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平成十六年八月六日提出
質問第六九号

プルトニウム利用政策に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




プルトニウム利用政策に関する質問主意書


 もんじゅ事故、東海再処理工場事故、JCO臨界事故など安全を軽視して推進してきたプルトニウム循環方式の破綻が明らかになっている。それにとどまらず、東京電力などの原発トラブル隠しに続いて今回、再処理と直接処分のコスト比較が八〇年代から行われていたのに、政府の手でこうした原子力情報が長らく隠されてきたことが明らかになった。いまこそ、情報隠しで不信の高まっている国民無視の原子力政策から転換して、事実を総て正直に国民に示すべきである。
 すでにこれまで原発と核燃料サイクルをすすめてきた各国政府の中でその多くは、プルトニウムを作らないという核政策、技術的困難性、発電コストなどの理由で、核燃料サイクル政策を中止してきた。もちろん、高速増殖炉計画からも撤退してきた。これが世界の流れであり、原子力、とりわけプルトニウムの増殖炉やプルサーマルに固執する日本は、世界から取り残されつつあるといえる。
 今年六月に提出した「プルトニウム利用政策に関する質問主意書」において、〔プルトニウム過剰〕〔全量再処理方式〕〔プルサーマル実施計画と事故時の放出放射線量予測〕〔再処理の場合と直接処理の燃料コスト〕〔六ヶ所再処理施設試運転問題〕などについての政府見解をただした。これに対する政府答弁書を踏まえ、安全性とコストの両面から改めて質問する。

一 〔再処理の場合と直接処分の燃料コスト〕
 1 答弁書では、六ヶ所再処理工場稼働分だけの計算で、
  二〇〇〇年法律第一一七号第一一条−拠出金   一〇兆一〇〇〇億円
  今後「引当金」対象とすべき費目         五兆一〇〇〇億円
  費用発生年度に当期費用として経理   ▲      一〇〇〇億円
                    ・・・・・・・・・・・
  料金原価に影響を与えるもの          一五兆一〇〇〇億円
 これを二%割引率を用いて試算すると、一kw時当たり三六銭になると答弁している。
 しかし、再処理に踏み切ると、一層放射線レベルの高いMOXの使用済み燃料の再処理工場の費用と、高レベル放射性廃棄物と超ウラン元素の最終処分の費用まで含めて考えなければならないが、それは幾らになると政府は検討しているのか。
 2 バックエンド事業全体の試算も行われているが、九八年三月に出された旧通産省の委託による(財)原子力環境整備センターの「使用済燃料の直接処分を考慮した核燃料サイクルバックエンド費用の検討」の報告書である「将来の使用済燃料対策の検討(その3)報告書」がある。そこでは直接処分の費用として、
                   結晶質岩         堆積岩
  (A)使用済核燃料直接処分  四兆一九九三億円   六兆 九〇七億円
 昨秋電事連が発表した六ヶ所再処理工場の費用(B) 一八兆八〇〇〇億円と比較すると
  (B)/(A)比       四・四七倍        三・一倍
 九八年三月の報告書の結晶質岩か堆積岩かの違いによるが、発表されている(B)との比較では、再処理・MOX燃料方式が直接処分に較べて、二〜四倍になるのではないか。
 3 今年二月の虚偽答弁が問題になっているが、燃料コストの問題は九四年のデータ隠しだけでなく、前記2の質問にも挙げた報告書も長く伏せられてきた。
 政府答弁書では、「今後の原子力委員会新計画策定会議において・・・必要に応じて参考にしつつ議論が行われることとなる」としているが、これまでの検討経過が明らかにされる必要がある。
