衆議院

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平成十年六月十七日提出
質問第五九号

台湾向け原子力発電設備の輸出に関する質問主意書

提出者  辻元清美




台湾向け原子力発電設備の輸出に関する質問主意書


 台湾に向けて日本企業の原子力発電設備や発電機の輸出準備が進行しているが、本件は政府の許可事項であり、核拡散防止条約の規定を満たさなければならない事案であるので、台湾向け原子力発電施設の輸出に関してつぎのとおり質問する。

一 日本企業の台湾向け原子力発電施設の輸出に関する事実確認
 1 政府は、日立製作所、東芝により原子力発電設備、三菱重工業により発電機の輸出準備が進行している事実を承知しているか。
 2 上記企業からの輸出許可申請は既にあったか。
二 輸出相手先の安全確保について
 1 原子力発電設備の輸出に関してはロンドンガイドライン・パート1および原子力安全条約で輸出相手国の安全確保が条件とされている。輸出相手先台湾では、建設予定の原子力発電施設の安全審査に当たる台北県政府が一九九一年八月編集した「台北県対核四環境影響評估的審査報告(台北県第四原発環境影響評価審査報告)」のなかで、原子炉の安全確保や運転要員の能力、訓練、管理体制面での危惧と不安が示されている(別添資料)。
   管轄する行政機関が安全性評価について右のような疑義を示していることは、輸出相手先=台湾では安全が確保されておらず、輸出許可条件を満たしていないことを物語ると考えるが、政府の認識はいかがか。
三 核拡散防止に関して
 核拡散防止条約(以下NPTとする)三条は核物質、原子力発電設備の輸出に当たっては核兵器に転用されないよう保障措置の確保を求めている。また原子力開発利用長期計画は保障措置確保のための政府間の原子力平和利用協定の締結を求めている。台湾は日本との間で国交はなく、またNPTおよびIAEAの加盟国でもない。台湾からいかにして保障措置を確保するのかに関し、以下の点について質問する。
 1 外務省の説明によれば「台湾向け原発輸出は、米国、台湾、IAEA間で結ばれた保障措置協定により、平和的利用の保障を米国政府より確保している。したがってこのNPT三条に適合するものである」とのことであるが、政府の見解を示されたい。
 2 外務省が本件に関し、NPTの定める保障措置が満たされていると判断した根拠として示した文書に関して質問する。
 (1) 外務省が根拠とした文書は一九九八年一月二八日付け米国国務省からの在米日本大使館宛て口上書である。国際法上、口上書が核拡散防止に係わる保障措置を確約するに十分な効力を持つとは考えにくいが、いかがか。
 (2) 同口上書には2項で「台湾当局の管理下にある地域の核物質はIAEAの保障措置の確保に従う。もし、IAEAが台湾の核施設につき保障措置を確保しない場合は、米国政府は核施設への逸失した保障措置の確保に合意を求める立場から日本政府と相談する」とされ、また4項では核物質の移転または再移転についても「それに関連して発生する問題について、日本政府の要求があれば双方に受け入れられる解決策を見いだしていく立場から日本政府と相談する」と述べているだけで、それぞれについて米政府は保障措置を確保することを約束しておらず、台湾当局から保障措置の確保を得たとも述べていない。すなわち、NPTの定める保障措置は満たされておらず、むしろ米国政府は台湾の核施設の保障措置確保に関しては責任を負わないことを表現した文言と受け止めるべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。
3 一九九五年七月三十日付けの朝日新聞は、台湾の李登輝総統の国民会議大会における「台湾が過去、核兵器開発を検討したことがあり、今後核兵器の開発を検討する」との発言を伝えている。これは、NPT三条およびロンドンガイドライン・パート2第4(e)受領国政府の行動、発言及び政策が核不拡散を支持しているかどうか、(f)受領者が、秘密の又は違法な調達活動に従事したことがあるかどうか、という項目および第5(a)移転の用途、最終需要場所を記した最終需要者の宣言、(b)いかなる核爆発活動又は非保障措置核燃料サイクルにも使用されないことを明示的に述べた保証という項目に照らしたとき、明らかに規定に違反しており、したがって台湾は原発機材を輸出してはならない相手先とみなすべきと考えるが、政府の見解はいかがか。
四 二国間原子力協定締結の必要性について
 1 かつて三菱重工が中国に対して圧力容器を輸出しようとした際、間接的に核物質生産につながるとして、政府は一九八五年に日中原子力協定を締結し、同協定により、生産された核物質は核爆発装置の開発・製造に使用しないこと、また、専門家の交換、情報交換、役務の提供について取り決めた。
   原子力発電施設の国際的移転に関しては、軍事的目的への転用禁止だけでなく、事故発生後の被害の規模、国際的影響への対処などを考慮して、安全性確保のための専門家の派遣、情報提供、要員の研修、部品器材の迅速な供給など供給国、受入れ国双方が負うべき責任と義務およびその範囲を両国政府間で定めることが必要である。
   日本政府は、インド、パキスタン両国が核実験を行ったことに対し、両国の行為がNPTに違反するものであることを理由のひとつに抗議した。しからば日本は、原発輸出に当たっても自らがより厳格にNPTが定める条項を遵守することが求められる。本案件は、台湾の意向次第では今後、日本のNPT履行の意思と中国との関係をはじめとした国際的信頼に係わる問題になりかねない事案である。
   しかるに外務省からは「包括的、長期的な取り決めについては二国間原子力協定が必要であるが、一時的でかつ法的義務を負わない本件については必要ではない。合意成立後外務委員会に報告すればよいと考える」との説明があった。政府は台湾への原子力設備の輸出に当たっての政府間協定および国会の承認の必要性をいかに考えるか。
五 原子力発電施設の輸出許可について
  以上の事実に立つかぎり台湾に対する原子力設備の輸出は許可できないと思われるが政府の見解を示されたい。

