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答弁本文情報

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平成十年七月二十八日受領
答弁第五〇号

  内閣衆質一四二第五〇号
    平成十年七月二十八日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員北村哲男君提出入国管理・難民問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員北村哲男君提出入国管理・難民問題に関する質問に対する答弁書



一の1の(一)について

 入国審査官は、船舶等に乗っている外国人から庇護を求める申請があった場合において、申請人が難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号。以下「難民条約」という。)第一条A(2)に規定する理由その他これに準ずる理由により、その生命、身体又は身体の自由を害されるおそれのあった領域から逃れて本邦に入った者であり、かつ、その者を一時的に上陸させることが相当であると思料するときは、一時庇護のための上陸を許可することができる。旅券を所持しない者あるいは偽変造旅券で上陸申請を行った者についても、同様である。
 一時庇護のための上陸許可の申請件数は、平成六年から本年までの五年間で八件である。その内訳は、平成八年が一件、平成九年が三件、本年が四件であり、本年に一件が許可されている。なお、一時庇護のための上陸許可制度が設けられた昭和五十七年一月一日から本年五月三十一日までに七十二件の一時庇護のための上陸許可の申請(インドシナからのボート・ピープルによる申請を除く。)があり、うち二十八件が許可されている。

一の1の(二)について

 難民認定手続に関する案内書を全国の地方入国管理官署に置いており、個別の要請に応じて入国審査官が外国人にこれを配布し、その内容を教示している。

一の1の(三)について

 難民認定申請は、本邦にある外国人であればこれをすることができ、上陸を拒否された者であっても、申請があれば上陸港の入国管理官署で受理している。この場合、難民認定申請があった時点で、当該外国人に対し上陸防止のための措置(上陸防止施設等にとどめること)を執ることになる。その後、難民認定申請が不認定となったときは、当該外国人を本邦から退去させることになるが、事案によっては不認定となる以前の段階で収容することもあり得る。

一の2の(一)について

 上陸時に難民認定申請が行われた場合は、上陸港を管轄する地方入国管理局(支局・出張所を含む。以下同じ。)においてこれを受理することとなる。申請用紙及び難民認定手続に関する案内書は、地方入国管理局に配備している。
 また、通訳については、各種言語の通訳者の確保に努め、必要に応じて適当な者に依頼し、申請者への質問の際には、可能な限り申請者の母国語による通訳を介することとしている。

一の2の(二)について

 難民認定申請の受理に係るお尋ねであると考えるが、上陸時に上陸港で難民認定申請が行われた場合には、当該上陸港を管轄する地方入国管理局においてこれを受理することとなり、難民調査官が当該上陸港に難民認定申請の受理のために出張する必要はない。

一の3の(一)について

 一の2の(一)についてで述べたとおりに対応することになる。

一の3の(二)について

 上陸防止施設等にとどまる者も、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の二第二項にいう「上陸」をしたものであると解されるから、当該施設にとどまる期間も難民認定の申請期間に含まれることになる。

二の1について


 お尋ねの上陸防止施設としては、新東京国際空港第二旅客ターミナルビル内上陸防止施設(以下「成田空港第二PTB上陸防止施設」という。)、牛久法務総合庁舎内上陸防止施設(以下「牛久上陸防止施設」という。)、関西国際空港旅客ターミナルビル内上陸防止施設(以下「関西空港上陸防止施設」という。)及び茨木法務総合庁舎内上陸防止施設(以下「茨木上陸防止施設」という。)の四施設がある。

二の2について

 お尋ねの二施設の正式名称は、二の1についてで述べたとおりである。
 関西空港上陸防止施設については、警備業務は株式会社国際人流トライサービスに委託している。茨木上陸防止施設については、警備業務は委託していない。

