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平成十六年四月二十日提出
質問第八一号

有事関連法案・条約等に関する質問主意書

提出者  前原誠司




有事関連法案・条約等に関する質問主意書


 政府提出の有事関連法案・条約等の趣旨について、以下質問する。

一 いわゆる「基本法」のあり方について
 「基本法」制定について、先般、与野党の協議機関において「緊急事態基本法」制定について合意されたところである。
 1 いわゆる「基本法案」の骨子策定の上は、早急な立法化が必要であると考えるが、その必要性・緊要性について政府はどのように認識しているか。
 2 近い将来の大規模災害の可能性も取り沙汰されている中、本基本法案と災害対策基本法との関連をどうするのか、また、自衛隊のイラク派遣に関連して、国内テロの危険性も指摘されているところ、政府の早急な対応が求められるところであるが、「基本法」に盛り込まれる、それら大規模自然災害、テロに際しての国としての取り組み、対処するための基本的な考え方はどのようなものが考えられると政府は認識しているか。
 3 人権に関する基本理念は、平時、有事を問わず守られるべきであり、特に、武力攻撃事態等において、実力部隊が活動する場面においては、望むと望まざるとにかかわらず、常に人権侵害に至る可能性が高い。国民保護法案において、「基本的人権の尊重」規定について、「国民の協力等」、「基本的人権の尊重」の項が設けられてはいるが、非常に簡単な内容である。想定される「基本法案」においては、例えば、「いかなる事態にあっても、思想、良心、信仰の自由といった内心の自由は絶対不可侵であること。その他の精神的自由権に対する制約がなされる場合は、より重大な人権を守るための必要最小限の範囲にとどめなければならないこと。特に表現の自由については、原則として事前に制約してはならず、例外的に事前抑制が可能な場合も、その内容を問題にする制約は許されないこと。経済的自由権に対してやむを得ず特別の制限を課すには、その損失等を補償しなければならないこと」など、しっかりと理念や最大限尊重の義務を書き込むべきであると考えるが政府はこれをどう評価するか。
二 国民保護法案について
 (1) 緊急対処事態関係
 1 「緊急対処事態」の定義が「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷」、「明白な危険が切迫」となっており、対象となる事態が、際限なく広がる恐れがあるのではないか。また、政府が「明白な危険が切迫」しているとして事態認定しても、その妥当性を検証できないのではないか。
 2 「緊急対処事態」について、「国家として緊急に対処する」というのであれば、その認定について、事後的にでも国会の承認を求めることにより、国会の適切な関与のもとで、国として一体となって措置を講ずることとすべきではないか。
 3 自衛隊法の附則改正に関して、自衛隊は「国民保護等派遣」の枠組みで、緊急対処事態にも派遣されることになるが、内閣総理大臣の承認のみであり、国会の承認は必要ないのか。
 4 国民保護法案において、「緊急対処事態」の概念を創設しているが、昨年成立した「武力攻撃事態対処法」にはそもそもこの概念が欠落している。今回、「緊急対処事態」の概念を新たに設けるのであれば、それを武力攻撃事態対処法の中に位置付け、「武力攻撃事態対処法」をより幅広い緊急事態に対応するための法律に構成し直すべきではないか。法制上、不都合や問題があるのか。
 5 緊急対処事態の具体例として、政府は、「原子力発電施設の破壊でありますとか、炭疽菌等の生物剤を用いた生物テロ、あるいは航空機によります多数の死傷者を伴う自爆テロなどの事態を想定」している旨答弁(平成十六年三月五日衆議院予算委員会・玄葉委員の質問に対する井上国務大臣答弁)しており、また、先般の平岡秀夫君提出の質問に対する政府の答弁書(内閣衆質一五九第四三号)一の(五)においては、「緊急対処事態と認定された場合には、警察及び海上保安庁が、警察法、警察官職務執行法、海上保安庁法等の警察・海上保安関係法の規定に基づいて第一次的に対処するが、警察機関によって対処することが不可能又は著しく困難な場合等には、自衛隊法の規定に基づいて、自衛隊が警察機関と連携しつつ対処することになる」としている。
