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平成十年六月十七日提出
質問第六二号

二〇〇五年日本国際博覧会(愛知万博)に関する質問主意書

提出者  枝野幸男




二〇〇五年日本国際博覧会(愛知万博)に関する質問主意書


 前回提出した質問主意書(平成九年六月十七日提出)への答弁もきわめてあいまい・抽象的であり、財政、環境等への影響に対する不安はまったく払拭されていない。さらに開催準備が進行する中、様々な疑問が新たに生じている。
 したがって、次の事項について質問する。

一 愛知県の財政について
 万博の費用負担は、一九九五年一二月一九日の閣議了解で、国、愛知県、民間がそれぞれ三分の一ずつの割合となっている。
 (1) 愛知県の財政状況は近年、けして良好とはいえない。愛知県の財政事情を政府としてどのように把握・認識しているのか。県債の発行額、累積額の推移、予算にしめる公債費の割合などを四七都道府県の中での位置づけなども含めて答えよ。
 (2) 県債の起債は自治大臣の許可を要するところであるが、県債許可の「制限比率」と愛知県の税収に占める公債費の推移、現状、将来見込みをどのように把握しているか。
 (3) 愛知県には巨大プロジェクトがいくつかあり、歳出の増加が見込まれる。制限比率を超える起債を認める場合はあるか。
 (4) もし、制限比率を超える起債が認められない場合、県民負担の増大、他の事業へのしわ寄せ等が懸念される。それらは、当然県当局の責任であるが、こうした場合や、愛知県の財政が破綻した場合、財政援助等、国としてなんらかの対処を講じる考えはあるのか。
二 万博関連事業について
 (1) 愛知万博の関連で、愛知県常滑市沖に中部新空港の建設をし、開港を万博の開催に間に合わせようとしているが、具体的、詳細な工程はどのようになっているか。仮に、開港が万博の開催に間に合ったとしても、空港アクセスは間に合うのか。間に合うとすれば、その根拠となる具体的な工程を答えよ。また、もし間に合わなかった場合は、どのように対処するのか。
 (2) 中部新空港は成田空港及び関西新空港と並び国際ハブ空港として位置づけられているが、数百キロの距離の間に3つもの国際ハブ空港を建設する理由は何か。
 (3) 成田空港及び関西新空港の拡張工事の完成により、航空需要がそちらへ流れると思われるが、それでも中部新空港の必要性は変わらないか。
 (4) 中部新空港の総事業費及び維持管理に要する費用はいくらか。その財源はどのようになっているのか。また負債を伴うものであればその償還計画を示せ。
 (5) 中部新空港の採算予測はどうなっているのか。採算がとれるとしたら、その詳細な根拠を示せ。
 また万が一採算がとれない場合、どのような措置を講ずるのか。
 (6) 現在、既存の名古屋空港において拡張工事が行われているが、その事業費は総額いくらで、その財源はどのようになっているのか。また工事の完成はいつの予定であるか。
 (7) 実際完成しても、利用できるのはごく僅かな期間と思われ、二重の投資であり、中部新空港又は名古屋空港の拡張のいずれかが不要と考えるがどうか。
三 万博アセスの新法先取りについて
 愛知万博の環境影響評価は、新しい環境影響評価法の精神を先取りして実施される。また、万博の関連事業の「新住宅市街地開発事業」と「名古屋瀬戸道路」の環境影響評価も同時に行われる。これらは新環境影響評価法のモデルケースとなるべきはずであるが、環境影響評価実施計画書によると、調査範囲が候補地に限られていること(計画アセスメントではない)、環境保全措置として自然環境の破壊につながる可能性の高い「移植」があげられていること、三事業の複合アセスメントにはなってないことなど、二一世紀のアセスメントのモデルとしては程遠いものになっている。
 (1) 代替地の検討を調査範囲に含めない理由は何か。
 (2) 環境保全措置として「移植」をあげた理由は何か。
 (3) 関連事業との複合アセスメントとしていないのはなぜか。
 (4) 内閣として、このアセスを十分なものと考えるか。また、今後の新アセス法のモデルとしてあるべき姿と考えているか。
四 万博アセスの実施計画書にある代償措置について
 (1) 万博アセスの実施計画書の九七ページ、「III、評価手法及び環境保全措置の考え方」の「2.環境保全措置の考え方」として、移植等の「代償措置」が述べられている。移植する場合は動植物の自生地を形成する土壌・気候条件、地理的条件、そして何よりも生物相互の関係を考えなければならないが、内閣は「代償措置で自然は保全される」と考えるのか。
 (2) もし考えるとすれば、具体的な根拠またそれを裏付ける学者の論文名などを示せ。
 (3) 代償措置の追跡調査はなされるようだが、追跡調査の結果、個体群の衰退・消滅が確認されたとき、どのような措置を予定しているか。また、代償措置によって自然破壊が起こった際の、結果責任の所在はどこに求めればよいか。
五 万博アセスと関連事業の連携について
 「名古屋瀬戸道路」「瀬戸市南東部新住宅市街地開発計画」のアセスメントと「愛知万博」のアセスメントは「連携する」とされている。
 (1) これは万博アセスの結果が、上記2事業のアセスの結果に優先し、それらの結果を拘束すると解釈してよいか。
 (2) そうでないとするなら、「連携」の意味は何か。