二の3について

 牛久上陸防止施設については、併設している東日本入国管理センターの警備業務と併せて、株式会社国際人流トライサービスに警備業務を委託している。東日本入国管理センターが収容施設であるという特殊性から、逃亡防止を図るため、予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)第九十九条第一号に基づき随意契約をしている。
 成田空港第二PTB上陸防止施設については、株式会社アイムに警備及び移送業務を委託しており、同社については指名競争入札を実施して委託したものである。
 また、関西空港上陸防止施設についても、警備業務を指名競争入札により株式会社国際人流トライサービスに委託している。

二の4の(一)について

 上陸防止施設にとどまる外国人は、収容された者ではなく、本邦から出国するためのいわば飛行機待ち、船待ちの状態にある者であり、かつ、本来、同施設にとどまる期間は短いことが前提となることから、処遇に関する規則は設けておらず、当該施設の適切な管理運営を図ることを目的として個別の指導、指示を行ってきたところであり、今後も同様に対処してまいりたい。

二の4の(二)について

 警備業務の適正化を図るため、受託警備会社に対して、同社との契約書において警備員の教育に万全を期すよう定めるとともに、適宜、職員が施設内を巡回し、監督している。
 また、履行状況の確認については、職員による巡回のほか、業務日誌を記載させ、必要がある場合には報告を求め、確認を行っている。

二の5の(一)について

 平成九年に上陸を許可されていないため上陸防止施設にとどまった者の実人員は、八千百八十四人である。これらの者の同施設にとどまった期間別の内訳は、当日限りとどまった者八百十七人、二日間にわたりとどまった者六千十人、二日を超え一週間以内の期間とどまった者千二百五十四人、一週間を超えてとどまった者百三人である。このように、一週間以内の期間とどまった者が全体の約九十九パーセント(八千八十一人)を占めており、同施設にとどまる平均的な期間は三日間程度である。

二の5の(二)について

 過去一年間において、半年を超えて上陸防止施設にとどまった者に係る案件は二件である。
 そのうちの一件は、有効な旅券を所持しないで香港を経由してタイから成田空港に到着した外国人が、入管法第十八条の二に規定する一時庇護のための上陸の許可を申請し、同申請が不許可となったにもかかわらず本邦から出国せず、上陸防止施設にとどまっていたが、その後同人が入管法第六条に規定する上陸の申請を行うに至ったので、同申請を受理した当日に入管法第十三条の規定に基づいて仮上陸を許可したものであり、同人はこの間約九か月上陸防止施設にとどまることとなったものである。
 他の一件は、イランからカナダに赴こうとした外国人が、マレイシアのクアラルンプール空港において所持する旅券の有効性に疑義があることを理由にカナダへ向かう航空機への搭乗を拒否され、日本航空株式会社がマレイシア当局の指示によりやむなく同社の責任において同人を成田空港まで輸送してきたところ、同空港において在日カナダ大使館職員により右外国人の所持するカナダ旅券が変造旅券であると判断され、同旅券が没収されるに至った事案である。同人は、その後、本邦から出国することなく、上陸防止施設にとどまって、在日カナダ大使館に対してカナダへの移民申請を行い、その結果を待っていたものの、結局、同申請が認められなかったため、東京入国管理局成田空港支局は、同人について入管法第二十四条第一号該当の不法入国容疑で退去強制手続を執り、入管法第三十九条の規定に基づき同人を同支局収容場に収容したが、この間約六か月同人が上陸防止施設にとどまることとなったものである。

二の5の(三)について

 上陸防止施設にとどまっていた期間が一か月を超えた事例は、平成七年から平成九年までの三年間で十五件ある。その内訳は、所持する旅券が偽変造旅券であることが発覚し、在日の本国公館から本国への帰国に必要な真正な旅券の発給を受けるのに時間を要したために、一か月を超えて上陸防止施設にとどまった事例が十件(平成七年一件、平成九年九件)、一時庇護のための上陸の許可の申請の審査に時間を要したため又は同申請が不許可となったにもかかわらず出国しなかったため、一か月を超えて上陸防止施設にとどまることとなった事例が四件(平成九年四件)、第三国から我が国に到着した外国人が有効な旅券を所持していないこと等を理由に他の外国から受入れを拒否されたため、やむを得ず一か月を超えて上陸防止施設にとどまることとなった事例が一件(平成九年一件)である。

