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平成十六年五月十四日受領
答弁第八一号

  内閣衆質一五九第八一号
  平成十六年五月十四日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員前原誠司君提出有事関連法案・条約等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員前原誠司君提出有事関連法案・条約等に関する質問に対する答弁書



一について

 与党及び民主党の国会議員で構成される「三党協議会」において、「緊急事態基本法(仮称)」を制定することについての合意がなされたことは、承知している。
 政府としては、まずは、今国会に提出している武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(以下「国民保護法案」という。)を始めとするいわゆる有事関連の七法案の成立及び三条約の承認に万全を期してまいりたいと考えているが、いわゆる「基本法」の検討に際しては、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)等の既存の法令との関係を十分に整理し、国民にも分かりやすい議論が進められる必要があると認識している。
 なお、政府として、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を尊重することは当然であり、このことは、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)第三条第四項、国民保護法案第五条等に明記したところである。

二の(1)の1について

 「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為」(国民保護法案第百七十二条第一項)とは、著しい破壊力を有する爆弾の使用等の武力攻撃(事態対処法第二条第一号の武力攻撃をいう。以下同じ。)において通常用いられる攻撃の手段又は生物剤、化学剤の散布等の武力攻撃において通常用いられる攻撃の手段に準ずる攻撃の手段による攻撃により、多数の人的な被害が発生する行為を指している。
 また、「明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」(国民保護法案第百七十二条第一項)とは、事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるが、攻撃が行われる蓋然性が高いものと客観的に判断される事態を想定している。
 なお、国民保護法案第百七十二条第一項に規定する緊急対処事態(以下「緊急対処事態」という。)の認定については、国民保護法案第百八十一条第一項に規定する当該認定に当たっての閣議の決定の手続を通じて、政府の責任において適切に判断されるべきものである。

二の(1)の2、二の(1)の4及び二の(1)の9について

 事態対処法第九条第二項第一号に規定する武力攻撃事態(事態対処法第二条第二号の武力攻撃事態をいう。以下同じ。)であること又は武力攻撃予測事態(事態対処法第二条第三号の武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)であることの認定は、対処基本方針(事態対処法第九条第一項の対処基本方針をいう。以下同じ。)に定められるべき事項であるところ、対処基本方針は、武力攻撃事態等(事態対処法第一条の武力攻撃事態等をいう。以下同じ。)という国家にとって最も重大な緊急事態に際して、これへの「対処に関する全般的な方針」(事態対処法第九条第二項第二号)等を定めるものであることから、国会の承認を要することとされているものと承知している。
 また、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第七十一条第一項の規定による緊急事態の布告は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときに、国家公安委員会の勧告に基づき、内閣総理大臣が発するものであり、これにより、平常の警察組織の指揮命令系統を変更し、一時的に内閣総理大臣が警察を統制するという体制に移行させる法的効果をもたらすものであることにかんがみ、布告後に国会の承認を求めなければならないこととされているものと承知している。
 他方、国民保護法案第百八十一条第一項の規定による緊急対処事態の認定は、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」が発生した場合に、武力攻撃事態等が発生した場合における国民の保護のための措置(国民保護法案第二条第三項の国民の保護のための措置をいう。以下同じ。)に関する国民保護法案の規定を準用して、住民の避難、避難住民等の救援、災害への対処等に関する措置(国民保護法案第百七十二条第一項に規定する緊急対処保護措置)を的確かつ迅速に実施することを可能とするために行われるものである。
 このように、そもそも緊急対処事態は武力攻撃事態等とは異なるものであり、これに対処するために必要な範囲内で国民の保護のための措置に関する国民保護法案の規定を準用するものであることから、緊急対処事態の認定については、国会の承認は要しないこととしたものである。また、同様の理由から、「緊急対処事態の概念」を武力攻撃事態等への対処に関する基本的な法律である事態対処法に規定することは、必ずしも適切ではないものと考えている。

二の(1)の3について

 お尋ねの緊急対処事態における国民保護等派遣は、都道府県知事の要請等に基づくものであり、派遣された部隊等は避難住民の誘導等の当該要請等に係る緊急対処保護措置を実施し、当該部隊等の自衛官には、緊急対処保護措置に必要な権限が付与されるものである。
 この国民保護等派遣を自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第六章に規定する行動のうち同法第八十一条に規定する要請による治安出動及び同法第八十三条から第八十三条の三までに規定する災害派遣等と対比するならば、都道府県知事の要請等に基づくという点においてこれらの行動と同様の手続によるものであり、また、自衛官の権限については、要請による治安出動よりも限定的なものである。自衛隊法においては、これらの行動は国会の承認の対象とはされていないところであり、こうした点にかんがみ、国民保護等派遣は、国会の承認の対象とはしていない。

二の(1)の5について

 国民保護法案第百八十一条第一項の規定により緊急対処事態と認定された場合においては、当該緊急対処事態の内容、推移等に応じて、犯罪の鎮圧等の措置を講ずる必要性が生ずることは、十分に考えられるところである。
 このように、犯罪の鎮圧等の措置を講ずる必要がある場合において、当該措置を講ずるために政府全体として取り組む必要があると認められるときは、閣議決定等により「対策本部」を設置するなどして、内閣の総合調整等の下、関係省庁が相互に連携協力して対応することとしている。
 お尋ねの「現行法上考えられる具体的な侵害排除のための対処措置の例」としては、例えば警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第五条(自衛隊法第七十八条第一項等の規定により治安出動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について同法第八十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定に基づく犯罪の制止、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)第十八条(自衛隊法第七十八条第一項等の規定により治安出動を命ぜられた海上自衛隊の三等海曹以上の自衛官の職務の執行について同法第九十一条第一項において準用する場合を含む。)の規定に基づく海上における危険行為等の制止等が考えられる。

二の(1)の6について

 緊急対処事態においては、国民保護法案第百八十二条第一項において、臨時に内閣に緊急対処事態対策本部を設置するものとされ、同条第二項は、事態対処法第十一条から第十三条まで、第十九条及び第二十条の規定を緊急対処事態対策本部に準用することにより、緊急対処事態対策本部の組織、所掌事務等を明らかにしている。
 他方、事態対処法第十五条に規定する武力攻撃事態等における内閣総理大臣の指示等の権限については、指示等の相手方である地方公共団体の長等にこれに従う強い法律上の義務が生ずる権限であり、そもそも緊急対処事態は武力攻撃事態等とは異なることから、指示等の権限の行使の前提とされている事態対処法第十四条に規定する武力攻撃事態等における対策本部長(事態対処法第十一条第一項の対策本部長をいう。以下同じ。)の総合調整の権限と併せて、緊急対処事態においては、準用する必要はないと考えたものである。なお、事態対処法第十六条の規定については、事態対処法第十四条第一項又は第十五条第一項の規定を前提としたものであるから、緊急対処事態においては、当然に準用しないこととした。
 また、事態対処法第十七条の規定については、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置(事態対処法第二条第七号の対処措置をいう。以下同じ。)についての安全の確保に関する一般的な配慮規定であるが、国民保護法案第百八十三条において準用する国民保護法案第二十二条において、緊急対処事態における緊急対処保護措置についての安全の確保に関する配慮義務を改めて規定していることから、国民保護法案第百八十二条第二項においては準用する必要がなかったものである。

二の(1)の7について

 武力攻撃事態等という国家にとって最も重大な緊急事態への対処は、国の最も重要な責務であることから、事態対処法第九条第二項に規定するとおり、武力攻撃事態等における対処基本方針は、武力攻撃事態であること又は武力攻撃予測事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実、当該武力攻撃事態等への対処に関する全般的な方針並びに対処措置に関する重要事項を一括して定めることとしている。
 他方、閣議を求めるべき案件については、案件ごとにその決定を求めることが通例とされていることから、国民保護法案第百八十一条第一項に規定する緊急対処事態の認定及び緊急対処事態対処方針の策定については、同項において、それぞれについて閣議の決定を行うべき旨を規定したものである。なお、両者の閣議の決定は、同項の規定により、併せて行うこととされている。

二の(1)の8について

 緊急対処事態は、事態対処法第二十五条第一項に規定する「国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態」に含まれるものであり、同項の規定の趣旨を踏まえ、国民保護法案第八章においては、緊急対処事態において必要となる住民の避難、避難住民等の救援、災害への対処等に関する措置(緊急対処保護措置)を的確かつ迅速に実施することができるよう、所要の規定を設けたものである。