 このように、緊急対処事態は、国民を保護するための措置にとどまらず、侵害を排除するような対処措置を講ずることも十分考えられるのではないか、政府の認識如何。
 また、国民保護法案により、緊急対処事態対策本部の設置等、国全体としての緊急対処保護措置の実施の体制が整備されたが、鎮圧作用に係る国全体としての枠組みの整備はなされていない。政府は、ある事態に際し、国家として当該事態の鎮圧のため全体として対処することが必要となるような事態は想定していないのか。そのような事態が生起した場合、現行法上、かかる事態に際しての国全体の枠組みが存在していない中で、政府が一体となって当該事態に対処していくことを如何にして担保していくつもりなのか。緊急対処事態において、現行法上考えられる具体的な侵害排除のための対処措置の例はどのようなものがあるか。
 6 国民保護法案第百八十二条第二項において、緊急対処事態対策本部について武力攻撃事態対処法第十四条から第十七条の規定が準用されていないのはそれぞれなぜか。
 7 国民保護法案第百八十一条第一項において、「緊急対処事態の認定」の閣議決定と、「緊急対処事態対処方針」の閣議決定とで別に規定したのはなぜか。武力攻撃事態対処法第九条においては、武力攻撃事態等に至ったときは対処基本方針を定めるものとされ、同方針において武力攻撃事態等であることの認定についても定めるものとされているが、このように方針の中に含めて規定しなかったのはなぜか。
 8 国民保護法案第八章において「緊急対処事態」を規定したのは、武力攻撃事態対処法第二十五条に基づくその一部の施策であるのか。「緊急対処事態」と武力攻撃事態対処法第二十五条の「緊急事態」は関係如何。
 9 国民保護法案に規定する「緊急対処事態の認定」と警察法に規定する「緊急事態の布告」の関係如何。また、後者について国会承認事項とされているのに対し、前者が国会承認事項とされていないのはなぜか。
 10 国民保護法案第百八十一条の「緊急対処事態対処方針」については、武力攻撃事態対処法の対処基本方針と異なり、「変更」に関する規定がないのはなぜか。
 11 国民保護法案の附則において武力攻撃事態対処法の一部改正があり、同法第二十一条から第二十三条の規定が存置されているが、今後、さらに関連法案を国会に提出することを想定しているのか。
 (2) 放送関係
 1 法案第七条第二項においては、指定公共機関である放送事業者の表現の自由に配慮すべき義務を規定しているが、報道の自由や取材の自由を保障するための具体的な措置が不明確である。具体的にどのような措置を講ずることになるのか。
 2 法案第三十六条第四項に規定されている業務計画に対する「内閣総理大臣の助言」については、報道機関に対する公権力の関与を許す可能性があり問題ではないか。
 3 法案第五十条は、警報の内容を放送することを義務付けているが、これは何ら検証されない警報の内容を報道機関に放送させることを義務付けることになり、報道の自由や編集の自由を損ねることになるのではないか。
 (3) 私権制限等
 1 法案第四条において、「国民の協力」が規定されているが、「要請に当たって強制にわたる」とはどのような行為が該当するのか。非強制性はどのように担保されるのか。NGOやボランティア等との関係はどうなっているのか。また、避難・誘導が、市町村の権限となっているが、実効性のある態勢が整っているのか、警察、NGO、ボランティアの役割の例示、町内会や自治会の協力等のいわゆる「民間防衛」の態勢づくりなど、どういう措置が可能な法制となっているのか。
 2 自主防災組織及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置(法案第四条)又は緊急対処保護措置(法案第百七十三条)に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならないとあるが、どのようなことを想定しているのか。
 3 法案第五条において、「基本的人権の尊重」が規定されているが、具体的にどのようにして基本的人権が尊重されることになるのか。「基本的人権の尊重」が担保されるための具体的な方策としてどのようなことを考えているのか。
 4 国民の権利利益の救済に関する規定としては、第六条に抽象的な規定が設けられているのみであるが、国民の権利救済を迅速に行わせるための具体的な仕組みを検討すべきではないか。