二の5の(四)について

 これまでに最も長期間上陸防止施設にとどまった事例は、二の5の(二)についてで述べた香港を経由してタイから成田空港に到着した外国人の事例であり、その期間は約九か月である。

三の1の(一)について

 全国において、難民認定申請を受理し、処分が行われていない件数であり、この件数には、入管法第六十一条の二の四に定める異議の申出が行われている件数は含まれていない。

三の1の(二)について

 難民認定をしない処分に対して異議の申出をしている者の数は、本年六月一日現在で四十五人である。

三の1の(三)について

 処理を促進し、処分につき一応のめどをつける程度まで努力したいという趣旨である。

三の2の(一)について

 難民調査を担当事務の一つとしている東京入国管理局永住・難民審査部門では、本年六月一日現在、入国審査官十三名を配置して、難民調査事務に専従させており、このうちの七名について難民調査官を命じている。なお、同部門は東京都千代田区内の大手町合同庁舎第一号館内に所在している。
 また、東京都北区内の第二庁舎には、審判部門に難民認定に係る異議申出事案に専従する職員が二名配置されており、これらの者は難民調査官に命じられている。

三の2の(二)について

 東京入国管理局では、本年六月一日現在、他部門から六名の職員を永住・難民審査部門に応援させ難民調査事務に当たらせており、そのうち三名に難民調査官を命じている。いずれの職員も、これまでの職務経験、職員研修等を通じて、外国人の入国、在留審査について幅広い知識を有するとともに、難民調査事務を処理するための法令、実務に関する知識も併せ持っている。

三の3の(一)について

 機械的に質問を行い、次々と不認定とするものではなく、認定すべき案件については難民の認定を行うこととなる。

三の3の(二)について

 難民認定申請者から、申請時のみならず、申請中にも随時資料の提出を受けていることに加え、難民調査官の質問の際において、申請者に十分な申立ての機会を与えている。

四の1の(一)について

 未処理案件の処理に当たって、難民として認定すべきものは認定していくという趣旨である。

四の1の(二)について

 法定の申請期間の六十日を経過してなされた難民認定申請についても、やむを得ない事情があるときには、入管法第六十一条の二第二項ただし書に基づき従来から申請を受理しており、今後もこれに変更はない。

四の2の(一)について

 「やむを得ない事情」とは、病気、交通の途絶等で六十日以内に難民認定申請を行うことができなかった場合が該当することとなるが、今後もこの解釈に変更はない。

四の2の(二)について

 国連難民高等弁務官事務所の執行委員会の結論は、構成員の総意による合意によって採択されている。我が国は、国連難民高等弁務官事務所第三十回執行委員会が開催された際には、同執行委員会の構成員であり、我が国も、構成員として御指摘の第三十回執行委員会の結論の総意による合意に参加している。

四の2の(三)について

 迫害から逃れて他国に庇護を求める者は、当該国に上陸後速やかにその旨を申し出るのが通常であり、六十日の申請期限は合理的なものであると解される。また、やむを得ない事情があるときは、上陸後六十日を経過しても難民認定の申請をすることができるのであるから、実際に難民条約上の難民でありながら入管法上の難民認定が受けられない事例は生じ難いものと考えている。

四の2の(四)について


 退去強制される者の送還先については、入管法第五十三条第三項に基づき、いわゆるノン・ルフールマンの原則が適用されることとなる。

四の2の(五)について

 我が国は、難民認定申請が不認定となって退去強制される者に対して、難民条約上の各種保護措置等を付与する義務を負うことはない。

五の1について

 在留資格を有して適法に滞在する者については、社会保障制度の対象となる場合があるが、在留資格を有しない者については、社会保障制度の対象とはならないと解される。また、在留資格を有しない者が難民認定の申請を行った場合について、これに暫定的な在留資格を付与する計画は、現時点ではない。
 なお、生活保障については、五の3についてで述べるとおりである。

