答弁本文情報
令和七年六月二十七日受領答弁第三〇〇号
内閣衆質二一七第三〇〇号
令和七年六月二十七日
内閣総理大臣 石破 茂
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員神津たけし君提出「地方創生二・〇基本構想」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員神津たけし君提出「地方創生二・〇基本構想」に関する質問に対する答弁書
一について
「地方創生二・〇基本構想」(令和七年六月十三日閣議決定。以下「基本構想」という。)の検討に当たっては、「新しい地方経済・生活環境創生会議」(以下「有識者会議」という。)において、地方での開催等を通じて、現場で地方創生に取り組む関係者、地方公共団体及び経済団体から丁寧に意見を伺い、令和七年五月二十二日の第九回の有識者会議において、「地方創生二・〇基本構想 骨子(案)」を提示するなどして、可能な限り早い段階で広く国民にお示ししたところである。
また、令和六年十月十一日に「新しい地方経済・生活環境創生本部」、同年十一月八日に「新しい地方経済・生活環境創生会議」を立ち上げ、基本構想の策定に向けて議論を続けてきており、その過程で基本構想の要素となる内容について国会において御議論いただいてきたところである。
二について
基本構想においては、御指摘の「地方創生二・〇について、地方が自ら考え、自主的・主体的に取り組んでいく」ことについて、「行政サービスの地域間格差が顕在化する中、拡大しつつある地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因・課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組んでいく」ことや「各分野の個別の事務について、それぞれの事務や地域に適した形で、垂直補完や水平連携、デジタル技術の活用等の取組を進めるとともに、市町村の体制や、国・都道府県が処理する他の事務との共通性等も踏まえ、地方公共団体と協力して、国・都道府県・市町村の役割分担や制度の枠組みの見直しまで踏み込んだ議論を進め、必要な対応を講じていく」ことを記述している。
政府としては、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となる地方分権改革を推進することとしており、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成二十六年四月三十日地方分権改革推進本部決定)に基づき毎年実施している地方分権改革に関する提案募集において、地方公共団体への事務・権限の移譲に係る事項も提案の対象としているところであり、地方からの提案に基づき、引き続き、必要な制度改正に取り組んでまいりたい。
また、事務・権限の移譲に伴う財源措置については、「令和六年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和六年十二月二十四日閣議決定)等において、地方公共団体において移譲された事務・権限を円滑に執行することができるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講ずることとしており、引き続き、必要な措置を講じてまいりたい。
三の前段について
御指摘の「食料自給率の向上」については、「食料・農業・農村基本計画」(令和七年四月十一日閣議決定。以下「基本計画」という。)において、食料安全保障の確保の観点から、令和十二年度の「供給熱量ベースの総合食料自給率」の目標を四十五パーセントと定め、当該目標の達成に向けて、「農地、人や生産資材等の資源を確保し、それらと、農業生産基盤の整備・保全、先端的技術の開発・普及とが効率的に組み合わされた農業構造へ転換し、土地生産性及び労働生産性を向上させることにより、食料自給力を確保する」こととしているところである。また、基本計画において、「二千二十四年六月に成立した「食料供給困難事態対策法」(令和六年法律第六十一号)や同法の基本方針に基づき、政令で指定する食料の供給が大幅に不足する兆候をとらえた早期の段階から必要な措置を講じることができるよう、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官及び農林水産大臣を副本部長とし、全ての国務大臣を構成員とする政府対策本部を食料供給困難兆候時から設置する。その上で、政令で指定した食料又は生産資材のうち供給を確保すべき食料又は生産資材の出荷販売業者や輸入業者、生産者等への出荷販売の調整や輸入の促進、生産の促進等の要請や消費者への情報提供・働き掛けを行うなど政府一体となって総合的な対策を講ずることにより、不測時の食料供給不足による国民生活等への支障の未然防止又は早期解消を図る」こととしているところであり、政府として食料安全保障の確保に万全を期してまいりたい。
