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平成十三年八月七日提出
質問第一号

小泉首相の靖国神社への参拝に関する質問主意書

提出者  北川れん子




小泉首相の靖国神社への参拝に関する質問主意書


 小泉首相は、日本国内および中国、韓国のアジア諸外国からのさまざまな反対がありながら靖国神社への参拝を決行しようとしている。以下、質問する。

一 小泉首相は参拝強行の理由として「戦争を二度と起こしてはいけないという気持ちと、戦争に行かざるをえなかった人へ敬意と感謝を捧げるため」と述べている。靖国神社は、戦前の国定教科書では、「ここに祀ってある人にならって君(天皇)のため国のため尽くさなければなりません」とあり、戦後に作られた靖国神社社憲でも戦没者を国に殉じたものと位置づけた上で「その御名を万代に顕彰する」(前文)ために祭祀を行なうことを(宗教活動の)目的とするとしている。したがって、ここに参拝することは合祀された人々に「敬意と感謝を捧げる」ことによって、「国に殉じる」すなわち「国の戦争のために死ぬ」ことを賛美することになり、それは憲法一三条が定める「個人の尊厳」の理念に反することになると考えるがどうか。
 さらに「戦争を二度と起こしてはいけないという気持ち」をもって靖国神社に参拝することは、同神社の教義に照らして無理であると考えるがどうか。首相の認識を伺いたい。
二 「戦争を二度と起こしてはいけないという気持ち」をもって靖国神社に参拝するとしても、靖国神社は一宗教法人であり、そこに公的立場にある首相が参拝することは、靖国神社の宗教活動に国家が大きくかつ公然と関わりを持つことになり、憲法二〇条、八九条の定める政教分離に反することになると思うがどうか。首相の認識を伺いたい。
三 一九八五年に行なわれた中曽根康弘首相(当時)の靖国神社への公式参拝に対して、これを違憲と主張した三件の訴訟が各地で提起され、これら訴訟の高等裁判所の判決が、公式参拝は「違憲の疑いが強い」と判示したことを認識しているか。伺いたい。
四 靖国神社は明らかに特定の教義を有する宗教法人である。戦没者遺族のなかには、自己の宗教的信念に照らし、また靖国神社の教義に同調し得ない信条を持っていることから、自己の肉親が靖国神社に「英霊」として合祀されていることに苦痛を感じている人たちも多い。首相が靖国神社に首相として参拝することは、右記遺族たちの宗教的信念・信条を蹂躙し、その苦痛を倍加させることになると考えるが、この点を首相はどう考えておられるのか、その見解を伺いたい。
五 周知のとおり、一九九一年に出された岩手靖国訴訟の仙台高裁判決で、首相の靖国神社公式参拝は違憲であると明言されており、この判決は確定している。さらに愛媛玉串料訴訟で一九九七年に出された最高裁大法廷判決では地方公共団体による靖国神社や護国神社への玉串料等の奉納が、たとえそれを相当数の者が望んでいるとしても、それらは、公共団体が特定の宗教団体に対して特別の関わりあいを持つことであり、宗教団体である靖国神社や護国神社が特別のものであるとの印象を一般に与えるものであるから、憲法が禁止する国家や公共団体の宗教活動に当たり違憲だとされている。玉串料等の奉納が違憲と明言されているのであるから、首相による参拝は、玉串料等の奉納よりも直截に靖国神社との関わりあいを顕示するものであり、その違憲性はより一層明らかというべきことは論をまたない。法治主義・「法の支配」はわが国の憲法秩序の核心をなすものであり、三権分立制と相まって、専制政治を阻止する不動の原理であって、そこにおいては、行政は司法の判断を尊重し、これに従うことが立憲主義を守り専制を阻止するための不可欠の要請である。首相が靖国神社に参拝することは、これら司法の判断に明らかに背き、「法の支配」を蔑ろにするものと考えるが、この点につき首相の認識を伺いたい。
六 靖国神社には、日本の軍人・軍属として徴用されて亡くなった「台湾」「朝鮮」の方が約五万人「英霊」として合祀されている。日本の植民地支配と侵略戦争の犠牲者が加害者と一緒に「英霊」として神にされているわけだが、首相はこのことについて、どのような認識を持っておられるか。靖国神社に参拝することは、これらの方々に二重の侮辱を与えることになると思われるが、首相の認識を伺いたい。
七 中国・韓国をはじめとする先の大戦で甚大な被害をうけた近隣諸国が首相の靖国神社参拝に強く反対している。靖国神社にはA級戦犯も合祀されていることを考えると、これら諸国の反対には充分理由があると思われる。首相がこの反対を無視して参拝を強行するのは、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする憲法前文の精神からも許されないと考えるが、この点について首相の見解を示されたい。

 右質問する。



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