質問本文情報
平成十年六月十八日提出質問第六八号
死体腎移植の術前措置に関する質問主意書
提出者 山本孝史
死体腎移植の術前措置に関する質問主意書
本年五月の関西医科大学における腎臓移植訴訟大阪地方裁判所判決では、「本人の同意のない移植の準備措置は違法」と判示されたが、日本移植学会が判決を批判する声明を発表するなど、患者の人権を軽視するような対応が続いていることは遺憾である。
移植医療の透明で適正な実施に資するため、以下質問する。
しかし、心臓停止前の術前の関連措置は、患者の治療とは無関係であり、その措置を判決の示した患者本人の同意ではなく、家族の同意で行って良いとする根拠は何か。また、そのような社会的合意が存在するとは考えられないが、それを是認する根拠を明示せよ。
二 内閣参質一四〇第八号の質問主意書への答弁書では、「カテーテル挿入措置は、検査等を目的として一般の患者に対しても行われているように患者の身体への侵襲性が極あて軽微であり、腎臓移植を医学的に適正に実施する上で必要と認められる処置であると考えている」とある。
(一) カテーテル挿入行為が、一般に患者への侵襲性が極めて軽微とする、医学的知見の根拠を複数の文献等から引用して示せ。
(二) 腎臓摘出に際し心臓停止前のカテーテル挿入行為を、医学的に適正に実施する上で「必要」と考えるその根拠を適用法令、文献等を根拠に示せ。
三 今般変更された臓器提供承諾書では、ヘパリンの注入も家族の同意の中に含んでいるが、ヘパリン注入は時に重篤な副作用が発生する、との報告があると聞いている。
(一) 一般に人体に多量のヘパリン注入を行った場合、現在の医学的知見ではどのような副作用が考えられるか。複数の文献等を示して明らかにせよ。
(二) (一)のような副作用が、臓器提供の術前措置のヘパリン注入で起こった例は、平成七年四月の日本腎臓移植ネットワーク(以下、ネットワーク)発足以降直近までであるか。
四 厚生省の資料では、腎臓の摘出に際し術前措置として心臓停止前に還流液を注入する行為は、平成七年四月のネットワーク発足以降直近までに行っていないとの回答だが、本当にそのような事例がないか、確認する。
五 平成九年一月に、ネットワークが臓器提供承諾書の統一書式を決め、「献腎についてご家族の皆様方にご確認いただきたいこと」という文書を作成する以前には、臓器提供の医療機関がそれぞれに承諾書を作成し、同意を得ていたとのことである。
つまり、ネットワーク設立後であっても、平成九年一月以前には、カテーテル挿入等の術前措置に関しての同意はとられていなかったという理解で良いか。
右質問する。