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平成十年五月八日提出
質問第三二号

「介助犬」の公的認定と普及促進に関する質問主意書

提出者  大野由利子




「介助犬」の公的認定と普及促進に関する質問主意書


 日本の肢体不自由障害者の方々は現在百四十万人以上といわれ、中でも家族と共に暮らすことが出来ない障害者の割合も増加していくことが予想される。しかし、肢体不自由障害者が社会的に自立したくても、多額な介護・介助費用の問題や、介護者や介助者への気兼ね等の精神的理由により、その願いが十分に果たされていないのが実状である。また、高齢社会の到来を目前に、肢体不自由の高齢者の数も増加していくことが予想され、これら肢体障害者の方々がより不自由なく暮らしていける対策を講じることがますます必要とされている。
 こうした状況の中、新しい可能性として注目され始めたのが介助犬である。介助犬とは、肢体障害者や高齢者の日常生活の中で身体機能を代行する犬を指す。欧米では既に五千頭が活躍しており、介助犬は公共施設や交通機関、ホテルやスーパーマーケットなどにも同伴出来るほど市民権を得た存在である。介助犬はまた、障害者や高齢者の情緒の安定や自立心向上をもサポートし、彼らの社会的ネットワーク拡大にも貢献している。近年米国で行われた研究によると、介助犬のもたらす効果として、障害者における経済的有用性と社会性の向上が確認されたということである。研究では介助犬により脊髄損傷等の障害者の登校率や出社率が向上し社会性の向上が見られたと同時に、介助にかかる費用が一人当たり年間百三十万円削減されたと報告されている。
 一方、我が国では介助犬の数はまだ少なく、育成された介助犬はまだ十頭に満たないという。四、五年前からいくつかの民間活動団体が独自の方法で育成を行っているが、訓練士の資格や基準がないため、各団体によって育てる犬の質や能力は均一でなく、法的な裏付けもないまま、それぞれが独自に「介助犬」を名乗っているのが現状である。公的機関をはじめ、一般社会においても介助犬の受け入れは厳しい状況にある。
 米国では連邦法で、交通機関、職場、学校など公共施設への介助犬の出入りを保証している。欧州でも介助犬は比較的受け入れられている。しかし日本ではまだ介助犬同伴で入れる場所は限られている。昨年四月、介助犬同行で来日した米国女性がホテルやレストランで利用を拒まれ、公共交通機関に乗るために何枚もの申請書を提出させられるという事態がマスコミに報じられた。同年秋に来日した肢体障害の米国人男性は介助犬同伴での国内での移動を航空会社に断られた。視覚障害者をサポートする盲導犬と違って、介助犬はいまだペット扱いにすぎず、社会的に認知されていない。
 以上のような背景から、介助犬をより普及させていくべきとの認識により、以下の質問をする。

一 介助犬の認定について、視聴覚障害者をサポートする盲導犬と同様に法的根拠を持たせていくべきだと思うが、政府の見解を問う。
二 また現在、関連施設及び訓練士に関する法的資格や基準がないことで、民間の業者によるトラブルも起こりうる。政府はこれらについても早急に法的基準を整えるべきと考えるが、政府の見解を問う。
三 法的認定がなされていない事から、先に挙げたような搭乗拒否や乗車拒否等の問題が起きているが、交通機関や公的機関において介助犬が盲導犬と区別されて扱われるということは、肢体障害者を差別することにもつながる。介助犬受け入れの通告が交通機関、公的機関、さらに民間団体にもなされていくべきだと考えるが、どうか。
四 介助犬が推進され普及することについて、政府はこれに異論はないか。さらにこれを支持していく意思はあるか。
五 既存の民間施設や訓練士育成への助成金による援助によって、普及を図るべきと考えるが、どうか。
六 介助犬は障害者や高齢者の事情によって幅広い適応が可能であるが、症状の特殊性や社会的・家族的背景を把握した上で、介助犬の要・不要、どの犬が最適かということが処方されていくことが不可欠と考えられる。そこで、障害者や高齢者に対する介助犬の有効性及び可能性と現状の問題点について医療関係者も含めて調査研究を進めるべきだと思うが、政府の見解を問う。

 右質問する。





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