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答弁本文情報

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昭和五十年七月十一日受領
答弁第二七号
(質問の 二七)

  内閣衆質七五第二七号
    昭和五十年七月十一日
内閣総理大臣 三木武夫

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員岡田哲児君提出昭和四十九年度中小企業白書に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員岡田哲児君提出昭和四十九年度中小企業白書に関する質問に対する答弁書



一について

 最近の経済情勢をみると、二次にわたつて講じてきた諸施策の効果等もあつて、景気はおおむね底入れしたものとみられるが、経済活動の水準が、なお、低いことにかんがみ、物価安定の定着を図りつつ、景気を着実な回復軌道に乗せるため、六月十六日の経済対策閣僚会議において、諸施策を決定したところである。
 今回、決定された第三次不況対策は、現在の経済情勢及び経済の見通しを十分検討の上、現在、政府に課せられた最重要課題である物価の安定と景気の着実な回復をともに達成していくための施策として、政府としては、諸般の事情を考慮してできうる限りの措置を講じたものであり、また、その景気浮揚効果も少なからざるものがあると考えている。
 政府としては、これら諸施策を円滑に実施に移すように努めてまいる所存であり、景気はこうした施策の効果等により、漸次、緩やかに回復してゆくものと考えており、政府見通し程度の経済成長を遂げるものと期待している。

二について

 我が国経済は、これまで高度成長を遂げてきたが、石油その他の資源問題、立地・環境問題等の制約から、今後は、これまでのような高度成長を続けることは困難となつてきている。
 また世界経済の置かれている困難な状況を考えるとき、我が国のみが高度成長を遂げようとするのは、国際協調の点からも好ましいことではない。
 このような情勢の変化に対応して、我が国経済の安定成長を図るためには、産業構造を省資源・省エネルギー型に切り替えていくこと等、経済体質の改革が必要であり、更には、高度成長時代の制度・慣行を見直して新しい時代にふさわしいものへと転換を図る必要がある。
 また、今後は、予想される成長率低下の下で、経済成長の成果のより多くの部分を福祉に振り向けながら、国民生活の質的充実、社会的公正の確保、環境の保全を一体とした均衡のとれた経済社会の発展を図つていく必要がある。
 今後の実質成長率の具体的数値については、以上のような状況を踏まえて、新たな経済計画の策定の中で明らかにしていく考えである。

三について

1 我が国経済が安定成長に移行する方向については、二で述べたとおりである。現在、我が国経済は、、昭和四十八年末の石油危機以後における物価・景気等経済的諸問題をかかえており、ここ両年度内において、これらの諸問題を解決しつつ我が国経済を安定成長路線にのせていくことが必要であると考えている。

2 我が国の中小企業は、これまで本来の特性である小回り性と創意工夫の活用、政策金融等の中小企業施策の拡充等により、出荷額においては、ほぼ五十%前後のシェアを維持する等、我が国経済において重要な地位を占めてきた。
  我が国経済の安定成長への移行は、国際分業の進展等、中小企業に対し厳しい対応を迫る面もあるが、一方では、福祉型経済の進展やサービス経済化の進展など中小企業の活躍分野が広がることも期待される。このような今後の経済環境の変化に対しても、中小企業が十分適応できるよう従来にも増して中小企業施策の拡充を図つてまいりたい。

3 我が国の流通機構は、多数の企業が多段階に錯そうしており、生産部門に比べてその近代化が立ち遅れていることにかんがみ、政府としては、流通システム化の促進、商業立地の適正化、流通企業の体質強化、取引条件・広告の適正化等流通の合理化、近代化施策を強力に推進しているところである。
  特に中小商業については、中小商業の協業化、組織化、経営方式又は設備の近代化等を促進することとし、所要の金融税制措置を講じているところである。
  更に、中小小売商については「中小小売商業振興法」に基づき、個別店舗の経営近代化事業及び商店街整備、店舗共同化、ボランタリーチェーン等の高度化事業を強力に推進することとしている。