二の(1)の10について

 緊急対処事態対処方針は、武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態において、住民の避難、避難住民等の救援、災害への対処等に関する措置(緊急対処保護措置)を的確かつ迅速に実施するために定めるものである。
 他方、対処基本方針は、基本的には一定の期間継続して武力攻撃が行われることが想定される武力攻撃事態等において、その対処に関する基本的な方針を定めるものであり、情勢の変化に応じて、これを変更する必要が生ずることが当然に予想されるものである。
 このため、緊急対処事態対処方針については、その変更に関する規定を設けていないが、仮に情勢が急変する等により、緊急対処事態対処方針に追加すべき事項等が生じた場合には、改めて緊急対処事態対処方針を定めることとなる。

二の(1)の11について

 昨年成立した事態対処法を始めとするいわゆる有事関連の三法により武力攻撃事態等への対処に関する制度の基礎が確立されるとともに、今国会に提出している国民保護法案を始めとするいわゆる有事関連の七法案の成立により武力攻撃事態等への対処に関するより具体的な内容を規定する法律が一通り整うこととなることから、当面、武力攻撃事態等への対処に関して新たな法制の整備を行うことは、想定していない。
 なお、事態対処法第二十一条から第二十三条までの規定については、武力攻撃事態等への対処に関する法制の整備に関する基本方針等を定めるとともに、事態対処法と今国会に提出しているいわゆる有事関連の七法案との関係を明らかにするものであることから、あえて削除する必要はないものと判断し、存置することとしたものである。

二の(2)の1について

 国民保護法案第七条第二項の規定により、国及び地方公共団体は、放送事業者である指定公共機関(事態対処法第二条第六号の指定公共機関をいう。以下同じ。)及び指定地方公共機関(国民保護法案第二条第二項の指定地方公共機関をいう。以下同じ。)が実施する国民の保護のための措置については、その言論その他表現の自由に特に配慮しなければならないこととされているところ、これらの者が実施する警報の内容の放送(国民保護法案第五十条)、避難の指示(国民保護法案第五十四条第二項の避難の指示をいう。以下同じ。)等の内容の放送(国民保護法案第五十七条)及び緊急通報(国民保護法案第九十九条第一項の緊急通報をいう。)の内容の放送(国民保護法案第百一条)については、放送事業者による放送番組の編集を尊重するなど、国民保護法案第七条第二項の規定の趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたい。

二の(2)の2及び二の(4)の9について

 国民保護法案第三十六条第四項後段の「助言」とは、指定公共機関及び指定地方公共機関が作成し、それぞれ内閣総理大臣及び都道府県知事が報告を受けた国民の保護に関する業務計画に関し、その円滑な運用等に資するための助けとなるような進言をいうものであり、具体的には、指定公共機関及び指定地方公共機関がそれぞれの国民の保護に関する業務計画に基づき国民の保護のための措置を円滑かつ効果的に実施することができるようにするための情報の提供等を想定している。
 国民保護法案第三十六条第四項後段の「助言」については、これに従う法律上の義務が生ずるものではなく、報道の自由の観点からも、特段の問題はないものと考えている。

二の(2)の3について

 放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民保護法案第五十条の規定により、関係機関から警報の通知を受けたときは、速やかに、その内容を放送しなければならないところ、自ら作成した国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、放送方法等を自主的に定めた上でこれを行うものであるため、これらの者の報道の自由等を損ねることにはならないものと考えている。

二の(3)の1及び二の(4)の13について

 国民保護法案第四条第二項の「要請に当たって強制にわたる」とは、協力の要請に対し、これを拒否することができないような状況に置くことをいう。
 国民保護法案第四条第二項において、協力の要請に当たって強制にわたることがあってはならない旨が明示的に規定されていること、すなわち、協力の要請に当たって国民の自由な意思を拘束することが明確に禁止されていることから、御指摘の「非強制性」は、同項によって担保されているものと考える。なお、このような考え方は、NGOやボランティア等に所属する者についても、当然に妥当するものである。
 次に、避難住民の誘導については、国民保護法案第二章第三節に定めるとおり、市町村長が、避難実施要領を定めた上で、その避難実施要領で定めるところにより、当該市町村の職員並びに消防長及び消防団長を指揮するとともに、関係機関と連携して、適切にこれを実施する仕組みとしており、一定の場合においては、一定の要件の下に、警察官、海上保安官又は自衛官によっても、避難住民の誘導が円滑に行われるよう必要な措置が講じられることとしている。
 また、武力攻撃事態等において、国全体として万全の措置が講じられるためには、国民の協力が必要であることから、地方公共団体等が国民の保護のための措置を実施するに際しては、これを補完する形で国民に協力を要請することができることとしている(国民保護法案第七十条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第八十条第一項等)。さらに、国及び地方公共団体は、自主防災組織(災害対策基本法第五条第二項の自主防災組織をいう。以下同じ。)及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならないこととしている(国民保護法案第四条第三項)。
 これらにより、避難住民の誘導については、実効性をもって実施されるものと考える。

二の(3)の2について

 国民保護法案第四条第三項又は第百七十三条第三項の規定に基づく自主防災組織及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置又は緊急対処保護措置に資するための自発的な活動に対する国及び地方公共団体の支援の内容としては、活動場所の提供、必要な情報の提供等を考えているが、その活動内容を踏まえた財政的な支援も想定している。

二の(3)の3について

 国民保護法案第五条は、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない旨等を規定しているところ、この規定の趣旨を踏まえ、国民保護法案においては、国民の基本的人権を最大限尊重しつつ、所要の規定を設けている。
 例えば、救援の実施に必要な特定物資(国民保護法案第八十一条第一項の特定物資をいう。以下同じ。)又は避難住民等に収容施設を供与すること等を目的とした臨時の施設の開設に必要な土地等(国民保護法案第八十二条第一項の土地等をいう。以下同じ。)を確保するに当たっては、関係者の自主性を尊重することとして、初めから強制的な権限を行使することができる仕組みとはせずに、まず前もって「要請」、「同意の求め」等を行うべきこととするとともに、やむを得ず強制的な権限を行使する場合においても、公用令書の交付等の厳格な要件と手続を課しているところである。また、避難住民等に対する医療の提供を行うに当たっても、国民保護法案第八十五条第一項及び第二項において、医療関係者に対し、まず医療を行うよう「要請」し、当該医療関係者が正当な理由がないのにこれに応じない場合において当該医療を提供するため特に必要があると認めるときに限り、医療を行うべきことを「指示」することができることとしている。

二の(3)の4について

 国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償については、国民保護法案第百五十九条その他関係法律の規定に基づき、当該損失補償の原因となる措置を講じた行政庁が、救済に係る手続を処理することとなる。また、国民の保護のための措置に係る不服申立て又は訴訟については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)の規定に基づき当該不服申立てを受理した行政庁又は行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)の規定に基づき当該訴訟を受理した裁判所が、それぞれ、救済に係る手続を処理することとなる。
 このように、国民の保護のための措置に関する国民の権利利益の救済に係る手続については、関係法律の規定に基づいて行われるものであるところ、国民保護法案第六条においては、国及び地方公共団体がこれらの救済に係る手続についてできる限り迅速に処理するよう努めなければならない旨を規定しており、具体的状況を踏まえ、他の事案に関する救済に係る手続に優先して処理されることもあり得るものと考える。また、これらの救済に係る手続に係る処理件数がその処理能力を大幅に上回るような場合には、適切な処理が可能となるよう、必要な処理体制を確保すべきものと考える。

二の(3)の5について

 国民保護法案においては、国民の保護のための措置の実施に万全を期すため、一定の要件の下でのみ認められる特定物資の収用及び土地等の使用という措置を講じてでも実施を確保すべき国民保護法案第三章第一節の避難住民等の救援に著しい支障を生じさせるおそれがあり、かつ、類似の行為について災害対策基本法等の現行法が罰則を科している行為に対しては、基本的人権の尊重に十分に配慮しつつ、必要な罰則を科すこととしている(国民保護法案第百八十九条第一号及び第百九十二条第一号)。量刑に関しても、懲役については、類似の行為に関する現行法と同様の「六月以下」とし、罰金については、現在の経済事情等を勘案し、刑罰の抑止力を担保するため、最近の多くの立法例に倣って「三十万円以下」としている。

二の(3)の6について

 国民保護法案第八十二条の規定に基づき土地等を使用する場合においては、国民保護法案第百五十九条第一項の規定により「通常生ずべき損失」を補償するほか、土地等に破損等が生じたときは、国民保護法案第百六十八条第一項の規定に基づき原則として国の負担において、可能な限り原状回復をする考えである。