 5 物資の収用、土地家屋の使用、物件の除去など、私権の制限が行われる場合の罰則については、法案においてはどのような考え方で科されることとなるのか。災害対策基本法等の既存の関係法令における罰則の有無・その量刑の程度の整合性は図られているのか。
 6 法案の規定に基づき土地、家屋又は物資を使用した場合において、これらの使用に伴う破損等についての原状回復は行われないのか。
 7 武力攻撃災害への対処等の場面において、消防吏員や市町村職員のほか、自衛官や警察官により過剰な権限の行使が行われた場合には、どのような救済が図られるのか。また、それら過剰な権限の行使を行った者に対する罰則などはあるのか。
 (4) 地方自治体の役割・民間事業者関係
 1 指定行政機関等、指定公共機関等が国民の保護のための措置を実施するとき、どのようにして職員や従業員の安全の確保が図られることになるのか。法案第二十二条だけでは不十分ではないか。事故補償はどのようになるのか。例えば、指定されていない事業者が指定公共機関等と共に業務に従事していたときに事故にあったときの補償はどうなるのか。特に、輸送事業者や通信事業者の安全確保についてどのように考えているのか。また、「計画」や「業務計画」には、どのように反映されることになるのか。
 2 民間事業者が国民の保護のための措置を行う場合についての、従業員個人の意思については、どのように尊重されることになるのか。また、労働組合の意見はどのように反映されるのか。
 3 指定公共機関等による国民の保護のための措置の実施において、その自主性はどのようにして担保されることになるのか。
 4 指定行政機関、都道府県及び市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関において、国民の保護のための措置に関して従業者に業務違反命令があった場合の取扱いについて定めた運用指針を作成する必要があるのではないか。
 5 指定公共機関等を指定する理由は何か。どのような範囲の事業者を指定することを考えているのか。指定された事業者に生じる法的効果はどのようなものであるのか。武力攻撃事態と武力攻撃予測事態とで求められる措置に異なることがあるのか。また、指定公共機関の範囲を明確にするべきではないか。例えば、電気事業者とは電力会社のみを指すのか、発電会社は含まれないのか。ガス事業者とはガス供給事業者のみを指すのか、ガス導管の維持・補修等に従事する事業者は含まれないのか。
 6 指定公共機関等が国民の保護のための措置の実施に要した訓練や組織整備に関する費用は、公費により負担すべきではないか。
 7 「計画」や「業務計画」の策定に当たって、労働組合等の意見をどのようにして聴くことになるのか。また、「計画」作成に際して、国民・住民への情報提供は行われることになるのか。
 8 国民保護協議会については、幅広く住民の意見が反映され、住民が参加できるような構成とすることが必要ではないか。
 9 法案第三十六条は、国民の保護に関する業務計画について、内閣総理大臣は指定公共機関に対し「必要な助言をすることができる」とあるが、「助言」とはどのようなことを行うのか。また、その内容はどのようなものか。
 10 地方公共団体が作成する国民保護計画について、その内容が形骸化されることがないよう、各地方公共団体の地理的特性、人口、財政状況、近隣自治体との関係等に具体的に配慮した内容となるようにする必要があるのではないか。
 11 法案第三十二条の国の「基本指針」の策定に当たっては、中央指令型で行うのか、地方積上げ型で行うのか。基本指針には、地方の意見はどのようにして反映されることになるのか。「基本指針」は、今後、どのように策定することとなるのか。
 12 平時における国会や国民への情報提供の不適切さにかんがみれば、武力攻撃事態等においても、国会や国民への情報提供が正確かつ迅速に行われる保証がないが、適切な情報提供をどのように担保するのか。また、情報の提供が情報統制・情報操作とならないような仕組みをどのように確保するのか。
 13 法案では、避難住民の誘導については、市町村の権限とされているが、そのための実効性のある態勢は整備されているのか。その際に、NGOやボランティアの役割はどのようなものが考えられるのか。また、町内会や自治会の活用などについてどのように考えているのか。
 14 多数の住民が短期間で避難することによる混乱をどのように防ぐこととなるのか。
