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平成十年三月二十七日提出
質問第二〇号

死刑の必要性、情報公開などに関する第三回質問主意書

提出者  保坂展人




死刑の必要性、情報公開などに関する第三回質問主意書


 二月十七日提出の「死刑の必要性、情報公開などに関する再質問主意書」(以下「再質問主意書」とする)に対する三月二十四日の政府答弁書(以下「答弁書」とする)は、死刑に関する従前の答弁書よりやや具体性を持つ内容となったが、依然として「役所言葉」とでも言うべき閉鎖的、抽象的で国民、納税者になじまない用語を使っている。また、答弁が明確でない箇所や合理性を欠く部分、従前と趣旨が異なる答弁もあるので、以下第三回質問をする。
 国政が公正、適正に運営されているかどうかの調査を行おうとする議員に対し「個々具体的な事項は答弁を差し控える」などという答弁は、国政に対する検証はもとより、問題点の指摘や議論を封じ込める姿勢と受け止めざるを得ない。三権の中で行政のみが情報を独占した上で、超然と権力の行使に当たり、多くの人の命を奪った戦争などの悲惨な歴史に照らし、こうした態度は直ちに改められるべきである。とりわけ、国が人命を奪う死刑は運用に誤りがあった場合、取り返しがつかない問題であり、立法府には公正、適正に運用されているかどうか検証する重大な責務があると考える。「個々具体的なことは答弁できません。刑場も見せられませんが、ちゃんとやってますから大丈夫です」という姿勢は国民主権、三権分立を定めた憲法に背く態度であり、第三回質問に当たっては、答弁姿勢の是正を強く求める。今般の答弁姿勢は間もなく国会に上程される情報公開法案の審議にも大きく影響すると考える。
 なお、第三回質問に当たり、再質問を提出した二月十七日以降、地下鉄サリン事件の実行犯とされるオウム真理教の元医師林郁夫被告に対して、東京地検が組織犯罪の解明に前例のない協力をしたことや被害者の遺族が極刑を求めていないことなどを理由に無期懲役を求刑したほか、死刑を含む法定刑が盛り込まれた組織犯罪対策法案が国会に上程され、死刑をめぐる論議に大きな影響を与えたため、新たな質問項目も一部付け加えた。

