平成12年4月27日(木)(第8回)

◎会議に付した案件

1.日本国憲法に関する件

 憲法記念日に向けての委員の自由な意見表明を行った。


◎中山会長の挨拶の概要

  • 憲法記念日を目前に控えて、日本国憲法について委員各位が自由な意見表明を行う意義は、極めて大きい。
  • 憲法調査会会長として、常に「国民とともに歩む憲法調査会」を目指してまいりたい。

◎各委員の発言の概要(発言順)

三塚   博君(自民)

  • 国民の合意が得られたものについては、前倒しで進めていってもよいのではないか。
  • 第9条には自衛権を明記するとともに、唯一の被爆国・日本として核廃絶を明示し、地球人類が永遠に協調できる時代の到来に向け努力すべきである。

仙谷 由人君(民主)

  • 「押しつけ」憲法論をとる人々には、日本国憲法の掲げる三原則と明治憲法下の天皇中心の抑圧体制のどちらが正しいかを問いたい。
  • 地球環境の保護、限定的防衛力、「市民」の概念を取り入れた新しい国家像を論じるべきである。

倉田 栄喜君(明改)

  • 憲法制定経緯の検証も重要だが、現行憲法が現代社会においてどう機能しているかという観点からの検証も重要である。
  • 民主主義と対置されるべき伝統主義の立場から、国民主権と象徴天皇制の理論的解明を行うことが必要である。

東中 光雄君(共産)

  • 憲法を国民に浸透させようとした政府の活動は、アメリカの主導により日本再軍備が進められる過程で中止され、現在に至っている。
  • 20世紀において最も先駆的な憲法を守るための調査をすべきである。

中村 鋭一君(保守)

  • 「押しつけ」憲法を克服し、日本人の日本人による日本人のための憲法を作るべきだ。

二見 伸明君(自由)

  • 現行憲法の原則を承継しつつ全面的にこれを見直す「創憲」の立場から、拙速を避けつつ憲法論議をしていくべきだ。

伊藤  茂君(社民)

  • 憲法論議の座標軸を明確にする必要がある。
  • 今や集団的自衛よりも集団的安全保障が求められている。
  • 憲法を活かす努力をすべきだ。現在は、政策の方が憲法の規定に合っていない。

奥田 幹生君(自民)

  • 現行憲法が自発的に決められたものでないことは明らかだ。
  • 第9条1項は維持すべきだが、2項については改正すべきだ。そのための国民的議論が必要と考える。

高市 早苗君(自民)

  • 日本の心を持った憲法を作るべきだ。憲法には、あるべき国家像や国家と国民の責務を簡明正確な日本語で明記すべきと思う。

横路 孝弘君(民主)

  • 憲法とは国の根幹を定めるもので、具体的内容は法律で定めるべきだ。
  • 憲法論議は、憲法の歴史的な経緯及び背景について考えられなければならない。

太田 昭宏君(明改)

  • 憲法制定の経緯ばかりでなく、制定後今日に至るまでの歴史について検証することは、日本という国の在り方を探る上で重要である。
  • 国民的論議の中に調査会を位置付けるべきだ。

石破  茂君(自民)

  • 憲法改正に関する国民投票法が制定されていない。これは立法府の責任である。
  • 自衛権は、国家固有の自然権であり、憲法に規定すべき事柄ではない。

奥野 誠亮君(自民)

  • 現行憲法は、日本弱体化を目指すアメリカ占領政策の一環として作られたものである。
  • 日本人自身の手で憲法を作るに当たっては、国内外の情勢の客観的な把握が必要である。

島  聡君(民主)

  • 首相公選制を導入すべきである。
  • 21世紀における国の在り方を考えた憲法を論議し、国民自らの手による憲法を作るべきである。

石川 要三君(自民)

  • 5年の調査期間を有効に使い、国内外の情勢の推移を把握しながら、日本の国家像を論議するべきである。

左藤  恵君(自民)

  • 国内外の情勢の変化により憲法が現実と乖離してきた現状にかんがみれば、環境問題、二院制、私学助成等について再検討すべきである。

松沢 成文君(民主)

