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平成十七年一月二十七日提出
質問第一二号

平成十七年度 税制改正に関する質問主意書

提出者  筒井信隆




平成十七年度 税制改正に関する質問主意書


一 重加算税の賦課決定通知書に理由を附記しないのはなぜか。(国税通則法六八)
 平成十二年七月、国税庁は重加算税の取扱いについての事務運営指針を公表した。しかし、重加算税の課税要件である「事実の隠ぺい」、「仮装」については、理論的な定義付けがされておらず、重加算税の賦課対象となる行為の例示だけがされている。
 申告納税制度の趣旨に鑑み、税務行政における透明性の確保と納税者へ便宜のために重加算税の賦課決定通知書にはその賦課決定の理由を附記することを義務付けるべきであると考えるがどうか。
二 税務行政庁が行う税額の減額更正は法定申告期限から五年以内とされ、増額更正についても平成十六年度改正により除斥期間が五年以内とされている。一方、納税者が更正の請求をすることができる期間は原則として法定申告期限から一年以内のままであるが、なぜ納税者が更正の請求をすることができる期間のみを一年以内としたのか。
 また、後発的理由による更正の請求の期間の特例は現行二か月以内であるが、二か月以内となった理由は何か。(国税通則法二三、七〇)
 法定申告期限から一年を超え五年以内の期間については、税務行政庁は減額の更正処分をできるものの、納税者からは実務上「嘆願」という方法によって対応しているのが現状である。この嘆願を取り上げるか取り上げないかは税務行政庁の裁量であり嘆願は法的な救済措置ではない。また最近では、嘆願を要請しなかった税理士に対して減額更正処分を期待することが可能であったとして、依頼者からの損害賠償請求を認めた判決も現れている。したがって、更正の請求をすることができる期間を税務行政庁の更正処分期間と同様に、法定申告期限から五年間とすべきである。
 なお、後発的理由による更正の請求の期間の特例については、その理由の生じた日から二か月以内とされているが、特殊な事例のため一般納税者には必ずしも周知されておらず、更正の請求ができたにもかかわらず期限が徒過していることを後日になって知る場合が少なくない。
 そこで、後発的理由による更正の請求については、納税者の権利救済を損なうことがないようその期限を少なくとも一年以内に延長すべきである。
三 消費税法第三〇条第七項は、仕入税額控除の要件として帳簿等による記録と請求書等による記録との両方の保存を義務付けているが、その理由は何か。(消費税法三〇FGH)
 消費税法第三〇条第七項は、仕入税額控除の要件として帳簿等による記録と請求書等による記録との両方の保存を義務付け、さらに帳簿等においては、
 @ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
 A 課税仕入れを行った年月日
 B 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
 C 課税仕入れに係る支払対価の額
 をすべて完全に記載することを要求し(第八項)、また、請求書等においては、
 @ 書類の作成者の氏名又は名称
 A 課税資産の譲渡等を行った年月日又は期間
 B 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
 C 課税資産の譲渡等の対価の額
 D 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
 をすべて完全に記載することを要求しており(第九項)、これらの記載要件をすべて充足しない場合には事業者が実際に負担した仕入税額を控除できないことになる。
 ところで、事業者が従来から作成している一般的な会計帳簿には、事務効率化の観点から相手先の氏名、取引の年月日、取引の内容、支払対価の額について、請求書等の証憑によって確認することができるものについては、適宜省略して記載するのが通例であり、消費税法の規定どおりの帳簿を作成することは事業者にとって事務処理上過度の負担を強いている。
 さらに、平成十五年度改正による納税義務の免除制度における基準額の引下げによって、新たに納税義務者となる小規模事業者にとっては、現行の制度のままでは過重な負担と無用の混乱を招くことになる。
 請求書等により前記の要件が確認できるのであれば、重複して帳簿に記載しない場合でも課税取引の検証は十分に可能であるから、請求書等に不備がある場合に限り帳簿への記載を要件とすべきである。この場合でも課税取引の事実は十分に検証可能であり、合理性や効率性を前提とする記帳実務の実態に配慮した制度となる。
四 消費税法では前々年又は前々事業年度を基準期間とし、基準期間の課税売上高によって納税義務の免除制度や簡易課税制度の適用を判定しているが、なぜ基準期間を前々年又は前々事業年度とするのか。
 消費税法では、前々年又は前々事業年度を基準期間とし、基準期間の課税売上高によって納税義務の免除制度や簡易課税制度の適用を判定しているがこの制度には以下の弊害がある。
 (一) 基準期間の課税売上高が一千万円以下の事業者は、当該課税期間の課税売上高の金額にかかわらず免税事業者となり、逆に基準期間の課税売上高が一千万円を超える場合には、当該課税期間の課税売上高が一千万円以下であっても納税義務が生じることとなり事務負担も強いられることになる。
 (二) 簡易課税制度については、当該課税期間の課税売上高が大きく、本則計算による事務負担を求めるに足りる規模となっていても、基準期間の課税売上高が五千万円以下であれば簡易課税が適用され、逆に基準期間の課税売上高が五千万円を超えていれば、その後の事業縮小等によって事務負担が免除されるべき規模の事業者となっていても本則による計算を強いられる結果となる。
