質問本文情報
平成十年五月二十二日提出質問第三八号
清掃工場建設と運営の情報公開に関する質問主意書
提出者 中川智子 保坂展人
清掃工場建設と運営の情報公開に関する質問主意書
四月二十七日、ダイオキシンの異常値が検出された大阪府能勢町の清掃工場を訪れて、管理・運営にあたる豊能郡環境施設組合と指導・監督をしてきたはずの大阪府の説明を求めた。この現地調査に先立って、厚生省・環境庁の関係部局に緊急に見解と対処を求め、またダイオキシン禍を生じた製造メーカーである三井造船にも正確で偽りのない資料提出を請求しているところである。
国内基準値の約百倍という異常値を検出したのは、かつて前例をみない異常事態である。それぞれの部局や工場、企業の担当者たちは、この異常事態の緊急性を十分理解しているようには見受けられず、繰り返される説明も周辺住民の生活・健康に関わる不安を解消するには、はなはだ不十分であった。
また、能勢町のみならず国内各地でダイオキシンの異常値が検出されており、政府としても緊急の取り組みを旧来の枠組みにとらわれず実施しなければならない段階がきていると認識している。
そのために、現在稼働中、または建設計画中、あるいは建設中の清掃工場の設計・構造・工法・稼働方法など多岐にわたって検討することも同時に緊急の課題となっており、東京都多摩地区の柳泉園組合事業計画国庫補助の細部を検証することもあわせて求めることとする。また、同時にダイオキシン汚染が予想される焼却灰処分について不透明な事態が生じているので、あわせて検証を要請したい。
以下、質問を列挙する。
(1) 一九八三年、日本で初めて焼却灰からダイオキシンが検出された。その際設置された厚生省の専門家会議は、焼却場周辺住民が摂取したダイオキシン摂取量について「安全率は高い」と結論づけたが、これがわが国のダイオキシン対策の遅れにつながったと考える。当時、欧州ではドイツを中心に「人体への有毒性」についての見解が出され、様々な対策が講じられていたが、厚生省は欧州との見解の違いをどう認識し、さらに当時と現在のダイオキシンに対する認識には相当の差違が生じたか否かについてどう説明するのか。専門家会議の議論の推移と判断根拠について説明を求めたい。
(2) 「旧ガイドライン」作成にあたり、ダイオキシンの排出濃度の規制や集塵器の改良等が必要であるとの議論がすでに存在したにもかかわらず、その見解が採用されなかった経過を説明されたい。
もし、これらが盛り込まれ全国の施設に対し厳しい指導がなされていたならば、ダイオキシン汚染はここまで拡大しなかった。旧ガイドラインの作成にあたって当時の専門家の指摘や警告に、今日の汚染を防止しえた見解は存在しなかったのか。
(3) 旧ガイドライン以降、新ガイドラインができるまで豊能郡美化センターのみならず、全国の焼却施設に対し、既設炉の運転方法(焼却温度八〇〇℃以上、電気集塵器入口の温度二〇〇℃)をいかに周知させていたか、その後、適正な運転管理が行われているか否かの調査・監察、改善措置などをどのように行ってきたのか説明されたい。
(4) 豊能郡美化センターの真下にある大阪府立能勢高校の農場と牧場が使用できない状態が続いている。しかも、同校の教職員と生徒の健康調査がなされていない。住民に対しても、従来の定期健康診断と、同センターから半径五キロ以内に住む第一子を生んだ、もしくは今年の九月まで出産予定の女性しか対象になっておらず、他の住民や同校の教職員と生徒の不安は大きい。彼らの健康調査についてどう考えているのか伺いたい。
(5) 「新ガイドライン」では、ガス冷却室の炉頂型は改善せよと指導している。それは、炉頂型の構造がダイオキシンを発生しやすいことによるものだが、それならば、厚生省は「旧ガイドライン」以降、この危険な炉を放置してきたことにならないか。そうであるとすれば、これは重大な過失であり、そのためにダイオキシン被害が全国で多発する事態を招いたと言える。その責任について厚生省の見解を求めたい。同時に、「新ガイドライン」の炉の改善指導をすべしとの判断を生んだ根拠となる検討委員会の議論の推移と分析の経緯について説明を求めたい。
(6) 厚生省は「新ガイドライン」で施設の広域化を進めるよう指導しているが、地理的に難しい自治体もあり、多くはその実現に苦慮している。今後の広域化対策への国としての方針と、具体的な対策について見解を伺いたい。
(7) 今回の能勢町におけるダイオキシン問題は、メーカーである三井造船の企業責任を無視することはできない。厚生省が四月二十二日に事情聴取をしたことにより何が判明したのか詳細な説明を求めると共に、企業責任に対しての厚生省の見解を伺いたい。
