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平成十六年八月三十一日受領
答弁第六九号

  内閣衆質一六〇第六九号
  平成十六年八月三十一日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員吉井英勝君提出プルトニウム利用政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員吉井英勝君提出プルトニウム利用政策に関する質問に対する答弁書



一の1について

 お尋ねの「一層放射線レベルの高いMOXの使用済み燃料の再処理工場」とは、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成十二年十一月二十四日原子力委員会決定。以下「現行の長計」という。)にいう「六ヶ所再処理工場に続く再処理工場」(以下「新工場」という。)を指すものと考えるが、「一層放射線レベルの高いMOXの使用済み燃料の再処理工場の費用」等を勘案した場合において、いわゆるバックエンド費用が電気の料金原価に与える影響がいくらになるかというお尋ねについては、現行の長計において、「六ヶ所再処理工場に続く再処理工場は・・・高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料の再処理も行える施設とすることが適当と考えられるが、さらに、今後の技術開発の進捗を踏まえて、高速増殖炉の使用済燃料の再処理も可能にすることも考えられ・・・この工場の・・・建設計画については・・・二〇一〇年頃から検討が開始されることが適当」としているところ、現時点において新工場の建設等に係る具体的な計画が明らかになっているわけではないことなどから、検討を行っておらず、お答えすることは困難である。

一の2について

 お尋ねの「四兆一九九三億円」及び「六兆 九〇七億円」という金額については、使用済燃料を直接処分する場合における使用済燃料の埋設費のみを試算したものであり、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会において電気事業者から示された試算費用に含まれるウラン濃縮工場の解体費用、使用済燃料の貯蔵及び輸送に係る費用等に相当する費用が勘案されておらず、これらを用いて「再処理・MOX燃料方式」と「直接処分」とを比較することは適切ではないと考える。

一の3について

 お尋ねの資料のうち「「総合エネルギー調査会長期計画専門部会第2分科会(第一四回)資料」「軽水炉によるプルトニウム利用に関する経済性について」」は、平成六年二月に開催された「原子力委員会長期計画専門部会第二分科会(第十四回)」において用いられた「軽水炉によるプルトニウム利用に関する経済性について」を指すものと考えるが、お尋ねの資料に係る資料作成の目的、資料を用いた検討の結果等については、別表第一のとおりである。

一の4及び5について

 お尋ねの試算等のうち「「原子力委員会高速増殖炉懇談会(第七回)資料」「燃料サイクルの比較―エネルギー、廃棄物および経済性の観点から」」については、平成九年七月に公表をしているところである。その他の作成の時点で公表されなかった試算等については、当該試算等が使用された当時の審議会等において、原則としてすべての配付資料について非公表の取扱いをしていたことなどから、公表することがなかったところであるが、当該試算等については、学識経験者等社会の様々な立場を代表する委員からなる審議会等に提示するなどしてきており、また、これらの審議会等での議論等を経て決定された核燃料サイクル政策については、原子力白書や「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」等の公表等を通じ、国民の理解の増進に努めてきたところであって、「国民に対する説明責任をまったく無視して核燃料サイクル政策がすすめられてきた」との御指摘は当たらないと考える。
 お尋ねの国会での答弁については、経済産業省として当該試算等を隠す意図はなかったものの、答弁を行った当時、答弁を行った者等が当該試算等の存在を認識していなかったことから、結果として事実と異なる答弁を行ったものである。
 お尋ねの試算等の多くが作成の時点で公表されなかったこと及びお尋ねの国会答弁が結果として事実と異なる答弁であったことについては、右に述べたように、当該試算等を隠す意図の下で行われたものではなく、これらの「行為の根底には、プルトニウム循環方式の原発推進政策がある」との御指摘は当たらないと考える。