二の(3)の7について

 国民の自由と権利に制限が加えられた場合の救済措置としては、行政上の不服申立て、行政訴訟及び国家賠償に関する一般的法制度として行政不服審査法、行政事件訴訟法及び国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)があり、御指摘のような場合を含め、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置の実施に当たっても、これらの法律が適用されることとなる。
 なお、国民保護法案第六条においては、国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置に関し、国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない旨の規定を設けているところである。
 また、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置の実施に当たり、公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十三条の公務員職権濫用罪に該当することとなるなど、一般の刑事関係法令の規定は、武力攻撃事態等においても、当然に適用されるものである。

二の(4)の1について

 国民保護法案第二十二条においては、国及び地方公共団体は、関係機関が実施する国民の保護のための措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない旨を一般的に定めているが、国民保護法案においては、同条の一般的な配慮規定に加え、指定行政機関(事態対処法第二条第四号の指定行政機関をいう。以下同じ。)、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関について、例えば、運送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関に対し避難住民又は緊急物資の運送を指示する場合において安全の確保の確認及び安全の確保のための必要な情報の提供を特に求めたり(国民保護法案第七十三条第三項及び第四項(これらの規定を国民保護法案第七十九条第二項において準用する場合を含む。))、地方公共団体等に対し放射性物質等による汚染の拡大の防止に必要な協力を要請する場合において安全の確保への配慮を特に求める(国民保護法案第百十条)など、国民の保護のための措置の内容や実施主体等に応じ、安全の確保のための所要の規定を設けているところである。
 指定行政機関、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関の職員が国民の保護のための措置を実施することに伴い負傷等をした場合における補償については、公務員及び公務員以外の労働者の災害に対する補償に関する既存の法令に基づいて適切に対応することとなる。指定公共機関等として指定されていない事業者の職員がその事業を実施することに伴い負傷等をした場合も、同様である。
 なお、指定行政機関及び地方公共団体の国民の保護に関する計画並びに指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画は、これらの機関が武力攻撃事態等において国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することができるよう、平素においてあらかじめ作成しておくいわば行動指針ないし行動計画であり、これらの機関の職員が負傷等をした場合における補償に関して何らかの記載を行うことは、考えていない。
 いずれにせよ、国民の保護のための措置の実施に当たり、安全の確保に配慮すべきことは当然であり、指定行政機関及び地方公共団体の国民の保護に関する計画並びに指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画においては、これらの機関においてそれぞれ講ずべき安全の確保のために必要な措置の内容について、適切に検討の上、定めることが必要であると考えている。

二の(4)の2について

 指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等においては、国民保護法案で定めるところにより、その業務について、国民の保護のための措置を実施する責務を有する(国民保護法案第三条第三項)とともに、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない(同条第四項)こととされており、このような責務を十分に果たすためにも、それぞれの機関において、関係者の十分な理解が得られるよう努めるべきものと考える。

二の(4)の3について

 国民保護法案は、指定公共機関及び指定地方公共機関が国民保護法案で定めるところによりその業務について国民の保護のための措置を実施するに当たっては、その実施方法等については、国及び地方公共団体から提供される情報も踏まえ、武力攻撃事態等の状況等に即して自主的に判断し、最も適切な措置をとることを前提としている。

二の(4)の4について

 国民保護法案は、指定行政機関、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関に所属する個々の職員に対して直接具体的な行為を求めるものではないため、それぞれの機関の職員が業務命令に従わない場合には、当該機関の作成する内部規程等に基づいて必要な対応が行われるものと考える。

二の(4)の5について

 武力攻撃事態等という国家にとって最も重大な緊急事態においては、国全体として万全の措置が講じられる必要があり、その一環として、民間機関においても、一定の役割を果たしていただきたいと考えている。このため、事態対処法第二条第六号において、公共的機関又は公益的事業を営む法人の中から、政令で指定公共機関を指定することとしており、また、国民保護法案第二条第二項において、都道府県知事が、当該都道府県の区域において公益的事業を営む法人等の中から、あらかじめ当該法人の意見を聴いて、指定地方公共機関を指定することとしている。
 指定公共機関の範囲としては、事態対処法第二条第六号に例示されている法人以外では、現時点においては、道路、空港等の公共的施設を管理する法人、医療を営む法人等を指定の対象とすることを検討している。なお、お尋ねの電気事業者及びガス事業者については、国民保護法案第百三十四条第一項において、それぞれ電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十号の電気事業者及びガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第十一項のガス事業者である指定公共機関についての措置を規定しているとおり、電気事業法上の電気事業者ではない発電会社(例えば、卸供給事業者や自家発電設備による発電を行う事業者)やガスの導管の維持及び補修のみを行うような事業者を指定の対象とすることは考えていない。
 指定公共機関及び指定地方公共機関として指定された法人は、国民の保護のための措置の実施主体として、自ら国民の保護に関する業務計画を作成するとともに、武力攻撃事態はもとより、武力攻撃予測事態においても、国民保護法案で定めるところにより、その業務について、国民の保護のための措置を実施することとなる。

二の(4)の6について

 指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護のための措置は、あくまでも指定公共機関及び指定地方公共機関の業務の範囲内で実施するものであるため、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織の整備や訓練の実施等も含め、指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護のための措置の実施について、国が特別の財政措置を講ずることは考えていない。

二の(4)の7について

 指定行政機関、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するためには、国民の幅広い理解と協力を得ることが重要であり、また、指定行政機関及び地方公共団体の国民の保護に関する計画並びに指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画の作成に当たっても、広く関係者の理解を得つつこれを行うことが重要であると考える。
 こうした基本的な考え方を踏まえ、指定行政機関、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関において、必要に応じ、関係者のほか、国民との間でも、情報提供や意見交換が適宜行われるものと考えている。

二の(4)の8について

 国民保護法案第三十七条第一項に規定する都道府県協議会及び国民保護法案第三十九条第一項に規定する市町村協議会は、いずれも、当該地方公共団体の区域に係る国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、当該地方公共団体の国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するために設置するものであり、国民保護法案第三十八条第四項及び第四十条第四項の規定により、その委員の任命は都道府県知事及び市町村長が行うこととされているが、これらの規定に規定されている者であれば、都道府県知事及び市町村長の判断により、国の関係機関の職員、当該地方公共団体の職員、学識経験者のほか、自主防災組織の代表者等からも任命することが可能である。

二の(4)の10について

 地方公共団体の国民の保護に関する計画は、当該地方公共団体が武力攻撃事態等において国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することができるよう、平素においてあらかじめ作成しておくいわば行動指針ないし行動計画であり、その内容は、できる限りそれぞれの地方公共団体の地域の実情等に即した具体的なものとすべきであると考えている。
 地形等の地理的状況、住民の居住状況、公共施設の配置状況、交通機関の整備状況等の条件は地方公共団体ごとに異なっていることから、御指摘の点にも十分配慮した個別具体的な国民の保護に関する計画が作成されるよう、内閣総理大臣又は都道府県知事との協議等を通じて、適切に対処されるものと考える。

二の(4)の11について

 基本指針(国民保護法案第三十二条第一項の基本指針をいう。以下同じ。)は、同項及び同条第三項に規定するとおり、閣議の決定を経て、政府が定めることとしており、国の責任において策定するものである。
 もっとも、基本指針の策定に当たっては、あらかじめ地方公共団体を始めとする関係者の意見を幅広く聴きながら、その内容を検討していく必要があると考えており、国民保護法案が成立し、施行された後、これらの関係者の意見を踏まえつつ、できる限り速やかに策定したいと考えている。

二の(4)の12について

 武力攻撃事態等においては、国民保護法案第八条第一項に規定するとおり、国及び地方公共団体が、国民の保護のための措置に関し、国民に対し、正確な情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供すること、また、同条第二項に規定するとおり、国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が、国民の保護のための措置に関する情報について、新聞、放送、インターネットその他の適切な方法により、迅速に国民に提供することが重要であるため、国民保護法案においては、同条のほかにも、所要の規定を設けているところである。
 例えば、武力攻撃等の状況等については、対策本部長が、適時に、かつ、適切な方法により、国民に公表しなければならないこと(国民保護法案第二十三条)、対策本部長が発令した警報については、総務大臣、都道府県知事及び市町村長を順次経由して直ちに国民に伝達するとともに、放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関を通じて速やかにその内容を放送しなければならないこと(国民保護法案第四十五条から第五十条まで)、安否情報についての照会については、総務大臣及び地方公共団体の長が速やかに回答しなければならないこと(国民保護法案第九十五条)、都道府県知事が発令した緊急通報については、市町村長を経由して直ちに国民に伝達するとともに、放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関を通じて速やかにその内容を放送しなければならないこと(国民保護法案第九十九条から第百一条まで)、被災情報については、対策本部長が取りまとめ、その内容を国民に公表しなければならないこと(国民保護法案第百二十八条)等の規定を設けることにより、事態の推移に応じて、国民に必要な情報を提供すべきことを明確にしている。

