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平成十七年二月四日受領
答弁第一二号

  内閣衆質一六二第一二号
  平成十七年二月四日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員筒井信隆君提出平成十七年度 税制改正に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員筒井信隆君提出平成十七年度 税制改正に関する質問に対する答弁書



一について

 税務行政に関する手続については、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)その他の国税に関する法律等において必要な規定が設けられ、独自の手続体系が整備されており、行政運営の公正及び透明性が確保されている。また、税務行政については、これらの法律等の規定に基づき、納税者の理解と協力を得つつ、効率的に遂行されていると考えている。
 御指摘の重加算税の賦課決定通知書の理由付記については、一般に法が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは、最高裁判所の判例によれば、「処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものである」とされている(昭和三十八年五月三十一日最高裁判所判決)。重加算税の賦課決定を含む国税に関する処分に不服がある場合には、原則として、国税不服審判所への審査請求に先立ち、処分庁に対する異議申立てをすることとされているところ、国税通則法第八十四条第五項の規定により、異議申立てについての決定でその異議申立てに係る処分の全部又は一部を維持する場合における異議決定書に付記する理由においては、その維持される処分を正当とする理由が明らかにされていなければならないこととされており、審査請求に先立って原処分の理由を知ることができることから、処分庁の恣意の抑制及び不服申立ての便宜は図られている。
 したがって、御指摘のような内容の国税通則法の改正を行うことは考えていない。

二について

 国税通則法第二十三条第一項に規定する更正の請求をすることができる期間は、法定申告期限から一年以内であるが、これは、申告納税方式による国税においては法定申告期限内に適正な納税申告書が提出されることが要請され更正の請求は飽くまでもその例外を認める制度であること、法律関係の早期安定や税務行政の能率的な運営に配慮する必要があること及び納税者が自ら誤りを発見するのは、通常、次の申告時期が到来するまでの間であることを総合的に勘案して定められているものである。なお、同法第七十条第二項に規定するいわゆる減額更正をすることができる期間等は、税務署長が適正かつ公平な課税の実現を図る観点から更正を行うこととされていることを踏まえて定められているものであり、納税者が自己の過大申告について更正の請求をすることができる期間とは、その趣旨を異にするものである。
 また、国税通則法第二十三条第二項に規定する更正の請求をすることができる期間については、納税者は同項各号に規定する事由を直ちに知ることができることから、これらの事由が生じた日の翌日から二月以内とされている。
 なお、これらの更正の請求をすることができる期間内に更正の請求がされなかった場合においても、国税通則法第二十四条及び第二十六条において、税務署長は、納税申告書に記載された税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき等は、その調査により、その申告書に係る税額等を更正する旨規定されていることから、納税者の権利救済の途が閉ざされているわけではないと考えている。

三について

 消費税の仕入税額控除制度については、消費税の創設当初は、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿又は請求書等のいずれか一方を保存することを要件とするいわゆる帳簿方式が採用されていた。しかし、この帳簿方式に対しては、納税者自身が記帳する帳簿のみによって仕入税額控除が行われ得ることについて、制度の信頼性の面から疑問が提起されていたことなどを踏まえ、平成六年の税制改革において、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿の保存に加え、請求書等の取引の事実を証する書類の保存をも仕入税額控除の要件とするいわゆる請求書等保存方式が採用され、平成九年四月一日から実施されている。この請求書等保存方式への改正は、大部分の事業者間取引において請求書等が交わされ、保存されているという我が国の取引実態を尊重しつつ、請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除の要件とすることにより、制度の信頼性を高めることを目的として行われたものである。
 また、具体的な帳簿の記載に当たっては、事業者の事務負担を極力増加させないように、請求書等に記載されている個々の商品の内容等について、帳簿にそのまま詳細に記載することまでは求めていないところである。

