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令和七年十一月十八日受領
答弁第五一号

  内閣衆質二一九第五一号
  令和七年十一月十八日
内閣総理大臣 高市早苗

       衆議院議長 額賀福志郎 殿

衆議院議員長友よしひろ君提出クマ被害拡大に対する包括的対策及び共存に向けた制度設計に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員長友よしひろ君提出クマ被害拡大に対する包括的対策及び共存に向けた制度設計に関する質問に対する答弁書


一について
  
 御指摘の「地域特性・・・と環境変化・・・との関連性を踏まえた「被害発生モデル」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「クマ被害・出没の拡大要因をどのように体系的に分析しているか」とのお尋ねについては、環境省において開催している、クマ類に関する専門的知見を有する有識者や地方公共団体の職員等により構成される「クマ類保護及び管理に関する検討会」が令和六年二月八日に取りまとめた「クマ類による被害防止に向けた対策方針〜クマとの軋轢の低減に向けた、人とクマのすみ分けの推進〜」(以下「対策方針」という。)において、「人口減少・高齢化による中山間地域での人間活動の低下、里山の利用の縮小、耕作放棄地の拡大、放任果樹の増加等により、人の生活圏周辺がツキノワグマの生息に適した環境に変化しつつあり、集落周辺に定着した個体も見られる」、「各地域でブナ科堅果類をはじめとする秋季の主要な食物の資源量の影響を大きく受けており、食物資源量が大きく低下する時にはオスに加えて定着性が高いメスも秋期の行動圏が拡大する」等とされているとおりである。
 政府としては、この対策方針の知見も踏まえ、同年四月十五日に、クマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議において、「クマ被害対策施策パッケージ」を決定し、さらに、令和七年度において多くの地域でクマ類が人里に出没し、人身被害の件数が増加していることを踏まえ、令和七年十一月十四日に、クマ被害対策等に関する関係閣僚会議において、「クマ被害対策パッケージ」(以下「対策パッケージ」という。)を決定したところであり、これらに基づく対策を推進していくこととしている。

二について
  
 お尋ねの「「生活圏とクマ生息圏のゾーニング」・・・を含む包括的政策」の「制度化」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「クマ被害拡大に対する包括的対策」に係るお尋ねの「検討状況と今後の工程表」については、対策パッケージにおいて、「人の生活圏への出没防止」のための「緩衝帯の整備、電気柵の設置、人の生活圏周辺での追い払い、放任果樹(柿など)等の誘引物の管理」等の支援、「全国的な個体数調査・推計の実施」、「クマの生息環境の保全・整備」等について、「緊急的に対応すること、来春に向けて短期的に取り組むこと、中期的に取り組むことの三段階で迅速かつ着実に実行していく」こととしているとおりである。

三について
  
 お尋ねの「「地域別クマ対策モデル(広域的・越県的な連携を含む)」の策定」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「地域別クマ対策」の「策定」の「支援」については、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号。以下「法」という。)第七条の二第一項において、「都道府県知事は、当該都道府県の区域内において、その生息数が著しく増加し、又はその生息地の範囲が拡大している鳥獣(希少鳥獣を除く。)がある場合において、当該鳥獣の生息の状況その他の事情を勘案して当該鳥獣の管理を図るため特に必要があると認めるときは、当該鳥獣(以下「第二種特定鳥獣」という。)の管理に関する計画(以下「第二種特定鳥獣管理計画」という。)を定めることができる」と規定されているところ、環境省において、令和四年三月に「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)改定版」を策定し、「特定計画を作成または改定する際の参考として、最新のクマ類の生息状況や被害状況」等についての情報提供などを通じて、当該第二種特定鳥獣管理計画の策定を支援しているところである。
 また、お尋ねの「自治体・地元住民・林業関係者・NPO等が協働するための制度的枠組み」については、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号)第四条第一項において、「市町村は、その区域内で被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するため、基本指針に即して、単独で又は共同して、鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するための計画(以下「被害防止計画」という。)を定めることができる」と規定され、同法第四条の二第一項において、「市町村は、単独で又は共同して、被害防止計画の作成及び変更に関する協議並びに被害防止計画の実施に係る連絡調整を行うための協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる」と、また同条第二項において、「協議会は、市町村のほか、農林漁業団体、被害防止施策の実施に携わる者及び地域住民並びに学識経験者その他の市町村が必要と認める者をもって構成する」と規定されているところであり、当該協議会に対するお尋ねの「財政的支援」については、「鳥獣被害防止総合対策交付金交付等要綱」(令和四年三月三十一日付け三農振第二三三三号農林水産事務次官依命通知(最終改正 令和七年四月一日付け))に基づく鳥獣被害防止総合対策交付金において、当該被害防止計画に基づく「農林水産業等に被害を及ぼす鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等・・・、被害防除、生息環境管理等の被害防止対策」に対して支援を行っている。