 15 法案第百四十八条に定める避難施設については、平時からどのような考え方で指定を行うのか。また、どのようにして避難施設を確保するのか。
 16 警報の発令や伝達、避難の指示などにおいて、情報伝達の主な手段が被害を受けた場合にはどのように対応するのか。当該情報が断絶した場合の対応はどのようにするのか。
 17 法案第四十二条は、「国民の保護のための措置についての訓練」について規定しているが、専ら「武力攻撃事態等」に対処するための訓練を行わせることで、国民の危機意識や敵国意識を徒にあおることになるおそれもあるのではないか。むしろ、訓練については、自然災害をも含めたより広い「緊急事態」に対応できるような訓練として位置付けることが適当ではないか。
 18 国民の保護のための措置の実施に係る費用のうち、避難・救難に必要な物資や資材の備蓄などの平素からの措置に係る必要については、誰が支出することになるのか。
 19 大都市については、特に被害による脆弱性が高いと考えられるが、国民の保護のための措置の実施においてはどのような考慮が払われる必要があると考えているのか。
 20 自治体と警察、消防、自衛隊との間での地図や通信機器等の互換性は確保されているのか。関係機関の調整に問題が生じることはないのか。
 21 都道府県知事による自衛隊の部隊等の派遣要請が交錯した場合には、防衛庁長官は、自衛隊の部隊等の派遣の優先度をどのように判断するのか。
 22 内閣総理大臣は、都道府県知事による避難の指示が行われない場合や避難住民の誘導が適切に行われない場合に是正措置を講ずるとあるが、具体的にどのような措置を講ずることになるのか。
 23 弾道ミサイルの着弾等により、霞ヶ関の中央省庁の機能が麻痺している場合又は著しくその機能に支障を生じている場合も想定しているか、実際にどのように対応することとなるのか。緊急時における各大臣の補佐態勢は十分と考えているか。
 24 我が国には人口で三%を超える外国人が住んでいるが、外国人は本法案における「国民」の定義に入るのか。武力攻撃事態等において在留外国人はどのように保護されるのか。外国人については、基本的人権は保障されるのか。また、自発的な意思に委ねられる協力を要請される対象としての「国民」には外国人は含まれるのか。
 25 国民保護法案においては、日本赤十字社の位置付けをさらに明確にすべきではないのか。
 26 原子炉等の危険防止について、原子炉施設等の使用の禁止が含まれると思うがどうか。原子炉を停止する基準を明らかにする必要があるのではないか。
 27 物資の保管命令には、核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の所在場所の変更も含まれると思うがどうか。どのような場合に変更するのか、また、物資の対象物を明らかにする必要があるのではないか。さらに、核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物の所在場所を変更するには、通常の体制では対応が難しいものと考えるが、平時においても体制を整備しておく必要があるのではないか。
三 危機管理庁構想
 1 武力攻撃事態対処法の附則において「政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする」と明記されたが、現在の検討状況はどうか。
 2 緊急事態に際しての情報収集態勢について、現在の実施態勢はどうなっているのか。省庁の縦割り人事等の弊害は生じていないのか。
 3 現在の官邸の危機管理体制についてどのように考えるのか。地方の現場において総合調整を担う組織の創設については、どのように考えるのか。また、災害対策基本法のように現地対策本部を置くことができる旨の規定が国民保護法案にないのはなぜか。
 4 緊急事態においては複数の危機的状況(経済、外交、自然)が同時に発生する場合があり、すべての情報収集や必要な指示についての責任・権限を内閣総理大臣に集中させることは非現実的な中で、緊急時において内閣総理大臣は対策本部における事務の統括や運営を適切に行うことができるのか。武力攻撃事態等において適切に事態に対処するため、国家のセキュリティディレクターとしての組織のような、総理を補佐する体制を充実させる必要があるのではないか。
四 ジュネーヴ条約関連
