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答弁本文情報

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平成十年五月一日受領
答弁第二〇号

  内閣衆質一四二第二〇号
    平成十年五月一日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出死刑の必要性、情報公開などに関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出死刑の必要性、情報公開などに関する第三回質問に対する答弁書



一の(1)について

 世論調査は、調査テーマについて広く国民全体の意識を把握することを目的として、統計的理論に基づき無作為に抽出した者を対象に実施している。したがって、一般的に国民の間で事実関係、情報が広く認知され、かつ、関心が高いテーマを選定しているところである。なお、個々の質問の調査に当たっては、必要に応じ、調査員から語句の定義等の補足説明を行っている。
 また、世論調査の実施においては、統計的理論に基づく調査対象者の抽出を行うとともに、設問についてもできるだけ中立客観的な聞き方とし、御指摘の批判、誤解を受けることがないよう努めているところである。

一の(2)について

 平成六年九月実施の総理府世論調査における死刑制度の存廃に関する質問は、法務省において案を作成し、総理府において世論調査実施の専門的機関としての見地から検討を加えて、作成されたものである。
 当時、死刑制度の存廃の問題に関しては、新聞等による報道、各種出版物等を通じて、死刑判決が言い渡された個々の事件の内容等はもとより、様々な議論、諸外国の動向等が伝えられていたものと認識している。

一の(3)について

 平成六年九月実施の総理府世論調査における死刑制度の存廃に関する質問については、死刑制度の存廃に関する我が国の議論があらゆる犯罪について死刑を全面的に廃止すべきか否かというものであることを踏まえて、「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」及びこれに対応する反対意見である「場合によっては死刑もやむを得ない」並びに「わからない・一概に言えない」との選択肢が適当であると考えられたものである。

一の(4)について

 御質問の政府の世論調査における死刑制度の存廃に関する質問については、死刑制度の存廃に関する我が国の議論があらゆる犯罪について死刑を廃止すべきか否かというものであることを踏まえたものである。

一の(5)について

 死刑制度の存廃に関する動向、平成六年九月に死刑制度に関する世論調査を実施してからの経過年数等を踏まえ、必要に応じて、死刑制度に関する世論調査の実施を検討することとしている。

一の(6)について

 死刑制度の存廃等に関する種々の文献等において、ドイツ連邦共和国については、ナチスによる死刑の乱用の経験があった旨、イギリスについては、謀殺について死刑が絶対刑として定められていたことがあった旨それぞれ記述されている。

一の(7)について

 死刑の必要性、情報公開などに関する再質問に対する答弁書(平成十年三月二十四日内閣衆質一四二第一〇号。以下「前回答弁書」という。)一の(4)についてでは、死刑制度の存廃の問題を考えるに当たって、諸外国における動向や経験も参考にする必要があると考えているので、その旨お答えしたものであるが、この問題は、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものと考えていることに変わりはない。

一の(8)について

 従来から、死刑制度に関する種々の資料、文献の収集、種々の国際会議における各国の対応等から、必要に応じて可能な範囲で諸外国における死刑制度の存廃、復活に関する動向や経験の把握に努めているところである。

一の(9)及び(10)について

 死刑は、適正な法の手続に基づいて言い渡された確定判決により、執行しているものであって、当該裁判の内容については、裁判公開の原則により明らかにされている上、死刑執行の事実については、毎年の統計において執行数を公表しているところである。これに加えて、死刑の執行は、死刑の必要性、情報公開などに関する質問に対する答弁書(平成十年二月十三日内閣衆質一四二第一号)六の1について及び前回答弁書六の(1)についてでお答えしたとおり、極めて慎重な手続を経て行われているのであって、刑罰権行使の適正は十分図られているものと考える。

一の(11)について

 前回答弁書一の(5)についてで、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)六条4及び5が死刑の存在を前提とした規定であるとお答えしたものであるが、同条4が「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。(以下略)」と規定し、同条5が「死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、(以下略)」と規定していることから、これらの規定は死刑の存在を前提としているものと認識している。

一の(12)について

 昨年から現在まで、第一審の死刑判決を破棄して無期懲役を言い渡し、又は第一審の無期懲役の量刑を是認した控訴審の判決に対し、検察官が上告を申し立てた事件は、五件である。これらの事件及びいわゆる地下鉄サリン事件は、いずれも裁判所に係属中であるので、その犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等の異同について答弁することは差し控えさせていただきたい。

一の(13)について

 具体的事件においていかなる求刑が相当であるかは、検察官において、各事案ごとに各般の情状を併せ考察して個別に判断すべき事柄であり、これを単純に比較することはできない。