 (三) 免税事業者における課税事業者の選択や簡易課税制度の選択などに係る届出書の効力発生時期は、提出日の属する課税期間の翌課税期間以降であり、常に一年ないし二年先の状況を予測しなければならない。しかし、この判断をすべての中小事業者に求めるには無理がある。
 以上の基準期間制度による弊害を解決するために、当該課税期間における課税売上高が一千万円を超えていれば確定申告の義務を課し、一千万円以下であれば申告を行うかどうかを選択できる、いわゆる申告不要制度とすべきであるがどうか。
 また、平成十五年度改正により簡易課税制度を選択できる事業者は小規模な事業者に限定されることになり、いわゆる益税問題もほとんど解消している。したがって、簡易課税制度の適用についても、事前の届出制を廃止し、当該課税期間に係る確定申告書への記載により選択できるようにすべきである。
五 同族会社の留保金課税制度を存続させる理由は何か。(法人税法六七、租税特別措置法六八の二)
 同族会社の留保金課税制度は、個人株主が利益処分を先送りし、結果的に配当課税が繰り延べられることに対処するためにその代替的課税として昭和二十九年に創設された。
 しかし、個人への課税をもって課税関係が終了するという法人擬制説的な立場によるとしても、法人の利益をどの時点で個人に分配するかは本来法人の選択に任されるべきである。
 また、法人が利益の配当や役員賞与を抑え社内に留保することは健全な財務体質を強化するためにはむしろ必要なことであり、一方で、非同族会社にあっても配当政策に恣意性がないとは言い難く、同族会社にのみ追加的負担を強いることとなる留保金課税制度には問題がある。
 さらに、最近の税制改正において特定の中小企業等に対する留保金課税の適用停止措置が講じられているが、その結果、一部の企業のみを対象とした課税制度となり税制としては問題がある。
 したがって、次の理由から租税特別措置法により適用停止とするのではなく、同族会社の留保金課税制度そのものを廃止すべきであると考えるがどうか。
 (一) 導入当初に比べ所得税の税率引下げにより、法人と個人との税負担格差は縮小している。
 (二) 同族会社と非同族会社のそれぞれの対利益配当率などが統計的に把握され発表されているわけではなく、また、配当の恣意性についてもその差異は明確ではないことから、両者の課税上の公平性には問題がある。
 (三) 国際競争が一段と激しくなる中で、自己資本の充実・補強が重要であるにもかかわらず、結果的に国内企業に対して国際競争に重いハンディを背負わせる税制となっている。
 (四) 繰越欠損金を有する企業が資産の売却により資金調達を行った場合には、繰越欠損金により本来の法人税等の負担はなくても留保金課税の対象となる場合がある。
 (五) 民事再生によって債務免除を受けた場合にも留保金課税の対象となり、再生計画に支障をきたす場合が生じている。
六 退職給与引当金繰入額の損金算入制度を廃止した理由は何か。(旧法人税法五四)
 労働協約や就業規則等による退職金規程は、契約上の債務や労働条件の明示として企業に対して強い拘束力を持っている。退職金の金額は規程により合理的に算出でき、その期において発生したものは将来において支出される蓋然性が非常に高く、企業会計上も負債性引当金として計上することが要求されている。
 民法や労働基準法などの法律による債務の引当てについて、その繰入額の損金算入を認めなければ企業が退職金規程を設けることに消極的になるのは明らかであり、従業員にとっては不利な扱いとなる。また、退職給与引当金繰入額は本来の期間費用であり、これの発生事業年度での損金算入を認めないことは、税負担の平準化を阻害することにもなる。
 このように、退職給与引当金繰入額の損金算入を制限することは、労働条件の低下と経済活力の低下をもたらすことになる。ましてや、連結納税制度の創設による税収減をカバーするために税法上の退職給与引当金制度を廃止することは、連結納税制度を採用しない企業にとっては著しく不利な取扱いであり、税負担公平の観点からも問題がある。したがって、退職給与引当金の損金算入制度は速やかに復活させるべきであると考えられるがどうか。
七 バブル期に地価高騰対策として設けられた不動産所得に係る損益通算を制限する特例措置を存続させる理由は何か。(租税特別措置法四一の四)
 土地等に係る負債利子によって生じた不動産所得の損失の金額については、平成四年分以後は損益通算が認められていない。このような損益通算の制限を行うことは、所得のないところに課税する結果となる。
 この制度はバブル期に地価高騰対策として設けられたものであるが、現在では地価が下落しており、むしろ景気浮揚のための政策が必要な時期でもある。平成十年度の税制改正によって、法人税では新規取得土地等に係る負債利子の特例が廃止されており、これとの整合性を保つためにもこの制度は廃止すべきであるがどうか。
八 平成十六年度税制改正により、土地建物等の譲渡損失は土地建物等の譲渡利益との内部通算だけが認められ、他の所得との損益通算及び繰越控除が認められなくなった理由は何か。(所得税法六九、租税特別措置法三一、三二)
 本来、損益通算は所得の種類を問わず適正な担税力に応じて課税をするという課税原則の基本理念を実現するための制度であるが、土地建物等の譲渡損失について損益通算及び繰越控除を認めないことは担税力を失った部分に対しても課税することになり、分離課税と総合課税との仕組みの差はあるものの、課税上の問題がある。特に事業用不動産の譲渡損失は事業収益と一体のものであり、法人企業と個人企業との間の課税上の不公平を生じさせることになる。
 さらに、損益通算を規制することは、含み損を有する遊休不動産の流動化を阻害すると考えられ、景気の活性化対策に反するものであるといえる。
 したがって、土地・建物等の譲渡により生じた譲渡損失の損益通算及び繰越控除の制度を復活すべきである。

 右質問する。



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