答弁本文情報
平成二十四年七月六日受領答弁第三二一号
内閣衆質一八〇第三二一号
平成二十四年七月六日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員馳浩君提出裁判員制度の検証・見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員馳浩君提出裁判員制度の検証・見直しに関する質問に対する答弁書
一について
裁判員の参加する刑事裁判(以下「裁判員裁判」という。)においては、裁判員候補者は高い割合で裁判所に出頭し、選任された裁判員等は熱心に審理に取り組んでいるものと承知しており、また、裁判員等の経験者の多くは、裁判員等として裁判に参加したことにつき良い経験をしたと感じ、充実感をもって審理に取り組んでいることがうかがわれることなどから、裁判員制度は、順調に運営され、国民に支持されているものと認識している。
裁判員裁判において、強姦致傷罪等の量刑が重くなる傾向にあるとの指摘があることは承知しているが、裁判員裁判における量刑の傾向は、個別具体の事案について言い渡された判決の集積であることから、その意義について一概にお答えすることは困難である。
いずれにしても、これまでの裁判員裁判の判決は、国民の感覚が反映されたものと考えている。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下「裁判員法」という。)附則第九条は、政府が、裁判員法の施行後三年を経過した場合において、裁判員法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、裁判員制度が我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるよう、所要の措置を講ずるものとすると定めていることから、法務省においては、平成二十一年五月二十一日の裁判員法施行後、同年九月に有識者から成る「裁判員制度に関する検討会」を設け、その意見を聴取しつつ、裁判員裁判の運用の実情、制度上・運用上の措置の要否等について検討を行っているところであり、御指摘の点も含め、今後更に検討していくこととしている。
なお、検察当局においては、裁判員裁判における強姦致傷罪等の被害者のプライバシー等保護のため、裁判員候補者の中に関係者が含まれていないかどうかにつき、被害者の確認を受けるなどした上で、裁判員等選任手続において理由を示さない不選任の請求をするほか、裁判所が刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百九十条の二第一項の規定に基づき被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をした場合、起訴状や証拠書類の朗読等の際に被害者特定事項を明らかにしない方法で行うなどしており、適切に対処しているものと承知している。
検察統計年報によれば、強姦致死傷では、裁判員制度導入前の平成二十年は、「起訴」が百九十八人、「不起訴」が百三十七人であり、起訴人員と不起訴人員の合計に対する起訴人員の割合(以下「起訴率」という。)は約五十九パーセント、裁判員制度が導入された平成二十一年は、「起訴」が百三十九人、「不起訴」が百三十七人であり、起訴率は約五十パーセント、平成二十二年は、「起訴」が百十人、「不起訴」が百四十八人であり、起訴率は約四十三パーセントである。また、強姦では、平成二十年は、「起訴」が五百二十四人、「不起訴」が五百三十四人であり、起訴率は約五十パーセント、平成二十一年は、「起訴」が四百三十四人、「不起訴」が五百十八人であり、起訴率は約四十六パーセント、平成二十二年は、「起訴」が四百十四人、「不起訴」が四百六十六人であり、起訴率は約四十七パーセントである。このように、裁判員制度の導入後、強姦の起訴率はほぼ横ばいで推移しているが、強姦致死傷の起訴率は低下している。
検察当局においては、性犯罪に係る事件についても、個別具体の事案に即して、法と証拠に基づき、適切に起訴又は不起訴の判断をしているものと承知しており、その結果である起訴率の低下について、御指摘のような「裁判員裁判の回避傾向により、性犯罪の起訴割合が低下している」ことを含め、その原因を一概に述べることは困難であると考えている。