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平成十年二月十七日受領
答弁第三号

  内閣衆質一四二第三号
    平成十年二月十七日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員坂上富男君提出旧国鉄債務のJR強制負担問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員坂上富男君提出旧国鉄債務のJR強制負担問題に関する質問に対する答弁書



一及び二について

 昭和六十二年四月に行われた日本国有鉄道の経営形態の抜本的改革(以下「国鉄改革」という。)においては、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)とは全く別個の組織として旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社(以下「JR」という。)が設立され、国鉄の鉄道事業を承継したが、JRの社員の共済制度については、それまでの国鉄共済組合が日本鉄道共済組合として同一性をもって存続するものとされ、国鉄の職員からJRの社員となった者に係る年金給付については、これらの者に係る国鉄改革以前の国鉄共済組合の組合員期間(以下「改革前組合員期間」という。)及び国鉄改革以後の日本鉄道共済組合の組合員期間(以下「改革後組合員期間」という。)を合わせた期間をこれらの者の組合員期間として給付額を計算し、日本鉄道共済組合の組合員の掛金及び事業主の負担金等をもって当該年金給付に要する費用に充てることとされた。
 日本鉄道共済組合の長期給付事業は、平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成八年法律第八十二号)に基づき、平成九年四月に厚生年金保険に統合されることとされたが、その際、統合後の厚生年金保険の管掌者たる政府が支給する年金給付のうち国鉄の職員であった者に係るもの及び日本鉄道共済組合の関係事業主であるJR、日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)等の社員又は職員に係るものの原資に充てるため、日本鉄道共済組合は、同法附則第十九条の規定により、厚生年金保険の管掌者たる政府に対して所要額を移換金として納付するものとされた。
 当該移換金の額のうち日本鉄道共済組合の積立金では不足する額については、同法附則第五十四条第二項の規定により、日本鉄道共済組合の関係事業主であるJR、事業団等が分担して負担することとされたが、当該不足する額のうち改革前組合員期間を計算の基礎として算定された額については、同法附則第八十三条の規定により追加された日本国有鉄道改革法等施行法(昭和六十一年法律第九十三号)第三十八条の二の規定により、国鉄が移行した事業団が負担することとされた。
 今般の事業団の債務等の抜本的な処理においては、日本鉄道共済組合の移換金に係る事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る改革前組合員期間を計算の基礎として算定される額について、JRに負担を求めることを検討しているが、当該負担を日本鉄道共済組合の関係事業主そのものであるJRに求めることは、次のような理由から、関係者の負担の公平を確保し、将来にわたる一般国民の負担の軽減を図ること及びJRの社員に係る年金給付の原資を確保し、社会保障制度の重要な一環である公的年金制度の適正かつ円滑な運営を期することという公共の福祉の実現のために合理的な範囲内のものであり、憲法第二十九条第一項の財産権の侵害に当たらないものと考える。
1 日本鉄道共済組合の移換金に係る事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る改革前組合員期間を計算の基礎として算定される額については、これらの者の退職後に、改革後組合員期間のみならず改革前組合員期間も計算の基礎とする年金給付の原資となるものであることから、当該額の負担は年金給付というこれらの者の福利厚生のために必要なものであるということができ、ひいてはこれらの者の雇用主であるJRにとっても経営上有益なものであること。
2 仮に当該額をJRが負担しないこととすると、当該額について最終的には一般国民に対して負担を求めることとならざるを得ないが、1で述べたとおりJRの社員ひいてはこれらの社員の雇用主であるJRにとって有益なものと考えられる当該額の負担については、一般国民に負担を求めるよりも、関係事業主として利害関係を有するJRに負担を求めることとするのがより適当であると考えられること。
3 厚生年金保険への統合前においては、JRが関係事業主として事業主負担をしていた日本鉄道共済組合の給付財源の不足について他の被用者年金制度から支援が行われており、厚生年金保険への統合後も、統合前の期間に係る給付財源の不足について他の被用者年金制度からの支援が継続されることが予定されているが、今般JRに求めることとしている負担の額は、これらの支援により関係事業主としてJRが受ける利益と比較して少額の範囲にとどまるものであり、この点において過重な負担とはいえないこと。
 憲法第二十九条第三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と規定しているが、同項は、社会的に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課する場合には正当な補償を要することとしたものと考えられ、1から3までに述べた理由により合理的な範囲内でJRに負担を課することとしても、JRが受忍すべき制限の範囲を超える特別の犠牲を課するものとはいえず、同項の規定による補償を行う必要はないと考える。