五の2について

 御指摘のような回答をした事実は承知していない。
 なお、難民認定申請者が、在留資格を有していない場合、就労が認められることはない。

五の3について

 政府としては、入管法第六十一条の二第一項に規定する難民認定の申請を行った者及び入管法第十八条の二第一項に規定する一時庇護上陸許可を受けた者の中で、生活に困窮している者に対し、生活費その他の必要経費(以下「保護費」という。)の支給をアジア福祉教育財団難民事業本部に業務委託した上で実施しているところ、昨年九月、保護費のうち、宿舎借料及び生活費の支給額について変更を行った。
 宿舎借料の支払は、すべての世帯に対し一律に同額を支給するものであったが、これを支給額の上限を定めた上で受給者が実際に支払っている宿舎の借料を支給する方法に改めた。また、生活費の支給額については、物価上昇分を考慮に入れ、従来の支給額より増額して支給することとした。
 この結果、例えば、成人の単身者に対する支給総額は従来より減額されたものとなったが、他方、夫婦等の二名以上で構成される世帯のうち、宿舎借料の限度額が適用される世帯については、従来の支給総額より増額されて支給されることとなった。いずれにせよ、保護費の支給総額は、我が国において生活を維持できる程度の額であると考えている。
 また、アジア福祉教育財団難民事業本部においては、従来から難民認定を申請中の者の就職、医療費の支払等種々の問題について相談に応じているところ、保護費の支給額を一部変更したことを契機に、これらの者の自活を更に促す上で、入管法第十九条第二項に基づく資格外活動許可を受け適法に就労活動を行うことのできる者については、就労の機会が確実に得られるように同事業本部職員が事業所等の訪問に同行するなど従来に増してきめ細かい援護活動を行っている。

五の4の(一)について

 御指摘のトルコ人は、難民認定申請中であったものの、許可された在留期間を超えて不法残留していたため、入管法第二十四条第四号ロに該当する疑いにより収容したものである。難民認定申請中の者をどの時期に収容するかについては、諸般の事情を考慮して個々の事案に即して決定しているが、本件は難民としての蓋然性の問題も含め検討した結果、早期の収容が必要であると判断したものである。

五の4の(二)について

 退去強制手続において、民族を理由として取扱いに差異を設けることはない。

五の4の(三)について

 難民認定手続と退去強制手続は別個独立の手続であり、難民認定申請している者が入管法第二十四条各号の一に該当する場合は、退去強制手続を執ることとなり、特定の者に対し、原則として収容をしないということはない。ただし、どの時期に収容するかについては、個々の事案に即して決定しており、事案によっては、一度収容した後仮放免した上で手続を進めることもある。

五の4の(四)について

 入国警備官は、入管法第二十四条各号の一に該当すると思料する外国人があるときは、当該外国人について本人の取調べ、公務所への照会等により違反調査を行う。その調査の結果、当該外国人が入管法第二十四条各号の一に該当すると疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、主任審査官に収容令書の発付を請求する。その請求を受けた主任審査官は、入国警備官の行った違反調査の結果に基づいて収容令書の発付の可否を判断する。
 お尋ねの点も、右のような手続の中で調査、判断されることになる。

六の1について

 難民と認定された者に対しての国際救援センターその他の施設における日本語教育を始めとする自立援助等のプログラムの実施については、検討する必要があると考えている。
 なお、御指摘の定住促進センターについては、既に閉鎖となっている。

六の2について

 欧米諸国等における認定後の難民に対する処遇については、自立援助等のプログラムを含め、特に調査は行っていない。





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