三の後段について
御指摘の「都会との間で比較優位にあるという観点」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農業については、地方創生において重点を置いて取組を進めるべきと考えているところ、基本構想において、「稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生〜地方イノベーション創生構想〜」という観点から、「我が国の食料安全保障の観点も踏まえつつ、近年増加傾向にある農林水産物・食品の輸出やインバウンドに係る食関連消費額を更に拡大させる。そのため、観光事業者等とも連携しつつ、地域の特色ある農林水産物・食品など地域資源を活用した輸出拡大の加速化、食品産業の海外展開、農泊を始めとした里業、森業、海業等の取組へのインバウンド需要の取り込みを図る」こと及び「農林水産業の飛躍的な生産性の向上や環境負荷低減を実現するため、農地の大区画化、共同利用施設の再編・集約化、多収性・高温耐性等を備えた品種の開発・導入に加え、(中略)徹底的な効率化・省力化に向けたスマート農林水産業技術の開発及び普及を加速化する」こととしているところであり、農業の持続的な発展に向けて取組を進めてまいりたい。
四の1について
お尋ねについては、基本構想において、「十年後に目指す姿」として、「若者や女性にも選ばれる地方をつくる」こと、「地域資源を活用した高付加価値型の地方経済をつくる」こと、「安心して暮らせる地方をつくる」こと、「都市と地方が互いに支え合い、一人一人が活躍できる社会をつくる」こと及び「AI・デジタルなどの新技術が活用される地方をつくる」ことをお示ししているところである。
四の2について
政府としては、基本構想において記載のとおり、地方創生二・〇の実現のため、「あらゆる層に対し、地方創生に対する興味・関心を引き起こすことを意識した情報提供・広報活動、各種イベントや講演会・車座対話等を実施する」こととしており、基本構想で掲げる「新しい日本・楽しい日本」についても、丁寧に説明してまいりたい。
五の1について
御指摘の「基本構想で「十年後に目指す姿」として掲げられた十四の目標値」の達成は、東京一極集中の是正及び地方創生の実現に資すると考えている。
五の2について
お尋ねについて、基本構想においては、他国との比較や、地方自治体ごとの比較ではなく、地方の「稼ぐ力」を東京圏並みに高める観点から「十年後に目指す姿」として、「東京圏以外の道府県の就業者一人当たり年間付加価値労働生産性を東京圏と同水準とする」ことを提示したところである。
六について
前段でお尋ねの「将来の人口に関する数値目標」については、「こども大綱」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において、「結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものである。また、家族の在り方や家族を取り巻く環境が多様化している。個人の決定に対し、特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりすることは決してあってはならない」としていることを踏まえ、基本構想には盛り込んでいない。
後段のお尋ねについては、お尋ねのような推計は行っていないため、お答えすることは困難である。
七について
前段のお尋ねについては、基本構想においては、「今後、人口減少のペースが緩まるとしても、当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じ」ることとしており、「AI・デジタル技術等の先端技術を始めとする多様な技術を、地域課題や現場ニーズに応じて効果的に組み合わせる」ことや、「地方公共団体間の広域連携に伴う公共施設の集約化」、「広域的な拠点となる施設等の活用」、「サービス拠点施設の整備」、「デジタル技術の活用による遠隔地へのサービス提供を組み合わせる」等の施策を進めていく考えである。