一 死刑の必要性について
 (1) 一般的に事実関係、情報が十分に公開されていないテーマについて、世論調査を実施する場合、回答者には前提として必要な情報を提供しなければならないと考えるか。また、世論調査の結果が調査する側にとって都合のいいものになっているとの批判、誤解を避けるためには、どうすればいいと考えるか。
 (2) 答弁書の「一の(1)について」によると、死刑制度の存廃についての一九九四年総理府世論調査の選択肢は「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」「場合によっては死刑もやむを得ない」「わからない・一概に言えない」となっていたようだが、この選択肢はだれが決めたのか。また、回答者には必要な情報が十分に提供されていたか。
 (3) 前記の選択肢に「場合によっては死刑廃止もやむを得ない」「どんな場合でも死刑は必要である」という項目がないのはなぜか。
 (4) 答弁書「一の(2)について」に記載された一九五六年から八九年に実施された五回の世論調査では、「どんな場合でも死刑を廃止しようという意見に賛成か、反対か」と質問したようだが、単に「死刑を廃止しようという意見に賛成か、反対か」と質問しなかったのはなぜか。
 (5) 「今後も、死刑制度の存廃を考える上での参考に資するため、必要に応じて、死刑制度に関する世論調査の実施を検討することとしている」とあるが、現在検討しているか。
 (6) 答弁書「一の(3)について」に記載されたドイツ、イギリスのケースはだれの分析か。あるいはどういう根拠に基づく意見か。
 (7) 二月十三日付け政府答弁書では、死刑制度の存廃は「基本的に各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものと考えている」としていたが、今回の答弁書で「諸外国における動向や経験も参考にする必要があると考えている」と付け加えたのはなぜか。
 (8) 「諸外国における動向や経験も参考にする」ために、現在どのような調査や実情把握、その他の措置を講じているか。
 (9) 答弁書「一の(5)について」には、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「規約」とする)は「為政者等の個人又は団体の恣意により個人の生命を奪うことは許されず、個人の生命を奪う場合には、各国の法制に従い適正な法の手続に基づく必要がある旨を規定したものであると考える」とあるが、死刑の執行に当たり「為政者等の個人又は団体の恣意」を許さないために、どのような措置が講じられているか。また、立法府や司法がこうした「恣意」がないことを検証できるシステムを説明されたい。
 (10) 前記の「適正な法の手続に基づく」死刑の執行がなされているかどうか、立法府や司法が検証できるシステムはあるか。
 (11) 規約が「死刑の存在を前提とした規定」と判断する根拠を明らかにされたい。
 (12) 報道によると、検察が死刑を求刑した事件で、高裁が無期懲役の判決を宣告したため、上告したケースが昨年から今年にかけて、五件相次いだようだが、この五事件と地下鉄サリン事件について、答弁書「一の(6)について」記載の犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響の異同を明らかにされたい。
 (13) 林郁夫被告には無期懲役を求刑し、前記五事件では裁判所の無期懲役判決を受けても死刑を求め続ける合理的な理由は何か。
二 死刑の情報公開について
 (1) 答弁書「二の(1)について」によると、死刑制度の存廃は「国際社会で関心を集めている事項の一つであると認識している」のに、なぜ情報の開示は「各国が判断すべきものである」と理解するのか、その理由と根拠を明らかにされたい。
 (2) 答弁書「二の(1)について」には「死刑に関する情報については、統計等により可能な限り公表しているものであって、現状で十分であるとの認識の下に」国連決議に参加したとあるが、答弁書「二の(4)について」によると、法務統計月報に掲載されていた月別の死刑執行件数を記載しなくなった理由は「関係部局においてこれを登載しなくとも業務上の支障はないものとされたことから、登載を取りやめたものである」という。国連決議に参加する前提としての「可能な限り」の情報公開とは、関係部局が「業務上の支障はない」とすれば、やめてしまう程度のものか。
 (3) 答弁書「二の(1)について」では「諸外国における公表の程度については、必要が生じた場合には把握していく所存である」とあるが、米国のカーラ・タッカー死刑確定者の執行をめぐり、日米の情報公開の余りの格差が次々に報道されるなどした現在、その必要は生じていないと考えるか。
 (4) 再質問主意書の二の(2)では、一月十三日付け政府答弁書の誤りがあった理由をただしたのであり、答弁書「二の(2)について」の内容は明確な答弁となっていない。誤っていないと考えるならば、そのとおり答弁し、事実誤認を認めるならば、誤った理由を示されたい。
 (5) 答弁書「二の(4)について」記載の「関係部局」とは、具体的にどこのことを指すのか。
 (6) 答弁書「二の(5)について」に記載された日米の「刑事法制等の違い」を具体的に明らかにされたい。