 1 ジュネーヴ四条約及び第一・第二追加議定書と国民保護法案との関係はどうなっているのか。国民保護法案において、条約を担保するため設けている規定はどのようなものか。
 2 捕虜法案における捕虜の定義は妥当か。内外の民間人はどのように扱われるのか。また、捕虜に対する刑罰はどのようになるのか。
 3 政府としては、ジュネーヴ第四条約に基づいて、文民の抑留を行うことも考えているのか。
 4 追加議定書等にある安全地帯、中立地帯、無防備地区、非武装地帯は、どのように設定されることになるのか。当該地域等の設定に関して、国内法の規定を設ける必要があるのか。条約上の規定はあっても、実際問題として自治体の長などが宣言を行うことができるのか。
 5 いわゆる軍事目標主義との関係で、民用地、文民および文民財産の保護は適切に行われるのか。これらが損害・被害を受けた場合、国民保護法案などによって適切に補償がなされるのか。
 6 文化財の保護に関して、国際人道法案においては、どのような規定が設けられているのか。国民保護法案においてはどうか。また、文化財保護のハーグ条約の批准を行うべきではないか。
 7 戦闘遂行目的のダムなどに対する攻撃の禁止規定があるが、これへの違反はどう処罰されるのか。
 8 米軍がジュネーヴ条約違反の行為を行っているときは、日本の法律で処罰できるのか。
 9 我が国では、民間防衛組織にあたるものはあるのか。有事にも災害時にも機能する民間防衛組織の創設を検討すべきではないか。
 10 捕虜法案においては、いわゆる民兵や自警団も捕虜として取り扱うことはあるのか。
 11 武力攻撃事態等において国際人道法違反の事態が生じた場合を念頭に、国際刑事裁判所に移送するために必要な条約の批准を検討しているのか、そうすべきではないか。また、それに必要な国内法整備はどのようなものが考えられるのか。条約の批准を念頭に国内法整備も検討しているのか。
 12 今後は、学校教育においても、国際人道法の普及教育を行うべきではないか。また、それらの地域住民に対する周知・啓発も必要ではないか。
 13 武力攻撃事態等において、日米で共同行動を行っている場合に、米軍が拘束した捕虜の扱いはどうなるのか。共同作戦中に拘束された捕虜はいずれの政府に収容されるのか。また、米国は追加議定書に加入していないのに、加入した場合の我が国との間で、なにがしか日米共同行動に支障が出るようなことは想定されないのか。
 14 追加議定書の「予防措置」に十分配慮する観点から、批准後に具体的にどのような施策を講じていくのか。例えば、軍事施設は人口密集地からは離すような努力を行うことも考えるのか。
五 米軍関係
 1 ACSA(物品役務相互提供)協定の改正については、改正協定第六条の「その他の目的」のためにも物品又は役務の提供を行うことが可能となるが、協定の付表2の修正が外交上の公文の交換によって可能とすることとした理由如何。これについて国会が適切に関与できるようにすることが必要ではないか。
 2 米軍支援法案第七条では、米軍ではなく、政府が米軍の行動に関する状況等について必要な情報の提供を行うこととしているが、政府がどのようにして米軍から情報を入手し、それをどのような手段で国民に提供することとしているのか。
 3 「武力攻撃予測事態」と「周辺事態」は併存することはあり得るとのことだが、米軍支援法案に基づく「行動関連措置」は制度上も運用上も、「日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動」を実施している米軍に限られ、周辺事態への対応のために活動している米軍に対しては行われるものではないと言えるのか。米軍から弾薬の提供を求められた自衛隊は、実際に当該米軍が如何なる行動を行うものか確認できるのか。
 4 有事の場合、韓国では米軍に一元的な指揮権があるが、日本では、武力攻撃事態における一元的な指揮権はなく、自衛隊と米軍それぞれが有すると理解しているが、如何に日米が調整、協力していくのか、適切な体制は整っているのか。
 5 法案第八条の「地方公共団体との連絡調整」について政府が行うとあるが、米軍の行動、自衛隊等の行動関連措置、地方公共団体の対処措置がそれぞれ行われている状況下にあっては、指揮命令・連絡調整の混乱をどう防ぐのか。
 6 法案第九条に規定する米軍の行為にかかわる通知で、応急措置としての道路工事に関する連絡はどうなっているのか。
