衆議院

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平成十八年六月十五日提出
質問第三七〇号

米国産牛肉の輸入再々開に関する質問主意書

提出者  川内博史




米国産牛肉の輸入再々開に関する質問主意書


一 輸入再々開手続きについて
 (1) 平成十八年六月一日から十四日まで、全国十ヶ所で行われた厚生労働省及び農林水産省主催の「米国産牛肉輸入問題に関する意見交換会」(リスクコミュニケーション)での配付資料によれば、「今回新たに要請した追加措置」として、「輸入再開前に全ての対日輸出認定施設における日本側の事前調査を実施し、問題のないと判断された施設のみを輸入手続きの再開の対象」とし、また「全ての対日輸出認定施設について、実際の輸入再開前に日本側が調査を実施」とあるが、これらの文言の意味は、政府の意思として輸入再開を決定する前に、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)内の三十五の対日輸出認定施設(以下「認定施設」という。)の全てを調査する、すなわち、三十五の施設の全てを調査し、その調査結果を精査したうえで、調査報告書の全文を国民と国会に報告し、それから後に、政府として輸入再開を決定するということを意味するのか。ちなみに中川農林水産大臣は、本年六月六日衆議院農林水産委員会において「川内さんが今おっしゃったように、その中のひとつとしてイエスであります。」と答弁しているところである。政府の明確な答弁を求める。
 (2) 三十五の認定施設を調査する際に、日本向けの牛がどのような飼料を与えられているのか、特に鶏糞やチキンリッターが飼料として与えられているかどうかを調査すべきだと思うが、政府の答弁を求める。
 (3) 昨年十二月の食品安全委員会最終答申の結論への付帯事項においても米国における特定危険部位(SRM)の利用禁止、動物の飼料への利用禁止などを含む飼料規制の強化とサーベイランスの拡大・継続を、輸入再々開の条件とすべきであると考えるが、政府の答弁を求める。
 (4) 米国における飼料規制の強化とサーベイランスの拡大・継続を、日本政府の要望事項として、日本政府から米国政府に対する直近の「年次改革要望書」に記載すべきであると思うが、政府の答弁を求める。なお、中川昭一農林水産大臣は本年六月六日の衆議院農林水産委員会において、「私が言ったことは政府の公式見解ですから、当然、そういうふうに文書においても今後きちっとやっていかなければいけないというふうに思っております。そうします。」と答弁しているところである。
 (5) 今後実施する米国内の三十五の認定施設に対する調査報告書の全文については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年五月十四日法律第四十二号)第五条第一号の但し書き「ただし、次に掲げる情報を除く。(中略)ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」を適用し、原則公開とすることを米国側に通告すべきであると思うが、政府の見解を求める。
 (6) 前項の原則にのっとって、既に「黒塗り報告書」として公表されている昨年十二月の査察結果報告書についても、黒塗りされている部分を可能な限り公開すべきだと思うが、政府の見解を求める。
 (7) そもそも、昨年十二月の査察結果報告書が、「黒塗り報告書」となった経緯とその法的根拠について、詳細な答弁を求める。とくに、施設の食品安全検査局(FSIS)検査官の人数、獣医官の人数、歩行困難牛の頭数、神経症牛の頭数を黒塗りとする理由と法的根拠について、それぞれ詳細な答弁を求める。
 (8) 今後の三十五の認定施設に対する調査において、以下の項目は含まれているのか。含まれていない場合は、調査項目に追加すべきであると思うが、政府の答弁を求める。
  1 一日の屠畜数・そのうち対日輸出プログラムに適合すると見込まれる牛の頭数
  2 ラインの数とライン別の従業員数、そのうちの季節労働者数
  3 昨年一年間の従業員の新規採用数(臨時採用を含む。)
  4 検査員の数、そのうち獣医師の数
  5 営業時間と交替数
