答弁本文情報
平成二十八年六月七日受領答弁第三〇三号
内閣衆質一九〇第三〇三号
平成二十八年六月七日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員高木義明君提出「被爆体験者」の救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員高木義明君提出「被爆体験者」の救済に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「被爆体験者」については、被爆体験者精神影響等調査研究事業の対象となる原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則(平成七年厚生省令第三十三号)附則第二条の規定により第二種健康診断受給者証の交付を受けた者を指すものと解され、これらは、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号。以下「法」という。)附則第十七条の政令で定める区域内に在った者に当たることとなるが、平成六年十二月に当時の厚生省の検討班が取りまとめた「「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書」検討報告書」においては、土壌に残留するプルトニウムに関する調査を検証した結果、法第一条第一号に規定する区域(以下「被爆区域」という。)を除く長崎の爆心地から十二キロメートルの区域内においては、長崎に投下された原子爆弾の放射性降下物の残留放射能による健康への影響はないと結論付けられている。また、平成十三年八月に厚生労働省の原子爆弾被爆未指定地域証言調査報告書に関する検討会が取りまとめた報告書においては、当該地域住民に見られた健康水準の低下について、「原子爆弾の放射能による直接的な影響ではなく、もっぱら被爆体験に起因する不安による可能性が高いものと判断された」とされている。これらのことから、御指摘の「被爆体験者」については、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったと認めることはできず、同条に規定する被爆者には該当しないと考えている。
なお、御指摘の平成二十八年二月二十二日の長崎地方裁判所判決については、被告である長崎県及び長崎市が控訴しているところであると承知している。
法第一条第三号に該当する者については、「被爆者援護法第一条第三号に係る審査の指針」(平成二十二年二月二十三日付け厚生労働省健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室事務連絡)において示されているとおりである。
被爆区域については、日本学術会議が編集した「原子爆弾災害調査報告集」に記載されている実地調査も含めた様々な調査報告等の科学的知見に基づき、行政区画の範囲も考慮に入れて指定したものであり、被爆区域の拡大には、原子爆弾の放射線による健康への影響についての科学的かつ合理的な根拠が必要であると考えている。
現在得られている科学的知見では、被爆区域以外の区域において、原子爆弾の放射線による健康への影響があったことは認められていないことから、政府としては、被爆区域を拡大する必要があるとは考えておらず、御指摘の「被爆体験者」を法第一条に規定する被爆者と同等の取扱いとすることはできないと考えている。
なお、被爆区域以外の地域住民への被爆者健康手帳交付申請却下処分の是非について争われた平成二十八年五月二十三日の福岡高等裁判所判決においては、被告である長崎県及び長崎市の主張が認められているところであると承知している。