二 柳泉園組合事業計画国庫補助について
(1) 柳泉園組合は、廃棄物処理施設の整備計画について、都を介して国庫補助申請の手続きをとってきたが、申請不受理が一度、補助内示決定が下りなかったことが二度あった。どこに問題があって、このような経過をたどったのか。
(2) 厚生省は九七年四月一日に補助内示決定をしなかった理由として、「基本計画の欠如と住民との調整不足」をあげたと報道されたが、事実はどうか。また翌五月十七日には補助内示決定を行ったが、短期間のうちに問題は解決処理されたのか、具体的に明らかにされたい。
(3) 九七年四月一日以降に策定されたとされる新基本計画は、到達目標年度の再資源化率を二十パーセントから三十パーセントに上げて、ごみの推定量も五十トン(日量)と減少している。しかし、整備計画は旧基本計画の施設規模のままとなっており、新基本計画にもとづいて修正されていないのはなぜか。
(4) 柳泉園組合の整備計画は、最終処分場の汚染問題など困難な状況が生まれていることをふまえて、当初はごみ焼却灰を「灰溶融固化」して再利用する計画を基本としてきた。
しかし、補助内示決定後の本年一月二十一日には、灰溶融炉が建設されるまでの間は、日の出最終処分場に運びこまれる方法に再度計画変更された。
そもそも、この計画変更前の補助内示決定は有効だったのか。あるいは、何らかの調査や検討が加えられたのか、または何の問題もなく調査も検討も行われなかったのか。説明を求めたい。
(5) ごみ推定量が減少したのに施設規模が変化しないのはなぜか。また、一括して三炉を建設するように工事方法と工期を短縮したことで建設費の圧縮も予想しえるが、この点の検証は行われたのか。
次々と計画変更が行われ、工費削減が予想されても、補助金交付額は変動しないという事例は他にも存在するか。具体的な事例をさし示して説明願いたい。また、計画変更があっても交付金は変動しない合理的な根拠を述べていただきたい。
(6) 厚生省環境整備課は、平成七年までの通知では、「必要に応じ、施設整備に対する関係住民の了解が得られていること」としていたが、衛環二四九号(平成八年度通知)において「地域住民との調整が計られる等」と表現内容にいちじるしい違いが認められる。相応の事情と政策判断の変更があったのか、その理由を明らかにされたい。
(7) もし従前からの姿勢に変化がないのであれば、廃棄物処理施設の建設・改修にあたっては、「施設整備に対する関係住民の了解が得られていること」を改めて通知し直すべきではないか。見解を問いたい。
(8) 前記、衛環二四九号は、構造指針に合致する施設であることを判定基準としている。その構造指針(衛環二四号)には「環境に及ぼす影響について事前評価を行わなければならない」としているが、今回の変更された計画の事前評価は行ったのか否か。事実を確認したい。
(9) 判定のための通知要件を欠いた整備計画の申請が都道府県の審査を通過して提出された時、厚生省はどのように扱うのか。過去の代表事例をもって紹介され、原則を明示されたい。また、本件について補助金内示決定、補助金交付にあたっては、ここに列挙した問題点をふまえて、熟慮万全を期したのか。ごみ清掃工場の焼却炉をめぐって世論沸騰する中で、責任ある見解を促したい。
三 東京都多摩地区九市と埼玉県二市の焼却灰処分問題について
(1) 東京都多摩地区九市と埼玉県二市が有害物質を含む焼却灰を「実験目的」で処分していたことが明らかになった。どのような経過で民間工場に委託されたのか、その総数、再生品の総量など現在明らかな事実をすべて公開されたい。
(2) 「実験工場」で作られた再生品の一部はインドネシアに土壌改良剤として輸出されたというが、これは有害物質の国際移動を禁止した『バーゼル条約』違反ではないのか。
工場関係者によると、同国輸出分は二トンというが、焼却灰の残余分の量はいかほどで、処理はどのように行われたのか把握しているか。
(3) NGO関係者によると、同工場で処理できなかった焼却灰は他県にひそかに運ばれ、処分されたと言われている。事実確認を求めたい。
(4) もし、未処理の焼却灰を他県で処分していたとするなら、環境保全上重大である。事実確認が困難であればこそ、調査協力要請を関係自治体に行うべきと考えるが、実際にはどうなっているか。
(5) 焼却灰の再資源化については、現在のところ安全基準が未整備のままである。早急な対策と基準策定が急がれるのではないか、見解を求めたい。
右質問する。