答弁本文情報
令和七年五月九日受領答弁第一六一号
内閣衆質二一七第一六一号
令和七年五月九日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員井坂信彦君提出子どもの自殺防止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員井坂信彦君提出子どもの自殺防止に関する質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねについて、自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律(令和元年法律第三十二号)第四条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が指定した指定調査研究等法人である一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターが令和五年度に実施した、「集合研修(派遣含む)」等の「研修の形態」、「受講者数」等の「ゲートキーパー研修の実施状況」等を調査項目とする「令和四年度分自殺対策推進状況調査」によれば、令和四年度の「ゲートキーパー研修」の「受講者」のうち、御指摘の「教職員」は約二万人である。
一の2について
政府としては、御指摘の「ゲートキーパー」に関する取組をホームページ等を通じて広く国民に周知を図るとともに、自殺対策基本法(平成十八年法律第八十五号)第七条に定める自殺予防週間及び自殺対策強化月間において、集中的な広報を実施し、御指摘の「自治体や学校」を通じて「保護者や生徒」に対する周知を行っているところであり、「ゲートキーパー」の「普及」に向けて、更なる周知の強化に努めてまいりたい。
二について
お尋ねについて、政府においては、自殺の動向のより的確な把握のため、令和四年に、各都道府県警察において遺体の死因を自殺と判断した場合に案件ごとに作成する自殺統計原票の様式を改正し、当該原票の調査項目の「自殺の原因・動機」に対する回答項目に「SNS・インターネット上のトラブル」を新たに追加し、令和五年度からは、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」(令和五年六月二日こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議取りまとめ)に基づき、当該原票を集計した結果を含め、「警察や消防、学校や教育委員会、地方自治体等が保有する自殺に関する統計及びその関連資料」等を活用した、「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究」において、「こどもの自殺の特徴や傾向などを踏まえた要因の分析」を行っているところであり、当該研究結果を踏まえて、引き続き、こども(こども基本法(令和四年法律第七十七号)第二条第一項に規定するこどもをいう。以下同じ。)の自殺の実態解明に取り組むとともに、分析に当たっての課題把握に取り組んでまいりたい。
三について
御指摘の「自殺を思わせる検索」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、「自殺総合対策大綱」(令和四年十月十四日閣議決定)において、「支援を必要としている人が簡単に適切な支援策に係る情報を得ることができるようにするため、インターネット(スマートフォン、携帯電話等を含む。)を活用した検索等の仕組みや検索連動広告及びプッシュ型の情報発信など、生きることの包括的な支援に関する情報の集約、提供を強化し、その周知を徹底する」こととしており、これに基づき、支援を必要とするこどもを含め、御指摘のように「プッシュ型で相談窓口の案内を届けることができるよう」、例えば、インターネットで自殺に関連する用語が検索された場合にSNSや電話の相談窓口を掲載した厚生労働省のウェブサイト「まもろうよ こころ」を表示する等の取組のほか、インターネットバナー広告やSNSを活用した広告による相談窓口の案内等の取組を行っており、引き続き、こうした取組を推進してまいりたい。
四について
お尋ねについては、例えば、「児童虐待防止対策支援事業の実施について」(平成十七年五月二日付け雇児発第〇五〇二〇〇一号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知。以下「実施通知」という。)に基づく「児童相談所設置促進事業」において、「児童相談所の設置を目指す中核市、施行時特例市及び特別区・・・や児童相談所の増設を図る都道府県等」に対し、「設置準備に伴う事務手続等」や「研修等職員派遣」に係る費用の補助を行うなどしているところであり、引き続き、このような施策を通じて、児童相談所を設置する地方公共団体を支援してまいりたい。
五について
お尋ねの「専門性の高い職員」の「採用拡大や育成」については、御指摘のこども家庭センター(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第十条の二第二項に規定するこども家庭センターをいう。以下同じ。)については、例えば、地方公共団体に対して、「利用者支援事業の実施について」(令和六年三月三十日付けこ成環第百三十一号・こ支虐第百二十二号・五文科初第二千五百九十四号こども家庭庁成育局長及び支援局長並びに文部科学省初等中等教育局長連名通知)に基づき、御指摘の「統括支援員」等の職員の配置に対する補助を行っているほか、令和七年度から、実施通知に基づく「児童虐待防止対策研修事業」(以下「児童虐待防止対策研修事業」という。)を拡充し、こども家庭センターに配置される御指摘の「統括支援員」等の研修に要する費用の補助を行っているところである。
また、御指摘の児童相談所については、例えば、地方公共団体に対して、実施通知に基づく「児童福祉司等専門職採用活動支援事業」により、「学生向けセミナー、インターンシップ、採用サイト、合同説明会ブースなどの企画」や「採用予定者に対する研修」などの「専門職確保のための採用活動等」に対する補助を行っているほか、児童虐待防止対策研修事業により、「児童福祉司」や「児童心理司」等を対象とした「新任時研修や現任研修等」に対する補助を行っているところである。
引き続き、このような施策を推進してまいりたい。
六について
御指摘の「いわゆる毒親」及び「毒親に対しちゅうちょなく対処」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「ネグレクト」を含む児童虐待への対応については、御指摘の児童相談所においては、一時保護(児童福祉法第三十三条第一項又は第二項に規定する一時保護をいう。以下同じ。)について、「一時保護ガイドライン」(令和六年三月三十日付けこ支虐第百六十五号こども家庭庁支援局長通知別添)において、児童の安全確保のため必要と認められる場合には、当該児童や保護者の同意を得なくても一時保護を行うものと示すとともに、「児童相談所運営指針」(平成二年三月五日付け児発第百三十三号厚生省児童家庭局長通知)において、「リスクを客観的に把握し、リスクが高い場合には躊躇なく一時保護を行うこと」等を示しているほか、さらに、児童相談所においてきめ細かな対応ができる体制を整備するため、「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(令和四年十二月十五日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定、令和六年十二月二十三日再改定)において、令和八年度末までに児童福祉司を七千三百九十人程度に増員すること等を目標として取り組んでいるところである。
また、御指摘のこども家庭センターについては、令和六年四月一日から、児童福祉法第十条の二第一項の規定により、市町村は、こども家庭センターの設置に努めなければならないことと、同法第二十一条の十八第一項の規定により、同項に規定する家庭支援事業(以下「家庭支援事業」という。)の提供が必要であると認められる者に対して、家庭支援事業の利用を勧奨し、及びその利用ができるよう支援しなければならないこととされており、また、「こども家庭センターガイドライン」(令和六年三月三十日付けこ成母第百四十二号・こ支虐第百四十七号こども家庭庁成育局長及び支援局長連名通知)において、「児童虐待への予防的な対応を行うためには、・・・子育て家庭への積極的なアプローチが必要」であること等を示しているほか、令和六年度補正予算により、こども家庭センターが設置されていない市町村における設置の促進や、設置された市町村における家庭支援事業の導入や活用の促進などを促す「こども家庭センター設置・機能強化促進事業」を実施する等により必要な支援を行っているところである。
その上で、お尋ねについては、まずは、これらの施策を推進していくことが重要であると考えており、更なる「制度の改正」については、これらの施行の状況等を踏まえながら、必要な検討を行ってまいりたい。