答弁本文情報
令和七年十月三十一日受領答弁第一二号
内閣衆質二一九第一二号
令和七年十月三十一日
内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 木原 稔
国務大臣 木原 稔
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員八幡愛君提出盗撮犯罪の被害拡大に対応する包括的法整備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員八幡愛君提出盗撮犯罪の被害拡大に対応する包括的法整備に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「盗撮犯罪に関する法規定を一元的に整理し、全国で統一的に運用できる体制を整える」及び「適切な量刑判断を可能とする制度的余地」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、盗撮行為について、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和五年法律第六十七号)や各地方公共団体の条例等の複数の法令において、それぞれの目的に応じて罰則を定めていることには合理性があると考えており、また、一般論として申し上げれば、これらの法令の規定は適切に運用されているものと認識している。
二の1について
お尋ねの「職務悪用型の犯罪が有する特別な加害性」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
二の2について
お尋ねの「性犯罪で逮捕された公務員の依願退職及び退職金支給に関し、処分確定前に一律停止とする仕組みは推定無罪原則との関係で問題がある」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、刑事事件に関し逮捕された一般職の国家公務員から辞職の申出があった場合には、任命権者において、事実関係を十分に把握し、懲戒処分の要否等を検討した上で、できる限り速やかに承認の可否を判断するよう努めるものとされており、一律に辞職の承認を留保する仕組みとはなっておらず、また、当該国家公務員の退職手当については、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)第十三条第二項の規定に基づき、退職手当の支払を差し止める処分を行うことができるものとされており、一律に退職手当の支払を差し止めるものではない。
三について
お尋ねの「制度の対象範囲」及び「比例原則や期間制限を設けるべき」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和六年法律第六十九号)第二条第七項に規定する特定性犯罪及び同条第八項に規定する特定性犯罪事実該当者の範囲については、同法附則第六条において「政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案しつつ・・・特定性犯罪事実該当者の範囲を含め、児童対象性暴力等の防止に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされていることを踏まえ、必要な検討を行ってまいりたい。
四の1について
お尋ねの「盗撮画像及び盗撮動画を売買する違法な取引」の「市場規模や実態」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
四の2について
お尋ねの「盗撮画像及び盗撮動画で得た違法収益の没収」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、検察当局においては、個別具体の事案に即して、没収の要否について、法と証拠に基づき、適切に判断をしているものと承知している。
五の1について
お尋ねの「盗撮被害者及び被害者家族に対する心理的・社会的支援体制」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、警察庁においては、公認心理師等の資格を有するカウンセラーの確実かつ十分な配置に努めるよう、都道府県警察を指導しているところであり、全ての都道府県警察において、カウンセラーが犯罪被害者等に対するカウンセリングを必要に応じて実施する体制が整備されている。
五の2及び3について
お尋ねの「盗撮被害者が相談や削除要請などを行う際、家族も同時に支援を受けられる仕組み」及び「被害者家族が誹謗中傷やプライバシー侵害を受けた場合、国として法的・実務的に支援できる制度」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
六の1について
お尋ねの「国内発の盗撮画像・動画」及び「外交的・法的手段」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、一概にお答えすることは困難であるが、例えば、警察庁が民間事業者に運用を委託している「インターネット・ホットラインセンター」においては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十五条第一項に規定するわいせつな電磁的記録等、同センターが策定した「ホットライン運用ガイドライン」に定める「違法情報」に関する通報を受理した場合には、国内外のサイト管理者等への削除依頼を行うなど、必要な措置を講じている。また、法務省の人権擁護機関においては、インターネット上の人権侵害の情報に係る投稿についての相談を受けた場合には、相談者の意向に応じて、同機関において違法性を判断した上で、国内外のサイト管理者等に対して、当該投稿の削除要請をするなどしている。
六の2について
お尋ねの「プラットフォーマーなどと連携し、削除要請やブロッキング措置を進める国際協力体制を強化する」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、御指摘の「海外サーバーにアップロードされた盗撮画像の削除対応」について、お尋ねの「各国政府」やサイト管理者との協力が必要になる場合には、関係省庁間で連携の上、適切に対応していく所存である。
七について
「第二次再犯防止推進計画」(令和五年三月十七日閣議決定)において、「再犯の防止等のためには、罪種ごとに認められる特徴や各個人の特性を的確に把握し、それらに応じた効果的な指導等を行うことが重要である」としているところ、特に、性犯罪をした者等に対しては、刑事施設、少年院及び保護観察所において、それぞれ、認知行動療法の手法を取り入れた「性犯罪再犯防止指導」、「性非行防止指導」及び「性犯罪再犯防止プログラム」を実施している。
これらの取組は、再犯の防止等の推進に関する法律(平成二十八年法律第百四号。以下「再犯防止推進法」という。)第二条第二項に規定する再犯の防止等に一定の成果を上げているものと考えているが、矯正施設に在所中から出所後を通じて、より一貫性のある効果的な指導や支援となることが重要であると考えており、これらの取組の更なる充実を図ってまいりたい。
八の1について
矯正施設及び保護観察所においては、犯罪をした者等(再犯防止推進法第二条第一項に規定する犯罪をした者等をいう。以下同じ。)に対し、七についてで述べた「性犯罪再犯防止指導」等の認知行動療法の手法を取り入れた各種のプログラムを実施するとともに、就労を支援するため、矯正施設に在所中から出所後の職場定着までの計画的かつ一貫した指導や支援を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めていくこととしている。
八の2について
お尋ねの「加害者家族の孤立や経済的困難を防ぐ」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、犯罪をした者等の家族に対して、犯罪をした者等の社会復帰に向けた相談支援等を実施することは、犯罪をした者等とその家族との関係性によっては、犯罪をした者等の再犯防止や改善更生に資する場合があるものと考えている。
九について
お尋ねの「盗撮防止や被害者支援に取り組む民間団体は、独自にデータ収集や啓発活動を続けてきた。こうした団体に対し、公的助成や調査研究費などの支援を行う必要性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、性犯罪被害者支援に関しては、例えば、都道府県警察が行う犯罪被害者等からの相談への対応に係る業務等の民間団体への委託に要する経費や、性犯罪・性暴力被害者支援のために都道府県等が設置主体となり、民間団体に運営を委託するなどしている相談センターの運営等に係る事業に要する経費を、都道府県等に対して補助するなどしている。