 7 我が国の武力攻撃事態においては、多国籍軍が編成されるのか。
 8 日米地位協定上、米軍は、日本の法令の尊重義務を負うが、遵守義務は負っていない中で、平時においても事件が多発している現状にかんがみると、米軍による凶悪事件等が発生した場合の刑事司法、具体的な補償措置の在り方の検討など、日米地位協定の改定を考えるべきではないか。
 9 米軍支援法案第十条第四項については、物品・役務の提供として行う業務が規定されているが、周辺事態法やテロ特措法のように別表形式としなかった理由は何か。効果が異なるのか。
六 海上輸送法案、特定公共施設等利用法案
 (1) 海上輸送
 1 法案第六条では、大量破壊兵器については廃棄処分を行うこととし、その他の通常兵器については、廃棄や没収の対象とせずに輸送停止としているが、このように異なる取扱いをしているのはなぜか。
 2 法案第十六条では、艦長等は、「外国軍用品等を輸送していることを疑うに足りる相当な理由があるとき」に停船検査を行うことができるとしているが、いかにしてそのような判断を行えるのか。事前に軍事物資が積載されているかを判断するのは極めて困難ではないか。
 3 自衛隊による船舶検査や回航措置の実施は、さらなる戦闘行為を誘発する事態を招くことにはならないか。
 (2) 特定公共施設
 1 政府によれば、「港湾施設、飛行場施設又は道路の利用に際し優先すべき対処措置等の内容については、対策本部長が、その時々の状況を総合的に勘案し、適切に判断した上で、これらの利用に関する指針を定める」とのことだが、武力攻撃事態等において対策本部長が、日本のあらゆる場所で起こりうる道路や港湾施設、飛行場施設といったものの利用の調整に関し、現実問題として、あまねく「総合的に勘案し、適切に判断」しうるのか。予め優先すべき対処措置等の内容を確定できずとも、平素から様々なケースを想定した訓練を行ったり、また、武力攻撃事態等における対策本部長の総合調整をサポートする仕組みが必要ではないのか。
 2 空域の利用指針を定めた際の民間航空機の管制の在り方はどうなっているのか。
 3 「電波の利用調整」において、携帯電話はどのように扱われるのか。
 4 電波が優先利用される場合において、結果として、指定公共機関の放送事業者が使っている電波が使えなくなり、放送すべき警報などが放送できないケースが生じることは想定されるのではないか。そのような場合にでも警報を義務付けるのは問題ではないか。どのように電波が優先利用されるのか、対処措置と国民保護措置が競合した場合の考え方も含め明らかにすべきではないか。
 5 「利用指針」を定めるに当たっては、関係する地方公共団体の長等の「意見を聴かなければならない」とされているが、避難住民の保護の観点から、これだけで十分といえるのか。
 6 「利用指針」について、「公にすることにより国の安全が害される恐れがある事項を除き」公示するとあるが、米軍・自衛隊の行動に密接に関連することから、どこまで公開されるのか不明ではないか。政府の国民への適切な情報提供の観点から問題はないのか。
 7 港湾管理者の港湾施設の利用許可に関し、製造業者が専有している施設について当該専有者の意向をどのように考えるか。
 8 港湾管理者が船長に対して発する移動命令に関し、移動先についての当該船舶の安全確保が重要だが、この場合、船長の安全上の判断はどのように確保されるのか。また、海上保安庁長官が行う特定海域における船舶の航行制限に当たっては、当該船舶の船長の判断をどのように考えるのか。
 9 船舶の移動、航行制限について、海域周辺が安全かどうかの判断を内閣総理大臣が適切に行えるのか。現場にいる船長との間で十分な情報交換を行うなど、船長としての船舶航行の安全確保の義務を尊重しなければならないのではないか。それらを踏まえずして船舶の移動、航行制限については強制的に行うのはいかがか。
 10 電波の利用制限について、民間船舶の通信が制限されないようにするべきではないか。そうでなければ船舶の安全確保が制限されるのではないか。
七 その他
 1 武力攻撃事態等において発生した難民の保護や救護について、どのような態勢で対応することになるのか。難民に武装難民が含まれていた場合には、どのようにするのか。

 右質問する。



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