態の対処に際して政府が参考とすべきレベルとして示していること等を踏まえて総合的に検討した結果、「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方」(平成二十三年四月十九日原子力災害対策本部策定。以下「暫定的考え方」という。)を通知したものである。

二のEについて

 「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」(平成二十三年五月二十七日付け文部科学省大臣官房文教施設企画部、生涯学習政策局、初等中等教育局、高等教育局、科学技術・学術政策局及びスポーツ・青少年局事務連絡)は、暫定的考え方で示した「今後できる限り、児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切である」との方針に沿って、平成二十三年度は、学校において児童生徒等が受ける線量について、当面、年間一ミリシーベルト以下を目指すこととしたものである。

二のFについて

 政府としては、「除染に関する緊急実施基本方針」(平成二十三年八月二十六日原子力災害対策本部決定。以下「緊急実施基本方針」という。)及び法第七条に基づく基本方針において、長期的な目標として、追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となることを目指すとしており、追加被ばく線量が年間二十ミリシーベルト以上又は五ミリシーベルト以上の地域のみを除染の対象とすることを決定した事実はない。

二のGについて

 緊急実施基本方針を踏まえて策定した法第七条に基づく基本方針においては、「追加被ばく線量が年間二十ミリシーベルト未満である地域」について、長期的な目標として、追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となることを目指すとしているが、あわせて、「平成二十五年八月末までに、一般公衆の年間追加被ばく線量を平成二十三年八月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約五十パーセント減少した状態を実現すること。」及び「子どもが安心して生活できる環境を取り戻すことが重要であり、学校、公園など子どもの生活環境を優先的に除染することによって、平成二十五年八月末までに、子どもの年間追加被ばく線量が平成二十三年八月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約六十パーセント減少した状態を実現すること。」としているところである。

二のH及びIについて

 除染事業は、除染技術に関する様々な知見、経験、除染の効果の検証等を踏まえながら進めていくものであり、追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となることを目指すとする長期的な目標を達成すべき時期及び除染事業を完了すべき時期については、現時点で明確にお示しすることは困難である。

三の@について

 お尋ねについては、現在、内閣府において実施している「福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務」等を通じて除染技術に関する様々な知見等を蓄えているところであり、こうした知見等も踏まえつつ、長期的な目標である追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以下となることを目指してまいりたい。

三のAについて

 内閣府において実施している「平成二十三年度除染技術実証試験事業」において、土壌の分級及び化学処理技術、道路等の洗浄及び研削技術、がれきの洗浄技術、汚染水の処理技術並びに森林・木材の洗浄等技術について、実用化に向けた試験を行っているが、これらの除染技術の効果等については、試験中であり、現時点では判明していない。

四の@について

 環境大臣は、平成二十三年十二月二十八日に、線量が高いこと等から原子力災害対策本部長の指示に基づき立入りを制限している地域等を、法第二十五条の規定に基づき、除染特別地域として指定したところであるが、当該地域として指定した区域を含む市町村は、福島県田村市、南相馬市、川俣町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村である。
 また、同大臣は、同日、その地域の追加被ばく線量が年間一ミリシーベルト以上となる地域(除染特別地域を除く。)を、法第三十二条の規定に基づき、汚染状況重点調査地域として指定したところであるが、当該地域として指定した区域を含む市町村は、次のとおりである。
 岩手県 一関市、奥州市及び平泉町
 宮城県 石巻市、白石市、角田市、栗原市、七ヶ宿町、大河原町、丸森町及び山元町
 福島県 福島市、郡山市、いわき市、白河市、須賀川市、相馬市、二本松市、田村市、南相馬市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、鏡石町、天栄村、会津坂下町、湯川村、三島町、昭和村、会津美里町、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、広野町、川内村及び新地町
 茨城県 日立市、土浦市、龍ケ崎市、常総市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、取手市、牛久市、つくば市、ひたちなか市、鹿嶋市、守谷市、稲敷市、鉾田市、つくばみらい市、東海村、美浦村、阿見町及び利根町
 栃木県 佐野市、鹿沼市、日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、塩谷町及び那須町
 群馬県 桐生市、沼田市、渋川市、安中市、みどり市、下仁田町、中之条町、高山村、東吾妻町、片品村、川場村及びみなかみ町
 埼玉県 三郷市及び吉川市
 千葉県 松戸市、野田市、佐倉市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市、印西市及び白井市

四のAについて

 法に基づく除染の対象となる地域の面積は、四の@についてで述べた除染特別地域については、法第二十八条の規定に基づき環境大臣が定めることとされている「特別地域内除染実施計画」に、また、四の@についてで述べた汚染状況重点調査地域については、法第三十六条の規定に基づき都道府県知事等が定めることとされている「除染実施計画」に基づいて、それぞれ決まるものであり、現時点で明確にお示しすることは困難である。

五の@及びAについて

 平成二十三年十一月二十二日に内閣府原子力被災者生活支援チームが専門家の意見や諸外国の知見等を踏まえて策定した「除染技術カタログ」(以下単に「カタログ」という。)においては、広い土地等における表土除去について、「表面から数センチメートルから五センチメートルの層の土壌を除去することにより、被ばく線量の低減化が図られる。」としている。また、カタログにおいては、被ばく線量の低減化が図られた事例として、中学校及び幼稚園において土壌を表面から五センチメートル程度剥離した場合、中学校の校庭の平均空間線量率が、地表からの高さが一メートルの地点で毎時二・五〇マイクロシーベルトから毎時〇・一五マイクロシーベルトに、幼稚園の園庭の平均空間線量率が、地表からの高さが五十センチメートルの地点で毎時二・七マイクロシーベルトから毎時〇・二二マイクロシーベルトに低減したことを挙げている。

五のBについて

 カタログや、カタログ及び専門家の意見等を踏まえて平成二十三年十二月十四日に環境省が策定した「除染関係ガイドライン」においては、汚染土壌の除染方法として、表土除去以外に土地表面の被覆等を挙げている。この具体的な事例として、例えば、カタログにおいては、十センチメートルの表層土を底部に置き、二十センチメートルの掘削した下層の土により被覆することで、埋めた土から放射線を遮蔽できることが確認されていることを挙げている。

六の@及びAについて

 特に線量が高い地域における除染の手法や汚染土壌等の中間貯蔵施設の設置等について検討中であるため、除染事業に係る費用の総額及びその内訳を現時点で明確にお示しすることは困難である。

六のBについて

 お尋ねについては、法第四十四条第一項の規定を踏まえ、関係原子力事業者の負担の下に実施されるものと認識している。



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