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平成十年六月九日提出
質問第五〇号

入国管理・難民問題に関する質問主意書

提出者  北村哲男




入国管理・難民問題に関する質問主意書


 今国会で出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の一部改正案が審議対象となり、これに関連して、本年四月二四日・二八日の衆議院法務委員会で難民・入管問題についての答弁がなされた(それぞれ第百四十二回国会衆議院法務委員会議録(以下「会議録」という。)第十号・第十一号参照)。
 この中では、法務大臣から難民認定審査中案件の迅速処理等の注目すべき答弁がなされたものの、他方で難民認定や入管手続を巡っては未だにさまざまな問題が未解決になっていることが明らかになった。
 そこで、現在指摘されている問題点を挙げ、これに対する解決の目処や取り組み状況について質問する。

一 上陸時の難民認定申請について
 1 日本に上陸時に難民としての保護あるいは庇護希望した者の取り扱い
  (一) パスポートを所持していない者あるいは偽造・変造パスポートを所持して来日した者が、上陸時に難民としての保護ないし庇護を求めた場合の対応はどうなっているか。上陸拒否されるのか、仮上陸させるのか、あるいは上陸許可するのか、明らかにされたい。また、ここ数年間の、具体的な件数はそれぞれ何件か、明らかにされたい。
  (二) 難民認定制度の存在や申請方法、そして六〇日間の申請期間制限について、いかなる教示をしているのか。教示の有無を、また、教示しているならば、その教示担当者、教示方法を、具体的に明らかにされたい。
  (三) 上陸拒否された者に対しては、その後どのような取り扱いをするのか、明らかにされたい。また、本人が日本からの退去を望まず、あくまでも庇護を求めたときはどうか、明らかにされたい。
 2 上陸時の難民認定申請の具体的受付方法
  (一) 上陸時に難民認定申請を希望した者がいた場合、具体的難民認定申請手続はどのように行われるのか、明らかにされたい。また、申請用紙及び申請要項の備え付け場所は何処か、申請希望者がいた場合にはその場で受け付けできるのか否か、通訳体制はどうなっているのか、それぞれ明らかにされたい。
  (二) 地方港など難民調査官が常駐していない場所で上陸時に難民認定申請希望があった場合には、最寄りの難民調査官が出張してくるのか、明らかにされたい。また、その到着を待つまでの申請者の法的な地位はどうなるのか、明らかにされたい。
 3 上陸防止施設収容中の者の難民認定申請
  (一) 上陸防止施設収容中の者から難民認定申請の希望があった場合には、具体的にはどのように対応するのか。右2(一)と同様の点につき明らかにれたい。
  (二) 上陸防止施設に収容されている者は、法律上は「上陸」していないから、上陸防止施設収容中の期間は、難民認定申請の申請期間(「上陸の日から」六〇日間以内)に算入されないという理解でよいのか、明らかにされたい。
二 上陸防止施設について
 1 現在、上陸防止施設は、全国で四ヶ所ということであるが、成田空港第二旅客ターミナル内、東日本入国管理センター併設(牛久法務総合庁舎内)、関西国際空港旅客ターミナル内、西日本入国管理センター併設の四ヶ所という理解でよいのか、明らかにされたい。
 2 関西国際空港旅客ターミナル内、及び西日本入国管理センター併設の二ヶ所の上陸防止施設について、その正式名称を、及び警備業務の委託の有無を、委託していれば具体的な委託先会社名を、それぞれ明らかにされたい。
 3 上陸防止施設の受託警備会社は、いかなる方法で選定されているか、明らかにされたい。また、受託業務の具体的範囲を、明らかにされたい。
 4 上陸防止施設の処遇運営に関する規則は存在しないとの答弁がなされている(会議録第十号七頁二段目参照)が、
  (一) 過去に何らかの規則が存在したことはないのか。また、今後の規則制定の予定はないのか、明らかにされたい。