二の(4)の14について

 武力攻撃事態等における住民の避難の態様については、武力攻撃の規模、態様等によって当然異なるものであるが、例えば、航空機や船舶により地上部隊が上陸する武力攻撃にあっては、都道府県の区域を越えるような大規模な住民の避難が想定されるところである。このような場合においては、対策本部長は、武力攻撃事態等の現状及び予測等を見極めて、可能な限り早期に避難措置の指示(国民保護法案第五十二条第二項の避難措置の指示をいう。以下同じ。)をすることとなる。また、避難措置の指示を受けた関係都道府県知事は、国民保護法案第五十八条第一項の規定により、避難住民の受入れについて協議することとなるが、要避難地域(国民保護法案第五十二条第二項第一号の要避難地域をいう。)が広大な場合にあっては、当該地域を更に複数の地域に区分すること等により、避難住民が特定の地域に集中することがないよう配慮することとなる。
 また、平素からも、都道府県知事は、避難施設や避難経路の所在、避難のための交通手段の状況等について、関係機関と相互に情報交換を密にするとともに、国民の保護に関する計画にも反映させておくことが重要であると考えている。

二の(4)の15について

 国民保護法案第百四十八条第一項において、都道府県知事は、あらかじめ、政令で定める基準を満たす施設を避難施設として指定しなければならないこととされており、この「政令で定める基準」としては、避難住民等の救援を実施するために十分な広さを有する施設であること、災害の危険性の少ない場所に立地する施設であること等を想定している。具体的には、学校、公民館、体育館、都市公園等の既存の公共施設を中心として指定が行われるものと考えている。

二の(4)の16について

 警報、避難の指示等の情報の伝達に当たっては、サイレンや防災行政無線による伝達のほか、放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関による伝達等の複数の伝達手段を併用することを考えており、仮に一つの伝達経路が断絶したとしても、他の手段により必要な情報が伝達されるものと考えている。

二の(4)の17について

 国民保護法案第四十二条第一項に規定する国民の保護のための措置についての訓練の中には、地方公共団体の区域を越えた避難のための訓練やいわゆるNBC攻撃に対応するための訓練等の武力攻撃事態等に特有の訓練があり、このような訓練については、自然災害に対する訓練と兼ねることができないため、独自に実施する必要があると考えている。
 もっとも、近隣地域に避難するための訓練や炊き出しの訓練など、自然災害に対する訓練と内容が共通するものもあり、これらについては、兼ねて実施することも検討してまいりたい。

二の(4)の18について

 国民保護法案第百六十四条において、国民の保護のための措置その他国民保護法案の規定に基づいて実施する措置に要する費用は、その実施について責任を有する者が支弁することとされており、その上で、地方公共団体が支弁する御指摘の物資や資材の備蓄等の平素からの措置に要する費用については、国民保護法案第百六十八条第二項の規定により、地方公共団体が負担することとしている。
 もっとも、国民保護法案第百六十九条の規定により、地方公共団体が国民の保護のための措置その他国民保護法案の規定に基づいて実施する措置に要する費用で地方公共団体が負担するものについては、平素からの措置に要する費用も含め、予算の範囲内において、国がその一部を補助することができることとしている。

二の(4)の19について

 大都市における国民の保護のための措置の実施に当たっては、適切で、かつ、実効性のある交通規制の実施、十分な容量を有する避難路の確保等がとりわけ重要となるものと認識しており、これらの課題への対応については、都市部を抱える地方公共団体が作成する国民の保護に関する計画において、それぞれの地方公共団体の地域の実情等に即して具体的に定められることとなる。

二の(4)の20について

 武力攻撃事態等において国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国民保護法案第三条第四項に規定するとおり、国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期すこととしている。
 このため、国民の保護のための措置を実施する現場における対応を円滑かつ確実なものとすることは重要であると認識しており、これまでも、関係機関の間の互換性が確保された防災相互通信用無線の活用を始めとして、消防救急業務用無線の共通波の拡大等を推進してきているところである。

二の(4)の21について

 お尋ねの自衛隊の部隊等の派遣の優先度については、防衛庁長官が、都道府県知事からの要請や自ら収集した情報等に基づき、要請の内容の緊急性や公益性の程度、代替手段の有無、派遣可能な自衛隊の部隊等の装備、人員、所在地等を勘案して、これを判断することとなる。なお、武力攻撃事態等において、この判断は、事態対処法第十四条の規定に基づく総合調整の対象となるものである。

二の(4)の22について

 避難の指示に関しては、国民保護法案第五十六条第一項の規定により、所要の避難の指示が都道府県知事により行われない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が当該都道府県知事に対し当該所要の避難の指示をすべきことを指示することができることとするとともに、同条第二項の規定により、当該指示を行ってもなお所要の避難の指示が都道府県知事により行われないとき、又は国民の生命、身体若しくは財産の保護を図るため特に必要があると認める場合であって事態に照らし緊急を要すると認めるときは、都道府県知事に通知した上で内閣総理大臣が自ら当該所要の避難の指示をすることができることとしている。なお、内閣総理大臣が自ら行う避難の指示の内容、手続等は、国民保護法案第五十四条に規定する都道府県知事が行う避難の指示の内容、手続等と同様である。
 避難住民の誘導に関しては、国民保護法案第六十八条の規定により、所要の避難住民の誘導に関する措置が都道府県知事により講じられない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が当該都道府県知事に対し当該所要の避難住民の誘導に関する措置を講ずべきことを指示することができることとしている。なお、避難住民の誘導は、国民保護法案第六十二条第一項に規定するとおり、そもそもは、国民保護法案第六十一条第一項の避難実施要領で定めるところにより市町村長が行うべき措置であるところ、市町村長が避難住民の誘導を適切に行わない場合に備えて、国民保護法案第六十七条第二項及び第三項において、市町村長に対する都道府県知事による指示等についての規定を設けているものであり、国民保護法案第六十八条の規定により内閣総理大臣が都道府県知事に対し指示することにより、都道府県知事を通じて、適切な避難住民の誘導に関する措置が行われることとなる。

二の(4)の23について

 万一お尋ねのような事態が発生し、国の行政機関である各省庁の大臣が欠けた場合等においては、当該省庁の副大臣がその職務を代行すること等により、当該事態の下においても当該省庁の事務の円滑な遂行に支障が生ずることのないよう、適切に対処することとなる。
 いずれにせよ、お尋ねのような事態が発生した場合には、総力を挙げて政府の機能を維持し、最善の努力を尽くす所存である。

二の(4)の24について

 一般に「国民」とは、国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)でいう日本国民を指すものであり、厳密には外国人は含まれない。しかし、日本国憲法に規定する基本的人権の保障については、その権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解されていることを踏まえ、国民保護法案においては、日本に居住し、又は滞在する外国人の生命、身体及び財産についても、武力攻撃から保護すべき対象となる。また、国民保護法案第七十条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第八十条第一項等の国民の保護のための措置の実施に必要な援助についての協力に関する規定についても、外国人に対して適用される。

二の(4)の25について

 日本赤十字社は、日本赤十字社法(昭和二十七年法律第三百五号)第一条に規定するとおり、「赤十字に関する諸条約及び赤十字国際会議において決議された諸原則の精神にのつとり、赤十字の理想とする人道的任務を達成することを目的」としており、赤十字国際会議において決議された基本原則においては、赤十字の公平、中立、独立等の原則が定められている。
 このような日本赤十字社の特性にかんがみ、国民保護法案第七条第一項において、「国及び地方公共団体は、日本赤十字社が実施する国民の保護のための措置については、その特性にかんがみ、その自主性を尊重しなければならない」旨の規定を設けている。
 この基本理念を踏まえつつ、国民保護法案においては、日本赤十字社に関し、国民の保護のための措置の実施において期待される役割等について、都道府県知事が行う救援への協力(国民保護法案第七十七条第一項)、救援に関し地方公共団体以外の団体又は個人がする協力についての政府の指揮監督の下に行う連絡調整(同条第二項)、外国人に関する安否情報の収集、整理及び照会に対する回答(国民保護法案第九十六条第一項)並びに赤十字の標章の使用許可について規定した赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号)第三条の規定の適用除外(国民保護法案第百五十七条第四項)の各規定を設けているところである。