 右質問する。



別添資料

台北県対核四環境影響評估的審査報告 39頁
(1991年8月、台北県政府編集)

台北県対核四環境影響評估的審査報告 39頁



台北県第四原発環境影響評価審査報告P.39
(1991年8月、台北県政府編集)
<和訳>


(1)原子力発電所の設計は原子炉の安全確保、放射性物質の漏洩防止という従来型発電機にはない点を配慮しなければならず、いっそう複雑化しているし、運転要員が掌握できる能力を超えるほどになっている。

(2)運転要員の訓練および管理体制が欠けている。原子力発電所の運転・補修、廃棄物処理はすべて専門的技術を必要とする。台湾は十数年の運転経験をもっているが、まだ原子力発電所の管理・運転の技術的基礎を確立していない。重大な事故が発生すれば、そのつど外国の専門家の来訪を依頼して修理する以外にない状態にある。他方、重大事故の発生要因は運転要員の操作ミスによる場合が多く、はなはだしい場合は居眠りによる。これは原子力発電所の管理体制がハード部分はあるがソフトの面がないという状況にあることを示すものだ。

(3)以上二点を総合すると、第一、第二、第三原発の運転失敗例を省みたとき、第一、第二原発の運転経験が第三原発のシステム設計に十分反映されているかどうか疑わしい。まして第一、第二、第三原発の運転経験を第四原発の運転に反映させることが果たしてできるだろうか。したがって、以下のような結論に至った。原子力発電所は安全性確保のために、放射能汚染の多重防御のうえで、ハイテク技術を駆使した能力の活用という目的を実現するためにきわめて複雑なシステムをつくった。しかし、その複雑さが事故多発の根元にもなっている。そのような原発を台湾に建設することは、外国への技術依存と官僚管理体制の無能さを露呈することになるばかりか、果たして原子力発電所が台湾にとって適切な発電システムなのか、また地球全体に適合する技術であるのかという新たな問題をも提起する。



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