 そこで、以下の委託研究にもとづく試算や報告書が出された時に、原子力委員会と政府部内で、再処理路線か直接処分の選択かについてどのような検討を行って、原子力政策に反映させようとしたのか、それぞれの時期ごとに明らかにされたい。
 一九八二年九月 「原子力開発利用長期計画参考資料」「核燃料サイクルに係る経済性の評価について(試算)」 科学技術庁原子力局原子力調査室
 一九八五年五月 「原子力委員会再処理推進懇談会(第十回)資料」「プルトニウム利用の経済性評価例」
 一九八六年三月 「プルトニウム利用に関する調査」 三菱総合研究所(調査委員長・鈴木篤之東大助教授・現原子力安全委員会委員長代理)
 一九八六年八月 「長期計画専門部会第2分科会(第2回)資料」「プルトニウム利用の経済性について」
 一九九三年(九二年度委託) 「原子力発電の将来展望に関する調査−軽水炉における再処理方式と直接処分方式の経済性評価」 (財)日本エネルギー経済研究所
 一九九四年二月 「総合エネルギー調査会長期計画専門部会第2分科会(第一四回)資料」「軽水炉によるプルトニウム利用に関する経済性について」
 「総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題作業グループ参考資料」「核燃料サイクルの経済性試算について」
 (九六年二月 電気事業連合会検討会とりまとめ資料−再処理と直接処分の経済性研究)
 一九九七年七月 「原子力委員会高速増殖炉懇談会(第七回)資料」「燃料サイクルの比較−エネルギー、廃棄物および経済性の観点から」
 一九九八年三月 「将来の使用済燃料対策の検討(その3)報告書−使用済燃料の直接処分を考慮した核燃料サイクルバックエンド費用の検討」(旧通産省委託)(財)原子力環境整備センター
 4 これまでの試算等が公表されてこなかった(非公開とされてきた)のはなぜか。
 公表されてこなかった(非公開だった)ことは、国民に対する説明責任をまったく無視して核燃料サイクル政策がすすめられてきたことを意味するが、政府として、現時点でどう考えるか。
 公表を隠していたとはいえ、国会で、その存在そのものを否定する虚偽答弁をなぜ行ったのか。
 5 長期にわたる核燃料コスト比較などの情報隠しと虚偽答弁などを繰り返してきた政府や電力業者の行為の根底には、プルトニウム循環方式の原発推進政策がある。したがって、いま必要なのは、「長期エネルギー需給見通し」や「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の部分的手直しですませるのでなく、プルトニウム利用の原子力政策、エネルギー政策の根本的転換をすすめることではないか。
二 〔プルトニウム過剰〕
 1 答弁書で示された、海外再処理委託の内、ヘビーメタルで再処理の終了したものは六八〇〇d、一方、回収プルトニウムは、実績値で二七dとしているが、これは回収率として考えると〇・四〇%となる。
 しかし、一般的に、プルトニウム量は、使用済み核燃料の一%、その中で核分裂性プルトニウムは大体その六〇%から七〇%とされている。実際にフランスのコジェマからの返還プルトニウムの同位体組成では、核分裂性プルトニウムの同位体組成は七〇%を超えるものがある。これからすると、六八〇〇dを処理すると核分裂性プルトニウムは四〇・八d〜四七・六dとなる。答弁書の「実績値」二七d(回収率〇・四〇%)というのは余りにも過少ではないのか。なぜこのような差が生じるのか。
 一方、残余の再処理量は三〇〇dだが、そこからのプルトニウムの回収量は五d(回収率一・六七%)を見込んでいる。この回収率からすると、海外再処理の核分裂性プルトニウムは一一三dとなり、答弁書の三二dはやはり過少ではないか。
 また、国内使用済み核燃料一二〇〇〇dの回収量見込み七一dが〇・五九%であることを考えても、海外での残余の再処理については回収率が三倍も大きくなる理由は考えにくい。何故三倍も多く回収されることになるのか。
