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平成十三年十一月九日提出
質問第二一号

諫早湾干拓事業の見直しと「防災」機能等に関する質問主意書

 提出者
 小沢和秋    赤嶺政賢




諫早湾干拓事業の見直しと「防災」機能等に関する質問主意書


 八月二十四日に開かれた九州農政局の国営事業再評価第三者委員会は、諫早湾干拓事業について「環境への真摯かつ一層の配慮を条件に事業を見直されたい」と答申した。八月二十八日に、農水大臣は「環境への一層の配慮等の視点に立って、本事業を自然と共生する環境創造型の農業農村整備事業の先駆的取組みにしたい」という談話を発表した。これを受け十月三十日、農水省はこれ以上新たな干陸化を行わないという事業の縮小案を明らかにした。しかし、今回の見直し案は西工区の農地造成等をこれまでどおり続行し、調整池水位は今後もマイナス一メートルで維持するというもので、有明海再生の視点を全く欠いた小手先の見直しにすぎない。
 よって次のとおり質問する。

(一)
 そもそも今、なぜこのような見直しを行うのか。潮受け堤防を建設し始めてから直後魚介類の水揚げが激減し続け、堤防閉め切り後ついにノリ養殖まで大打撃を受けるに至り、沿岸漁民、住民だけでなく全国民的な「干拓中止」の声を無視できなくなったため以外としか考えられない。しかし、この見直し案にはそういう世論にこたえる姿勢が全く感じられない。この見直し案では国民の声をどう考慮したのか。
(二)
 今、有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(第三者委員会)が、ノリ不作等の原因究明調査を行っている。もし今回の見直し案で工事を再開した後、干拓事業との因果関係を認め、さらに重大な見直し・中止を迫る同委員会の結論が出た場合、莫大な事業費の無駄使いになる可能性がある。こういう事態を避けるためにも、同委員会の結論を待って干拓事業の最終的見直しの方向を決めるのが当然ではないか。
(三)
 同様なことが「漁場調査委員会」についてもいえる。この委員会は潮受け堤防着工直後、タイラギがほとんど採れなくなったためその原因を調査するため一九九三年に設けられたが、現在まで何の調査結果も報告されていない。一九九七年以後、委員会も開かれていない。この状況は干拓工事への影響をおそれて、結果の公表を先のばしにしているためとしか考えられない。この機会に改めてその一日も早い公表を要求するが、干拓工事の最終見直しには、この調査結果もノリ養殖と同様に反映することが求められるのではないか。
(四)
 今回の見直し案では第一に「防災機能の十全な発揮」が掲げられている。農水省の土地改良法に基づく本事業が「防災」を第一に掲げざるをえないこと自体、この事業がいかに目的喪失−事業のための事業と化しているかをよく示している。しかも、その防災機能も数年前からは諫早市中心部の防災に役立たないことを認めざるをえず、今や残っているのは干拓背後地周辺の低平地だけである。農水省は「潮受け堤防完成後、低平地の湛水被害と排水不良が解消した」という。しかし、これも実際には今でもしばしば湛水被害が発生している。潮受け堤防閉め切り後、今日まで被害がどのように発生しているのか具体的に答えられたい。
(五)
 農水省は第三者委員会で「調整池水位がマイナス約〇・五メートル以上に上昇した時には、背後地に湛水が生じる」と、調整池水位をマイナス一メートル以下に保つ理由にしている。しかし、潮受け堤防で閉め切る前は、諫早湾の満潮時水位は小潮時でもプラス一メートル、大潮時には二・五メートルもあったのに、大雨が降らない限り湛水は低平地でも起こらなかった。なぜ堤防を閉め切って以後、大雨が降らなくてもマイナス〇・五メートル以上に調整池水位が上昇すれば湛水が起こるようになったのか。もしこういう変化が事実であるとすれば、潮受け堤防を建設したこと自体が誤りだったということで、堤防を撤去する以外にないが、少なくとも水門を常時開放しておくべきだということになるのではないか。
(六)
 結局、湛水被害や排水不良を本当に解決するためには、佐賀県沿岸のように排水ポンプを増設・増強する以外にない。また、既存排水樋門前面の潟土は、重機による浚渫などによって解決できる。この方法の方が費用も安いと思われる。なぜこの方法に変えないのか。要するにここまできたので、今さら変えられないということではないのか。
(七)
 農水省は諫早湾干拓の防災効果を証明するものとして、一九九九年七月二十三日の豪雨を例に上げ、総雨量三百四十二ミリを記録した中で、低平地の水田では一時的な湛水が発生したものの、いち早く排水ができ農産物被害は三百万円にとどまったと説明している。しかし、実際には低平地は諫早市内のような大雨ではなかった。総雨量三百四十二ミリという数値は諫早市役所雨量計の〇時から十三時までの総雨量であるが、同時刻の森山町役場の雨量計総雨量は六十四・五ミリ、愛野町役場では三十ミリ、干拓中央観測所では百三十八ミリであった。湛水被害はその水域の降雨量に左右されるもので、低平地の湛水被害を論ずるのならば、これらの雨量を基準とすべきである。降雨量の多かった諫早市内の降雨量があたかも低平地全域降雨量のように見せかけ、湛水被害が少なかったと主張するのは人を欺くものではないか。
(八)
