答弁本文情報
令和四年十月十四日受領答弁第一号
内閣衆質二一〇第一号
令和四年十月十四日
内閣総理大臣 岸田文雄
衆議院議長 細田博之 殿
衆議院議員原口一博君提出「第七波」収束後の新型コロナウイルス感染症対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員原口一博君提出「第七波」収束後の新型コロナウイルス感染症対策に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねについては、令和四年二月五日の衆議院内閣委員会において、池田文部科学副大臣(当時)が「一昨年の一斉の臨時休業の要請につきましては、(中略)その当時、新型コロナウイルスの性質がよく分からないという中にあって、感染の拡大を防いで、児童生徒の安全を最大限確保するという趣旨はおおむね達成されたものと考えている」と答弁しているとおりである。
二について
前段のお尋ねについては、学校における効果的な感染対策の知見が蓄積されてきていることや、学校の臨時休業に伴う児童生徒の学びの保障や心身に与える影響、保護者の就労への影響等を踏まえ、御指摘の「全国一斉休校要請と同様の措置」は実施しなかったものである。後段のお尋ねについては、「全国一斉休校要請と同様の措置」を実施することは、現時点では考えていない。
三について
御指摘の「緊急事態宣言又はまん延防止等重点措置」を行わないことについては、今夏の感染拡大におけるオミクロン株のBA.五系統への置き換わり等による感染状況や医療提供体制等に対する負担の状況を踏まえ、総合的に判断しており、「社会経済活動を維持しながら感染拡大に対応する都道府県への支援について」(令和四年七月二十九日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)に示したとおり、個々人の基本的感染対策と事業者の感染リスクを引き下げる適切な対策の徹底を行いながら、できる限りの社会経済活動の維持と医療のひっ迫の回避を両立できるよう、取り組んでいくこととしているものである。
四について
前段のお尋ねについては、総務省消防庁から東京消防庁に確認したところ、御指摘の事案は、東京消防庁が毎年作成する「救急活動の現況」における「救急活動統計」の「不搬送件数」のうち、「搬送辞退・拒否」として扱われるものであるとのことである。
後段のお尋ねについては、新型コロナウイルス感染症の患者から救急搬送の要請があった場合は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第二十六条第二項において準用する同法第二十一条の規定に基づく移送として、都道府県知事等と消防機関が連携して対応しているが、患者の救急搬送を行わなかった事案についても、都道府県知事等と消防機関が本人の病状、年齢、既往歴等、本人や家族の意向、在宅における医師等による管理体制等の様々な状況を踏まえ、総合的に判断しているため、御指摘の「医療機関がひっ迫して空き病床がなく、救急搬送ができなかったために医師や保健所がやむを得ず救急搬送を断念した事例」を特定することは困難であり、総務省消防庁から消防機関に対して報告を求めている統計調査において、御指摘のような区分を設けることは適当ではないと考えている。
五について
「Withコロナに向けた政策の考え方」(令和四年九月八日新型コロナウイルス感染症対策本部決定。以下「本部決定」という。)については、具体的な数値目標を示したものではないため、お尋ねの「第七波の何倍の感染者数や入院患者数に対応できることを見込んでいるのか」についてお答えすることは困難であるが、本部決定の別紙において、オミクロン株については、若者の重症化リスクは低く、高齢者の重症化リスクは引き続き高いというウイルスの特性を踏まえ、「高齢者等重症化リスクの高い者を守るとともに、通常医療を確保するため、保健医療体制の強化・重点化を進めていく」との基本的考え方の下、「新型コロナ病床の確保、診療・検査医療機関(発熱外来)の取組」の継続、「初回接種(一・二回目接種)を完了した十二歳以上の全ての者」を対象とした「オミクロン株対応ワクチンの接種促進」、「健康フォローアップセンターの全都道府県での整備・体制強化」等を示しているところであり、こうした取組等により、今後、今夏の感染状況を上回る感染拡大が生じても、一般医療や救急医療等を含む我が国の保健医療システムを機能させていくこととしている。
六について
お尋ねについては、「全く防ぐことができないと考えているのか」とのお尋ねについては、マスクの効果については様々な要因に左右されることから、一概にお答えすることは困難であるが、令和三年五月二十六日に開催された厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリー・ボードの参考資料四「市中におけるマスク着用による感染防止効果等について」において記載しているとおり、東京大学医科学研究所の「新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果」において、「SARS−CoV−二をマネキンから飛沫やエアロゾルとして咳と同等の速度で放出した実験では、相対する者が吸い込むウイルス量は、吐き出す側が不織布又は布マスクをした場合二十〜三十パーセント程度まで抑えられ、吸い込む側が不織布マスクをした場合五十パーセント程度(布マスクの場合八十パーセント程度)まで抑えられた」との研究結果があると承知している。
七について
御指摘の「我が国でも薬事承認されている抗ウイルス薬「ニルマトレルビル・リトナビル」には、報道にあるような再陽性となるケースがある」の意味するところが必ずしも明らかではないが、海外において、ニルマトレルビル・リトナビルの投与後に、ウイルス量が再度高くなる事象が生じた症例が報告されていることは承知している。
また、御指摘の「再陽性となる理由」の意味するところが必ずしも明らかではないが、臨床試験において、ウイルス量が再度高くなる事象の発現頻度が、ニルマトレルビル・リトナビルを投与した場合とプラセボ(医薬品と見分けがつかず、有効成分の入っていないものをいう。)を投与した場合で同様であると報告されており、令和四年五月に、米国食品医薬品局において、当該医薬品とウイルス量が再度高くなる事象との関係性について不明確であるとの見解が示されていることは承知している。
八について
お尋ねの「FFHSの開発者」については、厚生労働科学研究費補助金新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「感染症発生時の公衆衛生的対策の社会的影響の予測及び対策の効果に関する研究」(以下「報告書」という。)の分担研究である「新型インフルエンザ発生時における症例情報の効率的な共有に資する情報収集体制の検討」によると、「研究分担者」が「情報集約システムのプロトタイプのデモを重ね、意見の集約と完成度の向上を図」っていたと承知している。
また、お尋ねの「FFHSを用いて二〇一三年からパンデミックの発生を想定した演習を毎年、複数の自治体と行ってきた」ことについては、厚生労働省において確認した限りでは、そのような事実は確認できなかったが、報告書によると「二千十五年一月二十一日に、国立感染症研究所にて保健所、空港検疫所、県庁、地方衛生研究所、感染研、厚生労働省対策推進本部を模した環境を構築し、実際に感染症の対応に当たる関係者の協力のもと患者発生シミュレーションを行った」とされていると承知している。