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平成十二年十一月十六日提出
質問第三六号

北朝鮮に拉致された日本人救出策についての質問主意書

提出者  西村眞悟




北朝鮮に拉致された日本人救出策についての質問主意書


 北朝鮮に拉致された日本人の救出策については、先に森総理大臣自らがイギリスのブレア首相に「第三国で発見されればよい」というような具体策もある旨を語り、この報道をきっかけにして拉致問題の本質と解決策について国民的関心が高まったものであるが、総理大臣が意図したか否かにかかわらず、結果において自ら喚起した国民的関心に対し、当の政府は民主国家の国民に対する誠意としての具体的解決策を明示することなく、徒に韜晦に相務めたとの印象を受けざるをえないのである。
 いうまでもなく、北朝鮮による日本人拉致は、重大な主権侵害であり人権侵害であり、この解決自体が政府の緊急課題であって国民の重大関心事であるところ、他国のアメリカにおいては米朝交渉において拉致問題を話題にしたと発表したにもかかわらず、肝心の日本政府はこの度の北京での日朝交渉においても拉致問題が話し合われたのかどうかも明らかにしていないのである。
 ところで、北朝鮮は、拉致問題はでっち上げとの姿勢を崩していないのを承知しているが、このような相手と対峙して拉致問題の解決を図るためには、ただ席を立たれれば困るとかの配慮のみで場当たり的に対応するのではなく、当方において本問題の本質をみすえたうえで、当方の意思を明確に相手に伝えるための毅然とした具体的方策が用意されていなければならないことは自明のことであって、当職は過去再三にわたり衆議院における委員会での質問の機会が与えられた際に、外務大臣にたいし、北朝鮮においてなおも拉致問題はでっち上げとの姿勢を貫くならば、我が国から北朝鮮に対する「人、物、金」の動きを規制する制裁措置の発動を用意すべきであると促してきたのであるが、外務大臣からは、その都度、今はその時期ではないので制裁措置は考えていないとの答弁が繰り返されてきたのである。
 しかしながら、政府はかねてより北朝鮮にたいし多量のコメを贈与することだけは繰り返しており、この度も、北京における日朝交渉に先立ち、拉致された日本人の家族にたいし外務大臣が拉致問題解決に有利になるとの説明をしてコメ五十万トンを送る決定をしているのであるが、前記の通り右交渉において政府が拉致問題を話題にしたかも明らかにされず、北朝鮮の拉致問題に対する姿勢は変化していないのである。
 ここに至って、事実に則して明らかになっていることは、拉致問題解決に政府が繰り返してきたコメ等を北朝鮮に送ってその軟化を促すという方策は、何ら北朝鮮にたいし効果を発揮せず、コメを送る度に政府が国民と拉致された日本人の家族に与えた期待は総て裏切られてきたということであり、この同じ方策をこの上さらに繰り返すならば、一体政府に拉致問題を解決する意思があるのか否かに関し重大な疑念を生じせしめ、国内はもちろん国際社会においても、我が国は主権を侵害されていても、侵害した相手から言われるままに、しかも自国民を欺きながらコメを送り続けることしかできない国家であり、しかも自国の国民を救出する気力も方策もない国家としての評価が定まる事態に至ることを危惧するものである。
 よって、拉致問題解決が国家の緊急の課題であること、しかもコメ五十万トンを送る決定をして臨んだこの度の北京における日朝交渉においても、相変わらず拉致問題解決に何ら進展が見られなかった事実に鑑み、この際、過去の交渉の経緯を踏まえた上での政府のこれからの具体的方策を質すことは、急を要すると思料するので、次の通り質問する。

一 北朝鮮との国交樹立にあたっては、拉致問題の解決、即ち拉致被害者全員の原状回復が前提条件であると政府は考えているのか、いないのか、明らかにされたい。
二 政府は、第一回から現在に至る第十一回までの北朝鮮との国交交渉において、拉致問題をどのように取り上げてきたか、明らかにされたい。
三 昭和六十三年三月、参議院予算委員会において、国内での三件六人のアベック拉致失踪事件について、梶山静六国家公安委員長は、「北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚」と答弁している。

 1 政府は、平成三年から四年にかけて行われた第一回から八回におよぶ対北朝鮮交渉においてこの梶山静六国家公安委員長が参議院で指摘した拉致問題をとりあげたのか否か明らかにされたい。
 2 仮に、取り上げなかったとすれば、その理由は何か明らかにされたい。

四 北朝鮮は、現在まで拉致問題はでっち上げとの態度で一貫しており、我が国の主張に耳を傾けていない。通常このような場合には、拉致問題の重要性に鑑み、北朝鮮においてこのような態度を続けるならば深刻な不利益が及ぶとの警告を発して事態打開を探るのが外交の常套である。

