答弁本文情報
令和元年十月十五日受領答弁第一五号
内閣衆質二〇〇第一五号
令和元年十月十五日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員中谷一馬君提出あおり運転の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員中谷一馬君提出あおり運転の対応に関する質問に対する答弁書
一の前段及び二の1について
いわゆる「あおり運転」については、法令上の定義はなく、また、御指摘の通達(以下単に「通達」という。)においても、「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」について特段の定義を設けていない。
一の中段及び後段並びに五から七までについて
警察においては、これまでも、通達に従って、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転について、あらゆる刑罰法令を適用した厳正な取締りの徹底等の諸対策を着実に進め、こうした運転の抑止を図ってきたところである。
他方で、現在、警察庁においては、いわゆる「あおり運転」の厳罰化を含め、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)の罰則の強化等について、様々な観点から検討を行っているところであり、同法の規定の在り方等に係るお尋ねについては、現時点でお答えする段階にない。
二の2について
お尋ねについては、@通達で言及している罪又は刑罰法令に触れる行為、A罰則及びB法定刑を刑罰法令ごとにお示しすると、次のとおりである。
(一) 刑法(明治四十年法律第四十五号)
@「傷害」 A同法第二百四条 B十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
@「暴行罪」又は「暴行」 A同法第二百八条 B二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
@「脅迫」 A同法第二百二十二条 B二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金
@「器物損壊」 A同法第二百六十一条 B三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料
(二) 道路交通法
@「急ブレーキ禁止違反」 A同法第百十九条第一項第一号の三 B三月以下の懲役又は五万円以下の罰金
@「車間距離不保持」又は「車間距離保持義務違反」 A同法第百十九条第一項第一号の四(高速自動車国道等において行われた場合)又は第百二十条第一項第二号(高速自動車国道等以外において行われた場合) B三月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金(高速自動車国道等において行われた場合)又は五万円以下の罰金(高速自動車国道等以外において行われた場合)
@「追越しの方法違反」 A同法第百十九条第一項第二号の二 B三月以下の懲役又は五万円以下の罰金
@「安全運転義務違反」 A同法第百十九条第一項第九号(故意によるものである場合)又は第二項(過失によるものである場合) B三月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金(故意によるものである場合)又は十万円以下の罰金(過失によるものである場合)
@「進路変更禁止違反」 A同法第百二十条第一項第二号若しくは第三号又は第二項 B五万円以下の罰金
@「減光等義務違反」 A同法第百二十条第一項第八号又は第二項 B五万円以下の罰金
@「初心運転者等保護義務違反」 A同法第百二十条第一項第九号 B五万円以下の罰金
@「警音器使用制限違反」 A同法第百二十一条第一項第六号 B二万円以下の罰金又は科料
(三) 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)
@「危険運転致死傷罪(妨害目的運転)」 A同法第二条第四号 B十五年以下の懲役(人を負傷させた場合)又は一年以上の有期懲役(人を死亡させた場合)
二の3について
御指摘の広報啓発活動については、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転を広く抑止するために実施しているものであるところ、警察庁としては、当該広報啓発活動の結果もあって、こうした運転の抑止に向けた社会的気運の醸成が着実に進んできているものと認識している。
他方で、御指摘の広報啓発活動の効果を特定の違反行為に係る検挙件数の増減のみをもって検証することについては、当該増減には当該広報啓発活動以外の様々な要因も影響しているものと考えられることから、困難であると認識している。
三について
平成三十年中の車間距離保持義務違反の検挙件数は、平成三十一年二月二十五日の衆議院予算委員会において山本国務大臣(当時)が答弁しているとおり、平成二十九年中の当該件数の約一・八倍となる約一万三千件であったところであるが、他方で、実際に行われた車間距離保持義務違反に該当する行為の全てを網羅的に把握することは難しく、当該行為全体の増減についてお答えすることは困難である。
四について
ドライブレコーダーを用いて撮影された映像は、一般に、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転の重要な客観的証拠となり得るものであり、こうした運転に係る捜査の一助となっているものと認識している。
このため、政府としては、これまでも、様々な機会を通じてドライブレコーダーの装着を国民に呼び掛けるなど、その普及のための取組を進めてきたところであり、引き続き、こうした取組を通じてその広範な普及に努めていきたいと考えている。