二の(4)の26について

 国民保護法案第百六条は、一定の要件の下に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二十三条第二項第五号の原子炉施設等の使用の停止等を規定したものである。ここでいう「停止」とは、原子炉施設等の使用を一時的に止めることをいうものであって、原子炉施設等の使用を将来にわたって永久的に止めることを意味する「禁止」は、これに含まれない。
 なお、原子炉の運転の停止は、武力攻撃事態等の状況、事業者等の対応状況等を勘案しつつ行われることとなるが、その具体的な基準については、今後、政府の基本指針の策定及び指定行政機関の国民の保護に関する計画の作成の段階で、検討してまいりたい。

二の(4)の27について

 「物資の保管命令」とは、国民保護法案第八十一条第三項に規定する特定物資の保管命令を指すものであるが、特定物資は、救援の実施に必要な物資のうちでも、医薬品、食品、寝具その他同条第一項の政令で定める物資に限ることとしている。核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号の核燃料物質をいう。以下同じ。)又は核燃料物質によって汚染された物は、これに該当しない。
 なお、国民保護法案第百六条は、指定行政機関の長が、武力攻撃事態等において、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物に係る武力攻撃災害(国民保護法案第二条第四項の武力攻撃災害をいう。以下同じ。)が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第六十四条第一項に規定する者に対し、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の所在場所の変更を命ずることができる旨を規定しているほか、平素においては、同条第三項が、一定の要件の下に、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の所在場所の変更を命ずることができる旨を規定しているところである。

三の1について

 国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす様々な緊急事態に迅速かつ的確に対処することができる体制を構築することは、政府の当然の責務である。
 これらの緊急事態への対処に当たっては、関係省庁の機能を十分に生かしながら政府全体として総合力を発揮することができるようにすることが重要であり、これまでも、内閣官房を中心として、様々な緊急事態に対処するための体制を整備するとともに、その充実にも努めてきているところである。
 国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方については、これまで整備してきた既存の組織や法令との関係、行政組織の簡素・効率化の観点、関係省庁間の連携を一層強化することができる方策の可能性等に留意しつつ十分な検討が必要であり、引き続き検討してまいりたい。
 いずれにせよ、政府としては、今後とも、国及び国民の安全を守るため、様々な緊急事態への対処の在り方について不断の点検を行い、危機管理体制の充実・強化に努めてまいりたい。

三の2及び三の3について

 国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態を認知した際には、関係省庁から直ちに内閣情報調査室にその旨を報告するとともに、事態の推移、対処の状況等についても適時に報告することとされているほか、内閣官房を中心として、関係省庁間において、二十四時間体制でこれらの情報を集約・分析し、速やかに内閣総理大臣等に報告する態勢が整備されているところである。また、関係省庁は、このような緊急事態に際しては内閣総理大臣官邸にある危機管理センターに連絡要員を派遣することとされているなど、政府全体としての情報の集約・分析が円滑に行われるよう努めているところであり、御指摘のような弊害はないものと考えている。
 なお、緊急事態の規模、態様等によっては、当該緊急事態が発生した地域において情報の収集、対処のために必要な措置の総合調整等を行う「現地対策本部」のような組織を置くことが必要となることもあるものと考えられるが、武力攻撃事態等においては、自然災害に係る災害応急対策等と異なり、意思決定、総合調整等は国において一元的に行うことが基本となること、対処措置を実施すべき地域が特定の地域に限定されず、全国にまたがることとなることが想定されること等にかんがみ、武力攻撃事態等が発生した地域にそれぞれ国の「現地対策本部」を設置して対処するよりも、一元的な指揮命令に基づき対処することとした方が、より国として万全の態勢を整えることができると考え、国民保護法案においては、御指摘の「現地対策本部」に関する規定は設けていない。
 いずれにせよ、政府としては、今後とも、国及び国民の安全を守るため、様々な緊急事態への対処の在り方について不断の点検を行い、危機管理体制の充実・強化に努めてまいりたい。

三の4について

 これまでも、緊急事態への対処に当たっては、関係省庁の危機管理部門を統括する内閣危機管理監を内閣官房に置く(内閣法(昭和二十二年法律第五号)第十五条第一項)とともに、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針の策定等を補佐する事態対処専門委員会を安全保障会議に置く(安全保障会議設置法(昭和六十一年法律第七十一号)第八条第一項)こととするなど、内閣総理大臣を補佐する体制を充実・強化してきている。
 政府としては、今後とも、国及び国民の安全を守るため、様々な緊急事態への対処の在り方について不断の点検を行い、危機管理体制の充実・強化に努めてまいりたい。

四の1について

 戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約(昭和二十八年条約第二十三号から第二十六号までをいう。以下「ジュネーヴ諸条約」という。)並びに今国会に提出している千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)(以下「第一追加議定書」という。)及び千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書U)(以下「第二追加議定書」という。)は、武力紛争の犠牲者を保護することによって武力紛争による被害をできる限り軽減することを、また、国民保護法案は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護すること等を目的としており、両者は、その目的において共通性を有するものである。
 また、ジュネーヴ諸条約並びに第一追加議定書及び第二追加議定書に定める義務を履行するため、戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(昭和二十八年条約第二十三号。以下「第一条約」という。)第五十四条、海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(昭和二十八年条約第二十四号)第四十五条及び第二追加議定書第十二条に定める赤新月等の標章、第一追加議定書第十八条8に定める特殊信号並びに第一追加議定書第六十六条8に定める文民保護の国際的な特殊標章の濫用等の防止等については国民保護法案第百五十七条第一項、第百五十八条第一項並びに附則第四条及び第九条において、第一追加議定書第三十三条3に定める行方不明者に関する情報の伝達については国民保護法案第九十六条第一項において、所要の規定を設けているところである。

四の2について

 今国会に提出している武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(以下「捕虜取扱い法案」という。)における捕虜の定義については、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(昭和二十八年条約第二十五号。以下「第三条約」という。)等の規定を踏まえ、武力攻撃が発生した事態においてこれを排除するために抑留の対象とすることが必要な者について規定したものであり、妥当なものと考えている。
 お尋ねの「内外の民間人」がいかなる者を指すのか明らかではないが、まず、日本国籍を有する者については、捕虜取扱い法案に規定する抑留対象者には当たらず、抑留されることはない。また、外国人については、捕虜取扱い法案第三条第四号イからルまでに掲げる抑留対象者に該当する場合には、捕虜取扱い法案の規定による抑留の対象となり得る。
 また、お尋ねの捕虜に対する刑罰については、一般の刑事関係法令に従って処理されることとなる。

四の3について

 戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(昭和二十八年条約第二十六号。以下「第四条約」という。)第四十二条第一項によれば、その締約国である我が国は、我が国の安全がこれを絶対に必要とする場合に限り、第四条約第四条に規定する被保護者の抑留を命ずることができることとなるが、我が国としては、同項の規定に基づいて抑留を行うことは、考えていない。

四の4について

 お尋ねの安全地帯等は、第一条約第二十三条、第四条約第十四条及び第十五条並びに第一追加議定書第五十九条及び第六十条に規定する地帯及び地区(以下「特殊地帯」という。)を指すものと思われるが、特殊地帯については、それぞれ、これらの規定に基づき、紛争当事者の宣言等により一方的に、又は紛争当事者間の合意により設定することができるものである。
 我が国として、特殊地帯を設定する場合には、紛争当事者間の合意によって設定されるものについては、敵対する紛争当事者との間で調整を図ることになり、一方的に設定することができるものについては、基本的には、対処基本方針の中で定められることになるものと考える。
 また、「条約上の規定はあっても、実際問題として自治体の長などが宣言を行うことができるのか」とのお尋ねについては、その趣旨が必ずしも明らかではないが、特殊地帯の設定についての宣言は、前記各条約の規定を踏まえ、我が国においては、国において行われるべきものであり、地方公共団体の長等が宣言を行うことはできないと考える。いずれにせよ、政府としては、武力攻撃による住民の被害を最小にとどめるよう施策を講じていくことは当然である。

四の5について

 国民保護法案は、その第二章において住民の避難に関する措置について規定しており、国民保護法案第五十二条第一項の規定により、対策本部長が都道府県知事に対し避難措置の指示をし、国民保護法案第五十四条第一項の規定により、避難措置の指示を受けた都道府県知事が市町村長を経由して住民に対し主要な避難の経路、避難のための交通手段その他避難の方法等を示しつつ避難の指示をすることとしている。これらの措置は、お尋ねの「軍事目標主義」と直接の関係を有するものではないが、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とするものである。
 なお、国民が武力攻撃災害を受けた場合の補償の問題については、武力攻撃事態終了後の復興施策の在り方の一環として政府全体で検討すべきものと考えられることから、国民保護法案には規定していない。