 1 よって、政府は過去に拉致問題打開のため、北朝鮮にたいし態度変更なければ深刻な不利益が及ぶこと即ち制裁措置の発動もありうべきことを警告したことがあるのか否か明らかにされたい。
 2 仮に、警告したとすれば、何時如何なる警告をして、北朝鮮は如何に応答したのか、その経緯を明らかにされたい。
 3 仮に、警告したことはなかったとするならば、何故、警告しなかったのか、その理由を明らかにされたい。
 4 仮に、警告したことはなかったとするならば、政府は今まで、不利益の警告を一切せず、北朝鮮の態度変更がないにもかかわらず、コメ贈与という北朝鮮の利益になることばかりを一方的に実施し、北朝鮮としては態度変更なくしてコメを得てきたことになるが、政府は何を目的としてコメを贈与してきたのか、明らかにされたい。

五 昭和六十二年の大韓航空機爆破事件に際し、政府は「爆破は北朝鮮の組織的テロによるものである」と断定し、制裁措置を行った。

 1 その時の具体的状況と制裁措置に踏み切った理由を明らかにされたい。
 2 政府が、大韓航空機爆破を、北朝鮮の組織的テロと認定したと言うことは、犯行を自供した金賢姫を犯人と断定したことを意味するが、政府はそのように断定したのか明らかにされたい。
 3 その金賢姫は、テロ実行のために日本人から日本人化教育を受けたと証言し、我が国警察は金賢姫に日本人化教育をした日本人を、埼玉県出身のTさんと特定し同人は北朝鮮に拉致されたと断定した。そうであるならば、大韓航空機爆破という「組織的テロ」を実行するための準備としての日本人拉致も「組織的テロ」であると思われるが、政府はこの拉致を如何に認識しているのか、「組織的テロ」であると認識しているのかどうか明らかにされたい。
 4 仮に、日本人拉致を「組織的テロ」と認識していないというならば、政府は、日本人拉致を如何なる行為と認識しているのか、明らかにされたい。
 5 大韓航空機爆破で死亡したのは韓国人であり、拉致の被害者は日本人である。そうであるならば、何故政府は、被害者が韓国人である爆破のみに制裁をかけ、それと不可分でかつ一対の被害者が日本人である拉致に制裁をかけなかったのか、その理由を明らかにされたい。

六 平成十一年七月二十七日、高村外務大臣はオルブライト米国務長官、洪淳瑛韓国外交通商相と外相会談を行い、北朝鮮のミサイル再発射問題について、「北朝鮮に深刻な否定的結果をもたらす」との強い警告を盛り込んだ共同声明を発表し、同外相は発表後の記者会見で、北朝鮮に対し「物、金、人」の動きの規制の可能性を表明したうえで、北朝鮮への送金の規制を検討していると強調し、結果として現在に至るまで北朝鮮のミサイルの再発射は留保されている。

 1 もとより北朝鮮によるミサイルの発射は我が国に対する重大な脅威であるが、既に発生した重大な主権侵害であり人権侵害である日本人拉致に関して、政府においてはミサイルに対すると同様の「物、金、人」の動きの規制による制裁措置の発動を拉致問題解決のために実行する準備があるのか否か、明らかにされたい。
 2 仮に、実行する意思がないとするならば、制裁措置をミサイルに対しては行えて、既に発生し侵害が現実化している拉致に対して行えない理由を明らかにされたい。
 3 次に、現在、制裁措置を準備せずとしても、将来、如何なる情況が生じれば、拉致問題解決のために同措置を準備し発動しうるのか、その要件を明らかにされたい。
 4 また、これまでたびたび行ってきた北朝鮮に対するコメ支援が、拉致問題解決のために現在まで効果があったと政府は考えているのか否か、明らかにされたい。
 5 仮に、拉致問題解決に関しコメ支援の効果があったと考えているのならば、その効果とは何かを具体的に明らかにされたい。
 6 さらに、コメ支援の効果ありとするならば、今後もコメ支援を続けるのか否か、続けるとすれば、従来のように無計画場当たり的ではなく計画的でなければならないのは当然であるから、今後のコメ支援計画を明らかにされたい。

七 最後に、拉致問題が、重大な主権侵害であり人権侵害であるという重要性に鑑み、北朝鮮との過去の交渉の経緯を総合し、その教訓を吟味した上で、政府は今後如何にすれば拉致された日本人の原状回復が達成されると見通し、如何なる方策を講じようとしているのか、具体的に明らかにされたい。また、当面、具体的方策無しと、見通すならば、その旨回答されたし。

 右質問する。



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