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平成十三年十二月七日受領
答弁第二一号

  内閣衆質一五三第二一号
  平成十三年十二月七日
内閣総理大臣 小泉純一郎
       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員小沢和秋君外一名提出諫早湾干拓事業の見直しと「防災」機能等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小沢和秋君外一名提出諫早湾干拓事業の見直しと「防災」機能等に関する質問に対する答弁書



(一)について

 農林水産省においては、現在、食料の安定供給と美しい国づくりに向けて、農業農村整備事業を含め農林水産公共事業全般について「自然と共生する環境創造型事業」に転換を図ることとしている。こうした中で、国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)については、「国営土地改良事業等再評価実施要領」(平成十年三月二十七日付け農林水産省構造改善局長、畜産局長通知)に基づき再評価を行い、その結果について公正中立な審議をつくす目的で農林水産省九州農政局に設置された第三者委員会から出された意見を踏まえ、防災機能の十全な発揮、既に干陸し整備されつつある土地の早期の利用、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守の四つの視点に立って、本事業地域において「農と緑と水辺空間」の実現が達成されるよう総合的な検討を行っているところである。

(二)及び(三)について

 本事業については、(一)についてで述べたとおり総合的な検討を行っているところであるが、検討に当たっては、本事業がこれから開始されるものではなく、既に潮受堤防の設置により防災機能が発揮され、地元から高い評価を得ていること、また、本事業地域では既に干陸地において農地としての整備が進んでいること等の状況を出発点として、既に干陸し整備されつつある土地の早期の利用等の視点に立った検討を進めることが重要であると考えている。
 なお、本年九月二十日に農林水産省有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(以下「委員会」という。)から発表された「有明海のノリ不作の対策等に関する中間取りまとめ」においては、平成十二年度のノリ不作の主な原因は、かなり異常な気象・海象によって発生した大型珪藻の赤潮によるものであるとされているが、アサリやタイラギ等の二枚貝の不漁の原因は、現時点では特定されるには至っていないとされており、農林水産省においては、引き続き、関係省等と共同で有明海の環境悪化の現状把握と原因解明のための調査を実施することとしている。
 また、諫早湾漁場調査委員会においては、調査結果の取りまとめに向けて、学識経験者から構成される専門部会を本年十一月二十日に開催したところであり、同委員会を経て、取りまとめ結果を早急に公表してまいりたい。

(四)について

 本事業については、地元の要望に沿って、防災機能の強化と優良農地の造成を目的に、着実に実施してきたところであり、今般、総合的な検討の過程において長崎県等に提示した検討案(以下「検討案」という。)においても、その目的を何ら変更していない。
 潮受堤防の締切り以降、調整池の背後地の一部で発生した農作物の被害については、別表のとおりである。なお、湛水が起きた場合であっても排水が円滑になされたときは、一般に湛水による被害は発生しない。
 本事業については、既に平成九年四月に諫早湾の一部を潮受堤防で締め切り高潮を防止するとともに、調整池の水位を標高マイナス一メートルとなるように管理して、潮汐の直接的な影響を受けることなく河川、排水路等から調整池への排水が速やかに行われることにより、大雨時でも洪水被害の軽減が図られるなど、諫早市街地の一部を含む諫早湾周辺地域では、これまでに防災機能が発揮されているところであり、湛水に関しても地元からは、その程度が大幅に軽減されたと高い評価を得ているところである。

(五)について

 御指摘の委員会における農林水産省の説明は、平成九年四月の潮受堤防締切り以降における標高マイナス一メートルに管理していた調整池の水位の変化の実績として、大雨時の降雨が河川等を通じて調整池に流入し、水位が最も上昇した時は標高ゼロメートル程度であり、標高マイナス〇・五メートル以上に上昇した時が十一回あったことを示したものである。さらに、降雨前には調整池の水位を標高マイナス一メートルに管理していても、降雨により調整池の水位が標高マイナス〇・五メートル以上に上昇するような場合には、降雨の状況により湛水の程度は異なるが、背後地に一時的に湛水が生じている状況についても示し、仮に、降雨前の調整池の水位が標高マイナス一メートルよりも高く設定されていたならば湛水の頻度がより高く、かつ被害の程度も大きくなるおそれがあることについても説明したものである。なお、降雨がないのに調整池の水位が標高マイナス〇・五メートル以上になり湛水が起こった事実はない。

(六)について

 諫早湾周辺地域は、極めて低平地であることから、これまで幾度となく高潮・洪水の被害を受け、また潮汐の影響等により円滑な排水に支障が生じていたことに加え、諫早湾が狭あいな地形を有していることから、本事業の計画策定時において、潮受堤防で諫早湾の一部を締め切り、内部堤防との間に調整池を設けることによって高潮の防止と洪水時の円滑な排水を可能とすることが、既存堤防の強化や排水ポンプの整備等を行うことと比較し、防災機能の点で有効かつ効率的であると判断して実施しているものである。また、既に防災機能が発揮され、地元から高い評価を得ている中で、御指摘のような背後地防災対策に切り替えることは適切ではないと考えている。
 なお、諫早湾周辺地域における排水不良対策については、潮受堤防の設置により可能となった調整池の水位を標高マイナス一メートルに保つことを基本に、関係機関が連携を図りながら、排水路の整備等を順次実施していく必要があると考えている。