六 新住事業失敗の際の財政措置について
 (1) 「瀬戸市南東部新住宅市街地開発計画」では住宅予定地の価格は一坪七〇万円超である。一坪四〇万円程度で市街地の土地が売られている瀬戸市内で、この計画が採算性を維持できるとみなすか。維持できると考えるなら、その根拠を示せ。
 (2) そもそも国家事業である万博の開催がなければ、この市街地計画がいま実現を迫られることはなかった。従って国はこの計画の採算に責任を負うと考えるがどうか。もし、土地や住宅が売れ残った場合、国は愛知県になんらかの財政措置を講ずる考えはあるか。あるとすればどのような措置か。
七 住民について
 万博予定地、新住事業予定地には現在もそこで生活をしている人達がいる。そしてそこに永久に住み続けることを望んでいる。その人達が移転を拒んだ場合、強制執行で移転させる考えはあるか。
八 関連道路の工程について
 万博に関連して二〇〇五年完成を目指して、道路の整備が予定されている。第二東名、東海環状、名古屋瀬戸道路の具体的な工程を明らかにして、二〇〇五年までに完成する根拠を示せ。
九 保安林解除について
 江戸時代より海上の森の森林伐採で、何度も土石流が起きている。
 (1) この事実を認識しているか。どのような土石流と認識しているか。
 (2) 万博・新住事業の為に保安林を解除し森林を伐採しても、矢田川下流域の住民は安全であると考えるか。考えるとすれば、その根拠は何か。
 (3) 万一、被害が発生した場合には当然国の責任となり、補償すべきと考えるがどうか。
十 里山について
 海上の森は伝統的な農林業と結びついて維持されてきた落葉広葉二次林、人工林、水田、ため池、沢、湿地、小河川、草地など多様な環境がパッチワーク状に組み合わされた里山である。この里山には多様な生態系が維持されており、貴重種もきわめて多く、里山の中でもきわめて豊かで重要なものである。
 (1) 万博のアセスメントの結果、この里山の維持や貴重種の維持に影響があるとなった場合、代替地を検討する考えはあるか。
 (2) コナラ・アベマキ林はスギ・ヒノキ林より生態系が豊かで自然度が高いと考えるか。
 (3) コナラ・アベマキ林が最も豊かに広がる場所をAゾーンにしたのはなぜか。
 (4) 新住事業地と万博のAゾーンがほぼ一致するのはなぜか。
十一 断層について
 海上の森には猿投山北断層がある。この断層は兵庫県南部地震と同程度の地震を起こす活断層である。
 愛知県でこの規模の断層上に住宅地を開発することは初めてであり、今後の予定もない。断層調査を実施した学者は、地震がいつ起きてもよい想定でなければならないと言っている。
 (1) この活断層上に、新たに住宅地を造成する危険性をどのように認識しているか。
 (2) 神戸の震災を省みるなら、この場所を開発してもよいかどうか、地震学、地震工学、建築工学等の専門家による新住事業の「安全検討委員会」を設置するなど、その安全性について改めて検討をするべきと考えるがどうか。
 (3) 現在の耐震設計は震度7の直下地震に耐えられるか。もし耐えられるなら、その根拠を具体的に示せ。
十二 環境の配慮について
 新住事業、名古屋瀬戸道路の「環境への配慮」の内容は極めて杜撰である。そのことは、例えば、疑わしき植物が四十一種、記載漏れが二十一種、赤池の植生調査方法、底生動物の調査方法、底生動物の確認種の不備、夏鳥と冬鳥の誤記、雨水や深層地下水のデータがないのに、それに触れるなど、本年六月七日県が行った公聴会での上杉氏の公述書、県が出した「環境への配慮正誤表」などからも明らかである。
 (1) 調査に上記のような杜撰さがあったことを認識しているか。
 (2) 認識するとすれば、どう考えるか。調査のやり直しを検討すべきと考えるがどうか。認識していないとすれば、今後把握する考えはあるか。
 (3) 五四〇ヘクタールもの広域の調査として調査人員は何人なのか。十分と考えるか。
 (4) 調査の納期はどれくらいだったか。十分と考えるか。
 (5) 調査機関が、困惑するような発注の実態はなかったか。例えば、この時期にホタルの調査を発注するような不手際はなかったか。
 (6) 内閣として、この環境影響評価が適正に行われたのか、上記のような観点から実態調査を行う考えはないか。もしあれば、愛知県におけるアセスメント発注の項目、発注年月日、納期、そして調査にあたった機関と人員の立ち入り検査等は可能か。その考えはあるか。
十三 埋蔵文化財について
 (1) 万博予定地には多数の埋蔵文化財があるが、どのような埋蔵文化財があると認識しているか。これに対していかなる対策を考えているか。
 (2) 埋蔵文化財の保存と活用について国の基本的な考えを述べよ。
 (3) 万博会場へ向かう道路の中には、著名な古墳群の上を通過するような計画が立てられているが、その路線がどの道路で、どの古墳群の上を通過することになっているのか。
 (4) 上記の場合、路線の変更はあるか。
 (5) 万博会場予定地には、江戸時代の石切り場の遺跡があるが承知しているか。また、古窯に関連する施設があったことが想定される地点があることを知っているか。
 (6) 万博予定地内には神社、民間信仰の跡があるが、これらについてどのように対処するのか。

 右質問する。





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