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平成十年七月二十八日受領
答弁第五九号

  内閣衆質一四二第五九号
    平成十年七月二十八日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員辻元清美君提出台湾向け原子力発電設備の輸出に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員辻元清美君提出台湾向け原子力発電設備の輸出に関する質問に対する答弁書



一の1について

 政府は、株式会社日立製作所及び株式会社東芝が原子力設備を、三菱重工業株式会社が発電機を輸出する予定であると承知している。

一の2について

 現在のところ、台湾向けの原子力設備に関する外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第四十八条に基づく輸出許可申請はない。

二について

 一般論としては、輸出相手先がその責任において原子力発電の導入を決定した場合、我が国としては、その要請に応じて、より安全な原子力発電が行われるよう、高品質の原子力設備の輸出を行うとともに、我が国の優れた運転管理技術等を併せて提供していくことが、輸出相手先の原子力に関する安全性の向上に資すると考えている。
 なお、我が国からの原子力設備の輸出に当たっては、核不拡散のために採るべき措置についての指針であるロンドン・ガイドライン・パート1も踏まえ、外国為替及び外国貿易法に基づき輸出管理を厳格に行っている。具体的には、当該原子力設備の非爆発目的利用の確保及び第三国への再移転等の規制並びに輸出相手先における適切な防護措置の適用及び国際原子力機関による保障措置の適用を確認した上で、個別に審査を行っている。

三の1について

 核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号。以下「核兵器不拡散条約」という。)第三条2は、核兵器不拡散条約の各締約国が特殊核分裂性物質の使用等のために特に設計され又は作成された設備等を非核兵器国に供給するに当たっては、当該特殊核分裂性物質に保障措置が適用されることを条件としている。三の2の(1)についてで述べるとおり、台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質(特殊核分裂性物質を含む。)は、国際原子力機関による保障措置の適用を受けるので、我が国の事業者が予定している台湾電力龍門原子力発電所向けの原子力設備(以下「本件原子力設備」という。)の台湾への輸出は、核兵器不拡散条約に違反するものではない。

三の2の(1)について

 千九百九十八年(平成十年)一月二十六日にアメリカ合衆国国務省から在アメリカ合衆国日本国大使館に発出された口上書(以下「米国口上書」という。)は、四についてで述べるとおり、政府とアメリカ合衆国政府(以下「米国政府」という。)との間の協議を踏まえ、米国政府が台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用を確保する等の意図を政府に対して公式に表明したものである。右意図表明に際しては、当該保障措置等は米国政府が台湾当局から得ている保証に基づくものであるとの説明を米国政府から受けている。
 以上のとおりであり、核兵器不拡散条約第三条2との関係で問題が生ずるとは考えていない。

三の2の(2)について

 米国口上書の(2)においては、台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対して国際原子力機関による保障措置が適用されるということを確認した上で、万が一、何らかの理由により本件原子力設備に対して国際原子力機関による保障措置が適用されない場合に、米国政府が政府と協議を行い、同保障措置に代替する保障措置が本件原子力設備に対して適用されるようにすることとしているものである。
 米国口上書の(4)においては、本件原子力設備等が台湾当局が管理する地域以外へ移転又は再移転される場合、ロンドン・ガイドライン・パート1に従って、本件原子力設備等の移転先又は再移転先から所要の保証が得られる場合に限り、米国政府は台湾に対して本件原子力設備等の移転又は再移転を許可することとした上で、本件原子力設備等の移転又は再移転に関し、何らかの問題がある場合に備え、政府の要請に応じて米国政府が政府と協議を行い、相互に受け入れることのできる解決を図ることとしているものである。
 したがって、御指摘の米国口上書の文言は、米国政府が台湾の核施設の保障措置確保に関して責任を負わないことを表現したものではない。

三の3について

 御指摘の千九百九十五年(平成七年)七月二十八日に行われた台湾の李登輝氏の発言については、同氏自身が同日の発言は誤解を招いたとして、台湾は絶対に核兵器を製造しないことを宣言する旨同年八月三日に述べたと承知している。
 なお、本件原子力設備の台湾への移転が核兵器不拡散条約に違反するものではないことは、三の1についてで述べたとおりである。また、御指摘のロンドン・ガイドライン・パート2は、原子力汎用品等の移転に際して採るべき措置の指針を示すものであるが、本件原子力設備の中には、同ガイドラインによって規制されるべき原子力汎用品等は含まれておらず、同ガイドラインの適用の問題は生じない。

四について

 本件原子力設備の我が国から台湾への移転に関しては、我が国と台湾との関係が非政府間の実務関係であること、本件原子力設備を輸出する我が国の事業者がアメリカ合衆国の事業者の下請であり、本件原子力設備がアメリカ合衆国と台湾との関係においては、アメリカ合衆国から輸出されたものとして取り扱われること、米国政府が核不拡散に厳格な立場をとっていること等を考慮しつつ、米国政府を通じて台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用を確保すること等で問題ないと判断した。政府と米国政府との間で協議を行った結果、台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用の確保等を米国政府が行うことについて意見が一致し、政府に対し、米国政府からこの点についての同政府の意図を公式に表明する米国口上書が発出されたものである。右意図表明に際しては、当該保障措置等は米国政府が台湾当局から得ている保証に基づくものであるとの説明を米国政府から受けている。
 米国口上書は、前記のとおり米国政府が台湾当局が管理する地域にあるすべての核物質に対する国際原子力機関による保障措置の適用を確保する等の意図を政府に対して公式に表明したものであり、国会の承認を要する国際約束に該当しない。

五について

 我が国からの原子力設備の輸出に当たっては、核不拡散のために採るべき措置についての指針であるロンドン・ガイドライン・パート1も踏まえ、外国為替及び外国貿易法に基づき輸出管理を厳格に行っている。具体的には、当該原子力設備の非爆発目的利用の確保及び第三国への再移転等の規制並びに輸出相手先における適切な防護措置の適用及び国際原子力機関による保障措置の適用を確認した上で、個別に審査を行っている。





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