 2 国内実用発電用原子炉から発生する使用済み核燃料のプルトニウム含有量について、答弁書では、「含まれる核分裂性プルトニウムの量は、燃料集合体の種類ごとに大きく異なる」としている。それでは、政府が考えている燃料集合体の種類ごとの核分裂性プルトニウムの含有率は、種類ごとにそれぞれ幾らか。それぞれの燃焼度も示して明らかにされたい。
 3 六ヶ所再処理工場の処理能力(公称)は、使用済み核燃料投入量八〇〇dで、回収プルトニウムは五dと答弁しているが、この回収率(〇・六三%)なら、海外再処理分の核分裂性プルトニウムは四二・五dとなり、やはり二七dを大きく上回る。
 日本の核分裂性プルトニウム量を答弁書の通りとすると、この六ヶ所再処理工場をn年間稼働させると、現在の回収プルトニウム量と合わせて、三二d+五d×nとなる。
 二〇一〇年からプルサーマル実施(一六〜一八基)の場合は、年間五〜八dのプルトニウム利用で、二〇〇X年高速増殖原型炉「もんじゅ」が稼働の場合、年間数百sのプルトニウム利用としている。
 年間五dの利用の場合、いつまでも三二dの余剰プルトニウムを持ちつづけることになり、プルトニウム八dで核兵器(長崎型原爆)一発として四〇〇〇発分という大きな核兵器生産能力をもつ国として、国際的に不信を持たれ続けることになるのでないか。
 年間八dの利用の場合でも十数年間も余剰プルトニウムを持ちつづけることになるのではないか。
 4 一九九三年一一月一三日に動力炉・核燃料開発事業団が主催した「核不拡散国際フォーラム」の中で、米政府代表は「日本がプルトニウムを保有することを周辺諸国は潜在的脅威と受け取る」「ウラン燃料はまだ枯渇する心配はなく、使用済み核燃料を再処理する緊急性はない。日本は核燃料サイクル政策を急ぐべきでない」などと発言していた。
 日本政府としてプルトニウム政策への国際的不信やアジア各国の感じている脅威を、どのように認識してきたのか。これはIAEAの査察を受けているといっても潜在的脅威が解消されるという問題ではない。政府がプルトニウム利用政策を放棄することが、特にアジア諸国への潜在的脅威を解消する道になるのではないか。
三 〔プルサーマル実施計画と事故時の放出放射線量予測〕
 1 答弁書によると、核燃料中の分裂性プルトニウムの割合、及びアクチノイド系物質について、燃料集合体一体当たりで見ると、
  ウラン燃料中プルトニウムは燃焼前 〇・〇重量%、燃焼後〇・五三重量%
        アクチノイドは燃焼前 一七三s、  燃焼後 一六三s(一〇s燃焼)
        燃焼度は当然、燃焼前〇MWD/t、 燃焼後五五〇〇〇MWD/t
  MOX燃料中プルトニウムは燃焼前 二・九重量%、燃焼後一・四重量%
        アクチノイドは燃焼前 一六五s、  燃焼後 一五八s(七s燃焼)
        燃焼度は燃焼前時点で〇MWD/t、 燃焼後四〇〇〇〇MWD/t
 とされている。
 軽水炉でウランだけ燃焼する場合の燃焼度は五五〇〇〇MWD/t、これに対して稀ガスの発生が多いMOXでは被覆管のガス溜め部分を多く取ったりしているが、それでも燃焼度を四〇〇〇〇MWD/tに抑えることにしている。
 これは、答弁書にいうウラン燃料装荷とMOX装荷の場合で違いがないとすること自体が妥当でないことを示しているのではないか。
 プルサーマルの燃焼度を五五〇〇〇MWD/tとして考えると、アクチノイド七s燃焼が、一〇sとなりウラン燃料並みとなる。またその時、プルトニウムの燃焼は一・五重量%が二・〇六重量%まで進行することになる。(勿論プルトニウムは消費と生成の両方があり燃焼が二・〇六と簡単には言えないが、一応この値にする。)
 この時、分裂性プルトニウム一・五重量%の燃焼にともなって発生する放射線量は幾らか。また、二・〇六重量%の燃焼なら幾らの放射線量になるか。