二の1について

 電気事業連合会を通じ実用発電用原子炉を有する十社の電気事業者(以下「本件電気事業者」という。)から聴取したところ、お尋ねの点については、次のとおりであるとのことである。
 本年三月末現在、海外の再処理事業者に再処理を委託した使用済核燃料については、そのうち英国の核燃料会社(以下「核燃料会社」という。)に委託した使用済みの軽水炉用ウラン燃料(以下「使用済軽水炉燃料」という。)の一部について再処理が終了していないところであるが、本件電気事業者と核燃料会社との間の契約においては、核燃料会社が本件電気事業者を含む一定の顧客から再処理の委託を受けた使用済軽水炉燃料を一つのまとまりとしてとらえ、そこから回収されたプルトニウム二三九及びプルトニウム二四一(以下「核分裂性プルトニウム」という。)を、各顧客が再処理を委託した使用済軽水炉燃料が実際に再処理されたか否かにかかわらず、各顧客が再処理を委託した使用済軽水炉燃料に含まれる核分裂性プルトニウムの量に応じて、各顧客に割り当てることとなっているため、使用済軽水炉燃料が実際に再処理される時点と核分裂性プルトニウムが割り当てられる時点との間に時間的なずれが生じることとなる。本件電気事業者においては、かかる割当てを核分裂性プルトニウムの「回収」ととらえているところ、本年三月末時点においては、それまでに回収された核分裂性プルトニウムの量が相対的に少なくなっており、またその後回収されると見込まれる核分裂性プルトニウムの量が相対的に多くなっているが、当該割当てがすべて終了した段階で、本件電気事業者が核燃料会社に再処理を委託した使用済軽水炉燃料に含まれる核分裂性プルトニウムと等量の核分裂性プルトニウムが回収されることとなる。
 なお、使用済核燃料における核分裂性プルトニウムの含有率は、当該使用済核燃料の燃焼度等によって異なるが、本件電気事業者が海外の再処理事業者に再処理を委託した使用済核燃料は、平均燃焼度が燃料物質一トン当たり約三千メガワット日の使用済みのガス炉用ウラン燃料及び平均燃焼度が燃料物質一トン当たり約二万五千メガワット日の使用済軽水炉燃料であり、これらの燃焼度は、近年における使用済軽水炉燃料の平均的な燃焼度である燃料物質一トン当たり約四万ないし約四万五千メガワット日よりも低いものとなっているため、海外の再処理事業者に再処理を委託した約七千百トン・ヘビーメタルの使用済核燃料における回収予定の約三十二トンの核分裂性プルトニウムの含有率は、約〇・四五重量パーセントと相対的に低いものとなっている。

二の2について

 将来、実用発電用原子炉において使用されることとなる燃料の種類等を確定することができないため、お尋ねの「核分裂性プルトニウムの含有率」等を網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所三号炉において同炉における標準的な組成のウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料及びウラン燃料を燃焼した場合並びに関西電力株式会社高浜発電所四号炉において同炉における標準的な組成のMOX燃料及びウラン燃料を燃焼した場合について、東京電力株式会社及び関西電力株式会社から聴取したところ、お尋ねの点については、別表第二のとおりであるとのことである。

二の3及び4について

 お尋ねの三十二トンのプルトニウムを含め、我が国において、プルトニウムの利用を進めるに当たっては、安全確保に万全を期するとともに、核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)を締結し、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の下で、核物質、施設等を厳格に管理し、平和利用に係る透明性の確保の徹底を図るとともに、我が国の平和利用政策に係る国際的理解と信頼を得る外交的努力を行うなど、国際社会の理解と信頼の確保に努めているところである。今般、国際原子力機関が、我が国について、未申告の核物質及び原子力活動が存在せず、その保有するすべての核物質が保障措置下にあり平和利用されているとの結論を出したところであるが、国際原子力機関が大規模な原子力活動を行う国についてかかる結論を出したのは初めてのことであり、一般に、右に述べたような我が国の努力は、国際的にも評価されているものと認識している。

