質問本文情報
平成十九年四月十六日提出質問第一八三号
暗号機能をもつ集積回路又は組立品を組み込んだ製品の輸出規制に関する再質問主意書
提出者 田村謙治
暗号機能をもつ集積回路又は組立品を組み込んだ製品の輸出規制に関する再質問主意書
平成十九年三月二日付けで「暗号機能をもつ集積回路又は組立品を組み込んだ製品の輸出規制に関する質問主意書」を提出したところ、同月十三日付けで政府より答弁書を受領したが、例えば質問主意書の質問五において指摘した米国の運用と異なるということについて回答がないなど、不誠実な対応が随所に見受けられた。
この件に関連して、三月二十三日、衆議院財務金融委員会の「関税定率法等の一部を改正する法律案」の審議の中で質問したところ、「試作品につきましても、包括許可制度の対象になっております。」と、包括許可制度があたかも米国における license exception(許可例外)に近いものと誤認させる答弁があった。
米国の許可例外は輸出者による許可の申請を要しない制度であるので、輸出がその条件を満たしていれば個人であってもそのまま適用されるものである。一方、日本の一般包括許可はあくまで許可申請を行って審査を受けて取得するものであり、事実上、大手企業しか取得しておらず、個人はおろか主要な大学・研究機関であってもほとんど取得していないといわれている。
無線LANを組み込むような装置は、今日ではIT産業におけるベンチャー企業が多く手掛けているものであり、それらの中小企業の大半は一般包括許可を取得していないと見られ、日本ではアメリカにおけるような規制緩和の効果は広く国民には及んでいない。
以上を踏まえて、次の事項について質問する。
答弁書には、経済産業省においては、「『暗号機能をもつ集積回路又は組立品を組み込んだ貨物』については、暗号機能が使用できないようにされている場合を除き、当該貨物自体を暗号装置として許可の対象としているものであり、『輸出貿易管理令の運用について』1−1(7)(イ)の規定の対象から除外して運用しているものではない。」とある。
例えば、自動車や航空機などにおいても「暗号機能をもつ集積回路又は組立品を組み込ん」でいることがあるが、もし右記のような解釈をとることにより、自動車や航空機の中に「当該他の貨物の主要な要素となっていない又は当該他の貨物と分離しがたいと判断される」ように組み込まれた暗号集積回路を独立して「暗号装置」として対象としているというのであれば不自然である。
従来から、例えばDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリー)やSRAM(スタティックランダムアクセスメモリー)などの暗号以外の集積回路が規制の対象であった時代に、それを「当該他の貨物の主要な要素となっていない又は当該他の貨物と分離しがたいと判断される」ように組み込んだテレビやオーディオ製品を経済産業省がDRAM装置やSRAM装置と呼んだことはなく、それらのDRAMやSRAMをあたかも独立したメモリ装置として規制対象としたこともなかった。この慣行は暗号以外の分野においては、当然、現在も同様である。
「輸出貿易管理令の運用について」1−1(7)(イ)の規定は、そのような常識的な運用を行うことにより、右記のような不自然な解釈を排除するために存在している筈である。
もし、右記のように独立した貨物であるという解釈をとるのであれば、それは「当該他の貨物の主要な要素となっていない又は当該他の貨物と分離しがたいと判断される」ように組み込まれた貨物が「当該他の貨物の主要な要素となっていない又は当該他の貨物と分離しがたいと判断され」ないものであるということになるが、これを「輸出貿易管理令の運用について」1−1(7)(イ)の規定の対象から除外して運用するものではないということは論理的に明らかに矛盾している。
内閣法制局はこの点をどのように解釈しているのか改めて質問したい。
二 答弁書の三、四について
答弁書において、「ワッセナー・アレンジメントにおいては、暗号機能を持つ集積回路等について、他の貨物に組み込まれているか否かを問わず、輸出規制の対象とすべきこととされて」いるとある。
しからば、右記のように自動車や航空機に組み込まれた暗号集積回路が他国において規制されているという例を示していただきたい。
右質問する。