  • 新しい時代における国のビジョンを打ち立てた後に、新たに憲法を創り出す姿勢が必要である。

久間 章生君(自民)

  • 現行憲法では国連の安全保障活動に参加するには限界があるため、加盟国としての義務を果たすことができるように改正すべきである。

平沼 赳夫君(自民)

  • 法治国家として、押しつけられたという出自の憲法にけじめをつけ、新しい憲法を作るための活発な議論を行うことは国会議員の責務である。

石毛 えい子君(民主)

  • 現行憲法が戦争を起こさなかったことと人権の確立に大きく寄与したことを今後さらに発展継承させることが大事である。

石田 勝之君(明改)

  • 近年、護憲派も自衛権を認めており、第9条に関する改憲派との対立も以前ほどではなく、世論においても改正の土壌は熟していると思う。

深田  肇君(社民)

  • 「押しつけ」憲法ゆえに改憲すべきとする意見には反対である。現実に憲法を合わせるのではなく、憲法の理念に現実を合わせていくことが重要である。

船田  元君(自民)

  • 制定以来一度の改正もない憲法を、変化する社会に適合するように解釈でしのいできたが、限界である。現行憲法の理念は堅持しつつも、必要な改正は行うべきである。

中曽根 康弘君(自民)

  • 明治憲法は「欽定憲法」、現行憲法は「占領憲法」、そして21世紀という新しい時代を迎えるに当たり、国民が参加して「国民憲法」を作るべきである。
  • 議論が5年にわたるのは長すぎる。今後2年で憲法各論の議論を行い、3年目には各党が改正案を作成し、党派を超えた議論をすべきである。

穂積 良行君(自民)

  • 宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の精神にのっとり、21世紀における国の基本的方向を定め、改正に取り組むべきである。

安倍 基雄君(保守)

  • これまで平和が維持されてきたのは憲法のためではなく、日米安保条約のためである。
  • 国際情勢の正しい認識、権利と公共の福祉の関係、柔軟に改正できる憲法であることが大切である。

中野 寛成君(民主)

  • 過去からではなく、未来から憲法を論じるべきだ。
  • 根本的に憲法を洗い直し、日本のアイデンティティーを盛り込んだ風格ある憲法を作りたい。

森山 眞弓君(自民)

  • 二院制の在り方について、参議院の憲法調査会とも協力して議論していきたい。
  • 青少年に悪影響を与える雑誌の広告、販売等の規制を推進する観点から、表現の自由と公共の福祉の関係を考える必要がある。

達増 拓也君(自由)

  • 情報化社会に対応した内容の憲法を作るべきだ。
  • 新憲法制定後も、社会の変化に合わせて5年ごとに憲法をバージョン・アップしていくべきだ。その際、インターネットを用いて国民の声を汲み上げる「e-憲法」を目指すべきだ。

佐々木 陸海君(共産)

  • 改憲推進論者の狙いは、第9条を改正して自衛隊の海外での武力行使を可能とすることにある。
  • 日米安保条約を解消して、平和国家としての進路を目指すべきだ。

横内 正明君(自民)

  • いわゆる芦田修正は、自衛のための戦力の保有を認める趣旨であることが明らかなので、第9条を改正してその趣旨を明記すべきである。
  • まず、第9条の改正だけを先行して行うことも考えられてよい。

杉浦 正健君(自民)

  • 過去の憲法をよく検討し、21世紀に向けて、世界から賞賛される憲法を作りたい。

枝野 幸男君(民主)

  • 抽象的に改憲、護憲を論じるのでなく、どの部分を変えるべきかを具体的に議論すべきだ。
  • 憲法とは何か、憲法には本来何を規定すべきかについて共通認識を持って議論しなければならない。

愛知 和男君(自民)

  • 現行憲法の制定時と比べて、あるべき国の姿が変わっているのだから、現行憲法は新しく書き直すべきだ。
  • 新たな憲法の制定に当たっては、日本の歴史、伝統を踏まえて、これからのあるべき国の姿を検討すべきだ。