後段のお尋ねについては、基本構想においては、「将来の地域の人口、その構成や分布などの具体的な姿を前提として、地域の在り方をそれぞれの地域で考えていくことが求められる」としているところであり、御指摘のような事態が生じないよう、地方公共団体等の取組を支援してまいりたい。
八について
前段のお尋ねについては、基本構想において、「関係人口を可視化する仕組み(ふるさと住民登録制度)の創設」に加え、「地域との関わり方等に応じて関係人口の類型化を行い、それぞれの類型に応じた施策を展開し、これらを一体的に地方公共団体や経済界等へ情報提供を行うとともに、関係人口に対する行政サービスの在り方等、制度面についても検討を行い、必要な措置を講じていく」こと及び「地方公共団体等が関係人口に係る取組を推進しやすい環境を整備するため、二地域居住等を含む地域と関係人口の関わり方を例示した地方公共団体向け手引の作成、新たな取組を生み出す場づくり等のための官民連携プラットフォームの運営、ふるさと納税の活用等を行う」こととしている。
また、後段のお尋ねについては、御指摘の「ふるさと住民登録制度」の具体的な制度設計について、現在検討中であり、現時点でお答えすることは困難である。
九について
御指摘の「二拠点居住」や「ふるさと住民登録制度」を踏まえた税制上の対応については、今後、必要に応じて検討するものであり、現時点でお答えすることは困難である。
十について
前段のお尋ねについては、基本構想においては、「若者や女性にも選ばれる地方をつくる」ことを重視しており、「異なる分野や領域に属する要素同士を従来にはなかった形で組み合わせる「新結合」」などによる「地域資源の高付加価値化」、「AI・ロボット・ドローン等の新技術」も活用した「魅力的な仕事づくり」や「本社機能の移転」、「アンコンシャス・バイアスの変革」などに取り組むこととしている。こうした取組により、「地方の魅力を高め、地方への転入希望を増やす環境整備」を進めること等により、「東京圏から地方への若者の流れを倍増する」ことを目指してまいりたい。
後段のお尋ねについては、「若者が地方に残りたい、東京圏から地方に戻りたい、地方に行きたいと思うことができる。また、地方に魅力的な学び場、働き場があり、若者が地方で学びたい、働きたいと思うことができる」という観点から、お尋ねの「指標」について、今後検討してまいりたい。
十一について
首都直下地震が発生した場合に備え、「政府業務継続計画(首都直下地震対策)」(平成二十六年三月二十八日閣議決定)を策定し、総理大臣官邸が被災して使用できない事態を想定し、東京圏内の三箇所を、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二十八条の二第一項の規定に基づく緊急災害対策本部の一時的な設置場所として位置付けている。
さらに、政府の業務継続のためには、あらゆる事態を想定する必要があり、東京圏以外においても、各府省等の地方支分部局が集積する各都市を中心に、既存施設の活用など、代替拠点の確保等に係る検討を行っている。
その上で、基本構想においては、「東京圏への一極集中の大きな流れは、・・・首都直下地震などの大規模災害時のリスクを高めている。」及び「過度な東京圏への一極集中により、・・・大規模災害リスクの可能性が指摘されている。」との認識の下、「国全体の持続的な発展のため、・・・人や企業の地方分散」に取り組むこととしている。具体的には、「政府関係機関の地方移転や、企業・大学の地方分散などに取り組むとともに、地方大学による人材育成機能の強化や、関係人口の創出に向けた都市と地方の新たな結び付き、人材の交流・循環・結び付きを促進する政策の強化、都市と地方の間や、地域の内外で人材をシェアする政策を進め、地方への新たな人の流れを創っていく」こととしている。
十二について
前段のお尋ねについては、御指摘の「南海トラフ地震や首都直下型地震によって全壊・焼失すると想定される全ての家」の再建については、被災者の意向等を踏まえると、再建の場所や方法等が様々であると考えられるため、お尋ねの「全ての家を建て替える場合」に要する期間の試算等を行っておらず、お答えすることは困難である。
後段のお尋ねについては、政府としては、被災者の意向等を踏まえ、被災した地方公共団体とも連携しながら、地方公共団体等による相談体制の整備及び住宅の再建を検討する際に参考となる情報の周知に対する支援、独立行政法人住宅金融支援機構による「災害復興住宅融資」等により、住宅の再建に向けて必要な対策を講じているところであり、今後も適切に対応してまいりたい。