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平成十年六月十六日提出
質問第五七号

石油流通問題に関する質問主意書

提出者  坂口 力




石油流通問題に関する質問主意書


 平成八年四月に、特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)や旧揮発油販売業法の指定地区制度等が廃止され、我が国の石油製品市場における、新たな事業者の参入等、一連の規制緩和がなされたところである。
 この規制緩和は「石油流通において、各事業者の選択肢の一層の多様化が図られ、これを前提とした自らの意思と責任による選択や創意工夫の発揮が促され、もってより効率的な市場の定着が図られること、及びこれを通じて消費者利益の更なる拡大が図られること」(「石油審議会石油流通問題小委員会取りまとめ」本文より)を目的としてなされたものであることはいうまでもない。
 この規制緩和を受けて一年後の平成九年六月二日に「石油審議会石油流通問題小委員会取りまとめ」(以下、「取りまとめ」)が公表されたところであるが、その主旨は、その「はじめ」に述べられているように「石油流通の透明性を高め、公正かつ自由な競争の定着や消費者利益の更なる拡大を円滑かつ着実に図っていくためには、規制緩和後の一年を経過したこの時点で、現に市場において生じている変化を踏まえつつ、行政におけるスタンスの変更についての具体的な課題に即した整理を行い、関係者における共通かつ十分な理解を速やかに促すため」とされている。
 しかるに石油流通現場においては、この「取りまとめ」を根拠として、いわゆる元売り業者と特約店等石油販売小売り業者との間で、各種の協定や覚書が交わされているが、それらの協定等が規制緩和の主旨や目的と逸脱・乖離したり、「取りまとめ」の主旨を正しく踏まえたものとはなっておらず、いわゆる商標権や品質管理の名の下に、規制緩和に逆行し、規制緩和の主要な目的である「取引先(仕入先)選択の自由」や「自由で公正な取引」を有名無実化するがごとき事態が生じている。
 このような事態に対し、“これでは、何のための規制緩和か”との声も多いが、行政当局(資源エネルギー庁)は“民間の当事者間の取り決めに対しては、行政は口を挟めない”として事態を放置している。商標権に関連しての元売りと石油販売業者間の協定等の締結は今回の「取りまとめ」を根拠に行われており、“行政は介入できない”とする行政当局の姿勢は許されるであろうか。行政当局においては、自らが定めた一定のルールが民間において、適法・適正に遵守されているかどうかについて、これを見定める責任があり、かりに遵守されていないのであれば、これを遵守させる責任がある。でなければ「不作為」の責めを免れ得ない。
 そもそも今回の規制緩和や「取りまとめ」において、様々な規制緩和が提起されてきたところであるが、その主たる狙いをこれまで元売り業者と石油販売小売り業者間の系列下における支配的・従属的関係を解消し、対等の関係性を築くところに置き、たとえば力の優越を利用した不当かつ強制的な取り決めの禁止等の具体的ルールを明確にすべきであったが、それらについて殆ど明確にされていないことは極めて遺憾なことである。それを良い事に、先述した商標権や品質管理の名の下に、石油販売業者の「取引先(仕入先)選択の自由」を奪うような元売り業者の横暴を許している。
 以上のような問題認識に立って、以下、いくつかの質問をする。

