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昭和五十四年八月三十日提出
質問第四号

 小笠原諸島に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十四年八月三十日

提出者  鈴切康雄

          衆議院議長 (注)尾弘吉 殿




小笠原諸島に関する質問主意書


 本年四月一日、小笠原諸島振興特別措置法が改正・施行された。昭和四十四年以来、小笠原諸島復興特別措置法に基づく復興事業の実施で、政府及び東京都が果たした役割りは多大であるが、小笠原諸島の振興と島民生活の向上を更に推進するためには、多くの問題点が残されている。今回、小笠原諸島の内、父島・母島の実情をつぶさに調査して来たが、小笠原諸島の振興を図るため、いくつかの問題点を指摘し、その改善策について以下の諸点を質問する。

一 目標人口について
  小笠原諸島振興計画(以下「計画」という。)では、農業、漁業及び観光事業の育成発展が自然的特性に沿い、発展可能性のある産業であるとの観点に立つて、昭和五十八年度末人口を、短期滞在人口を含め約三千人(内、常住人口二千三百人)を予定しているが、これら産業の振興により、予定している人口を定着させることができるのかどうか。
二 集落地域について
  計画の中で、父島・母島に対しては一島一集落を原則としているが、戦前、集落を形成していた場所に対して、父島・母島共に見直しを図る時期に来ているのではないか。
  また、具体的に政府は、父島の扇浦、洲崎及びその周辺地区については調査・検討の上新たに集落地域に編入するとあるが、戦前人口五百人を数え、公共施設もあつた母島北村地区も同様に調査・検討する考えはないのか。
三 港湾整備について
  母島における沖港の港湾整備は、振興事業計画期間において内防波堤及び泊地の構築が予定されているが、所期の目標に対して工事が思うように進捗していない理由は何か。
  それとは別に沖港は、外防波堤の構築なくしては季節風や台風時における波浪には耐えることができない。
  日本最南端の漁港であり、最前線基地である沖港は、遠洋漁業としての避難港としても重要であることは論をまたない。内防が整備できたとしても、外防の整備なくしては画竜点リを欠くことになるが、外防の構築・整備をどのように考えているか。
四 空港整備について
  空港について計画の中では、自然環境に与える影響その他の調査結果を勘案の上、その設置の可能性等の基本的方向を検討するとあるが、空港整備については、振興法五カ年の間にはすべての基礎的調査を終え、設置の可能性を含めて何らかの具体的結論が出るのか。
五 通信施設整備について
 (イ) 放送法第一条(目的)には、放送が国民に最大限に普及されてその効用をもたらすことを保障するとあるが、小笠原においては情報真空地帯となつており、民生の安定と福祉の向上が阻害されている。
     テレビの受信施設を設置することは、もはや急務であり、日常生活の利便と情報化社会に対応するには欠かすことはできないが、今までにいかなる検討がなされて来たのか。また、その可能性とメドについてはどうか。
 (ロ) 母島における公衆電話は既に公共施設内に三台設置されているが、電話施設の不足は島民生活に多大な支障をきたしている。電話回線の増設について具体的方針はどうか。
六 農業生産基盤設備について
  生産の拡大及び安定を図るため、ほ場、農道及びかんがい排水施設等を整備拡充する必要があるが、農道の整備についてはいつまでに、どのように行うのか。
  また、母島にかんがい用のダムができているが排水施設は完備されず漏水がはなはだしい。
  これら排水施設の整備はいつ頃までに行うのか。
七 アフリカマイマイの駆除について
  農業振興を図り生産の安定と向上を図るためにはミカンコミバエ、アフリカマイマイその他の病害虫の防除を推進する必要がある。しかし、小笠原諸島、なかんずく父島、母島については国有地約七割、民有地約三割という現状の中にあつて、既にアフリカマイマイの汚染は国有林をはじめ農地のほとんどに及んでいる。政府及び東京都においては五十二年から五十四年まで農業指定地域六十三ヘクタール分に防除剤の現物支給をしているが、農地だけに散布しても焼け石に水であり、その被害は生産に多大な影響を与えている。農地におけるアフリカマイマイの防除はもちろんのことであるが、全体の約七割を占める国有林を野放しにしてはアフリカマイマイの駆除・撲滅ができるはずはない。政府はいかなる具体策をもつてこれの駆除を図つてゆくのか。
八 ミカンコミバエの駆除について
  ミカンコミバエについては、政府は汚染された果実及び蔬菜の内地に波及することを恐れ、薫蒸及び持込み禁止等の措置を講じている。先に、奄美大島においては農林水産省の直轄事業でその撲滅に多大の成果を納めたと聞いているが、小笠原諸島においてもミカンコミバエの絶滅を図らなければ、限定された出荷では生産の拡大につながらない。
  この際、農林水産省直轄事業として小笠原諸島のミカンコミバエ絶滅を図り、それに伴い限定出荷の枠をはずす考えはないか。
九 水産業の振興について
  水産業に従事する者への帰島促進及び新島民の導入は、生活環境が悪く困難をきわめている。なかんずく若年労働者を必要とするこれらの業種に対して、農業水産業の振興のための若年者用専用住宅の建設は諸施策の中の主要な柱であるが、その点についてどう考えているか。