四の6について

 お尋ねの文化財の保護に関しては、今国会に提出している国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(以下「国際人道法違反処罰法案」という。)第三条において、正当な理由がないのに、戦闘行為として、歴史的記念物、芸術品又は礼拝所のうち、重要な文化財として政令で定めるものを破壊した者を処罰することを規定している。この規定は、第一追加議定書第八十五条4(d)に規定する重大な違反行為の処罰のために設けられたものであり、その保護の対象となる物については、千九百五十四年五月十四日の武力紛争の際の文化財の保護に関するハーグ条約(以下「ハーグ文化財保護条約」という。)による特別の保護を受けるもの等が該当すると解されることを踏まえ、政令においては、これらのものを本罪の対象となる重要な文化財として定めることを考えている。
 また、国民保護法案第百二十五条においては、武力攻撃災害による我が国の重要文化財等(同条第一項の重要文化財等をいう。以下同じ。)の滅失、き損その他の被害を防止するための文化庁長官の措置命令、重要文化財等の所有者等の文化庁長官に対する支援の求め等について規定している。
 さらに、お尋ねのハーグ文化財保護条約の締結については、現在、各国における運用の状況を調査するとともに、締結に向けた検討作業を開始したところである。

四の7について

 第一追加議定書第五十六条及び第二追加議定書第十五条は、ダム、堤防及び原子力発電所について、これらの物が軍事目標である場合であっても、これらを攻撃することが危険な力の放出を引き起こし、その結果文民たる住民の間に重大な損失をもたらすときは、攻撃の対象としてはならないこと等を規定しているほか、第一追加議定書第五十六条の規定に違反する行為のうち一定のものについては、第一追加議定書第八十五条3において重大な違反行為とされている。
 仮にこれらの規定に違反する行為が行われた場合の処罰については、我が国において行われた場合にあっては、基本的には、刑法等に従って処理することが可能であると考えられるが、いずれにせよ、当該行為の主体、行為地、重大な違反行為に該当するか否か等の諸事情を勘案しつつ、関係する国際法及び関係国の法令に従って個別具体的に判断されるものである。

四の8について

 仮にアメリカ合衆国軍隊の軍人がジュネーヴ諸条約に違反する行為を行った場合、アメリカ合衆国はジュネーヴ諸条約の締約国としてしかるべく適切に対処するものと考えられる。
 アメリカ合衆国軍隊の軍人によるジュネーヴ諸条約に違反する行為を我が国の法律によって処罰できるか否かについては、刑法、国際人道法違反処罰法案等の我が国の法令及び関係する国際法に従って個別具体的に判断されるものである。

四の9について

 第一追加議定書第六十一条(b)の文民保護組織としては、基本的に、国民の保護のための措置を実施する指定行政機関(指定地方行政機関を含む。)、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が該当するものと考える。
 御指摘の「有事にも災害時にも機能する民間防衛組織」とは、公務員以外の国民による組織を想定しているものと考えられるが、国民保護法案においては、国民の協力はその自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならないこととした上で(国民保護法案第四条第二項)、地方公共団体等が国民の保護のための措置を実施するに際しては、これを補完する形で国民に協力を要請することができることとしている(国民保護法案第七十条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第八十条第一項等)。さらに、国及び地方公共団体は、自主防災組織及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならないこととしている(国民保護法案第四条第三項)。
 このように、国民保護法案においては、国民に対する協力の要請及び国民による自発的な活動への支援を通じて、国民の保護のための措置の実施に万全を期すことができるものと考えており、新たな民間団体を組織することは、考えていない。

四の10について

 お尋ねの「民兵」や「自警団」がいかなるものを指すのか明らかではないが、仮に、これが、武力攻撃事態において、武力攻撃を行っている外国の軍隊その他これに類する組織に該当すると認められるものであるとすれば、その構成員は、捕虜取扱い法案第三条第四号イに掲げる抑留対象者に該当し、捕虜取扱い法案の規定による抑留の対象となり得るものと考えられる。

四の11について

 武力攻撃事態等において国際人道法に違反する行為が発生した場合には、関係する国際法及び国内法令に基づき、適切に対応することとなる。
 国際刑事裁判所に関するローマ規程(以下「規程」という。)の締結については、政府としては、現在、規程の内容や各国における法整備の状況を精査するとともに、国内法令との整合性等について検討を行っているところであり、我が国が規程を締結するに際して整備することが必要となる国内法の具体的内容を現段階で特定することは、困難である。

四の12について

 学校教育においては、学習指導要領を踏まえ、児童生徒の発達段階に応じて国際法等に関する教育が行われてきており、また、国民一般に対しても、政府は、日本赤十字社とも協調しつつ国際人道法に関する知識の普及に取り組んできているところであり、今後とも、一層の努力を傾注してまいりたいと考えている。

四の13について

 日米両国が共同して武力攻撃に対処している場合においては、基本的に、自衛隊の権力内に陥った捕虜については我が国が取り扱い、アメリカ合衆国軍隊の権力内に陥った捕虜についてはアメリカ合衆国が取り扱うこととなるものと考えられる。他方、第三条約第十二条第二項の規定による締約国間の移送についての日米両国間での所要の調整が行われた場合には、捕虜取扱い法案第二十三条の規定により第三条約の締約国であるアメリカ合衆国が拘束している捕虜の引渡しを受け、自衛隊においてこれを抑留することができるほか、捕虜取扱い法案第百四十七条の規定により自衛隊が抑留している捕虜をアメリカ合衆国に移出として引き渡すことができることとなる。
 また、日米両国政府は、武力攻撃に際しては、相互に緊密に協力し、整合性を確保しつつ、適切に共同して対処することとなる。したがって、アメリカ合衆国が第一追加議定書の締約国でないことが、日米の共同対処に影響を与えるとは考えていない。

四の14について

 国民保護法案第二章は、住民の避難に関する措置として、対策本部長による警報の発令(国民保護法案第四十四条第一項)及び避難措置の指示(国民保護法案第五十二条第一項)、都道府県知事による避難の指示(国民保護法案第五十四条第一項)、市町村長による避難住民の誘導(国民保護法案第六十二条第一項)等の措置を定めている。また、その第四章において、都道府県知事等による生活関連等施設の安全の確保のため必要な措置(国民保護法案第百二条)、指定行政機関の長等による危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するため必要な措置(国民保護法案第百三条)、市町村長等による退避の指示(国民保護法案第百十二条)等の措置について規定している。これらの措置は、第一追加議定書第五十八条に規定する「予防措置」と直接の関係を有するものではないが、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とするものである。

五の1について

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(平成八年条約第四号。以下「日米物品役務相互提供協定」という。)を改正するために今国会に提出している日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定による改正後の日米物品役務相互提供協定(以下「改正された協定」という。)第六条においては、日本国政府及びアメリカ合衆国政府が、「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のために」(同条1)自衛隊又はアメリカ合衆国軍隊が行う活動のために必要な物品又は役務を相手国政府の要請に基づき提供することができる旨を定めているが、改正された協定第六条に基づく自衛隊による物品又は役務の提供は、「その権限の範囲内で」(同条1)、「付表2に定める日本国の法律の規定であって現に有効なものに従って」(同条4)行われることとなっている。
 同条1にいう目的のために、改正された協定に定める手続の枠組みに従って自衛隊がアメリカ合衆国軍隊に物品又は役務を提供し得る根拠となる我が国の法律の規定であって現時点で有効なものについては、既に付表2に掲げてあるが、今後そのような法律の規定が新たに設けられた場合に、迅速に、当該規定に基づく物品又は役務の提供を改正された協定に定める手続の枠組みに従って行い得るようにするために、改正された協定第十二条3において、付表2を両政府の合意により修正することができる旨を定めたところである。
 付表2においては、国会の審議を経て制定された法律の規定が掲げられることとなるため、付表2の修正については、国会の関与が及ぶこととなる。

五の2について

 政府は、武力攻撃事態等においては、今国会に提出している武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(以下「米軍行動関連措置法案」という。)第六条にも規定されているとおり、「武力攻撃事態等の状況の認識及び武力攻撃事態等への対処に関し、日米安保条約に基づき、アメリカ合衆国政府と常に緊密な連絡を保つよう努める」こととしており、合衆国軍隊(米軍行動関連措置法案第二条第四号の合衆国軍隊をいう。以下同じ。)の行動に関する情報は、日米間の調整メカニズム等を通じ、アメリカ合衆国側から得られるものと考えている。
 国民に対して情報を提供する手段については、情報の内容等に応じ、新聞、放送、インターネット等も含めた様々な媒体を活用していくこととなる。