一 近年(平成六年から九年度)における石油給油所の設置状況の推移について、大手元売りを含めた系列毎及びその他に分けて、明示されたい。
二 先述した平成九年六月の「取りまとめ」において提起された規制緩和等に関わる全施策については、どのように具体化されたかを明確にするとともに、その根拠法律及び政省令等を示されたい。
三 同「取りまとめ」において提起された「行政の役割またはあり方」の変更について、どのように具体的に変更されたのか(検討中も含め)を明確にされたい。
四 商標権問題と「取引先選択の自由」について
 1 「取りまとめ」の八ページにおいて、商標保護と取引先選択の自由に関連して、「商標保護の名の下に取引先選択の自由が不当に制限されるべきではない」としているが、どのような場合が不当な制限になるのかを具体的に明らかにされたい。これに関しては、通産省及び公正取引委員会のそれぞれの見解を示されたい。
 2 前項の1の質問に関連して、例えば、元売り業者が商標権の名の下に、石油販売業者の「仕入先選択の自由」を全面的に禁止することは、独禁法上も問題になると思うが、公正取引委員会の見解をお伺いしたい。
 3 石油流通の現場においては、商標権の名の下において、元売り業者がその優越的立場を利用して、石油販売業者の取引先(仕入先)選択の自由を完全に剥奪するがごとき協定や覚書を強制的に交わさせている事例があるが違法とならないか。
   事例1「給油所における燃料油全量買入れを商標等の使用許諾の条件とする」
   事例2「商標を表示した給油所における他社製品の販売の禁止」
 4 いずれにしても、製品輸入自由化後の現場においては、また今回の取引先(仕入先)選択の自由等の規制緩和策が打ち出された後において、商標権の名目の下に、逆に系列の固定化が進行し、仕入先選択の自由が否定されるような事態が進行している。行政当局として、現状を調査し、不適正な事態があれば是正措置を採るべきである。
 5 「取りまとめ」において「商標保護と取引先選択の自由という二つの要請の調和を具体的な形で図っていくことが重要である」(八ページ)として、商標管理と取引先選択の自由の調和の具体的事例をいくつか挙げている。そのことも大切ではあるがしかしより重要なことは、立場の弱い石油販売業者の利益が守られる、かつ当事者間における摩擦と混乱を回避するためにも、「商標保護を目的とした取引先選択の自由の制限がいかなる程度まで許容されるか」について、行政当局は具体的に示すべきであると思うが見解を示されたい。
 6 石油販売において、取引先選択の自由と商標保護とを対置した場合、取引先選択の自由が優先させられるべきと考えるがどうか。
 7 商標権に関連して、「取りまとめ」補記7「商標とバーター」(八ページ)において、元売り業者間において広く行われている石油製品の融通制度すなわち商標と実際の製造元が異なることについて、これを肯定的に評価しているが、質問者から言わせれば、これこそ「商標権違反」に当たると考えるがどうか。
五 業転製品(ノンブランド製品)と品質管理について
 1 これまで当局においては、元売り系列の取引を重視するあまり、業転(業者間転売1ーノンブランド製品)をことさら異端視もしくは悪玉視する嫌いがあったが、先に石油連盟の出光裕治前会長が「需要を調整する上で、業転の存在自体はやむを得ない」と発言したように、業転玉は、石油需給の「調整弁」としての役割を果たしている立派な製品である。ゆえに石油製品の取引形態の一つとして、これがことさら悪玉視される理由はない。したがって「取りまとめ」において、各事業者の意思と責任による自由な選択の一つとしてこれを認知し、「いかなる者といかなる条件で取引を行うかは、当然のことながら、当事者自身の意思と責任により決定されるべきであり、規制緩和の趣旨にかんがみても、規制的なアプローチは採られるべきではない」として、行政当局を含めた関係者の規制を否定しているのである。
   行政当局として、こうしたスタンスを堅持することはもちろんのこと、石油販売業者が業転玉を扱うことにおいて、元売り業者等が他の名目の下で、それを拒否することのないよう、関係者に周知徹底していくべきと考えるがどうか。
 2 日刊燃料新聞によれば、昨年四月から十二月にかけて、東北通産局が揮発油品質維持計画に基づいて、二六八件のSSの立ち入り調査をした結果、二〇件の供給外仕入れが判明し、年一回の品質検査軽減措置が失効し、その結果、十日に一回の厳しい品質検査が義務づけられるようになるとともに、二ヶ月後の再申請においては元の供給ルートで再申請している」と報道されている。
   問題は「規格的にガソリン成分に問題がなくても、一リットルでも供給ルート以外の仕入れが判明した場合は、十日に一回の検査を行わせる」という点にある。検査の結果、成分に問題がない場合であっても、十日に一回の検査を義務づけるということは明らかにノンブランド製品に対する差別となろう。ノンブランド製品がこのような形で、公式に認知された段階においては、こうした差別はやめ、年一回の検査とすべきであると思うがどうか。
六 石油販売業者が石油製品購入コスト軽減の目的で、製品の共同購入等を行うことについて、これを元売り業者等が妨害または難色を示す向きもあるが、当局は中小零細石油販売業者の経営安定に資するためには、これを積極的に支援すべきであると思うがどうか。
  いずれにしても、規制緩和後、ガソリン価格の激しい値下がり競争が生じ、多くのSSが倒産するなど、石油販売業者は厳しい局面に置かれている。したがって石油販売業者の経営安定に資するために、取引先選択の自由等、それぞれの石油販売業者の自主性と創意工夫が容易に発揮される体制の確立を行政当局に望むものである。

 右質問する。





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