十 漁業基盤整備について
  父島及び母島漁業協同組合の冷凍庫は狭小のため漁獲高に対応しきれないのが現状であり、従つて漁民に対して漁獲の制限をする事例も出ており、どうしても大型冷凍庫の設置が急務となつているが、どう対処するのか。
  また、父島二見港の漁協用冷凍庫のパイプは既に十年の歳月で腐食が著しい。もし冷凍配管の腐食によるアンモニアガスの漏洩ともなれば重大事故につながる危険性がある。冷凍庫内のパイプの取替えについてどう考えているか。
十一 協業化対策について
  協業化を図るため、共同利用施設の整備を促進するとともに漁業協同組合を育成強化すると計画にあるが、漁業協同組合の育成・強化とはいかなることを意味しているのか。
  現在、小笠原漁業協同組合は父島・母島を一本化した漁業協同組合であるが、父島・母島はそれぞれ独立した島であり、地理的にも遠距離であり、自然環境も異なる状況下にある。ゆえに父島・母島の漁協の分離ということが必要であり、そのことが漁協の育成・強化につながると思うが政府はどのような見解をもつているか。
十二 石油の確保について
  小笠原諸島及び伊豆七島は漁業が主たる産業になつている所が多い。
  今日における石油不足の異常事態は漁民にとつて大きな懸念と不安の材料となつている。現に各島の軽油、重油のストックは底をついており、価格も前年に比し急騰している現状である。零細漁業者の生活安定の為、石油の確保に政府としてどのような具体的措置を講じようとしているのか。
十三 試験研究施設整備について
  水産業の試験研究の充実を図るため、水産試験場を整備・拡充する必要がある。
  小笠原諸島は青海亀の生息地としても有名である。昨今、国際的に捕獲が制限されている中にあつて、青海亀の生態研究及び放流と養殖は自然的特性と発展可能性を活用した産業振興の一つでもあり、観光として、また、豊富なタンパク資源としても重要な役割を果たしている。
  現在養殖されている東京都水産センターの試験研究施設は狭わいで、産卵したり、孵化したりする場所としては適当とは言えない。東京都水産センターの施設の拡充・整備のため、大幅な助成措置を講ずる必要があると思うがどうか。
十四 保健衛生施設整備について
  島民の健康管理、医療の確保は特に欠くべからざる重要な問題であり、島民の関心も特に強い。父島・母島には当然保健所出張所設置が必要であるが、保健所出張所の設置時期及び規模についてどのように考えているのか。
十五 医療の確保について
  医療サービスの確保を図るため診療所の管理運営体制を充実する必要があるが、離島への医師の確保は困難をきわめている。
  医師の確保あるいは派遣について、具体的にどのような方法を東京都と共に講ずる考えか。
  なかんずく、出産については八カ月以上の妊産婦は船旅はできず、早期に内地へ行かなければならないという条件下にあるため滞在日数も多く、莫大な費用を必要とするが、この出産の問題についてはどのように考えているのか。
十六 白アリ駆除について
  父島における白アリの異常発生は年々その度を加え、公共施設及び民家の木造建築物に多大の被害を与えている。これら白アリは建物は勿論、国有林の老木・枯木に巣をつくり、五、六月の雨期には新しい巣造りのため無数の白アリの群が飛散し、住民の不安は増大している。建造物でも白アリに侵食されると、四、五年もたたぬうちに土台はおろか柱まで食いあらされ使用不能になる。
  これらの白アリ駆除は民家の個人的負担による駆除ではもはやおぼつかない現状である。この白アリ駆除に対しいかなる具体的対策を講ずるのか。
十七 松食い虫の駆除について
  父島及び母島において松食い虫の被害が年々増大しているが、現地ではほとんど放置されたままでいるのが現状である。
  政府は公害の防止及び自然環境の保全に配慮すると述べているが、松食い虫の駆除については具体的にどう対処するのか。
十八 公共建物について
  父島にある公共施設のうち、国土開発事務所と東京都の支庁はいずれも同一の建物の中にあり、白アリ被害と老朽化で危険家屋となつている。今回村政が初めて施かれた村役場は、米軍が診療所として使用していた建物であり、これまた公共施設とは言い難い。また、警察署には留置場がないため凶悪犯罪者を収容することは非常に危険である。これらの公共施設を整備し新生小笠原にふさわしい建物にする必要があると思うがこの具体的対策はどうか。
  また、母島郵便局に隣接する赤レンガの建物は現在使用されてないが、島民のために有効利用する考えはないか。
十九 硫黄島問題について
  計画では今回、硫黄島については総合的な調査等の上、帰島及び開発の可能性を検討するとなつているが、帰島を希望する島民は非常に多い。中野国土庁長官は小笠原視察の際、硫黄島まで視察をされたと聞くが、硫黄島の遺骨の収集、不発爆弾の処理は当然のことながら、親・兄弟・親類・友人を戦火でなくした旧島民の硫黄島への訪島希望をかなえてやる考えはないか。
  帰島及び開発の可能性への検討は、振興法五力年の期間中に結論が出ると判断してよいか。

 右質問する。





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