  6 生産される製品の概要
  7 生産される舌及び腸・これらの対日輸出予定の有無
  8 過去五年間に行政から指摘を受けた違反の種類と数
  9 過去五年間に施設の内部監査によって改善した問題点と数
二 加工品等の原産国表示とトレーサビリティについて
 (1) 食品安全委員会プリオン専門調査会の吉川泰弘座長は、最終的には「消費者の選択」になると述べている。しかし、我が国では現時点において食肉のみに原産国表示の義務を課し、加工度の低い加工品にその予定があるのみで、外食産業における使用の表示は任意のガイドラインが予定されているに過ぎず、加工食品については表示の予定すらない。消費者の不安を解消し、選択を可能にするために、加工食品・外食の原産国表示の義務化を早急に為すべきであると考えるが、政府の見解を求める。
 (2) 輸入再々開となった場合に、米国産牛肉を、どの輸入業者が、米国のどの施設からどの部位をどの程度の数量を購入したのか、そしてどのような履歴(飼料等を含む)の牛であるのか、という情報を政府の責任において消費者に開示すべきではないか。政府の見解を求める。
三 日本の水際での検査の強化について
 (1) 政府は、輸入再々開となった場合において、日本の水際での検査の強化について、具体的にどのような対策を行うことを考えているのか、詳細な答弁を求める。
 (2) 日本の検疫所においては、目視による脳や脊髄などの「SRM付着検査」は行われているのか。また、今後「SRM付着検査」を強化する考えはあるのか。政府の答弁を求める。
 (3) 「SRM付着検査」について、英国などで既に実施されている方法を参考にし、水際検査を強化すべきであると思うが、政府の見解を求める。また、特定危険部位が含まれているかどうかを科学的に確認する為の検査キットが販売されており、三十分前後で脳や脊髄の定量検査が可能とされている。日本の一部の食肉加工場でも使用されている検査キットを日本全国で使用し、その上で米国産牛肉の水際検査においてもこれを採り入れるべきであると思うが、政府の見解を求める。
四 公衆衛生について
 (1) 福島雅典・京都大学医学部教授(薬剤疫学)が平成十七年十一月五日付の毎日新聞紙上においてプリオン病の検査義務化及び、特に近年増えている若年性認知症例は全数登録し、診断精度を高め、プリオン検出検査を義務化すべきであると呼びかけている。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(以下「vCJD」という。)は患者の死後に脳を解剖しなければ判明せず、また、近年では弧発性vCJDと同様の症状を示す、国際保健機関の診断基準とは異なる症例が出て来たために、見逃されている患者の存在が考えられる。英国では感染者数が相当数存在すると言う論文もあり、危険な時代に英国に滞在していた国民が数十万人いる我が国も対策を講じる必要があり、その為には福島氏の指摘通りに若年性認知症の登録と検査を義務化すべきではないかと考えるが、政府の見解を求める。
 (2) 我が国において、国産牛からの感染者数は少ないとの食品安全委員会の見解が存在するが、現実的には一人でも患者が発生すれば感染対策の不備が指摘されている我が国の医療において、院内感染が拡大する恐れが存在する。vCJDなど、医原性で感染し得る病気において公衆衛生・院内感染対策を講じる審議会が日本においては未だ設置されていないが、早急に立ち上げる必要があるのではないか。政府の見解を求める。
 (3) また、vCJDの感染源ともなり得る歯科における感染対策の不備は昨年五月の第六回エイズ予防指針見直し検討会などでも指摘されている。また、採血器具(真空管採血や採血用穿刺器具、針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの)による院内感染対策も現場では徹底されていない病院が少なからず存在すると言われるが、早急に対策を徹底させる必要があるのではないか。政府の見解を求める。
 (4) 平成十八年一月二十七日現在、国内で使用される「米国産ウシ由来原料が使用されている医薬品」は全十九品目であったが、その後、当該医薬品の中に、ウシ由来の原材料を米国産から他の国の原産に変更したものはあるか。変更したものがあればその原産国と変更した年月日を、変更されていないものについては、変更されなかった理由について、答弁を求める。