  (二) 受託警備会社の警備業務の適正を担保する方法は何か、明らかにされたい。また、警備会社の警備業務の履行状況をいかなる方法で規制・チェックしているのか、明らかにされたい。
 5 上陸防止施設での平均滞在期間を「三日間ぐらいではないか」(会議録第十号七頁一段目参照)との答弁がなされているが、
  (一) その統計的根拠を示されたい。
  (二) 朝日新聞(東京・五月一九日朝刊)では上陸防止施設に九ヶ月間収容された事例が大きく報道されており、この案件を含め、最近だけで半年以上にも及ぶ長期収容案件が三件あったと聞くが、認識しているか。また、これら三件のそれぞれにつき、異常なまでの長期収容となった理由を具体的に明らかにされたい。
  (三) 最近三年間で、上陸防止施設での収容期間が一ヶ月を超えた事例は何件あるのか。また、長期収容となった原因を、それぞれ明らかにされたい。
  (四) 上陸防止施設でこれまで最も長期間収容された事例の収容期間と長期収容に至った原因を、明らかにされたい。
三 難民認定手続の迅速化の問題
 1 法務大臣より、現在難民認定申請中の「三百三十二名」につき、「ここ数ヶ月の間に、・・・一応のめどをつけるぐらいに・・・対処」するという趣旨の答弁がなされた(会議録第十一号一四頁二段目参照)が、
  (一) この「三百三十二名」というのは、日本全国で、現在第一次申請中(不認定後の異議申し出分を除く)の人数という理解で正しいか、明らかにされたい。
  (二) 右(一)のとおりだとすると、異議申し出中の者の人数は現在何人か、明らかにされたい。
  (三) この「数ヶ月の間にめどをつける」というのは、数ヶ月中に右の三百三十二件の大部分につき難民認定あるいは不認定の処分を行うということを意味するのか。そうでないとすれば具体的にどういう意味か、明らかにされたい。
 2 迅速化と関連して、東京入国管理局に専任難民調査官三名、専任事務官二名が集中配置されているとの答弁があった(会議録第十一号一二頁三段目参照)が、
  (一) 東京入国管理局には現在難民調査に従事している職員は何人いるか。第一庁舎、第二庁舎の配置の別及び地位(専任難民調査官、兼任難民調査官等)の内訳を明らかにされたい。
  (二) 東京入国管理局では、現在、臨時に他部署からの応援要員も得て難民調査に従事させていると聞くが、事実か明らかにされたい。また、これら応援要員は難民認定手続や難民関連法規(国内法・国際法)についてどれほどの経験・知識を有し、教育を受けた者か、明らかにされたい。
 3 これまで長期間何らのインタビューもなされないままに置かれていた案件について、四月二四日・二八日の前記答弁以降、次々にインタビューのための呼び出しが突然なされているが、
  (一) 単に機械的に供述調書を作成して、次々と不認定処分にするという結果になるのではないか、明らかにされたい。
  (二) 申請者に対し、十分な説明・準備・証拠提出の機会を保障する方策をとっているのか、とっているとすれば、その内容を具体的に明らかにされたい。
四 難民認定数の絶対的な少なさの問題
 1 認定数の絶対数の少なさに批判が集まっているところ、法務大臣の答弁では「・・・そういうような中で認定できる人は認定するというふうな形でやろうと・・・法務省としての方針を決めました」(会議録第十一号一四頁二段目参照)というが、
  (一) これは、難民認定基準を従来よりも緩和して認定数を増加させるという方針を意味しているのか、明らかにされたい。そうでないとすれば、具体的にはどのような方針なのか、明らかにされたい。
  (二) 難民認定基準を緩和する場合、従来から懸案事項とされている申請期間制限規定(「六〇日要件」)についても、その解釈適用を緩和するのか、明らかにされたい。
 2 六〇日要件について
  (一) 六〇日要件の例外規定である「やむを得ない事情」は、あくまでも、「六〇日間」を過ぎてしまったこと自体についてのやむを得ない事情のみが対象とされ、迫害の危険性の大きさは関係がないというのが従来法務大臣が行政訴訟で主張してきた立場であるが、この考え方に変更はないか(会議録第十号七頁四段目、同八頁一〜三段目参照)、明らかにされたい。