五の3について

 武力攻撃予測事態と周辺事態(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号。以下「周辺事態法」という。)第一条の周辺事態をいう。以下同じ。)とは、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものであり、状況によっては、両者が併存することはあり得る。
 その場合であっても、米軍行動関連措置法案の規定上、我が国が実施する行動関連措置(米軍行動関連措置法案第二条第五号の行動関連措置をいう。以下同じ。)は、米軍行動関連措置法案第二条第五号に規定する「日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための」合衆国軍隊の行動に伴い実施するものに限られる。
 また、改正された協定に基づいてアメリカ合衆国軍隊が、行動関連措置として我が国が提供した物品及び役務を受領し、また、使用し得るのは、「武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際して・・・日本国に対する武力攻撃を排除するために必要な」行動のために必要な場合に限られる。
 加えて、運用上も、日米防衛協力のための指針に示されているとおり、周辺事態が予想される場合及び日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米間の調整メカニズムの運用が早期に開始されることとなり、アメリカ合衆国政府から我が国政府に対して、改正された協定に基づいて弾薬の提供の要請があった場合にも、必要に応じ、合衆国軍隊がいかなる行動を実施するかといった点も含め、当該要請に関する適切な調整が行われることとなる。
 これらのことにより、行動関連措置は、制度上も運用上も、「日米安全保障条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための」合衆国軍隊の行動に対して実施されることが確保されると考えている。

五の4について

 日米防衛協力のための指針にあるとおり、武力攻撃事態において、自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動するものであり、これらの間における必要な調整は、日米間の調整メカニズムを通じて行われる。この調整メカニズムとしては、両国政府の局長級及び課長級並びに自衛隊及び在日米軍の調整の場が構築されている。

五の5について

 武力攻撃事態等への対処のために指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置は、対処基本方針に基づき、相互に連携協力して的確かつ迅速に実施される必要があるが、それぞれの機関が実施する対処措置について調整を図る必要性が生じた場合においては、内閣総理大臣をもって充てられる対策本部長が総合調整を行う枠組みとなっている。米軍行動関連措置法案第八条に規定する政府による地方公共団体との連絡調整についても、対策本部長を中心とする総合調整の枠組みの下で、的確かつ迅速に行われるものと考えている。また、我が国に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米間の調整メカニズムの運用が早期に開始されることとなり、必要に応じ適切な調整が行われることとなっており、日米両国政府は、整合性を確保しつつ適切に共同で対処することとなる。

五の6について

 米軍行動関連措置法案第九条においては、防衛庁長官が合衆国軍隊が行う応急措置としての道路に関する工事についての連絡を受けたときは、自衛隊法の関連する規定の例に準じて、関係機関に通知を行うことについて定めている。この連絡は、日米間の調整メカニズム等を通じ、合衆国軍隊から行われるものと考えている。

五の7について

 お尋ねの「多国籍軍」がいかなるものを意味するのか必ずしも明らかではないが、そのようなものが編成されるか否かについては、国際連合安全保障理事会決議の採択等を含む国際社会の対応等、その時々における個別具体的な状況によるので、一概に述べることは困難である。

五の8について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)については、政府としては、御指摘の点も含め運用の改善に努力しているところであり、引き続き、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であると考えている。
 なお、日米地位協定は、武力攻撃事態等においても適用されることとなる。

五の9について

 米軍行動関連措置法案第十条第四項において、行動関連措置としての物品及び役務の提供として行う業務の範囲を別表に規定することなく本則で規定しているのは、周辺事態法及び平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号)のほか、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク人道復興支援特措法」という。)における規定例を参考として、簡潔かつ明りょうな形で規定することとしたことによるものである。効果に関するお尋ねについては、一般に、特定の法律事項を本則で規定するか別表で規定するかについては、立法技術上の問題であり、規範としての効果に差異を生ずるものではないと考える。
 なお、イラク人道復興支援特措法第三条第二項及び第三項は、それぞれ人道復興支援活動及び安全確保支援活動として実施される業務の範囲を本則で規定している。

六の(1)の1について

 今国会に提出している武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(以下「海上輸送規制法案」という。)第六条第一項において海上輸送規制法案第二条第二号イに該当する外国軍用品を廃棄することとしているのは、核兵器、化学兵器、生物兵器及び毒素兵器(以下「核兵器等」という。)並びに対人地雷については、その所持等が各種条約や我が国の国内法上禁止されているものであり、特に核兵器等の使用は我が国のみならず国際社会全体にとって極めて重大な影響を及ぼすものであるので、我が国として輸送の継続を容認し得ないと判断したことによるものである。また、核兵器等の運搬手段については、核兵器等と一体となって用いられるものであり、その拡散を防止するための国際的な取組にかんがみても、これを核兵器等と同様に取り扱うことが適当であると判断したものである。
 他方、海上輸送規制法案第六条第二項及び第三項において海上輸送規制法案第二条第二号ロからチまでに該当する外国軍用品の輸送を停止することとしているのは、これらの物品の法的な位置付けが核兵器等及び対人地雷とは同等ではなく、また、これらの物品の所有者が外国軍隊等ではない場合も考えられること等にかんがみ、武力攻撃事態が終結するまでの間輸送を停止することでこれらの物品が我が国に対する武力攻撃の用に供されることは防止することができると判断したことによるものである。

六の(1)の2について

 海上輸送規制法案第十六条の「外国軍用品等を輸送していることを疑うに足りる相当な理由がある」との判断については、船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情等に照らし、適切に行うことが可能であると考えている。

六の(1)の3について

 お尋ねの「さらなる戦闘行為を誘発する事態を招くこと」がいかなるものを指すのか必ずしも明らかではないが、海上輸送規制法案に基づく措置は、我が国に対する武力攻撃が発生した事態において、自衛権の行使に伴う必要最小限度の範囲内の措置として実施するものであり、また、停船検査を実施する区域を関係する外国政府等に周知させることとするなど、外国との関係にも十分配意しているので、これによって我が国に対する武力攻撃が拡大することとはならないと考えている。

六の(2)の1について

 武力攻撃事態等においては、対策本部(事態対処法第十条第一項の対策本部をいう。以下同じ。)において、指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置の総合的な推進に関する事務をつかさどることとされており、当該総合的な推進を図るために必要な情報については、すべて対策本部に集約されることとなる。また、今国会に提出している武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(以下「特定公共施設利用法案」という。)第六条第四項(特定公共施設利用法案第十条第二項、第十二条第二項、第十三条第二項、第十五条第二項及び第十七条第二項において準用する場合を含む。)において、特定公共施設等(特定公共施設利用法案第二条第三項の特定公共施設等をいう。以下同じ。)の利用に関する指針(以下「利用指針」という。)を定めるため必要があると認めるときは、対策本部長が、関係する地方公共団体の長その他の執行機関及び指定公共機関に対し、必要な情報の提供を求めることができることとされている。さらに、特定公共施設等の利用指針を定める場合には、対策本部長が、必要に応じ対策本部の構成員である対策本部員等(事態対処法第十一条第三項の対策副本部長、対策本部員その他の職員をいう。)の意見を聴くことは当然であるほか、特定公共施設利用法案第六条第三項(特定公共施設利用法案第十条第二項、第十二条第二項、第十三条第二項、第十五条第二項及び第十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、関係する地方公共団体の長その他の執行機関及び指定公共機関の意見を聴かなければならないこととされている。
 このようなことから、対策本部長において、これらの情報や意見を踏まえ、「総合的に勘案し、適切に判断」することは十分に可能であると考える。
 なお、武力攻撃事態等において、適時適切に特定公共施設等の利用指針を定めることができるよう、平素から様々な場合を想定して、それぞれの場合に対応した特定公共施設等の利用指針の案を検討しておく等必要な準備を行っておくことは、当然である。

六の(2)の2について

 指定行政機関等は、特定公共施設利用法案第五条の規定により、対処措置等(特定公共施設利用法案第二条第二項の対処措置等をいう。以下同じ。)を実施するに際しては、特定公共施設等の利用指針を踏まえ、適切にこれらを利用し、又は利用させる責務を負うこととされており、国土交通大臣が航空管制を行うに際しても、対策本部長が定める空域の利用指針を踏まえ、適切にこれを実施することとなる。
 お尋ねの「民間航空機の管制」については、特定公共施設利用法案第十六条において、国土交通大臣が、空域の利用指針に基づき、航空機の航行の安全を確保するため、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第九十六条の規定による措置(航空交通の指示)を適切に実施しなければならない旨を明記しているところである。