二の(1)について

 死刑制度の存廃が国際社会で関心を集めているということと死刑に関する情報の開示を各国において判断すべきものであるということは、別問題である。

二の(2)について

 法務統計月報は、本来、統計項目の月ごとの傾向を速報するという業務上の要請に基づいて、統計項目を決めているものであり、国連決議にいう情報公開とは異なる要請に基づいて刊行しているものである。

二の(3)について

 諸外国における死刑に関する情報の公表については、現在でも国連事務総長報告書等により必要に応じて可能な範囲で把握している。

二の(4)について

 誤りがあったものとは考えていない。

二の(5)について

 御指摘の「関係部局」とは、法務省刑事局及び同省矯正局を指している。

二の(6)について

 例えば、米国テキサス州では、死刑の執行を受ける者がその執行に際し、立会人を選べることができるが、我が国においては、そのような法制は採られていない。

二の(7)について

 御指摘の問題は、その時々の社会情勢、国民感情等の計測困難あるいは不確定な要因にかかわるものであるからである。
 なお、法務総合研究所において御指摘のテーマについて研究した例はない。

三の(1)について

 御指摘の訴訟については、調査し得た範囲で二十二件であり、それぞれの概要及び訴訟の結果は、別紙のとおりである。確定した敗訴部分については、真摯に受け止めている。

三の(2)について

 例えば、刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)においては、保管検察官は、必要があると認めるときは、保管記録の保管期間を延長することができるとされているが、必要があると認められるときとは、保管記録に関連する民事訴訟の提起が合理的に推測される場合等である。

三の(3)について

 御指摘の通達は、死刑確定者の面会及び信書の発受の許否に関し、心情の安定に配慮しつつその身柄を確保するという収容の目的等にかんがみ、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)の趣旨にのっとった遺憾なき運用がなされることを目的として発出されたものであるところ、現在もなお有効であり、同通達自体に特段の問題があるとは考えていない。

四について

 一般論として申し上げれば、恩赦不相当の結果の通知については、刑の執行の時期に関係なく行われているが、問題はないものと考えている。

五の(1)について

 死刑の国際状況について、すべての死刑存置国及び廃止国の歴史的経緯及び現状を把握しているわけではないが、千九百九十四年(平成六年)の第四十九回国連総会第三委員会における死刑決議案について、イタリア等の三十六か国が賛成票を投じたのに対し、我が国及び米国等の四十四か国が反対票を投じ、オーストラリア等の七十四か国が棄権したこと等、種々の国際会議等における各国の投票態度及び立場表明から判断して、死刑に関する各国の考え方は様々に分かれており、その存廃について国際的に一致した意見はないと考えられる。

五の(2)について

 国連においては、総会を始めとする各種機関で多くの決議がなされているが、それぞれの決議案への対応及び表決の結果を国会に報告することはしていない。

五の(3)について

 死刑制度の存廃に関しては、前回答弁書一の(4)についてで、死刑に関する情報の公表に関しては、同答弁書二の(1)についてでそれぞれお答えしたとおりである。
 死刑確定者の処遇などについても、諸外国における動向や経験も参考にしつつ、各国において、当該国の国民感情、刑事法制等の国内事情を勘案して、判断されるべきものと考えている。

五の(4)について

 政府としては、今後とも検討を続けていきたい旨述べた。

六の(1)について

 刑の執行停止、再審の請求又は非常上告等の措置である。

六の(2)について

 死刑が確定した事件が再審により無罪となるに至った原因については、これらの具体的事件の捜査手続又は刑事裁判手続における検察官及び裁判所の判断にかかわる事柄であるので、政府として答弁を差し控えたものであり、立法府の検討を妨げようとするものではない。

六の(3)について

 検察当局においては、これらの事件に係る再審の判決において指摘されている問題点を踏まえて、信用性のある供述の確保とその裏付け捜査の徹底、証拠物やその鑑定等の客観的な証拠の十分な収集、検討等に一層の意を用い、事件の適正な捜査処理に努めている。

六の(4)について

 刑具についての基本的な事項とは、開落式踏板上の受刑者の身体の自重によって絞首する機構と理解しており、基本的な事項については、異なるところはない。

六の(5)について

 死刑の執行などに関する質問に対する答弁書(平成十年一月十三日内閣衆質一四一第二一号)一の6についてでお答えしたとおり、個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えてきたところである。

六の(6)について

 相当以前に御指摘の視察があったこともうかがわれるが、その資料は見当たらない。

七について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁は差し控えさせていただきたい。



別紙
死刑確定者の面会・信書の発受・物品の授受に関する訴訟

別紙 死刑確定者の面会・信書の発受・物品の授受に関する訴訟


別紙 死刑確定者の面会・信書の発受・物品の授受に関する訴訟


別紙 死刑確定者の面会・信書の発受・物品の授受に関する訴訟




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