 更に、答弁書に示すアクチノイド系物質の中で、Np−239、Pu−238、Pu−239、Pu−240、Pu−241、Am−241、Cm−242、Cm−244の予定した燃焼度に達した時点で放出される放射線量はそれぞれの物質ごとに幾らか。α線、β線、γ線、中性子線それぞれについてM Ci単位で示されたうえ、算出の基準又は根拠を明らかにされたい。
 2 東京電力柏崎刈羽原発三号炉での事故態様による放出放射線量について答弁書は、原子炉冷却材喪失時と主蒸気管破断時について、重大事故と仮想事故の時の沃素と稀ガスの想定放出量を示した上で、米国核管理研究所「報告書」における過酷事故の評価については、「極端な前提をおいて評価をおこなったもの」としている。
 米国核管理研究所「報告書」における過酷事故の評価を認めない根拠はなにか。
 原子炉の閉じ込め機能が喪失される事故は、当然検討し評価されるべきものである。すでに日本でも、次の3の質問に示したような検討が行われており、答弁書に示された見解は妥当なものとはいえない。
 「極端な前提をおいて」というのは、どの部分がどのように「極端」か、該当箇所を示して、政府の具体的な反論を示されたい。
 そもそも日本では過酷事故は起こらないとしている政府の根拠はどこにあるのか。
 3 すでに政府は、旧科学技術庁が日本原子力産業会議に委託して「大型原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算」(一九五九年度のとりまとめ)を行っている。その要約は一九六一年の国会に参考資料として提出されている。
 この想定では、事故までに約四年間運転した熱出力五〇万キロワット、電気出力では一六万キロワット級の動力炉としているが、それが過酷事故を起こした時に、
 (イ)揮発性の稀ガスの全部と沃素の五〇%と向骨性元素の一%とセシウムの一〇%とが放出される量は、楽観的にみて一〇の五乗キュリー。悲観的にみると一〇の七乗キュリー(それぞれ二四時間後)。
 (ロ)炉内の内蔵分裂生成物に比例した割合で全放出する場合の量は、楽観的な場合一〇の五乗、悲観的なケースでは一〇の七乗キュリー。(熱出力五〇万キロワットの原子炉の内蔵放射能の全量は五×一〇の八乗キュリーとしている。)
 答弁書に示された東京電力柏崎刈羽原発の例でみれば、ウラン燃料の過酷事故の場合には、五九年度の報告書の試算の約一〇倍近く高いものになるのではないか。
四 〔全量再処理方式と六ヶ所再処理施設試運転〕
 1 使用済み核燃料の「全量再処理」方式は、プルトニウムを総て使い切るということが前提になっている。しかし、この大本にあった高速増殖炉(FBR)路線は失敗し、それでも再処理をすすめるとプルトニウムが過剰となる。プルサーマルでこれを総て燃やすと、使用済みMOX燃料再処理のための第二再処理工場が必要になるのではないか。
 軽水炉で発生する使用済み核燃料を総て処理するには、六ヶ所再処理工場の処理能力を超えるので、その分は、直接処分に回すことになる。そうすると、再処理費用だけでなく、再処理能力を超える使用済み核燃料の直接処分費用も加算されることになるのではないか。その費用の見積もりは幾らとしているのか。
 2 六ヶ所再処理工場の劣化ウランを使った試運転も本格運転も、これを始めると施設の放射能汚染を生じることになるし、また構造物の放射化がすすむ。再処理路線を変更する時に、新たな莫大な費用負担を生じることになるのではないか。
 3 「全量再処理」方式の破綻は明白になっている。これ以上、放射性毒性の強いプルトニウムの危険を増大させないためにも、国際的不信を招かないためにも、プルサーマル利用と使用済み核燃料の「全量再処理」は止めるべきであり、そのためにも六ヶ所再処理工場の稼働につながるウランテストは行うべきでない。中止を決断すべきでないか。

 右質問する。



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