三について

 国鉄改革の実施に伴う国鉄の長期債務等の処理については、国鉄の鉄道事業を承継したJRが負担した債務以外の債務等は国鉄が移行した事業団において処理することとされた。この事業団の債務等は、当面、土地その他の資産の処分等により処理することとされ、昭和六十三年一月の閣議決定においては「土地処分収入等の自主財源を充ててもなお残る事業団の債務等については最終的に国において処理するものとするが、その本格的な処理のために必要な「新たな財源・措置」については、雇用対策、土地の処分等の見通しのおおよそつくと考えられる段階で、歳入・歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定する」という基本方針が定められた。
 この国鉄改革の実施に伴い事業団において処理することとされた債務等とは別に、平成八年の厚生年金保険法等の一部を改正する法律において、日本鉄道共済組合の長期給付事業の厚生年金保険への統合に伴い厚生年金保険の管掌者たる政府に対して納付するものとされた移換金に係る積立金不足額についても、事業団の負担分が定められたが、その当時においては、政府は、昭和六十三年一月に閣議決定した事業団の債務等の処理の基本方針によっていたところであり、当該移換金に係る事業団の負担分は、当該負担分を含む事業団の債務等の抜本的な処理方策を前提としたものではなかった。
 しかしながら、事業団に残る資産等が乏しくなり事業団における資産の処分等による債務等の処理が困難となった事態に対処して、当該債務等の抜本的な処理方策を早期に策定し実施することが緊急の課題となったことにかんがみ、政府は、平成八年十二月には平成十年度より事業団の債務等の抜本的な処理を実施することを閣議決定し、さらに政府・与党の財政構造改革会議における具体的処理方策の検討・決定を経て、平成九年十二月の閣議決定において、昭和六十三年一月の閣議決定にいう「本格的な処理」として、事業団の債務等の抜本的な処理方策を初めて策定するに至ったところである。この事業団の債務等の抜本的な処理方策の策定に当たり、日本鉄道共済組合の移換金に係る事業団の負担分についても事業団解散後の新たな負担の主体を定める必要が生じ、このうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る改革前組合員期間を計算の基礎として算定される額についてJRに対して負担を求めることを検討しているところである。
 日本鉄道共済組合の移換金に係る事業団の負担分の一部についてJRに対して新たな負担を求めることは、関係者の負担の公平を確保し、将来にわたる一般国民の負担の軽減を図ること及びJRの社員に係る年金給付の原資を確保し、社会保障制度の重要な一環である公的年金制度の適正かつ円滑な運営を期することという公共の福祉の実現を目的とするものである。今般の措置は、一及び二についての1から3までにおいて述べた理由から、このような公共の福祉の実現のために合理的な範囲内のものであると考える。
 また、今般の措置と平成八年の措置とでは、先に述べた政府における一連の検討を経て初めて策定された事業団の債務等の抜本的な処理方策としての事業団の整理を前提としているか否かという点においてその事情を異にするものであり、したがって、このような事情の変更が生じた状況の下で、前述の目的のために前述の理由に基づいて新たに今般の措置を講ずることとしても、憲法第二十九条第一項及び第二項の規定との関係で問題が生じることはないものと考える。

四について

 今般、日本鉄道共済組合の移換金に係る事業団の負担分のうち国鉄改革時にJRの社員となった者に係る改革前組合員期間を計算の基礎として算定する額について、日本鉄道共済組合の関係事業主であるJRに対して負担を求めることとしても、一及び二についての1から3までにおいて述べた理由により合理性があるものと考えられ、したがって、JRに対してこのような合理的な範囲内の負担を課することが憲法第十四条第一項の規定との関係で問題を生ずることはないものと考える。





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