四について

 消費税は、消費一般に広く負担を求める間接税であり、事業者を納税義務者として取引の各段階における売上げに対して課税されるが、中小事業者の事務負担等に配慮して、事業者免税点制度及び簡易課税制度が設けられている。
 この事業者免税点制度及び簡易課税制度については、課税事業者であるか否かが消費税相当分の価格への転嫁の有無に影響を及ぼすこと、簡易課税制度を選択するか否かにより売上げや仕入れに関する記帳義務の内容が異なること等から、これらの制度の適用の有無を課税期間開始前に確定しておくことが適正な課税の実現等のために不可欠である。このため、課税期間開始前に判明している直近の実績である前々年又は前々事業年度の課税売上高によりこれらの制度の適用の有無を判定することとしているものである。
 また、これらの制度は、中小事業者の事務負担等に配慮して設けられたものであることから、その選択は、本来、納付税額が有利になるか不利になるかという考慮に基づき行われるべき性格のものではない。
 仮に、事業者免税点制度について、御指摘のような「いわゆる申告不要制度」とすることとすれば、事業者が、課税事業者となることが確定しないまま消費税相当分を価格に転嫁しつつ、申告せず、納税しないことを認めることとなり、いわゆる「益税」の発生を制度的に容認することとなるなどの問題があると考えている。
 また、仮に、簡易課税制度の適用について、御指摘のように当該課税期間に係る確定申告書への記載により選択できる制度とすることとすれば、納付税額が有利になるか不利になるかという考慮に基づき簡易課税制度の適用の有無を選択することが可能となり、いわゆる「益税」の発生を制度的に容認することとなるなどの問題があると考えている。

五について

 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第六十七条第一項に規定する同族会社に対する留保金課税制度については、税制調査会の平成十四年度の税制改正に関する答申(平成十三年十二月十四日)において、「本制度は、同族会社に対して通常の法人税のほか、一定額を超える内部留保に対して追加的な課税を行うものである。それは、間接的に配当支出の誘引としての機能を果たしつつ、法人形態と個人形態における税負担の差を調整しようとする狙いを有している」と指摘されており、こうした観点から必要な制度であると考えている。

六について

 退職給与引当金制度については、税制調査会の法人課税小委員会報告(平成八年十一月二十六日)において、「退職金支給の相対的なウェイトが高い企業と低い企業との間、あるいは退職給与引当金を利用している企業と利用していない企業との間で、税負担のアンバランスが生じている」等と指摘され、これを踏まえ、労働者の受給権保全の観点から確定給付企業年金等の導入が図られる中、課税ベースの適正化等の観点から廃止されたところである。したがって、御指摘のように退職給与引当金制度を復活させることは適当でないと考えている。

七について

 不動産所得に係る損失について損益通算を制限する措置は、不要不急の土地需要を抑制するという土地対策の観点のみから設けられたものでなく、マンション等を借入金で購入してこれを貸し付けることにより不動産所得に損失を生じさせ、その損失を給与所得や事業所得から控除することにより税負担の軽減を図るという節税策として損益通算が使われていたことが、そうした節税策が可能な高額所得者に有利になっており、不公平であるという批判にこたえて設けられたものである。当該措置は負担の公平を確保するために必要な措置であり、これを廃止することは適当でないと考えている。

八について

 土地、建物等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除を認めないこととする措置は、そもそも土地、建物等の譲渡損益は、土地、建物等の取得の時から一定の期間をかけて生じたものが、納税者の任意で行われる譲渡の時に一度に実現するものであり、毎年の勤労の成果である事業所得や給与所得を始めとするその他の所得とは性格が異なることから、これらの所得とは分離して課税することが適当であるとの考えに基づくものである。
 また、当該措置は、土地市場における使用収益に応じた適切な価格形成の実現を図るものであり、当該措置を土地、建物等の長期譲渡所得の税率の引下げ等と共に一体で実施することが土地市場の活性化を図るために適切かつ必要であるとの趣旨で設けられたものであることから、これを廃止することは適当でない。
 なお、国税及び地方税の合計でみると、法人の所得に対する税率は約四十パーセントであり、個人の土地、建物等の長期譲渡所得に対する税率二十パーセントの約二倍である等、もともと個人と法人とは適用される税制全体が異なっており、損益通算及び繰越控除だけをとらえて有利不利を論ずることは適当でない。また、法人の事業活動と同一視し得る個人が事業として行う土地、建物等の譲渡に係る譲渡損失については、事業所得として取り扱われており、当該措置の対象ではない。



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