(七)について

 御指摘の内容は、農林水産省が本年九月二十日に開かれた委員会に提出した資料によるものと考えられるが、当該資料は諫早市を対象に、潮受堤防締切り前の昭和五十七年七月二十三日の降雨時と締切り後の平成十一年七月二十三日の降雨時におけるそれぞれの農地の湛水や農作物被害の発生状況について比較したものであり、森山町や愛野町を含む諫早湾周辺低平地全域を対象としたものではない。

(八)について

 現在の予報技術では、二日程度前に西日本等の広い地域を対象として台風、低気圧等に伴う降雨の発生傾向を予測することは可能であるが、諫早地域のような限定された地域を対象として二日前に確実に大雨を予測することは困難である。
 本事業の防災機能を十全に発揮するには、予測し得ない大雨等の発生にも備えておくことが求められ、このため、本事業において調整池の水位を降雨前には標高マイナス一メートルに管理しておく必要があると考えている。

(九)及び(十)について

 本事業については、(二)及び(三)についてで述べたとおり、これから事業が開始されるものではなく、既に潮受堤防の設置により防災機能が発揮され、地元から高い評価を得ていること、また、本事業地域では既に干陸地において農地としての整備が進んでいること等の状況を出発点として、検討することが重要であると考えている。仮に、このような状況を踏まえずに、調整池に海水を導入して西工区を干潟に戻すことは、既に干陸し整備されつつある土地の農地としての効用を無に帰するだけでなく、既に高潮や洪水等の災害から生命、財産等を守る役割を果たしている潮受堤防や調整池の機能を失わせることとなることから、干陸した西工区を元の干潟に戻すことは考えていない。

(十一)について

 本事業については、本年十月三十日に検討案を提示し、今後長崎県を始めとする関係者と意見交換しながら、年末までに成案を得たいと考えている。
 したがって、現時点において、費用対効果がどのように変化するかなど、具体的な検討結果をお示しすることはできない。

(十二)について

 検討案については、本事業を円滑に実施する観点から、佐賀県有明海漁業協同組合連合会、福岡県有明海漁業協同組合連合会、熊本県漁業協同組合連合会等に説明し、意見交換を行ったところである。

(十三)について

 潮受堤防の排水門を開けての調査(以下「本調査」という。)については、現在、委員会において、その内容及びそれを実施するために必要な対策についての議論がなされているところであり、農林水産省においては、委員会での結論を踏まえ、本調査を実施するためにどのような対策が必要かを検討することとしている。
 なお、現状において、大雨時に調整池から排水した場合、御指摘のように一・六メートル/秒を超える流速が発生することがあると推定されるが、このような排水門操作は調整池に流入した河川水等を外潮位が低い間にできるだけ速やかに排水し、洪水被害を軽減するためであり、防災上やむを得ないと考えている。一方、本調査は調査の目的で排水門を通じて調整池に海水を出入りさせるものであることから、排水門操作によりその出入量や流速を調整することは十分可能であり、委員会においては、本調査による悪影響を回避・低減する観点から「洗掘された底泥の堆積で河口閉塞や樋門の機能が喪失しないよう、底泥の洗掘が生じない流速で排水門の開門操作の方法を行うこと」が開門調査に当たっての前提条件の一つとして検討されているところである。

(十四)について

 有明海沿岸で国が行う工事の実施に当たっては、それを円滑に進める観点から、漁業協同組合等からの要請があれば、必要に応じてノリ漁期におけるコンクリート工事を控えているところである。
 御指摘の「電子顕微鏡での検討結果」については、調整池の濁りがセメントに由来するものであるかどうかを明らかにするため、調整池の懸濁物質、底泥及びセメントの電子顕微鏡写真を比較した結果、調整池の懸濁物質はセメントとは明らかに異なり、底泥と似たものであったことを報告したものである。また、セメントは水と反応して難溶性の物質になると認識している。
 なお、本事業においてコンクリートやセメント材を使用する工事については、必要に応じ工事に伴う排水を中和処理する等の対策を講じているところであり、調整池の水質調査結果においても、セメントの影響と考えられる明確な水質の変化は認められていない。

(十五)について

 本事業においては、セメント材等を使用して排水路の地盤の改良を行っているが、改良後の掘削土については、道路等の用土として利用しているところである。
 なお、掘削後の仮置きしている土は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項の廃棄物には当たらないと考えている。

(十六)について

 御指摘の通達とは、「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」(平成十二年三月三十一日付け農林水産省構造改善局建設部長通知)であると考えられるが、本通知では、セメント及びセメント系固化材を使用した改良土から、条件によっては「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成三年環境庁告示第四十六号)に定める環境基準(以下「土壌環境基準」という。)を超える濃度の六価クロムが溶出するおそれがあるため、国営土地改良事業等の工事の施工に当たっては、六価クロム溶出試験を実施し六価クロム溶出量が土壌環境基準以下であることを確認する等の措置を講ずる旨指示したところである。
 なお、平成十二年度以降実施された国営土地改良事業等の工事の施工に当たり行われた六価クロム溶出試験においては、その結果はすべて土壌環境基準を下回る値であった。


別表 農作物被害状況



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