答弁本文情報
令和三年六月二十二日受領答弁第一八九号
内閣衆質二〇四第一八九号
令和三年六月二十二日
内閣総理大臣 菅 義偉
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員櫻井周君提出精神科病院における患者虐待防止のための取組みに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員櫻井周君提出精神科病院における患者虐待防止のための取組みに関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「権利擁護制度の整備」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という。)に対し、都道府県等が実施する精神科病院に対する実地指導において、虐待が疑われる事案について病院職員や入院患者に対して聞き取りを行うことを要請しており、また、都道府県等を通じて精神科病院に対し、虐待が疑われる事案が発生した場合には、速やかにその概況を都道府県等に報告するよう周知徹底しているところである。これらの取組を通じて、精神科病院における虐待の防止等を図ることにより、患者の人権の保護に努めてまいりたい。
二について
身体的拘束は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「精神保健福祉法」という。)第三十六条第三項において、精神保健指定医が必要と認める場合でなければ行うことができないとされており、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(昭和六十三年厚生省告示第百三十号)において、対象患者の要件や、身体的拘束が漫然と行われることがないよう、医師は頻回に診察を行うものとすること等の基準を定めている。また、現在、令和三年度厚生労働行政推進調査事業費補助金による「持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究」(以下「調査研究」という。)において、身体的拘束の最小化の手段について研究を行っているところである。
身体的拘束については、精神保健福祉法の規定に基づき、必要最小限の範囲内で行われることが基本であると考えており、調査研究から得られた知見等を踏まえながら、引き続き、患者の人権に配慮した適切な医療が提供できるよう努めてまいりたい。
三について
医療機関は一般的に障害の有無にかかわらず利用される機関であることに鑑みれば、障害者への虐待のみが通報対象となると医療機関において障害者と障害者以外の方との間に不整合を生じさせることになること、及び精神保健福祉法第三十七条の二の規定に基づき、精神保健指定医は、精神科病院に入院中の者の処遇が著しく適当でないと認めるときは、当該精神科病院の管理者にその旨を報告すること等により、当該管理者において当該精神科病院に入院中の者の処遇の改善のために必要な措置が採られるよう努めなければならないとされていることから、現時点では、政府としては、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成二十三年法律第七十九号)において、医療機関に従事する者による障害者虐待に係る通報義務を課すことは考えていない。