六の(2)の3について

 電気通信事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関が行う国民の保護のための措置の実施に必要な携帯電話用装置を用いた無線通信については、特定公共施設利用法案第十八条第一項第一号に掲げる国民の保護のための措置を実施するために必要な無線通信に該当することから、同項の規定により総務大臣が特定の無線通信を行う無線局について必要な措置を講じた場合において当該無線局により当該特定の無線通信を行うときを除き、その運用を阻害するような混信その他の妨害を受けることはない。
 また、特定公共施設利用法案第十八条第一項の規定により特定の無線通信を優先させるために総務大臣が講ずる措置は、あくまでも当該優先させる無線通信を行う無線局に係る電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第百四条の二第一項の規定により付した免許の条件の変更等の措置であり、当該無線局以外の無線局に対し、電波の発射停止、運用制限等を行うものではない。

六の(2)の4について

 電波法第百二条の二第一項第二号に掲げる放送の業務の用に供する無線局の無線設備による無線通信を含め、同項各号に掲げる無線通信は、いずれも公共性が高く、武力攻撃事態等においても可能な限りこれを保護する必要があるため、特定公共施設利用法案第十八条第一項第一号に掲げる無線通信を行う無線局は、同項の規定により総務大臣が特定の無線通信を行う無線局について必要な措置を講じた場合において当該無線局により当該特定の無線通信を行うときを除き、同条第三項の規定により、電波法第百二条の二第一項各号に掲げる無線通信を含め、特定公共施設利用法案第十八条第一項各号に掲げる無線通信を行う他の無線局に対し、その運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければならないこととされている。
 また、特定公共施設利用法案第十八条第一項の規定により特定の無線通信を優先させるために総務大臣が講ずる措置は、あくまでも当該優先させる無線通信を行う無線局に係る電波法第百四条の二第一項の規定により付した免許の条件の変更等の措置であり、当該無線局以外の無線局に対し、電波の発射停止、運用制限等を行うものではない。
 いずれにせよ、特定公共施設利用法案第十七条第一項に規定する対策本部長による電波の利用指針の策定や特定公共施設利用法案第十八条第一項に規定する当該電波の利用指針に基づき総務大臣が講ずる措置の実施に際しては、国民保護法案第五十条の規定に基づき警報の内容を放送しなければならないこととされている放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関の当該放送の重要性を勘案し、適切に電波の利用の調整が図られる必要があると考える。
 なお、対策本部長は、その時々の状況を総合的に勘案し、適切に判断した上で電波の利用指針を定め、又は適時にその見直しを行うものであり、利用を優先すべき電波の内容等をあらかじめ確定することは、困難である。

六の(2)の5について

 地方公共団体は、国民保護法案第三条第二項の規定により、自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する責務を有することとされている。また、特定公共施設利用法案第六条第三項(特定公共施設利用法案第十条第二項、第十二条第二項、第十三条第二項、第十五条第二項及び第十七条第二項において準用する場合を含む。)においては、「対策本部長は・・・利用指針を定める場合には、関係する地方公共団体の長・・・の意見を聴かなければならない」旨を明記しているところである。
 このようなことから、対策本部長が、その時々の状況を総合的に勘案し、適切に判断した上で特定公共施設等の利用指針を定めるに際し、住民の避難等に関し主要な役割を担うこととされている地方公共団体の長等の意見を尊重することは当然であり、避難住民の保護の観点から特に問題があるとは考えていない。

六の(2)の6について

 特定公共施設利用法案においては、国民の理解と協力を得つつ特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用を確保するため、特定公共施設利用法案第六条第五項(特定公共施設利用法案第十条第二項、第十二条第二項、第十三条第二項、第十五条第二項及び第十七条第二項において準用する場合を含む。)において、対策本部長が特定公共施設等の利用指針を定めたときは、その内容を公示することとしている。
 もっとも、当該公示において、例えば自衛隊等により行われる武力攻撃を排除するために必要な具体的な行動の内容等に係る事項を含めることは、当該行動の的確かつ迅速な実施に支障を来すこととなり、ひいては、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保が困難になるおそれがあると考えられることから、特定公共施設等の利用指針については、「公にすることにより国の安全が害されるおそれがある事項を除き、その内容を公示する」こととしているものである。
 したがって、公示する内容をあらかじめ確定することは困難であると考えるが、前記のような事項に該当するものでない限り、適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにするよう努めてまいりたい。

六の(2)の7について

 お尋ねの「製造業者が専有している施設」について、どのような用途に供され、また、どのような形態により専有されているものを想定しておられるのか明らかではないが、いずれにせよ、港湾施設の円滑かつ効果的な利用を確保するに際し、港湾管理者等関係者の意向に配慮することは、当然である。
 なお、港湾管理者が管理する港湾施設のうち普通財産であるものについては、一般的に、民間事業者に対して貸し付けられており、当該港湾施設の利用については、対処措置等の実施主体である指定行政機関等が当該民間事業者との間において必要な調整を行うことで足りることから、特定公共施設利用法案第二条第四項に規定するとおり、特定公共施設利用法案の「港湾施設」からは、普通財産である港湾施設を除いているところである。

六の(2)の8及び六の(2)の9について

 特定公共施設利用法案第八条第二項(特定公共施設利用法案第九条第二項において準用する場合を含む。)又は第九条第四項に規定する船舶の移動の命令は、特定公共施設利用法案第八条第一項(特定公共施設利用法案第九条第二項において準用する場合を含む。)又は第九条第三項の規定に基づき特定の港湾施設の利用に係る許可その他の処分が変更され、又は取り消されたにもかかわらず引き続き当該港湾施設の利用を継続する船舶の船長等に対して、当該船舶の移動が必要であると認めるときに港湾管理者又は内閣総理大臣が発するものである。その際の当該船舶の移動に伴う安全については、現場の事情に精通している港湾管理者による命令の場合はもとより、内閣総理大臣が国土交通大臣を指揮して船舶の移動を命ずる場合においても、特定公共施設利用法案第四条の規定により、港湾管理者は、港湾施設を管理運営するに際して、対策本部長との緊密な連携を図る責務を有しており、当該命令の対象となる船舶の船長等から得た情報を含め、必要な情報はすべて対策本部長に伝えられることとなるものであり、このような必要な情報を有する対策本部長の求めを経て、内閣総理大臣による命令が発せられることとなることから、十分に配慮されることとなる。
 また、特定公共施設利用法案第十四条第一項の規定により海上保安庁長官が行う船舶の航行制限の措置は、対策本部長がその時々の状況を総合的に勘案し、適切に判断した上で定める海域の利用指針に基づき、特定の海域を航行することができる船舶又は時間を制限するものであるが、その目的は、そもそも船舶の航行の安全を確保するところにあるものである。

六の(2)の10について

 国民の保護のための措置を実施するために必要な無線通信を始めとして、特定公共施設利用法案第十八条第一項第一号に掲げる無線通信については、同項の規定により総務大臣が特定の無線通信を行う無線局について必要な措置を講じた場合において当該無線局により当該特定の無線通信を行うときを除き、その運用を阻害するような混信その他の妨害を受けることはない。したがって、国民の保護のための措置を実施するために必要な無線通信を行う海上保安庁等の無線局と同一の周波数を使用している船舶局等の無線局についても、同様に、その運用を阻害するような混信その他の妨害を受けることはない。
 また、特定公共施設利用法案第十八条第一項の規定により特定の無線通信を優先させるために総務大臣が講ずる措置は、あくまでも当該優先させる無線通信を行う無線局に係る電波法第百四条の二第一項の規定により付した免許の条件の変更等の措置であり、当該無線局以外の無線局に対し、電波の発射停止、運用制限等を行うものではない。
 いずれにせよ、特定公共施設利用法案第十七条第一項に規定する対策本部長による電波の利用指針の策定や特定公共施設利用法案第十八条第一項に規定する当該電波の利用指針に基づき総務大臣が講ずる措置の実施に際しては、船舶の航行の安全を確保するために必要な無線通信についても、十分に配慮される必要があると考える。

七について

 武力攻撃事態等において発生した避難民の保護や救護の態勢については、避難民の人数及び状況、我が国を取り巻く情勢等に応じて、関係省庁が連携し、現行法令の枠組みの中で必要な措置をとることとなる。
 また、避難民にいわゆる武装難民が含まれていた場合には、警察官又は海上保安官等が現行法令に基づき、適切に対処することとなる。



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