  (二) これに関連して、国連難民高等弁務官事務所第三十回期結論(conclusion)で「・・・形式的要件を充たさない場合も、その者の難民申請自体を検討の対象から除外する扱いはするべきではない」(会議録第十号八頁二〜三段目参照)というものがあるが、この結論が採択された際に、日本は同委員会のメンバーであったか。あったとすれば、採決に際し、賛否いずれの立場をとったのか及び留保を付したか否かをそれぞれ明らかにされたい。
  (三) 右(一)の考え方に従うと、「六〇日間」を徒過したことについてのやむを得ない事情がない限りは、実質的難民該当性(迫害の危険性)がいかに大きくても形式要件のみで不認定処分となってしまう。そうすると難民条約上の「難民」には該当するが、日本では「難民」として認定されない者が発生することになると思われるが、そのような解釈で良いのか明らかにされたい。
  (四) 右(三)のように条約「難民」でありながら日本で六〇日要件により不認定になった者について、条約上の不送還(ノン・ルフールマン)の原則(難民条約三三条)は適用されるか、明らかにされたい。
  (五) 右(四)の者に対して、難民条約上で締約国に義務づけられた「難民」への便宜供与(第二章〜第五章)は、いかなる方法で履行されるのか、明らかにされたい。
五 難民申請中の者の地位・処遇
 1 在宅で、在留資格のない状態で申請した者については、現状では審査期間中も在留資格や生活保障のない状態での長期間の生活を余儀なくされる事例が多い。諸外国では審査期間中の暫定的在留資格の付与などで対応している例があるが、日本では審査中の申請者の生活保障につき今後具体的にいかなる対処をするのか、また、暫定的な在留資格を付与する計画はないのか、明らかにされたい。
 2 右1に関連して、在留資格のないミャンマー国籍の難民認定申請者が就労しようとする場合につき、東京入国管理局が電話による問い合わせに対して就労を認める回答をした事例があるが、認識しているか。また、電話ではなく、事前に書面をもって同趣旨を入国管理局が表明することは可能ではないのか、明らかにされたい。
 3 アジア教育福祉財団による難民生活援助切り下げに伴い、これに代わる何らかの措置が講じられる予定はあるのか、明らかにされたい。
 4 昨年、トルコ国籍クルド人が難民認定申請中であるのにもかかわらず、東京入国管理局に収容された事例があるが、
  (一) これは入管が「濫用」事例と認めたから収容したものなのか(会議録第十号九頁三段目参照)、明らかにされたい。
  (二) 右(一)に関連して、民族によって濫用者かどうかを判断しているということはないか、明らかにされたい。
  (三) 政府委員の答弁で「収容するかどうかはケース・バイ・ケース」とあるのは、在留資格のない難民認定申請者について、「収容を原則としないもの」と確認してよいか、明らかにされたい。また、今後、「かなり濫用している可能性が高いというような状況」にない申請者については、原則として在宅で調査するものと確認してよいか、明らかにされたい。
  (四) 収容の前提としての、「かなり濫用している可能性が高いというような状況」の有無は、どの機関・部署が、どのような調査によって判断しているのか、明らかにされたい。
六 難民認定された者の地位・処遇
 1 難民認定された者に対し、定住促進センターその他の施設で日本語教育を始めとする自立援助等のプログラムを実施すべきではないか、また、具体的な対応計画はどうなっているか、明らかにされたい。
 2 他の欧米諸国等では、認定後の難民に対していかなる処遇を行っているか、明らかにされたい。また、特に自立援助プログラムはどうなっているか、検討・調査したことはあるのか。あるならば、その結果を明らかにされたい。

 右質問する。





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