答弁本文情報
平成二十四年九月十一日受領答弁第三九八号
内閣衆質一八〇第三九八号
平成二十四年九月十一日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員城内実君提出「人権救済法案」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員城内実君提出「人権救済法案」に関する質問に対する答弁書
一について
法務省に設置されていた人権擁護推進審議会の平成十三年五月二十五日付けの答申によれば、現行の人権相談及び人権侵犯事件の調査処理制度は政府の内部部局である同省の人権擁護局を中心とした制度であり、同省の人権擁護機関による人権侵犯事件の調査処理も同省の内規に基づく活動であるため、実効性及び信頼性の面において限界があるとされている。また、人権に関する様々な条約に基づき設置されている委員会は、我が国に対し、政府からの独立性を有する国内人権機構の整備の必要性を度々指摘している。
同省としては、このような現状を踏まえ、政府からの独立性を有する人権救済機関を新設する必要があると考えている。
公権力による人権侵害による被害の救済とともに、私人間の人権侵害による被害の救済も重要であることから、法務省としては、新たに設置される人権救済機関が、私人間の人権侵害による被害も取り扱うこととするのが適当であると考えている。
法務省としては、個別の法律により設けられている人権救済に関する制度は、必ずしも総合的な人権救済の観点に立っているわけではなく、また、人権問題の全ての分野に設けられているわけではないことから、人権侵害による被害を広く対象とする人権救済機関を新設することが必要であると考えている。
法務省としては、新たに設置される人権救済機関の委員は、公正かつ中立で人権問題を扱うにふさわしい人格識見を備えた者である必要があることから、このような者を選任するための方法としては、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する方法が適当であると考えている。
法務省としては、新たに設置される人権救済機関の所掌事務並びに当該機関が行う調査及び救済手続の対象については、新たな人権救済機関の設置に関する法案(以下単に「法案」という。)において明確に規定される必要があると考えており、御指摘は当たらないものと考えている。
法務省としては、天皇及び皇族については、その地位の特殊性に鑑み、新たに設置される人権救済機関による調査及び救済手続の対象とすることは想定していない。
法務省としては、新たに設置される人権救済機関を国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に基づく独立の行政委員会として設置することと、当該機関が行う調査を任意のものとするか否かとは、別の問題であると考えている。
人権擁護委員法(昭和二十四年法律第百三十九号)第六条第三項によれば、人権擁護委員の候補者の要件については、「市町村の議会の議員の選挙権を有する住民」とされており、日本国籍を有しない者は人権擁護委員に就任できないことから、法務省としては、御指摘の改正をする必要はないと考えている。
なお、仮に将来、市町村の議会の議員の選挙権が外国人に付与されるか否かが検討される場合には、その過程で、この要件の当否について議論されることになると考えられる。
新たに設置される人権救済機関については、その具体的な組織体制や事務内容が確定していないため、現段階では、お尋ねの予算及び人員の数を具体的に示すことはできない。
法務省においては、法案の提出に向けた一連の作業に際し、様々な意見を参考にしており、その上で、様々な機会を捉えて、新たな人権救済機関の設置に関する同省の考えを明らかにし、国民の理解を得られるよう努めてきたところである。
新たな人権救済機関の設置に関しては、積極、消極いずれの立場の意見についても、その概要は法務大臣に報告されている。ただし、法務省に要望書等として届けられたものか否かについてまで明確にして報告されているわけではない。