4 中小企業の事業分野を確保するため、新たな立法により特定の事業分野を固定化する規制措置を導入することは、健全な競争の維持、消費者利益の増進等の観点から国民経済的に極めて問題が多い上に、中小企業の近代化意欲をも低下させ、長期的にみれば、かえつて中小企業自体の成長発展を妨げるおそれがあること等、多くの問題があり、賛成できない。
  政府としては「中小企業団体の組織に関する法律」に基づく「特殊契約」制度の運用と適切な行政指導により、大企業と中小企業との調和のとれた発展を図ることとし、このため紛争の実態の常時把握、都道府県中小企業調停審議会の設置促進、紛争処理窓口の明確化、関係機関との連携の強化等紛争処理体制の整備強化等の措置を講じてまいりたい。

5 我が国経済の安定成長への移行は、下請企業のみならず中小企業一般に厳しい対応を迫る側面もあり、下請中小企業においても生産経営活動の合理化、技術力の向上等により、その経営力の強化を図つていくことが要請されている。
  政府としても、下請中小企業のこれらの自助努力を支援するため、所要の助成措置を講じていくとともに、下請企業が親企業に不当に圧迫されることのないよう「下請代金支払遅延等防止法」等関係法令の厳正な運用を図つてまいりたい。

6(1) 下請代金の支払については、中小企業庁としても「下請代金支払遅延等防止法」に基づき所要の調査を行い、同法に違反する親事業者に対しては、立入検査等を行うとともに、速やかに改善するよう指導し、指導に従わないもの、悪質なものについては、公正取引委員会に対し、勧告等の措置請求を行う等厳正な取締を実施しているところである。

 (2) 下請企業振興協会は、下請企業に対する取引のあつせん、下請取引に係る苦情紛争の処理等の活動を積極的に行つている。このような下請振興協会の業務の拡充については、政府としても従来から特段の支援を行つてきたところであり、昭和五十年度においても同協会の活動の強化の措置を講じたところである。

 (3) 公正取引委員会においても、下請代金の支払につき、その支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難な手形を交付することは、下請事業者の利益を不当に害しているものと認め、勧告等により是正措置を講じさせているところである。

7 流通段階においては、種々の取引関係が形成されているが、これらのうち優越的地位の濫用等による不公正な取引方法については「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」に基づき、一般指定及び業種毎の特殊指定等による規制が行われており、今後とも、同法上違法となる不公正な取引については、厳格な態度で臨むべきものと考えている。
  また、不合理な取引慣行の是正については、政府としても従来から必要に応じ日本商工会議所等を通じ、業種別にその適正化のための指導を行つてきているところである。

四について

1 事業税は、事業者が事業活動を行うに当たつて地方団体から受けている各種の行政サービスに必要な経費を分担すべきであるという考え方に基づいて課されるものであり、個人事業税を廃止することは適当でないと考える。
  しかしながら、小規模事業者の事業税負担についてはできるだけこれを軽減するため、毎年度事業主控除額を引き上げてきたところであるが、今後ともその軽減については、配慮してまいりたい。

2 中小企業金融の円滑化については、前述の第三次不況対策に基づき積極的に推進しているところである。なお、政府関係金融機関の金利引下げについては、現在のところ考えていない。

五について

 国際間の自由な資本・技術の移転を促進することが、我が国経済はもとより、世界経済の発展に資するとの見地にたつて、政府は海外投資についてもOECD資本自由化コードに沿つてほぼ完全な自由化を実施しているところであり、我が国企業の海外進出を直接的に規制することは適当でないと考えている。
 しかしながら、海外投資が、我が国の関連中小企業をはじめとする内外の経済に大きな悪影響を与えることのないよう実態は握に努めるとともに、必要に応じ、所要の指導を行う等の配慮が必要であると考えている。

六について

 中小企業施策の拡充強化については、従来から最重点施策の一つとして鋭意その強化に努めているが、施策の強化とあいまつて行政機構の充実も図つてきたところである。現在の中小企業行政においては、特に小規模企業に対して血の通つた行政を進めるための体制の拡充強化が必要であると考え、昨年中小企業庁に小規模企業部を設置した次第である。もとより、行政機構の在り方については、常に経済社会の実情の推移に応じ、行政需要にこたえて見直しを行い、所要の改善を図つていくべきものであることは当然であるが、中小企業省の設置は各種行政の分断を招くことにもなるので適当でないと考えている。

 右答弁する。




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