三の1について

 先の答弁書(平成十六年七月六日内閣衆質一五九第一八八号。以下「前回答弁書」という。)におけるお尋ねの「ウラン燃料装荷とMOX装荷の場合で違いがない」旨の答弁については、前回答弁書四の2についてで述べたとおり、MOX燃料の最高燃焼度が燃料物質一トン当たり四万五千メガワット日以下であるとの前提の下、MOX燃料の炉心装荷率が三分の一以下の実用発電用原子炉について、「MOX燃料を装荷した炉心に係る重大事故及び仮想事故発生時の放射性物質の放出量について、ウラン燃料を装荷した炉心に係る場合と違いがないものとして安全性の評価を行っている」旨をお答えしたものであり、「これは、答弁書にいうウラン燃料装荷とMOX装荷の場合で違いがないとすること自体が妥当でないことを示している」との御指摘は当たらないと考える。
 「燃焼度を五五〇〇〇MWD/tとして考え」た場合のMOX燃料に係るお尋ねの点については、かかるMOX燃料の使用を前提とした実用発電用原子炉の安全審査を行っておらず、承知していない。
 お尋ねの各種のアクチノイド系物質(原子番号八十九から百三までの元素)から放出される放射線量については、前回答弁書三についてで述べたとおり、MOX燃料から放出される放射線量からアクチノイド系物質に係る放射線量を分離して特定することが困難であることから、お答えすることができない。

三の2について

 前回答弁書四の3についてにおいては、お尋ねの「米国核管理研究所」の報告が「原子炉施設の閉じ込め機能が喪失し、プルトニウムが環境中に放出されるなど」の前提を置いている点について、そのような事象は、多重防護の考え方を前提として設計された原子炉施設において工学的には想定されないほど発生の可能性が低いものであることから、「極端な前提」と述べたものであり、我が国における実用発電用原子炉の安全審査の際には、かかる事象の発生は想定していない。
 なお、お尋ねの「大型原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算」(以下「五十九年報告書」という。)については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)の制定時に、原子力損害賠償制度の検討に資することを目的として、工学的には想定されないほど発生の可能性が低く、実用発電用原子炉の安全審査では前提とする必要のないような仮想的な前提を置いて試算を行ったものである。

三の3について

 三の2についてで述べたように、実用発電用原子炉の安全審査に当たっては、五十九年報告書で用いたような前提を使用した評価は行っておらず、お尋ねの点についてお答えすることは困難である。

四の1及び2について

 一の1についてで述べたとおり、現行の長計においては、新工場の建設計画について、平成二十二年頃から検討が開始されることが適当であるとしている。
 現行の長計においては、国民の理解を得つつ、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを国の基本的考え方とし、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うため、中間貯蔵が重要であるとしており、また、「エネルギー基本計画」(平成十五年十月七日閣議決定)においては、「我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方」としているところ、両計画においては、「再処理能力を超える使用済み核燃料の直接処分」の実施や「再処理路線」の変更は想定していない。

四の3について

 四の1及び2についてで述べたとおり、現行の長計においては、国民の理解を得つつ、使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを国の基本的考え方とし、また、「エネルギー基本計画」においては、「我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方」としている。このような考え方の下、二の3及び4についてで述べたように、我が国のプルトニウム利用に対する国際社会の理解と信頼を得るべく努めてきているところである。
 他方、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」については、原子力委員会が、昭和三十一年からこれまでおおむね五年ごとに合計九回策定してきており、平成十二年十一月二十四日の現行の長計の策定から、来年十一月で五年を迎えることとなるため、同委員会が新たな「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の策定作業に着手したところである。
 ウラン試験の実施等日本原燃株式会社の六ヶ所再処理工場の稼動に向けた個別の事業の具体的な進め方については、このような状況も踏まえて、実施者である同社が安全確保を前提に地元の理解を得つつ判断するものであると考える。


別表第一 1/5


別表第一 2/5


別表第一 3/5


別表第一 4/5


別表第一 5/5


別表第二


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