 (7) 答弁書「二の(6)について」には、情報公開の程度と国内世論の関係については「判断が困難な問題である」とあるが、こうしたテーマについては多くの論文もあるのに、なぜ困難なのか、理由を示されたい。また、法務総合研究所などでは研究していないのか。
三 死刑確定者の「心情の安定」について
 (1) 答弁書「三の(1)について」記載の訴訟が提起されたケースは戦後、何件あるか。それぞれについて、概要、訴訟の結果、敗訴の場合はそれをどのように受け止めたかをそれぞれ具体的に明らかにされたい。
 (2) 答弁書「三の(2)について」と二月十三日付け政府答弁書「三の3について」によれば、死刑執行の事実を公表することによって、執行された確定者の遺族の感情、ほかの死刑確定者の心情の安定などに影響を与えた実例は把握していないが、それは「十分推測される」という。政府が「推測」に基づいて行政の執行に当たる他の実例を具体的に示されたい。
 (3) 答弁書「三の(3)について」記載の一九六三年の法務省矯正局長依命通達が出された理由、背景を明らかにされたい。また、三十五年前の通達が改正されることもなく、現在も根拠となっているのか。根拠となっているとすれば、三十五年間、死刑確定者の面会、信書の発受、物の授受について、問題となるケースはなかったのか。
四 恩赦について
 (1) 答弁書「四の(4)について」によると、恩赦出願者が恩赦不相当の議決を不服として争う手段はないとのことだが、刑務所や拘置所に勤務していたという戸谷喜一さんの著書「死刑執行の現場から」(一九九七年、恒友出版刊)には、死刑確定者に拘置所長から執行命令が出されたことが通知される際、所長が「恩赦の手続きを取っておりましたが、このたび却下の通知を受けました。誠に残念ですが今日、君とお別れすることになってしまいました」と伝えたとの記載がある。死刑確定者に対する恩赦不相当の通知が執行直前になされることもあるのか。
 (2) 執行直前に恩赦不相当の通知がなされる可能性があるとすれば、代理人による恩赦出願の場合、本人と代理人が不相当の議決について話し合う時間がないことになるが、相当と言えるか。
五 死刑をめぐる国際状況、国連への報告について
 (1) 答弁書「五の(1)について」には「種々の国際会議等における各国の対応等から国際的には様々な考え方があると認識している」とあるが、死刑の国際状況についてどのように認識しているのか、具体的に存置国、廃止国の歴史的経緯、現状を明らかにされたい。
 (2) 答弁書「五の(2)について」によると、一九九四年の国連総会における死刑決議案に対する日本政府の立場を国会に報告しなかったのは、従来からの政府の立場を踏襲したものだったから、必要ないと判断したそうだが、死刑以外の国連決議で同様に国会への報告が必要ないと判断したケースを具体的に示されたい。
 (3) 答弁書「五の(4)について」によれば、死刑制度をめぐる問題は人権の問題にかかわるものと認識されているようだが、人権問題であるならば、死刑の存廃はもとより、情報公開や死刑確定者の処遇などはそれぞれの国において独自に判断することは相当か。国際状況を踏まえた判断が必要とは考えないのか。
 (4) 答弁書「五の(5)について」記載のロビンソン国連人権高等弁務官からの要望に対して、政府はどのように回答したか。
六 死刑執行の起案、決裁及び再審について
 (1) 答弁書「六の(1)について」記載の「所要の措置」とは具体的にどのような措置か。
 (2) 答弁書「六の(3)について」では、死刑確定者が再審で無罪となった四事件について、なぜこうした事態に立ち至ったと考えるかは「具体的事件の捜査手続又は刑事裁判手続における検察官及び裁判所の判断にかかわる事柄であるので、答弁は差し控えさせていただきたい」とあるが、立法府が再び冤罪による甚大な人権侵害を生まないために、過去の事件を具体的に検討することを阻むのか。
 (3) 前記答弁において「再審の判決においては、捜査又は公判にかかわる問題点が指摘されているが、検察当局においては、これを深刻に受け止め、適切に対処しているものと考える」とあるが、「適切な対処」として、具体的に何をしたのか明らかにされたい。
 (4) 答弁書「六の(5)について」記載の「基本的な事項」とは具体的に何かを明らかにされたい。また、基本的でない事項は絞罪器械図式(明治六年太政官布告第六十五号)とは異なるのか。
 (5) 立法府が法令に定められたとおり適法に死刑が執行されているかどうかを検証することを行政府が阻む権限はあると考えるか。あると考えるならば、法的根拠を示されたい。
 (6) 過去に国会議員や裁判官、弁護士、司法修習生、報道関係者などが刑場を視察したことはあるか。具体的に明らかにされたい。
七 死刑の執行について
 (1) 死刑廃止条約の批准を訴えるNGOなどによると、法務省は組織犯罪対策法案の国会上程に忙殺され、死刑執行のための準備ができない状況にあると言われているが、事実か。
 (2) 組織犯罪対策法案が国会に上程されたため、四月上旬に死刑を執行する準備を急いでいるのか。

 右質問する。





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