四について
  
 お尋ねの「狩猟を担う人材の確保・育成の実態」については、例えば、法第九条第十三項及び第六十六条の規定に基づく捕獲者から都道府県知事等への報告について環境省が毎年取りまとめている鳥獣関係統計により、御指摘の「狩猟を担う人材」を含む捕獲の担い手の高齢化や減少が課題であると認識しており、これに対応するため、例えば、「指定管理鳥獣対策事業交付金事業実施要領」(平成二十七年四月十日付け環自野発第一五〇四一〇三号自然環境局長通知(最終改正 令和七年七月八日))に基づく指定管理鳥獣対策事業交付金により、都道府県が実施するクマ類の「捕獲技術者の技術向上・育成に向けた必要な取組」、都道府県及び市町村が実施する「指定管理鳥獣の捕獲及び捕獲に付随する事項」等の経費に対する補助を行っているところである。

五の前段について
  
 御指摘の「連携体制をどのように位置づけているか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、「野生動物被害が人命・生活に重大な影響を及ぼす場合」については、地域ごとにその態様は様々であると考えられることから、御指摘の「自衛隊・警察・自治体の連携体制」について一概にお答えすることは困難である。

五の後段について
  
 御指摘の「野生動物被害」については、地域ごとにその態様が様々であるため、お尋ねの「法的整理・運用指針」について一概にお答えすることは困難であるが、御指摘の「災害派遣」は、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十三条第二項において、防衛大臣又はその指定する者は、都道府県知事その他政令で定める者からの派遣要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる旨規定されているところ、これは、一義的には、御指摘の「野生動物被害」への対応を目的としたものではないが、防衛大臣又はその指定する者が同条第一項に定める都道府県知事その他政令で定める者から当該要請を受けたときには、その個別具体的な内容に応じ、法令の規定に従い、派遣するか否かを判断することとしているものである。また、御指摘の「地域防災計画」は、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条第二号において「防災」を「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう」と規定した上で、同条第十号において「一定地域に係る防災に関する計画」と規定しているところ、御指摘のように、この「枠組みの中で、野生動物被害に対応する」ことの検討は行っていない。

六の前段について
  
 御指摘の「「持続可能な地域づくり」の柱として位置づける」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、対策方針において、「人口減少・高齢化が進行し、中山間地域を中心に人間活動が縮小していく中で、クマ類を始めとする鳥獣被害対策を効果的・効率的に進めるための持続可能な地域づくりの観点から、被害対策の方法等について検討を行う必要がある」とされており、これも踏まえ、御指摘のように様々な「政策」を「一体で推進」することが必要であると考えている。

六の後段について
  
 御指摘の「再構築」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、クマ類による被害対策に係るお尋ねの「予算配分」については、「指定管理鳥獣対策事業交付金交付要綱」(平成二十七年四月十日付け環自野発第一五〇四一〇三号環境事務次官通知(最終改正 令和七年七月八日))に基づき措置してきた指定管理鳥獣対策事業交付金により、「クマ類の適切な保護管理を図り被害を防止するための総合的な対策の取組に要する経費」を令和六年度から拡充し、また、お尋ねの「研究開発」については、「環境研究総合推進費実施要綱」(平成二十八年十月一日環境省大臣官房総合環境政策統括官グループ決定(最終改正 令和六年九月十二日))に基づき措置してきた環境研究総合推進費として、クマ類等の鳥獣被害対策を含めた「環境問題を解決に導くための政策・・・の推進にとって不可欠な科学的知見の集積及び技術開発」を促進し、さらに、お尋ねの「モニタリング体制」については、対策方針において「個体群の安定的な維持を図りながら被害対策を進めていくために、保護管理ユニット全体での分布や個体数、人との軋轢の程度を評価するモニタリングを定期的に実施し、個体群が適正な生息状況となるよう、順応的な保護・管理を進める必要がある」、「このため、分布調査、捕獲個体に関する情報収集など人の生活圏周辺に生息する個体のモニタリングなどを継続的に実施し、経年的な生息動向を把握するとともに、モニタリング結果を踏まえ、順応的な管理を行う必要がある。また、被害管理に求められる農業被害や精神被害など社会的な許容度等の情報も収集・分析を進める必要がある」等とされているところ、これらを踏まえ、当該指定管理鳥獣対策事業交付金等により各地域における「モニタリング」の実施を支援してきたところである。引き続き、必要な対策について検討してまいりたい。

七について
  
 御指摘の「次世代クマ対策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、対策パッケージにおいて、「ICTやドローン等を活用したクマ被害対策や効果的な捕獲方法等の技術開発を支援するとともに、国においても効果的・効率的な個体数推定手法や出没リスクの評価等に関する研究開発を推進する」こととしており、今後これに基づき「技術開発」の「支援」や「研究開発」の「推進」を図ることとしている。

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