衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和三年五月十四日受領
答弁第一二二号

  内閣衆質二〇四第一二二号
  令和三年五月十四日
内閣総理大臣 菅 義偉

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員阿部知子君提出医療事故調査制度の運用改善と見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出医療事故調査制度の運用改善と見直しに関する質問に対する答弁書


一について

 御指摘の「医療事故報告数の推計」については、医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号。以下「規則」という。)第十二条の規定による厚生労働大臣の登録を受けた機関である公益財団法人日本医療機能評価機構が同条の規定に基づき実施する事故等分析事業において平成十七年から平成二十三年までの各年に報告された医療機関における死亡事故件数(以下「死亡事故件数」という。)を当該年において当該事業により報告を行った医療機関の病床数と全国の医療機関の病床数の比で割り戻した数並びに平成二十年度厚生労働科学研究費補助金による「診療行為に関連した死亡の届出様式及び医療事故の情報処理システムの開発に関する研究」において行われた医療機関に対するアンケート調査において報告された報告事例死亡件数(以下「報告事例死亡件数」という。)を当該アンケート調査により報告を行った医療機関の病床数と全国の医療機関の病床数の比で割り戻した数及び当該アンケート調査により報告を行った医療機関の退院者数と全国の医療機関の退院者数の比で割り戻した数を根拠に、平成二十五年に厚生労働省において推計したものである。
 当該推計については、同年五月二十九日に開催された「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」において、議論の参考とするため、同省が入手可能な情報を基に推計したものを示したものであるところ、当該推計の基となる死亡事故件数及び報告事例死亡件数は、規則第九条の二十の二第一項第十四号に規定する事故等事案の定義に基づき報告されたものであり、医療法(昭和二十三年法律第二百五号。以下「法」という。)の規定に基づき実施されている医療事故調査制度(以下「医療事故調査制度」という。)において法第六条の十第一項の規定に基づく医療事故調査・支援センター(法第六条の十五第一項に規定する医療事故調査・支援センターをいう。以下「センター」という。)への報告の対象とされている法第六条の十第一項に規定する医療事故(以下「医療事故」という。)とは、その定義が異なること等から、お尋ねの「当初の推計と実数」について、一概に比較することは困難である。

二、五及び六について

 医療事故調査制度は、法及び規則の規定等に基づき、医療機関が医療事故に該当するか否かを自主的に判断し、自ら医療事故の原因を明らかにするために必要な調査(以下「医療事故調査」という。)を行う仕組みであり、センターによる医療事故調査の実施に関する助言があった事例について最終的に医療事故調査を実施するか否かについては、各医療機関において、当該助言に加え、当該医療機関内での調査や検証等を踏まえて適切に判断されているものと承知している。また、御指摘のように「民事責任を追及される可能性、紛争となる可能性、訴訟係属」を理由として医療事故調査を行わないことについては、法第六条の十一第一項の規定に基づき、医療機関は医療事故が発生した場合には速やかに医療事故調査を行わなければならないことから、不適切であると考えている。
 厚生労働省としては、各医療機関において適切な判断が行われるよう、医療事故調査制度の趣旨・目的、医療事故の定義等の周知徹底が重要であると考えており、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行(医療事故調査制度)について」(平成二十七年五月八日付け医政発〇五〇八第一号厚生労働省医政局長通知)において医療事故の定義等について分かりやすく示すとともに、研修等を通じて医療機関への継続的な周知に努めているところである。とりわけ、医療事故調査制度の運用に当たっては、医療事故調査に関する業務に携わる者のみならず、各医療機関の管理者が制度に関する正確な知識や理解を有していることが重要であることから、「医療事故調査制度に関する管理者向け研修への参加の推進等について(協力依頼)」(令和三年三月三日付け厚生労働省医政局総務課医療安全推進室事務連絡)等により、医療機関の管理者に研修の積極的な受講を重ねて促しているところであり、引き続き、医療機関に対する周知徹底に努めてまいりたい。

三について

 二、五及び六についてでお答えしたとおり、医療事故調査制度は、医療機関が医療事故に該当するか否かを自主的に判断し、自ら医療事故調査を行う仕組みであるが、「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について」(平成二十八年六月二十四日付け医政総発〇六二四第一号厚生労働省医政局総務課長通知。以下「総務課長通知」という。)において、遺族から医療事故が発生したのではないかという申出があり、医療機関が医療事故には該当しないと判断した場合には、遺族に対してその理由を分かりやすく説明することとしているところ、医療機関において適切な対応が行われるよう、引き続き、総務課長通知の内容について必要な周知を図っていくことが重要であると考えており、御指摘のようなセンターの権限の強化については、医療事故調査制度の趣旨にも照らして、慎重に検討すべきものと考えている。

四について

 センターによる法第六条の十七第一項の調査の結果が医療機関による医療事故調査の結果と異なる場合には、当該医療機関においては、法第六条の十二の規定に基づき、当該センターによる調査の結果を踏まえた医療の安全を確保するための適切な対応が行われるものと考えている。医療事故調査制度は、医療機関が医療事故に該当するか否かを自主的に判断し、自ら医療事故調査を行う仕組みであること、センターは、法第六条の十五第一項の規定により医療機関が行う医療事故調査への支援を行うこととされていること等を踏まえれば、御指摘のようなセンターの権限の強化については、慎重に検討すべきものと考えている。

七について

 医療機関において、センターへの報告の対象とされている医療事故が発生した際、解剖等を行わなくても死亡に至るまでの診療経過等によって死因を明らかにすることができる場合、遺族が解剖に同意しない場合等があるため、お尋ねの「院内調査全例に解剖、あるいは最低でもAiの実施を義務付ける」ことは困難であると考えている。

八について

 お尋ねの「患者等の意見を聴取する仕組み」については、医療事故調査制度において、法第六条の十第二項の規定に基づき、医療機関は、センターへの医療事故の報告に当たり、あらかじめ、遺族に対し、規則第一条の十の三第二項各号に規定する事項を説明しなければならないこととされており、その説明の際に、遺族の意見を聴取しているものと考えている。また、総務課長通知においても、遺族から医療事故が発生したのではないかという申出があり、医療機関が医療事故には該当しないと判断した場合には、遺族に対してその理由を分かりやすく説明することとしているところであり、この説明の際にも、遺族の意見を聴取しているものと考えている。

九について

 医療事故の再発防止に関する普及啓発を図るためには、センターにおいて、個別事例の類型化等により集積した情報について傾向や優先順位を勘案して行った分析に基づき、全体として得られた知見を公表することが重要であると考えており、お尋ねの「要約版を公表するシステムを創設」することは考えていないが、引き続き、医療機関をはじめ広く国民に対して適切な情報提供に取り組んでまいりたい。

十について

 医療事故調査制度は、医療関係者、患者等による長い議論を経て制度化されたものであることから、現行制度を適切に運用していくことが重要であると考えており、当該制度の適切な運用が図られるよう、その趣旨・目的等について周知徹底を図るとともに、センターにおける関係者の意見を踏まえた運用面の改善に対する必要な支援等を行ってまいりたい。

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.