答弁本文情報
令和七年六月二十七日受領答弁第二八七号
内閣衆質二一七第二八七号
令和七年六月二十七日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員杉村慎治君提出円借款の国内経済波及効果及び財源構造に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員杉村慎治君提出円借款の国内経済波及効果及び財源構造に関する質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねの「円借款の財源に用いられる財投債の発行からJICAへの資金貸付に至るまでの資金フロー」及び「発行主体、購入者、最終的な資金負担者の関係性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)が行う有償資金協力(円借款を含む。以下同じ。)のための資金調達の一部には、日本政府が発行し、金融機関等が購入する財政投融資特別会計国債(以下「財投債」という。)の発行による収入等を活用した財政融資が用いられており、その返済は、被援助国政府等からの円借款の返済等に基づき、JICAから日本政府に対して行われている。
一の2について
お尋ねの「その原資」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「財投債購入に当たって民間金融機関が用いる資金」については各金融機関によって異なることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
一の3について
お尋ねの「契約支出の実行段階において、円建てのまま日本国内で使用される割合」及び「円がドル等に転換されるケースが存在する場合、その割合と主な契約類型」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「円借款により供与された資金」に関し、令和四年度から令和六年度までにかけて供与を決定した合計百二十七件の円借款案件については、JICAが米ドルを調達し、変動金利にて米ドル建て借款として供与した三件を除き、全て、円建てのまま被援助国政府等に対して供与することとしている。
一の4について
お尋ねの「円借款供与に伴う国内円支出に必要な通貨供給は、制度上、日本銀行の信用創造に基づく流動性供給によって担保されている」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
二の1及び2について
お尋ねの「円借款の財源のために調達された財投債」、「政府全体の国債発行残高統計」及び「円借款を通じた政府債務は、いわゆるオフバランス債務として温存されている」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、財務省が公表している国債及び借入金並びに政府保証債務現在高においては、財投債の発行残高及び償還年限別の内訳を示しており、財投債の発行残高は国の負債となる。
二の3について
お尋ねについては、有償資金協力の財源、その決算の内容等を財務省及びJICAのウェブサイトで公表している。
三の1及び2について
お尋ねの「それに伴う貨幣供給」、「潜在的に発生している通貨発行益」及び「通貨発行益を財源とした場合の財政負担軽減効果」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、保有する国債の利息収入等である国債利息を含む日本銀行の収益については、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)等に基づき、所要の経費等を差し引いた上で、法定準備金等を控除し、その残額は国庫納付されることとなる。
四の1、2及び4について
お尋ねの「独立行政法人会計基準・・・に基づく帳簿価額と政府の財政統計(財政投融資特別会計・一般会計)との整合性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、円借款に係る債務救済措置としての債務免除等に係る会計上の処理については、JICAにおいて、将来的に放棄する可能性のある円借款に係る債権について、各年度の有償資金協力勘定の利益金から引当金を計上した上で、当該債務救済措置の実施に係る国際約束に基づき、順次、当該債務救済措置に係る債権を償却することで最終的に当該処理を行っているものと承知している。また、これまでに行った円借款に係る債務救済措置としての債務免除等の概算値については、外務省及びJICAのウェブサイトで公表しているが、政府から独立した会計処理が行われていることから、政府全体の財政統計においては明示的に示していない。
四の3について
円借款に係る債務救済措置の実施に係る政府における意思決定の過程については、外務省、財務省等において、債務救済措置に係る国際的な取決めを踏まえ、当該債務救済措置を採ることが適当であると考える場合には、外務省が当該債務救済措置を受ける債務国の政府との間で当該債務救済措置の実施に係る国際約束についての交渉を行い、当該交渉の結果を踏まえ、閣議決定を行った上で、当該国際約束を締結するとしている。円借款に係る債務救済措置の実施に係る国際約束の締結に当たっては、国会の承認を求めてきていない。円借款に係る債務救済措置としての債務免除等に係る会計上の処理については、JICAにおいて、将来的に放棄する可能性のある円借款に係る債権について、各年度の有償資金協力勘定の利益金から引当金を計上した上で、当該債務救済措置の実施に係る国際約束に基づき、順次、当該債務救済措置に係る債権を償却している。
五について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「円借款供与が金融市場に与える影響」に関する定量的な評価は政府として実施しておらず、また、お尋ねの「今後の分析方針」については、現時点では決定していない。