 (5) 前項の十九品目中、平成十七年三月二十九日に発売されたエタネルセプト製剤(商品名エンブレル)について、原産国が変更されていない場合、現在までのところ、治療上の効果がリスクを上回るだけの効力を発揮していると判断できる状況にあるのかどうか、政府の見解を求める。
 (6) 日本国内で流通するタミフルは、発売当初から米国産ウシ由来のゼラチンをカプセルの原料に使用していたが、牛海綿状脳症(以下「BSE」という。)発生により原産国を変更したのか。変更した場合、変更の年月日と新たな原産国名について答弁を求める。
 (7) 新型鳥インフルエンザの大流行に備えて、世界各地でタミフルの備蓄が進められているが、政府が新型鳥インフルエンザの予防及び治療について、タミフルが最も有効であると認識するに至った理由の詳細な説明を求める。また、備蓄における米国産ウシ由来のカプセルのリスクについて、どのように考えているのか。政府の見解を求める。
 (8) 乳腺炎の牛の生乳には、白血球を含むプリオンが混在する可能性があるとの見解が存在するが、BSEハイリスク国からの乳製品の輸入を規制する必要性は存在しないのか、政府の見解を求める。米国では、牛に投与した成長ホルモンの影響により、牛乳を飲んだ若い女性の乳房の肥大化が問題となっているうえ、酸化した乳脂肪を含む牛乳の安全性について疑問視する専門家の見解もある。成長ホルモン及び過酸化脂質を含む牛乳の安全性について、政府の見解を求める。
 (9) 米国やカナダでは、鹿の伝達性海綿状脳症(以下「CWD」という。)感染が急速に拡大し、大きな社会問題となっている。米国では、野生の鹿の全生息数の二割近くがCWDに感染していると推計され、米国政府はCWDに感染している鹿の肉を食さないよう勧告している。我が国では、北海道釧路市が大量繁殖しているエゾシカの肉を本年十月より学校給食に導入するとの報道があるが、このエゾシカの肉について食品安全委員会のリスク評価を実施すべきではないか。政府の見解を求める。
五 その他の問題について
 (1) 本年三月に実施された食品安全委員会プリオン専門調査会委員及び専門委員の改選において、甲斐千恵子委員には再任の依頼が無かったとされるが、同委員が再任されなかった理由について政府の答弁を求める。
 (2) 米国で確認された三頭目のBSE感染牛は一九九七年より前に生まれたと報告されている。しかも、三頭目は二頭目とともにいわゆる非定型のBSEであると報告されている。非定型とは、英国由来と考えられる型でないBSEである。米国では、一九四〇年代から伝達性ミンク脳症が発生しており、その感染源はダウナー牛として処理された牛であるという報告がある。こうしたことから「米国型BSE」が存在する可能性が否定できないと考えられるが、この点について政府の見解を求める。また、この件について食品安全委員会での評価が必要と考えられるが、政府の見解を求める。
 (3) 欧州食品安全機関が新たなBSE地理的リスク(GBR)評価を行っているが、それによるとリスクレベルTとされていたチリがリスクレベルV、ブラジルがリスクレベルUと評価されている。しかし、我が国では危険度評価が引き上げられたブラジル産牛の肝汁を原材料とするタウリンが、脳神経や網膜の発達のための栄養源として、腸管の発達していない乳幼児の粉ミルク製品に添加されている。他の潜在リスク国からも同様の例がある可能性が疑われる。また、炎症部位にプリオンが検出され、尿などにも排出されている点もあわせ、予防の原則から至急それらについて検討を行い、その結果によっては使用の中止を勧告すべきではないかと考えるが、政府の見解を求める。
 (4) 乳幼児や、腸管の発達していない児童向け及び免疫の弱った病人向けの食品や医薬品・健康食品等については、特にその原材料を吟味し、できうる限り予防の原則を適用すべきであると考えられる。その観点からも、全ての牛関連材料の原産地表示を義務づける必要があると考えられるが、政府の見解を求める。

 右質問する。



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