 農水省は長崎海洋気象台の一九九九年の諫早地域の降雨予報と実績を取り上げ、気象庁の降雨予報は当てにならず、緊急に調整池水位を下げる対応ができないことを、水位をマイナス一メートルより上昇させない理由にしている。しかし、我々が問い合わせたところ、気象庁と気象台は当時二日前から高層予想図などで大雨の可能性があり警戒を要する状態が続いていたことを把握していたという。緊密に気象台と連絡を取りあえば、調整池水位を常時マイナス一メートルに保つ必要はないのではないか。現在の予報技術で、二日前ならほぼ確実に大雨を予測できるのではないか。気象庁の責任ある見解を求める。
(九)
 見直し案が「新たな干陸は行わない」としているのは当然としても、問題はこれまで干潟だった西工区を既に干陸化していることを理由に、あくまで農地にしようとしていることである。西工区こそ、これまで有明海の子宮であり腎臓であるとされてきた干潟の中心部であった。この地域に海水を導入して、稚仔魚などをはぐくむ生物再生産の場、有明海の浄化機能の場としての干潟を再生させることこそ今求められているのに、見直し案にはこの視点が全く欠落している。なぜそのことを検討しないのか。
(十)
 見直し案では「環境への一層の配慮」と称して、東工区を「自然空間として現在のまま保全」するという。もともとあった干潟を干陸化し、諫早湾を調整池によって淡水化させて生態系を完全に破壊しておきながら、それを自然の姿のごとく描き出し、これを「保全」するというあまりもの偽善に、怒りを禁じえない。見直すというなら、ここを本来の干潟に戻すのが当然ではないか。
(十一)
 東工区の工事中止で当初完成予定の農地約千三百ヘクタールのうち七百ヘクタールが未造成に終わり、小江工区と合わせても農地は約半分の七百ヘクタールしか造成されない。総事業費は二千四百九十億円から二千四百六十億円に縮小されるが、造成地は大きく減り、「経済効果」のうち少なくとも「作物生産効果」と「国土造成効果」は大きく低下するはずである。今でも土地改良法の要件としてぎりぎりの一・〇一という費用対効果は、さらに下回って一未満になり、もはや事業として成り立たなくなるのではないか。今回の見直しで費用対効果がどう変化するか、数字を示し具体的に答えられたい。
(十二)
 今回の見直し案は土地改良法上の手続きとして行われているため、国はもっぱら長崎県を相手に協議を行っているが、干拓工事の被害が福岡県・佐賀県・熊本県にも及んでおり、むしろこれらの県の住民、とりわけ漁民から強く干拓事業中止の要求が提起されている。なぜ土地改良法上の手続きに固執して、これら各県の関係者の意見を聞こうとしないのか。今からでも意見を聞くべきではないか。
(十三)
 農水省は「水門の護床工外側の流速を一・六メートル/秒以下に制限しないと底泥層の洗掘が起こり、護床工の強化と拡充の対策を行おうとすれば相当な期間と費用を要するので、水門を開けることは困難」と主張している。しかし、第三者委員会が「開門して調査」という方向を打ち出しているのだから、それを真剣に受け止めたのであれば今年三月から半年以上の間、護床工の強化、拡充など多くの対策を打てたはずである。それを何も行わず、これから対策を打つのに相当な時間がかかると主張するのは、開門調査を妨害するための理屈としか考えられないがどうか。一方、大雨時の調整池の排水は水門を全開にして行われている。我々の試算では一・六メートル/秒をはるかに超える流速になるが、これまで一回もそれを超えたことがないと断言できるか。
(十四)
 先に我々は、干拓工事現場での土壌固化材として五万トンを超える大量のセメント使用について質問した。有明海沿岸の各県では海岸保全事業などでコンクリートを使う際、事前に関係漁協と協議し、自主的に毎年九月から翌年三月までのノリ養殖の時期にはコンクリートを使う工事を控えている。県だけでなく、国の工事でもこのやり方は守られている。これは国もセメントがノリ養殖に及ぼす有害な影響を認めたからではないか。第六回第三者委員会で農水省は、セメントが水に溶け出していないと電子顕微鏡での検討結果まで持ち出して報告している。しかし、その分析に用いた水は漁民の抗議で工事が中断されて五ヶ月もたった後の水で、これが無害の証明になるのか。セメント打設直後の水にも全く溶け出さないと主張できるのか。もしそうならば、なぜノリ養殖の時期にセメントを使用しない慣行ができたのか。この慣行は何の意味もないのか。
(十五)
 農水省は、干拓工事現場でのセメントは軟弱地盤を固めるため広範囲で潟土をいったん固め、その後掘削したと説明している。一九九七年度から掘削した排土十六万五千m3は小江工区と西工区に置かれたままである。セメントの混じった排土は産業廃棄物として適切に処分しなければならないが、なぜ廃棄物処分場に持ち込まず放置したままなのか。今後どうする予定か。
(十六)
 セメントを土壌固化材として使う場合、土壌環境基準を超える濃度で六価クロムが溶出するおそれがあるため、六価クロム溶出試験を実施し溶出量が基準以下であることを確認するよう、昨年三月に農水省構造改善局から通達が出されている。この通達はセメントの使用が環境に悪影響を与えるおそれがあるから出されたのではないか。

 右質問する。



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